著者
森 晃爾 石丸 知宏 小林 祐一 森 貴大 永田 智久
出版者
公益財団法人 産業医学振興財団
雑誌
産業医学レビュー (ISSN:13436805)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.179-198, 2022 (Released:2022-01-13)

感染症、特にヒト-ヒト感染を伴う感染症では、ワクチンによる集団免疫の獲得が、感染症制御のために極めて有効な手段である。しかし、ワクチンに強い反感を持っている一部のグループだけでなく、ワクチンに対する不安やその他の要因でワクチン接種を躊躇する層の動向によって、十分なワクチン接種率が得られないといった、Vaccine Hesitancy(ワクチン躊躇)の問題が存在する。本稿では、ワクチン接種行動に影響を及ぼす要因のうち、社会人口学的要因や心理社会的要因について紹介するとともに、ワクチン接種意思に与える職場要因および職域でのワクチン接種プログラムに関する知見についても検討する。
著者
明仁 藍澤 正宏 池田 祐二 岸田 宗範 林 公義 中山 耕至 中坊 徹次
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.53-62, 2019-04-25 (Released:2019-04-25)
参考文献数
32

Hybrids of Rhinogobius biwaensis and Rhinogobius sp. BF were identified in the ponds of Sento Imperial Palace, Kyoto City, Japan, from microsatellite and mitochondrial DNA markers. Mitochondrial DNA analysis indicated that five of seven Rhinogobius specimens had R. biwaensis haplotypes, the remaining specimens having those of Rhinogobius sp. BF. In DAPC and STRUCTURE analyses based on microsatellite data, all specimens examined showed intermediate status between R. biwaensis and Rhinogobius sp. BF, the two species being considered to have formed a hybrid swarm in the ponds because genetically pure individuals of either were not found. This is the first report of recent hybridization under field conditions in Rhinogobius fishes from Japan, confirmed by nuclear and mitochondrial DNA data. Hybrid Rhinogobius specimens from the ponds had 5–17 predorsal scales, an intermediate range between those of non-hybrid R. biwaensis (0–6) and Rhinogobius sp. BF (11–20). However, in appearance they were more similar to R. biwaensis than Rhinogobius sp. BF, having bluish-white distal coloring anteriorly on the first and second dorsal fins, a reduced reddish longitudinal band on the anal fin, and lacking yellowish dorsal and posterior margins on the caudal fin. However, they differed from R. biwaensis in having a narrower white posterior caudal fin margin. Further morphological differentiation of the hybrid specimens was not apparent.
著者
林 里奈
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.203-208, 2021 (Released:2021-04-17)
参考文献数
19

Considering that robot-assisted activities spread to ordinary homes, this study was conducted as a part of acquiring the information on the relationship between users' characteristics, reactions from a robot, and the effects of those reactions. I compared the influence of users' personality traits on psychological stress relief effects obtained by interacting with tolerant, rejective, and emotional reaction robots to approach from users. As a result, I confirmed that agreeableness and neuroticism personality traits have significant influences on relaxing the fatigue obtained by tolerant reactions from a robot and disarming the anger obtained by emotional reactions from a robot, respectively. I also confirmed that improving the vigor obtained by rejective reactions from a robot could not be expected independently of users' personality traits. These results suggest that it should avoid using the robot with a high ratio of rejective reactions in any robot-assisted activities. Besides, it is better to use the robot with a high ratio of tolerant reactions if a user with high agreeableness needs effects of relaxing the fatigue, and use the robot with a high ratio of emotional reactions if a user with high neuroticism needs effects of disarming the anger.
著者
熊丸 めぐみ 下山 伸哉 岡 徳彦 宮本 隆司 小林 富男
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.267-272, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
20

【目的】小児先天性心疾患手術後患者のICU-acquired weakness(ICU-AW)の発症状況とそのリスク因子を調査すること。【方法】小児先天性心疾患手術後患者255例をICU-AW群と非ICU-AW群に分けて比較検討するとともに,多変量解析にてICU-AWのリスク因子を同定した。【結果】IUC-AWと判定されたのは65例(25.5%)で,多変量解析の結果,筋弛緩薬投与日数(OR:2.358,95%CI:1.693〜3.283,P<0.001),Aristotle basic complexity levels(OR:2.997,95%CI:1.383〜6.495,P=0.005)がリスク因子として同定された。【結論】小児先天性心疾患手術後患者の25.5%にICU-AWを認めた。また,ICU-AWのリスク因子については,背景心疾患や手術後管理が関連していた。
著者
山本 哲朗 林 光緒
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.249-256, 2006-12-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2 3

