著者
小川 真寛 澤田 辰徳 三木 有香里 林 依子 真下 高明
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.149-158, 2016-04-15

要旨:本研究の目的は回復期リハビリテーション病棟入院中の患者の能力から退院後の公共交通機関利用の可否を予測することにある.退院後の電車およびバス利用の有無を調べ,その有無で分けた2群間で入退院時の能力を比較した.ロジスティック回帰分析の結果,電車利用の予測に選択された入院時の因子は年齢とFIMの運動項目の合計スコアであった.バス利用の予測に選択された入院時の因子は年齢とFunctional Balance Scale(以下,FBS)であった.退院時の能力は電車およびバス両方でFBSのみが選択された.この知見を利用し公共交通機関の利用可能性がある対象者を早期より見定め,適切な外出手段が獲得されるようにアプローチする必要がある.
著者
小林 裕子 村田 晋太朗 永田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2018

【研究の背景と目的】<br><br> 平成29年告示の学習指導要領では,中学校家庭科において新たに「B衣食住の生活(5)生活を豊かにするための布を用いた製作」で「衣服等の再利用の方法」を扱うことになった。中学校学習指導要領解説技術・家庭編(2018)には「着用されなくなった衣服を他の衣類に作り直す,別の用途の物に作り替える」などが例として示されている。しかし,現在中学校で使用されている家庭科教科書(開隆堂・東京書籍・教育図書)の内,2冊はリフォーム・リメイク等の単語がイラスト付きで簡単に紹介されているのみ,1冊は古着を持ち寄り衣服や小物にリメイクしている団体の取り組みに関する内容であり,実践的で具体的な内容や方法は記載されていない。<br><br> 衣服等の再利用に関する研究として,高森(1999)や赤塚ら(2016)による「衣服等の再利用」に関する調査がある。中高生は衣服の再利用やリメイクに関心がない訳ではないが(赤塚ら2016),着用しなくなった衣服をリメイクする生徒は僅かである(高森1999)ことが分かっている。高等学校段階では消費生活やESDと関連づけた研究調査や実践があるが,中学校段階ではほとんど見当たらない。<br><br> そこで,中学校家庭科「衣服等の再利用の方法」の教材開発を目指し,本研究では中学生対象に「不要になった布製品の活用について」の質問紙調査を実施し,家庭で不要となっている布製品の実態や対処方法・リメイク経験や興味関心等について,中学生の実態を把握することとした。<br><br><br><br>【研究の方法】<br><br> 質問紙調査の内容は(1)家庭で不要になっている布製品の種類,(2)不用になった布製品の家庭での対処方法,(3)不要になった布製品を何かに作り替える(リメイク)ことへの関心度,(4)不要になった布製品を何かに作り替える(リメイク)ことの経験について,(5)何かに作り替えて(リメイク)みたい布製品の種類,(6)具体的なリメイクのアイデア(自由記述)である。<br><br> 2018年3月,兵庫県M市と大阪府S市の中学1・2年生422人(M市275人,S市147人)を対象に行った。<br><br><br><br>【結果】<br><br> (1)家庭で不要になっている布製品として,「Tシャツ(59.5%)」が最も多く,次いで「靴下(48.1%)」が家庭にあることがわかった。(2)不要になった布製品の家庭での対処方法は,「誰かにあげる・譲る(62.5%)」が最も多く,次いで「捨てる(59.5%)」となった。(3)要になった布製品のリメイクへの関心度は,「とてもある・少しある」と「あまりない・ない」がともに50.0%であった。(4)不要になった布製品のリメイク経験は「ある」の回答が31.3%,「ない」が68.7%であった。(5)リメイクしてみたい布製品は「Tシャツ(46.0%)」が最も多く,次いで「ジーンズ(41.5%)」,「タオル(36.7%)」,「ハンカチ(29.1%)」の順となった。<br><br><br><br>【考察と今後の課題】<br><br> 質問紙調査の(1)と(5)の結果から,家庭で最も不要になっている布製品であり,生徒が最もリメイクしてみたいと考えているものが「Tシャツ」であった。「Tシャツ」は,生徒が自宅から持参しやすく,リメイクに対して関心も高いことから,次期学習指導要領で新たに示された「衣服等の再利用の方法」を扱う授業の教材として適切であることが示唆された。<br><br> 今後は,不要になったTシャツをどのようにリメイクすることが中学生の発達段階に適し,かつ資質能力の育成に寄与するか,具体的なリメイクの方法を検討し教材化することが課題である。
著者
小林 宣男
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.181-191, 1981-03-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
70
被引用文献数
6 5

