著者
福田 有希子 廣岡 裕吏 小野 剛 小林 享夫 夏秋 啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.130-138, 2008-09-16
被引用文献数
1

2005年5月,東京都小笠原村父島で施設栽培されていたカカオの果実に,初め茶褐色〜暗褐色の不整病斑を生じ,のちに拡大して腐敗症状を呈する病害が観察された。その罹病部からはLasiodiplodia属菌が高率に分離され,分離菌を用いた接種試験により原病徴が再現され接種菌が再分離された。分離菌は,暗褐色から黒色の分生子殻内に,隔壁の無い側糸と,後に完熟すると2胞,暗褐色で縦縞模様をもつ分生子を形成することから,Lasiodiplodia theobromae (Pat.) Griffon & Maubl.と同定した。さらにrDNA内のITS領域を用いた分子系統解析の結果からも同定を裏付ける結果を得た。小笠原で商業的に栽培されているパッションフルーツ,パパイア,バナナ,マンゴーを用いた宿主範囲の検討では,パパイア,バナナ,マンゴーにおいて病原性が確認された。これまでカカオにおける本病害は日本において報告がないため,Lasiodiplodia果実腐敗病(英名 : Lasiodiplodia pod rot)と命名したい。
著者
小林 哲
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-12, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
31
被引用文献数
2

医療や教育サービスにおいて,サービス終了時に便益を享受することができず,その後しばらくして便益がもたらされることがしばしば存在する。このような現象は便益遅延性と呼ばれており,顧客満足の評価や顧客参加の在り様に大きな影響をもたらすことが指摘されている。しかし,このサービスにおける便益遅延性は,私たちにひとつの理論的な問題を提起する。便益遅延性がサービスの基本特性である生産と消費の同時性(不可分性)に反するというのがそれである。もし,サービスにおいて生産と消費が同時になされるのであれば,消費すなわち便益の享受が遅延することはない。一方,医療やサービスにおいて便益が本当に遅延するのであれば,それはサービスの基本特性である生産と消費の同時性に反することになり,この種の医療や教育は“サービスではない”とみなすこともできる。そこで,本稿では,サービスの基本特性に立ち返り,便益遅延性の発生メカニズムを探ることで,このような矛盾が生じる理由を明らかにし,サービス・マネジメントの新たな可能性について考察する。結論を先に述べるならば,医療や教育サービスにおける便益遅延性は,サービス・デリバリー(生産)と便益の享受(消費)との間に顧客資源が介在することによって生じる。さらに言えば,便益遅延性は,このような顧客資源介在型サービスの特徴のひとつに過ぎない。したがって,医療や教育サービスの成果を高めるには,便益遅延性のみならず,それをもたらす顧客資源介在型サービスの特徴を理解しマネジメントする必要がある。
著者
小林 敏勝
出版者
無機マテリアル学会
雑誌
Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan (ISSN:21854378)
巻号頁・発行日
vol.11, no.313, pp.371-376, 2004-11-01 (Released:2011-03-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
田口 智久 志賀 博 小林 義典 荒川 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.13-21, 2003