午後の眠気の抑制には短時間仮眠が有効であることが報告されている。しかし, 短時間仮眠が運動パフォーマンスを向上させるかどうかについては検討されていない。そこで本研究は, 短時間仮眠が運動パフォーマンスに及ぼす効果を検討した。運動部に所属する男子大学生10名が実験に参加した。彼らは14 : 00に仮眠をとるか (仮眠条件), 15分間新聞を読んだ (仮眠なし条件) 。仮眠条件では, 睡眠段階2が3分間出現した時点で起こした。15 : 00より自転車エルゴメータで, 参加者の限界に至るまで運動を続けた。その結果, 運動継続時間は仮眠条件の方が27秒長かった (p<.05) 。運動中の心拍数に差はみられなかったが, 仮眠条件の方が, 主観的運動強度, 眠気が有意に低く, 活気も有意に高かった (ps<.05) 。これらの結果は, 短時間仮眠が午後の運動パフォーマンスを改善させる効果があることを示唆している。
著者
當瀬 規嗣 小林 武志 前田 佐知子 一瀬 信敏 佐藤 達也
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.61-64, 2015 (Released:2015-08-03)
参考文献数
7

心筋細胞の電気生理学的特性は,発生期の心臓の形態学的な変化に伴って大きく変容する.発生初期のラット胚では,大部分の細胞で自動能が認められる.膜電位ではペースメーカー電位が確認でき,活動電位全体の形状は,成体の洞房結節細胞のそれと同様である.その後,作業心筋の静止膜電位は過分極し,ペースメーカー電位は失われ,自動能は刺激伝導系の細胞に限定される.この過分極は,内向き整流性K+チャネルが増加してゆくことによって引き起こされる.さらに,活動電位持続時間は誕生後に伴い急速に短縮するが,これは一過性外向きチャネルの増加が原因である.このように,胎生期の電気生理学的特性の変化は,細胞膜上のイオンチャネルの遺伝子発現と特性の変化によって引き起こされる.早期のラット胚で心拍動は観察されないが,受精後10日目に心拍動が突然開始する.この拍動開始には,L型Ca2+チャネル(Cav1.3)の突然の遺伝子発現の増大が大きく関係していると考えられる.
著者
岸田 直裕 島崎 大 小坂 浩司 小菅 瑠香 秋葉 道宏 林 謙治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.579-585, 2013 (Released:2013-10-11)
参考文献数
33
被引用文献数
1

目的 近年注目を集めている銅を用いた水中の微生物の不活化技術の現状および課題を明らかとする。方法 国内外の学術雑誌等に掲載された文献情報を基に,銅を用いた微生物の不活化技術の歴史,不活化機構,不活化効果が確認されている微生物,水中の微生物の不活化技術について整理した。結果 銅を用いた微生物の不活化技術は古くから利用されていたが,1930年代より抗生物質の利用が広まったことから,銅を用いた不活化技術は使用されなくなった。一方で,近年は抗生物質耐性菌の存在が問題視されており,抗生物質に代わる微生物の制御アプローチの 1 つとして,銅を用いた微生物の不活化技術が再認識され始めている。不活化機構については,その詳細はいまだ明らかとなっていないものの,銅イオン自体の毒性と銅表面に生成される活性酸素による強力な酸化作用によって不活化が起こると推測されている。Legionella pneumophila, Salmonella enterica, Mycobacterium tuberculosis 等の公衆衛生上問題となる多くの病原微生物に対して不活化効果が確認されている。建物内の給水管を中心に多くの水関連設備において,近年銅を用いた不活化技術の導入が検討されており,人への健康影響がほとんど発生しないと推測される水道水質基準を満たす濃度範囲であっても,水中の微生物を不活化可能であることが一部の研究でわかってきた。一方で,不活化効果が短期間に留まることも多く,効果を長期間持続させる技術を開発することが今後の課題であるといえる。また,銅管は残留塩素の低減や消毒副生成の生成にも影響を及ぼしていると報告されており,このようなリスクと不活化効果というベネフィットのアセスメントが今後必要であろう。結論 銅を用いた水中の微生物の不活化技術には,実用上の課題は残るものの,その有用性は十分に明らかとなっており,病院施設の給水設備等での利用が今後期待される。
著者
小林 淳 池田 啓一 寺田 宙 望月 眞理子 杉山 英男
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.281-285, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
23