This article is concerned with the uses of chiral synthetic polymers as catalysts in asymmetric reactions. The polymer catalysts are classified into two groups : (a) polymers with chiral main chain; (b) polymers with chiral side chain. The asymmetric reactions discussed are hydrocyanation, addition of thiols to C=C, addition of methanol to C=C=O, hydrogenation, Michael reactions, phase-transfer reactions, hydrosilylation, and hydroformylation. The emphasis here will be on the polymer effects.
著者
原田 和雄 松川 正樹 吉野 正巳 犀川 政稔 佐藤 公法 林 慶一 長谷川 正
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.316-330, 2021 (Released:2021-10-05)
参考文献数
24

The research activities that scientists perform routinely were analyzed and divided into stages. The research process of inquiry-based science in school was developed on the basis of the results of the analysis of scientists’ research activities. Two possible approaches were considered in the research process of inquiry-based science. Pathway 1 starts from the first stage of the inquiry-based science, which is the stage of having interest, curiosity or questioning. Pathway 2 starts just from the stage of defining the problem after presentation of a problem to students from a teacher or an advisor. Pathways 1 and 2 are the same after the problem defining stage, because a concrete inquiry activity starts after defining the problem. The main stages after defining the problem are developing a strategy for problem solving, observations or experiments, summarization of results, discussion and reaching conclusion. The scientific ability to be developed at each stage of the inquiry-based science was defined on the basis of the activities of researchers at the corresponding stage of scientific research. The activity at each stage was analyzed and defined as “Science Activity” and “Remarks on the Activity” and the results were summarized.
著者
北爪 智哉 佐藤 武彦 林 正添
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.11, pp.2195-2198, 1985-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
4

Chiral amides, Nvhich are potentially biologically active, were prepared from both enantiousers of ethyl hydrogen 2 -alkyl-2-fluoro-malonatc. From the point of view of the moleculare design of fluorine-containing compounds having the biological activity, chiral N-(2-fluoro-3mercapto-2-methylpropionyl)proline was also prepared.
著者
北爪 智哉 佐藤 武彦 小林 匡 林 正添
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.11, pp.2126-2130, 1985-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
24
被引用文献数
7

分子内にフッ素原子を有するマロン酸ジエステル誘導体の不斉加水分解反応を行ない,光学活性なモノフルオロ化合物の合成中間体を生成させるための微生物学的変換を検討した。その結果,有機フッ素化学の領域における実用的な光学活性シントンとなりうる2-フルオロマロン酸モノエステル誘導体の両鏡像体を簡便な方法で多量に得ることができた。
著者
小林 多寿子
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.114-124, 2014-05-31 (Released:2017-09-22)
被引用文献数
2

質的調査データは、近年のデジタル技術発展による記録媒体の急速な変化や個人情報への配慮の高まりのもとでそのあつかい方が問われ、個人的記録と歴史的価値の問題、調査データの検証可能性や二次利用、二次分析を含む第三者のアクセスの問題、社会調査データそのもののリサーチ・ヘリテージ(調査遺産)としての価値やデータの管理保存の問題等に直面している。この現状をふまえて、質的調査データの管理・保存・公開の可能性を考え、質的調査法をより信頼性の高い社会学的研究法へ成長させていく方途を探るために、「質的調査データの管理・保存に関するアンケート」調査を2012年2月に実施した。この調査結果を社会学領域の回答者に照準して紹介し、質的調査データをめぐる現状とアーカイヴ化の可能性を考える。質的調査ではインタビューが中心的な手法であり、多様なパーソナル・ドキュメントが質的データとして併用されている実態や調査対象者への二段階の許諾プロセスという倫理観の変化があきらかになった。さらに公共財としての調査データという認識の必要性が指摘され、質的調査データの公共性の認識のもとに、データの学術的意義や社会的意味、歴史的価値を明らかにして調査データを保存管理するアーカイヴ・ルールの確立とアーカイヴ・システムの設立が求められている。
著者
小林 潔司 張 衛彬 吉川 和広
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.141-148, 1986-10-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

We present a dynamic model for the behavior of a developer who is assumed to be a profit taker. A conservation law in the housing market can be deduced by the classic calculus of variations, which explains spatial equilibrium of the housing market. We introduce the concept of infinitesimal transformations in the Lie group theory to describe the taste changes of households. By investigating invariant properties of dynamic model under infinitesimal transformations, the conservation law in the housing market is derived to explain invariant structure in the housing market under the taste changes of the households.
著者
小林 知嵩 内藤 健
出版者
日本シミュレーション学会
雑誌
日本シミュレーション学会論文誌 (ISSN:18835031)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.18-22, 2021 (Released:2021-05-25)
参考文献数
9