咀嚼運動の安定性の定量的評価に際し, グミゼリー咀嚼時の最適な分析区間を明らかにする目的で, 健常者20名にグミゼリーを主咀嚼側で20秒間咀嚼させ, 咀嚼開始後の第1サイクルから第30サイクルまでの30サイクルにおける咀嚼開始後の1サイクルごとに順次起点とした各連続10サイクル (第1~第21シリーズ) の運動経路と運動リズムの安定性について, シリーズ間で定量的に比較し, 以下の結論を得た.<BR>開口時側方成分, 閉口時側方成分, 垂直成分の各SD/OD (標準偏差を開口量で除した値) の平均値は, 開口時側方成分では, 第6シリーズ, 閉口時側方成分と垂直成分では, 第5シリーズで最小値を示した. 開口相時間, 閉口相時間, 咬合相時間, サイクルタイムの各変動係数の平均値は, 開口相時間とサイクルタイムでは, 第5シリーズ, 閉口相時間では, 第6シリーズ, 咬合相時間では, 第7シリーズで最小値を示した. また, 第5シリーズの各指標値は, 第6シリーズと第7シリーズの各指標値に近似した. これらのことから, グミゼリー咀嚼時の咀嚼運動は, 開始後の第5シリーズ, すなわち咀嚼開始後の第5サイクルからの10サイクルが最も安定し, 咀嚼運動の安定性の定量的評価のための最適な分析区間であることが示唆された.
著者
芦田 雪 檜森 弘一 舘林 大介 山田 遼太郎 小笠原 理紀 山田 崇史
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-95_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】伸張性収縮(Ecc)は他の収縮様式に比べ,効果的に筋肥大を誘引すると考えられている.ただし,その根拠となる報告の多くは,ヒトの随意運動を対象としており,収縮様式の違いによる運動単位の動員パターンの差異が,筋肥大効果に影響を及ぼす可能性を否定できない.一方,実験動物の骨格筋では,最大上刺激の神経-筋電気刺激(ES)を負荷することで,すべての筋線維が動員される.さらにESでは,刺激頻度により負荷量を調節することが可能である.そこで本研究では,刺激頻度の異なるESを用いて,収縮様式の違いが筋肥大効果に及ぼす影響を詳細に検討することを目的とした.【方法】Wistar系雄性ラットを等尺性収縮(Iso)群とEcc群に分け,さらにそれらを刺激頻度10 Hz(Iso-10,Ecc-10),30 Hz(Iso-30,Ecc-30),100 Hz(Iso-100,Ecc-100)の計6群に分けた.実験1では,ESトレーニングが筋量に及ぼす影響を検討するために,各群(n=5)のラット左後肢の下腿三頭筋に表面電極を貼付し,ES(2 s on/4 s off,5回×4セット)を2日に1回,3週間負荷した.なお,Iso群は足関節底背屈0°で,Ecc群は足関節を20°/sで背屈させながらESを負荷した.右後肢は,非ES側とした.実験2では,単回のESが筋タンパク質合成経路である mTORC1系に及ぼす影響を検討するために,各群(n=6)に実験1と同じ刺激条件のESを1回のみ負荷した.その6時間後に腓腹筋を採取し,mTORC1系の構成体であるp70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルを測定した.【結果】すべての刺激頻度において,ESによる発揮トルク及び力積はIso群に比べEcc群で高値を示した.体重で補正した腓腹筋の筋重量(MW/BW)は,Ecc-30,Iso-100,Ecc-100群において,非ES側と比較しES側で増大するとともに,Ecc-30およびIso-100群に比べEcc-100群で高値を示した.p70S6Kのリン酸化レベルは,30 Hzおよび100 Hzの刺激頻度において,Iso群と比較しEcc群で高値を示した.また,全ての個体における発揮トルク及び力積と,MW/BWの変化率,p70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルとの間には高い相関関係が認められた.【考察】本研究の結果,EccはIsoに比べ,筋に対して強い物理的ストレスが負荷されるため,タンパク合成経路であるmTORC1系がより活性化し,高い筋肥大効果が得られることが示された.また,この考えは,刺激頻度を変化させ,負荷強度の異なる群を複数設けたことにより,より明白に示された.【結論】筋肥大効果は,収縮様式の違いではなく,筋への物理的な負荷強度および負荷量により規定される.【倫理的配慮,説明と同意】本研究におけるすべての実験は,札幌医科大学動物実験委員会の承認を受け(承認番号:15-083)施設が定める規則に則り遂行した.
著者
小林 明夫
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.35-48, 1983-11-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
14

東北・上越新幹線は, オイルショック等の諸事清から, 着工以来11年を経て開業した。本稿は,積雪寒冷地での新幹線の高速走行を考慮した軌道, 基礎, けたの設計・施工, 長大橋りょうの架設方法の開発, 中スパン橋りょうの省力化工法の導入および開発, 急速施工法について述べた。
著者
松林 直 広山 夏生 森田 哲也 東 豊 児島 達美 玉井 一 長門 宏
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.519-524, 1996-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

原発性甲状腺機能低下症を伴ったACTH/LH欠損症の48歳の女性を経験した。患者は32歳時頃より、全身倦怠感、めまい、嘔気、不安感、悲哀感などを訴え、38歳時、当科関連N病院心療内科を受診し、不安、うつ状態を伴った自律神経失調症と診断された。夫婦関係が問題とされ、心理教育的アプローチが夫婦になされたが、症状の消失はなく、患者は頻回の入退院を繰り返した。平成5年、多彩な症状が持続していることから、内分泌疾患、特に下垂体疾患を疑い、関連検査を行ったところ、原発性甲状腺機能低下症を伴うACTH/LH欠損症が明らかとなり、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンの補償療法を行ったところ、症状の改善をみた。
著者
杉本 諭 三品 礼子 佐久間 博子 町田 明子 前田 晃宏 伊勢﨑 嘉則 丸谷 康平 工藤 紗希 室岡 修 大隈 統 小林 正宏 加藤 美香 小島 慎一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P1189, 2009