For human safety, we investigated how metals (aluminum, cadmium, chromium, copper, lead, manganese and tin) are leaked from fused slags by contact with acid rain and basic concrete effluent. We obtained 13 fused slags prepared from general garbage. Elution tests (6 hours interval in the room temperature) by using diluted nitric acid (instead of acid rain), water, and diluted potassium hydroxide (instead of basic concrete effluent) were performed. As a result, it has been understood that the elution rates are greatly different according to both the kinds of metal and slag. The influence of aluminum was especially large. The elution concentrations of aluminum from the slags were ppm-level in alkaline. On the other metals, the elution concentrations were lower than that of aluminum. The elution pattern also differed from aluminum, and it seemed to influence the character of the metals (dissolubility in alkaline and ability to be an oxyanion).
著者
林 亮平 北本 幹也 野田 育江 渡邉 千之 山田 博康 今川 勝 松本 陽子 田中 未央 児玉 美千世 平本 智樹 赤木 盛久 隅岡 正昭 西阪 隆
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.527-531, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

症例は86歳女性.肝障害の精査の為に入院したが,原因となり得るウイルス感染および服薬歴,アルコール飲酒歴は認めなかった.抗核抗体は陽性であり,肝生検を施行しAIH scoreは17点となり自己免疫性肝炎と診断した.HLA typeはDR4陽性であった.プレドニゾロン(PSL)30 mg/日とウルソデオキシコール酸(UDCA)600 mg/日の内服を開始し,ALTは持続正常化した.UDCA 600 mg/日と併用することで,PSL 10 mg隔日投与としている現在も肝障害再燃は認めていない.
著者
小林 盾 谷本 奈穂
出版者
成蹊大学文学部学会
雑誌
成蹊大学文学部紀要 (ISSN:05867797)
巻号頁・発行日
no.51, pp.99-113, 2016-03

この論文では、人びとの容姿がキャリア形成、家族形成、心理にどう影響するのかを分析することで、社会的不平等における容姿(ルックス、身体的魅力)の役割を解明する。そこで、人びとは美容資本に時間や労力を人的資本として自分に投資し、地位達成の向上などで回収すると仮定した。エビデンスとして、ランダムサンプリング調査を実施してデータ収集した(有効回収数297人、有効回収率60.9%)。20 歳時の容姿(とくに顔)について、1下から10上の10段階で、主観的評価を測定した。分析の結果、以下が分かった。(1)容姿の分布は、男女ともにランク5と7~8の二山をもった。男女で分布に違いはなかった。(2)容姿の規定要因では、性別による違いはなかった。(3)容姿の帰結では、容姿がよいと、役職につきやすく、所得が増えた(所得は男性のみ)。多くの人から告白され、交際人数や結婚のチャンスや子どもの数が増えた。さらに、高い階層にいると感じ、自信があり、幸福だった(幸福は男性のみ)。(4)このように、男性ほど容姿の影響が強かった。これは、男性のほうが美容資本への投資が不均等なため、容姿が社会的不平等につながりやすいからかもしれない。以上から、容姿はライフチャンスを拡大させたり制約しうる。この点で、容姿は社会的不平等の一要因といえよう。
著者
岡田 智 田邊 李江 飯利 知恵子 小林 玄 鳥居 深雪
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-35, 2015-03-25