自然界に存在する生命分子や原子核分裂直後の粒子対のサイズ比(質量比)の必然性を解明するために,流体力学的な近似モデルを拡張した確率論的運動量保存則のモデル(Naitoh:J. of Physics, 2012)が提示された.このモデルに1次元空間でのテイラー展開を施した後に,新たな安定性概念(最弱の安定性である準安定性)を適用することで,対称および非対称なサイズ比(質量比)が共存する理由が定性的に解明された.従来,原子核分裂については,エネルギー保存則に対してなされてきたが,この新たなモデルは,3次元非定常の運動量保存則によるもので,ベクトル量(速度)も扱っており,空間次元が高いことが特徴となっており,スカラー量のエネルギー保存則と比べて,より詳細なメカニズムの解明が期待できる.著者は,更に,多次元のテイラー展開を導入して,拡張した式とすることで,生命・非生命の粒子のサイズ,質量比の頻度分布を,従来よりも正確に求めることができることを示してきた.(Kobayashi and Naitoh, JASSE, 2019)しかも,多次元のテイラー展開を施した後にあらわれる項の群を,表面力系,対流系,中間系の3種に分類することで,ウラン235の核分裂反応における原子核内部の対流の強さ(つまり,衝突させる中性子のエネルギーレベル)が,生成される原子核の質量分布に影響するメカニズムも解明してきた.本研究では,この理論を凝縮系核反応にも適用する.投入するエネルギーレベルが小さいことを元に,表面力系および中間系の2種類の項の群を用いて反応生成物の質量分布計算を行った結果,凝縮系核反応の反応生成物の質量分布について,ある程度説明することができた.
著者
園田 浩 園田 高明 小林 宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.10, pp.2051-2053, 1985-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2

Reactions of pentafluorophenyltrimethylsilane [1] with bis(2, 2'-bipyridine)copper(II)fluoride [2] were examined under various conditions. (Table 1) The reactions gave pentafluorobenzene [3] along with decafluorobiphenyl[4]The addition of benzaldehyde into the reaction mixture did not differ the results, giving no adduct of benzaldehyde. The addition of iodobenzene and copper powder yielded pentafluorobiphenyl [5] in addition to [3] while no [4] was produced at all. Without copper powder the reaction afforded the mixture of [3], [4], Cali and [5]. The choice of solvents affected the selectivity of products. These products were conceivably produced under mild conditions via pentafluorophenylcopper(II) [6] and -(I) [8] as illustrated in Scheme 1.
著者
関 復華 小林 直樹 渡辺 和子 伊藤 清隆 荒木 洋之助 石戸 良治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.10, pp.2040-2047, 1985-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
67
被引用文献数
3

2,3,5-トリ-O-ベンジル-D-リボフラノース[1]を石川試薬(ヘキサフルオロブロペンージエチルアミン)で処理することによって2,3,5-トリ-O-ベンジル-α-および-β-D-リボフラノシル=フルオリド[2α]および[2β]がそれぞれ21.4%および63.8%で得られた。[2α]あるいは[2β]とイソプロペニル=トリメチルシリル=エーテル[3]乏を微量の三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを触媒として反応させると両者とも高収率高選択的に(2,3,5-トリ-O-ベンジル-α-D-リボフラノシル)アセトン[4α]を与えた。[4α]は三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートと長時間処理すると[4β]に異性化し[4α]:[4β]=1:2.5の混合物を与えた。さらに[2β]と[1]あるいは2,3,5-トリ-O-ベンジル-1-O-トリメチルシリル-β-D-リボフラノース[6]とを三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを触媒として反応させることにより高収率で2,2ノ,3,3ノ,5,5'-ヘキサ-O-ベンジル-(β-D-リボフラノシル=β-D-リボフラノシド)[5β]を与えた。その他,関連した選択的リボフラノシル化反応について述べた。
著者
木林 悦子 鏡森 定信
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.145-153, 2002
被引用文献数
1