【目的】後出しジャンケンはレクリエーション活動において、しばしば行なわれる課題の1つである.先行研究において我々は、後出しジャンケンの成績がMini Mental State Examination(MMSE)や転倒経験の有無と関連していることを報告した.本研究の目的は、週2回の後出しジャンケンの介入効果について検討することである.【対象および方法】当院の通所リハサービス利用者および介護老人保健施設の通所・入所者のうち、本研究に同意の得られた高齢者42名を対象とした.性別は女性29名、男性13名、平均年齢は81.3歳であった.後出しジャンケンは、検者が刺激としてランダムに提示した「グー」・「チョキ」・「パー」に対し、指示に従って「あいこ」・「勝ち」・「負け」の何れかに該当するものを素早く出すという課題である.測定では30秒間の遂行回数を求め、「あいこ」→「勝ち」→「負け」→「負け」→「勝ち」→「あいこ」の順に2セットずつ施行し、2セットのうちの最大値をそれぞれの測定値とした.初回測定を行った後、ランダムに16名を選択して介入を行った.介入群に対しては、指示に従って該当するものを素早く出す練習を、5分間を1セットとして休憩をはさんで2セット行い、週2回1ヶ月間施行した.また、後出しジャンケンの遂行回数に加え、MMSE、Kohs立方体組み合わせテストを測定した.介入終了直後に対象全員に対して再測定を行い、介入前後の変化を介入群16名および対照群26名のそれぞれについて、対応のあるt検定を用いて分析した.【結果】介入群における介入前後の後出しジャンケン遂行回数は、「あいこ」は29.5回→30.6回、「勝ち」は18.3回→21.7回、「負け」は10.1回→13.0回と、「勝ち」および「負け」において介入後に有意に遂行回数が増加した.一方対照群では、「あいこ」は30.8回→31.2回、「勝ち」は20.0回→19.7回、「負け」は12.8回→12.4回と、何れにおいても有意な変化は見られなかった.MMSEおよびKohs立方体組み合わせテストについては、介入群ではMMSEが23.6点→23.8点、Kohsが57.6点→61.1点、対照群ではMMSEが25.5点→25.2点、Kohsが62.9点→64.9点と、何れの群においても有意な変化は見られなかった.【考察】以上の結果より、後出しジャンケン練習は、「勝ち」および「負け」すなわち提示された刺激を単に真似るのではなく、ジャンケンに対する既知概念に基づいて、刺激に対して適切に反応するような課題において介入効果が見られた.今回は短期間の介入であったためジャンケンの遂行回数にのみ変化が見られたが、今後更なる持続的介入を行い、他の異なる検査やADLなどへの影響について検討したい.
著者
高山 和喜 佐宗 章弘 姜 宗林 SISLIAN Jean
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

衝撃波の応用研究のハイライトは、衝撃圧縮を用いて通常の方法では不可能な高温を発生して、宇宙船の地球大気圏再突入を模擬できる状態をを発生することである。このとき生じる一万度を超える高温は宇宙船まわりにできる衝撃波背後の状態に相当し、空気中の酸素、窒素分子は解離し、解離してできた原子の一部は電離しこれを実在気体効果という。極超音速流れの実験的研究では、実在気体効果を再現して大気圏再突入の空気力学を実証することである。本研究は、トロント大学から移設した断面100mm×180mm衝撃波管の高圧部を化学量論比の酸水素混合気を満たし、その中で微小爆薬レーザー起爆してデトネーション波を発生して高温高圧気体を生成して入射衝撃波マッハ数20を達成して、ホログラフィー干渉計を用いて極超音速流れを定量的に観測する。得た結果を要約すれば:(1)無隔膜方式のデトネーション駆動衝撃波管を設計した。化学反応なしの状態で、無隔膜方式が非常によい衝撃波の再現性を示すことを明らかにした。また、数値解析的に、デトネーション波の衝突で急速開口弁が開口し衝撃波を駆動することを明らかにした。(2)微小爆薬のレーザー起爆でデトネーション波を発生する機構、DDTを実験的に検証した。また、デトネーション波の初生に及ぼす微小粒子の介在の効果を明らかにした。(3)二重露光有限干渉縞ホログラフィー干渉計法を用いた計測法を確立した。有限干渉縞をフーリエ縞解析して密度分布を定量的に計測するシステムを開発した。(4)研究の成果を、国際研究集会、第23回国際高速写真シンポジウム、第22回国際衝撃波シンポジウムで発表し、良い評価を得た。
著者
若林 奈津子 石黒 直子 葉山 愛弥 山中 寿 清水 悟 川島 眞
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.417-418, 2013-12-25