本研究では、WISC-IVの解釈にかかわる実践的課題を概観し、検査の測定値の解釈を裏付けるため、そして、検査の測定値にあらわれない特性や状態を把握するための検査行動のアセスメントの構築が必要であることを示した。これまで作成されたアセスメントツールを参考にしつつ、さらに、発達障害の特性の把握の視点も新たに取り入れ、検査行動チェックリストを作成した。事例研究では、2事例のみであったので一般化することには限界があるが、検査行動アセスメントの臨床的有用性について確認ができた。しかし、検査行動チェックリストを臨床適用するためには、その尺度自体の精度について検討する必要がある。今後の課題として、臨床的有用性を重要な観点としつつ、「セッション内妥当性」「セッション外妥当性」を検証していくことが挙げられた。
著者
小林 可夢偉 今宮 雅子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.9, no.21, pp.72-76, 2010-12-21

世界18カ国、全19戦で争われた2010年のF1世界選手権。初のフルシーズン参戦、年間成績8位の中堅チームに所属する小林可夢偉の活躍に今、世界中のファンが注目している。追い越しが困難な今日のF1で多くのマシンを抜き去ったドライバーは、ライバルからも「模範的」「レースを活気づけた」と高く評価される。
著者
林 衛 大瀧 慈 髙橋 博子 小山 美砂 森松 明希子 藤岡 毅 瀬川 嘉之 八巻 俊憲

科学技術社会論学会 第19回年次研究大会, 日程:2020年12月5日(土)~6日(日), 会場:遠隔会議システムによるオンライン開催
著者
白石 愛 吉村 芳弘 鄭 丞媛 辻 友里 嶋津 さゆり 若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.711-717, 2016 (Released:2016-04-26)
参考文献数
35
被引用文献数
1

【目的】高齢入院患者の口腔機能障害の実態ならびに、口腔機能障害とサルコペニア、低栄養との関連性を明らかにする。【方法】2013年6月より10月までに連続入院した65歳以上の患者108名(男性55名、女性53名、平均年齢80.5±6.8才)を対象とした横断研究。改定口腔アセスメントガイド(ROAG)を用いて口腔機能状態を評価し、サルコペニアや栄養状態との関連性を解析した。【結果】軽度の口腔機能障害を59人(54.6%)、中?重度の口腔機能障害を34人(31.5%)に認めた。ROAGスコアに関連する因子として、年齢、サルコペニアの有無、MNA-SFスコア、経口摂取の有無、FIM運動項目などが抽出された。【結論】多くの高齢入院患者に口腔機能障害を認め、口腔機能障害とサルコペニア、低栄養との関連が示唆された。ROAGは入院時口腔機能スクリーニングとして有用性があると考えられた。
著者
小林 佳乃子 Kobayashi Kanoko
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科
雑誌
現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
no.62, pp.55-72, 2016-03

This paper presents the issues of the social status of people with mental disabilities in the Edo era Japan by focusing on the examples of commutation of punishment and their social treatment upon such people's conducting criminal and other offences. The words which describe mental disabilities were classified into different kinds, namely ranshin, gumai and shukyo (which are similar to today's mentally incompetent, mentally deficient and ebrious state). Based on these words, there were some commutations of punishment when people with mental disabilities committed a serious crime. These commutations depended on the accused's social rank and pardon of the relatives of victims. There were also three other kinds of treatment for people with mental disabilities in the Edo era. These were not punishments, but the person was for example held captive or pulled down to a severe discriminatory status. People who fell under these treatments were split into these three types due to their personal situation. From the above certain issues arise, which will have to be addressed in further research. These include the relationship between the treatment of persons with mental disabilities and their social rank, gender and family ties.
著者
庵本 直矢 竹林 崇 池場 奈菜
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.204-213, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
25

我々は回復期の脳卒中後中等度から重度上肢麻痺患者5名に対し,ReoGo®-Jを用いた自主練習(以下,ロボット療法)とCI療法に準じた介入(以下,修正CI療法)を提供後,自宅退院1ヵ月後の麻痺手の機能と使用行動を観察した.その結果,介入前後では上肢機能と麻痺手の使用行動の改善が得られ,退院後の経過では,上肢機能や麻痺手の使用行動が維持されていた.これらの結果より,回復期脳卒中後の中等度から重度上肢麻痺に対しては,ロボット療法を活用しつつ修正CI療法を実施することで,効率的に機能改善や麻痺手の使用行動の改善が得られるだけでなく,退院後も麻痺手の機能や使用行動を維持できる可能性が示唆された.