栄養疫学研究に役立てることを目的として, 20歳女子の食事によるタウリン摂取量と食品群別摂取量の関連より, 魚介類及びレバー摂取量を用いたタウリン摂取量の推定式の開発を試みた。さらに, タウリン摂取量の季節変動や日常の食事中タウリンの1日摂取量を求めるために必要な食事調査日数, 推定式の交差妥当性についても検討を行い, 以下の結論を得た。<br>1) 食事によるタウリン摂取量を従属変数とし, その他の食品群別摂取量 (動物性食品及び海藻類) を独立変数とする重回帰分析の結果, 82%が説明され, タウリン摂取量と魚介類摂取量の間には, 標準偏回帰係数0.60(<i>p</i><0.001), レバー摂取量との間には, 0.52(<i>p</i><0.001)で有意な関連が認められたが, その他の食品群については, 関連が認められなかった。<br>2) 食事によるタウリン摂取量を従属変数, 1日の魚介類別 (6分類) 摂取量及びレバー摂取量を独立変数とし, 夏 (6~7月) と冬 (12~1月) の食事調査結果をそれぞれについて重回帰分析し, 比較した結果, 夏と冬のいずれにおいてもタウリン摂取量と魚類摂取量, いか・たこ類摂取量の間に関連が認められたが, タウリン摂取量と貝類及びえび・かに類との間には, 冬においてのみ, レバー摂取量については, 夏においてのみ関連が認められた。<br>3) 日常の食事中タウリンの1日摂取量を算出するのに必要な食事調査日数は, 10%以下の誤差範囲で704日, 20%以下で176日であった。<br>4) 夏と冬の食事調査結果をもとに算出した1日の食事中タウリン摂取量を従属変数, 1日の魚介類及びレバー摂取量又は魚介類別及びレバー摂取量を独立変数として重回帰分析を行い, タウリン摂取量の推定式を検討した結果,"タウリン摂取量(mg/day)=1.909×魚類摂取量(g/day)+6.798×貝類摂取量(g/day)+2.867×その他魚介類摂取量(g/day)+22.95×レバー摂取量(g/day)+14.02"となった (決定係数が73.5%)。<br>以上, 魚類摂取量, 貝類摂取量, その他魚介類摂取量(えび・かに類, いか・たこ類, その他) 及びレバー摂取量から, タウリン摂取量の推定式は, 他の地域の対象者での交差妥当性の検討からも, 20~21歳女子学生において, タウリン摂取量推定の精度, 妥当性も高いものを得ることができた。また, 日常の食事中タウリンの1日摂取量を求めるには, 10%以下の誤差範囲で704日, 20%以下の誤差範囲で176日以上の食事調査をもとに算出する必要性が示唆された。今後, さらに幅広い年齢層や男性においても活用できる食事中タウリン摂取量の推定式の検討を考えている。
著者
倉島 一喜 鍵山 奈保 石黒 卓 春日 啓介 森本 康弘 小澤 亮太 高野 賢治 磯野 泰輔 西田 隆 河手 絵理子 細田 千晶 小林 洋一 高久 洋太郎 高柳 昇 柳沢 勉
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.483-489, 2020-07-20 (Released:2021-02-07)
参考文献数
19
被引用文献数
4

現在新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では50 歳以上で低酸素血症を認めた段階で他疾患に適応のある抗ウイルス薬の投与が推奨されている.しかし治療が必要となる重症化因子についての検討は少ない.今回COVID-19 により入院した患者で抗ウイルス薬による治療を必要とした群と経過観察のみで改善した群を後方視的に検討し,抗ウイルス薬が必要となる臨床所見について検討した.まず当院に入院した49 例のCOVID-19 感染患者について,A 群:無症候性病原体保有者,B 群:症状あり,ウイルス肺炎像なし,C 群:ウイルス肺炎像あり,呼吸不全なし,D 群:ウイルス肺炎像あり,呼吸不全あり,に分類した.C 群は無治療で軽快し,D 群では抗ウイルス薬治療が行われた.重症度と相関した背景因子と症状は年齢,合併症の有無,喫煙歴,発熱,下痢であったが,治療を必要としたD 群に特徴的な所見は喫煙歴のみであった.次に重症度と相関した臨床検査値はPaO2,リンパ球数,D-dimer,AST,CK,LDH,CRP,PCT,ferritin であったが,多変量解析で治療必要群と有意に相関した検査値はリンパ球数,CRP,ferritin となった.両群を区別するカットオフ値をROC 曲線より求めると,リンパ球数1,200/μL 以下,CRP 2.38mg/dL 以上,ferritin 394ng/mL 以上となった.画像所見では,抗ウイルス薬治療を要しなかったC 群と要したD 群とを最もよく区別する所見は浸潤影の有無だった.以上よりこれらの重症化因子は呼吸不全への進展を考慮すべき臨床指標になると思われた.また喫煙歴,リンパ球数1,200/μL 以下,CRP 2.5mg/dL 以上,ferritin 400ng/mL 以上,CT 上の浸潤影の5 つをリスク因子として選ぶと発症からPCR 陰性化までの日数と強い相関を示した(p<0.0001).
著者
原田 吉通 冨野 真悟 小川 和久 和田 忠子 森 進一郎 小林 繁 清水 徹治 久保 博英
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.13-18, 1989-02-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1