我々は2013年4月25日発行の本雑誌に発表した論文(若林奈津子ほか 東京女子医科大学雑誌 第83巻 第2号 86頁〜94頁)で、皮膚型結節性多発動脈炎23例(計24例中、1例は欠測)、リベド血管症11例、健常人コントロール16例で抗フォスファチジルセリン・プロトロンビン複合体(anti-PS/PT) IgM抗体を測定し、皮膚型結節性多発動脈炎におけるanti-PS/PT IgM抗体の関与の可能性について述べた。その後、皮膚型結節性多発動脈炎2例、健常人コントロール38例を追加し、皮膚型結節性多発動脈炎計25例、健常人コントロール計54例について再検討した結果、皮膚型結節性多発動脈炎と健常人コントロールの間でanti-PS/PT IgM抗体の値に有意差が得られたので、追加報告にて可及的速やかに報告する。,再検討の結果、皮膚型結節性多発動脈炎の25例中20例(80 %)でanti-PS/PT IgM抗体が陽性であり、健康人コントロールと比較して有意差(p < 0.05)をもって高値を示したことから、anti-PS/PT IgM抗体が皮膚型結節性多発動脈炎の発症機転において何らかの役割を担っていると考えた。一方、anti-PS/PT IgM抗体 はリベド血管症でも11例中5例(45 %)で陽性であり、1例では高値を示したことから、皮膚型結節性多発動脈炎とリベド血管症の一部の症例ではanti-PS/PT IgM抗体陽性という共通の基盤をもつことが示唆された。,以上より、皮膚型結節性多発動脈炎においては、リベド血管症でみられるような血栓形成が血管内皮障害をきたした結果、最終的に血管炎に発展することが推察され、全身型結節性多発動脈炎からは独立したclinical entityである可能性を考える。
著者
林 謙年 山口 以昌 川村 晋 榊原 信幸 伊藤 和男 岩田 直也
出版者
一般社団法人 日本燃焼学会
雑誌
日本燃焼学会誌 (ISSN:13471864)
巻号頁・発行日
vol.55, no.171, pp.21-26, 2013 (Released:2018-01-26)
参考文献数
2

City gas, which is mainly made from natural gas, has been widely recognized as clean fuel, and its demand is getting higher year by year in Japan. The natural gas is imported in the form of LNG from varied countries. The calorific value of the imported natural gas is usually lower than the Japanese city gas, therefore, gas companies adjust the calorific value of send-out city gas to the regulated value by adding LPG to the natural gas during the process of city gas production. We have developed a new, state-of-the-art, calorific value adjusting system, which operates in wide flow-rate range, more than four (4) times wider than a conventional system does. We report the outline of the newly developed system and its performance confirmed through a pilot-scale test, along with a short description of a typical process of city gas production and conventional methods of calorific value adjustment.
著者
小島 ひとみ 中塚 美帆 小林 和成
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.77-83, 2021-07-03 (Released:2021-08-04)
参考文献数
13

目的 岐阜県における後期高齢者医療制度被保険者のぎふ・すこやか健診(以下,健診)の特徴,及び健診の有用性を明らかにする。方法 岐阜県後期高齢者医療広域連合において,平成27年から平成29年までの3年間に蓄積された健康診査の結果169,216件分をデータベースとした。受診回数による比較をするため,平成27年度の健診受診時点の年齢が75歳以上の者53,662人(男性21,689人,女性31,973人)を分析の対象とした。健診受診者の基本属性,受診回数別に身長,体重,血圧,脂質検査,血糖検査,肝機能検査,問診項目等との比較検討を行った。次に,各種疾病の有無を目的変数として,性別に年齢を調整変数,受診回数を説明変数としたロジスティック回帰分析にてオッズ比を算出し,健診の有用性を検討した。結果 健診受診回数が増える程,血液データの代表値は基準値に近い傾向にあり,服薬や疾病罹患は管理できていた。生活習慣病の有無に対する受診回数のオッズ比は,男性の75歳以上85歳未満においては0.918(95%CI:0.852-0.989,p=0.024),糖尿病の有病に対する健診の受診回数のオッズ比は男女の75歳以上85歳未満,85歳以上おいて0.889(95%CI:0.842-0.989,p<0.001),0.898(95%CI:0.818-0.985,p=0.023),0.863(95%CI:0.822-0.906,p<0.001),0.914(95%CI:0.851-0.983,p=0.015)であった。結論 後期高齢者の健診受診者の特徴は,健診の受診回数が多い者程,服薬や疾病罹患は管理できており,医療管理下にあっても継続的に健診を受けることの有用性が示された。