昭和53年から昭和61年までの9年間に放射線学実習で撮影された平均年齢24.3歳の男女1,353人の全顎デンタルX線写真のうち小臼歯部を目的としたものと大臼歯部を目的としたもの及びパノラマX線写真を使用し, 下顎第一大臼歯の3根の出現頻度について調査した。結果は次の通りである。1. 3根は右側歯数1,163本中240本 (20.6%), 左側歯数1,168本中200本 (17.1%) であった。2. デンタルX線写真による歯根数の確認は, 小臼歯部目的の写真のみで3根の確認できたもの274本 (11.8%), 小臼歯部ならびに大臼歯部目的の写真のいずれでも確認できたもの124本 (5.3%), 大臼歯部目的の写真のみで確認できたもの42本 (1.8%) であった。3. パノラマX線写真で3根の確認できたものは, 440本中70本 (15.9%) であった。4. 左右両側に第一大臼歯の存在している人1,070人のうち, 両側共3根の人は136人 (12.7%), 片側のみ3根の人は127人 (11.9%) であった。
著者
木林 悦子 鏡森 定信
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.145-153, 2002-06-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

栄養疫学研究に役立てることを目的として, 20歳女子の食事によるタウリン摂取量と食品群別摂取量の関連より, 魚介類及びレバー摂取量を用いたタウリン摂取量の推定式の開発を試みた。さらに, タウリン摂取量の季節変動や日常の食事中タウリンの1日摂取量を求めるために必要な食事調査日数, 推定式の交差妥当性についても検討を行い, 以下の結論を得た。1) 食事によるタウリン摂取量を従属変数とし, その他の食品群別摂取量 (動物性食品及び海藻類) を独立変数とする重回帰分析の結果, 82%が説明され, タウリン摂取量と魚介類摂取量の間には, 標準偏回帰係数0.60(p<0.001), レバー摂取量との間には, 0.52(p<0.001)で有意な関連が認められたが, その他の食品群については, 関連が認められなかった。2) 食事によるタウリン摂取量を従属変数, 1日の魚介類別 (6分類) 摂取量及びレバー摂取量を独立変数とし, 夏 (6~7月) と冬 (12~1月) の食事調査結果をそれぞれについて重回帰分析し, 比較した結果, 夏と冬のいずれにおいてもタウリン摂取量と魚類摂取量, いか・たこ類摂取量の間に関連が認められたが, タウリン摂取量と貝類及びえび・かに類との間には, 冬においてのみ, レバー摂取量については, 夏においてのみ関連が認められた。3) 日常の食事中タウリンの1日摂取量を算出するのに必要な食事調査日数は, 10%以下の誤差範囲で704日, 20%以下で176日であった。4) 夏と冬の食事調査結果をもとに算出した1日の食事中タウリン摂取量を従属変数, 1日の魚介類及びレバー摂取量又は魚介類別及びレバー摂取量を独立変数として重回帰分析を行い, タウリン摂取量の推定式を検討した結果,“タウリン摂取量(mg/day)=1.909×魚類摂取量(g/day)+6.798×貝類摂取量(g/day)+2.867×その他魚介類摂取量(g/day)+22.95×レバー摂取量(g/day)+14.02”となった (決定係数が73.5%)。以上, 魚類摂取量, 貝類摂取量, その他魚介類摂取量(えび・かに類, いか・たこ類, その他) 及びレバー摂取量から, タウリン摂取量の推定式は, 他の地域の対象者での交差妥当性の検討からも, 20~21歳女子学生において, タウリン摂取量推定の精度, 妥当性も高いものを得ることができた。また, 日常の食事中タウリンの1日摂取量を求めるには, 10%以下の誤差範囲で704日, 20%以下の誤差範囲で176日以上の食事調査をもとに算出する必要性が示唆された。今後, さらに幅広い年齢層や男性においても活用できる食事中タウリン摂取量の推定式の検討を考えている。