著者
清島 亮 小柳 和夫 中川 基人 永瀬 剛司 岡林 剛史 田渕 悟 小澤 壯治 金井 歳雄
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.990-995, 2010-09-01 (Released:2011-12-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

食道癌根治術後の難治性頻脈性不整脈は頻度の高い合併症の一つである.我々は食道癌術後上室性頻脈性不整脈に対して短時間作用型β1選択的遮断薬(塩酸ランジオロール)を投与し有効に作用した5症例を経験した.いずれも術前の心電図や心臓超音波検査で異常は認めなかった.頻脈性不整脈は術後2ないし3日目に発生した.塩酸ランジオロール投与は2例目まではジギタリス製剤もしくは塩酸ベラパミル投与の無効症例に,その後の3例は第1選択として使用した.投与開始量は,1例目は20 μg/kg/分,2例目からは2 μg/kg/分で,適宜増減した.脈拍数はいずれの症例も塩酸ランジオロール開始数分後に減少し,投与中に収縮期血圧は低下しなかった.塩酸ランジオロールは半減期が短く調節性に優れており,食道癌術後の頻脈性不整脈に対しても有用であると考えられた.
著者
佃 為成 酒井 要 小林 勝 橋本 信一 羽田 敏夫
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.433-456, 1989-12-25

北部フォッサマグナの糸魚川・静岡構造線に長野盆地西縁断層(善光寺地震断層系)及び千曲川構造線のそれぞれの延長がぶつかる地域において発生した1986年12月30日の地震の震源パラメータや余震活動および先駆的活動の特徴,テクトニクスとの関連について調べた.震源域直上の1臨時観測点を含む近傍の観測点のデータを用いて余震の高精度震源決定を行い,さらに本震の震源についても定常観測点に基づく結果を補正した.この際,深発地震データから推定した走時の観測点補正時間を導入した.本震の深さは5.5kmで,その近傍に集中した余震(狭義の余震)の発生域はN15~20°Wの走向をもち,僅かに西に傾いた,ほぼ垂直な面上にあり,水平に6km,深さ方向に4kmの広さに収まる.この余震分布は初動の押し引きから得られた断層面の一つ(走向N19°W,傾斜角73°,すべり角26°)にほぼ一致する.この狭義の余震の外に点在する広義の余震は東西,南北にそれぞれ20kmの広さに分布する.気象庁の観測点の変位地震計記録の初動P波から推定した震源断層の破壊は,本震の震源付近から,余震が密集している南の領域へ向けて3km/sの速度で伝播した.その全面積は6km2,平均的な変位は75cm.変位の立ち上がり時間は0.5sである.また,地震モーメントは1.3×1024dyne・cm,応力降下は220barである.本震の破壊領域は既存の断層上にはなかったが,広義の余震は,2本の新第三紀層中の断層(小谷-中山断層,持京断層)が会合する地点,両断層に画された東南側の領域一帯,北部の両断層に挾まれた地域や,孤立的に東部の一地点に分布する.活動の範囲は時間とともに,拡大縮小の変化が認められた.最大余震はM3.5(広義の余震)で,本震の大きさに比べ,極めて小さく,余震回数も多くはなかったが,その減衰の定数はp=1で,通常と変わらない.この地震に先行した微小地震活動があった.その震源域は広義の余震の一つのクラスターとほぼ一致する.また,周囲半径100km以内の地震活動が1~2年前から1年後にかけて活発であった.直前の5~9日前には,飛騨山地を隔てた跡津川断層でも,目立った活動があった.大町市付近の系魚川・静岡構造線に沿った地域には,過去にも度々M6程度の地震が発生している.その中で1958年の地震の震央は,今回の地震の活動域にある.このときにも跡津川断層の活動が連動した(1858年飛越地震,M6.9).糸魚川・静岡構造線等を含む広域のネオテクトニクスの枠組みのなかに今回の地震の活動域が位置づけられるとともに,小規模の地殻ブロックの役割も注目される.
著者
農林省 編
出版者
朝陽会
巻号頁・発行日
vol.第七巻, 1934
著者
寺本 昌弘 曽根 岳大 高田 耕平 小縣 開 齋藤 啓太 和泉 拓野 高野 昂佑 長尾 茂輝 岡田 陽介 田地 規朗 河村 俊邦 加藤 章一郎 前川 隆彰 小林 彩香 小林 真一 佐藤 謙 木村 文彦
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.598-604, 2020 (Released:2020-07-03)
参考文献数
18

2011年1月から2018年2月までに再発indolent B-cell lymphomaに対し,当科で施行したrituximab併用bendamustine(BR)療法の治療成績を後方視的に解析した。病型は濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma, FL)42例(67%)が多く,FL症例で治療を完遂した群の無増悪生存期間(progression free survival, PFS)の中央値は未到達であった。また治療開始から5年間のCD4陽性T細胞数を解析したところ,長期にわたり200/µl前後を推移する症例が多かった。BR療法は再発indolent B-cell lymphomaに対し有用な治療であり,特にFLにおいてはBR療法を完遂することがPFSの改善に重要である。また治療後は細胞性免疫不全が顕在化するため,5年程度は感染症の発症に注意するべきかもしれない。
著者
林田 道昭 土居 悟 井上 寿茂 高松 勇 豊島 協一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-8, 1993-01-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
3

DSCG吸入やテオフィリンRTC療法でコントロールできない6歳以上の慢性中〜重症喘息児78例に対し, 平均4.2±2.4年 (0.5〜10年) 間BDI療法を行った。有効性は1年後61.1%, 3年後89.5%と経年的に増加した。5年以上の長期投与で身長や副腎皮質機能 (早朝コーチゾール, rapid ACTHテスト) への抑制はみられなかった。しかし, 小児への安全性は, まだ確立されたとはいえない。さらに, 無効例や導入初期の喘息悪化による死亡例がみられ, 更なる治療法の開発が必要である。
著者
小林 直弥
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
no.43, pp.27-38, 2006

日本における「舞(まい)」の始源的要素の中には、常に為政者(皇帝・天皇)への「服従」とシャーマニズムを伴う「舞」行為が存在する。その中でもとりわけ特異な存在が「八〓舞」である。この「舞」は、古代中国をその源とし、韓国における「雅楽」においては、中心的な役割を果たしている。が、8列8人、総勢64名による「八〓舞」は、日本では『日本書紀』に記載されるものの、宮中に現存する「雅(舞)楽」には何故か、その存在がない。そこには、日本が中国や朝鮮半島からの外来芸能や文化から、いよいよ独自の文化を形成する方向へ進む、歴史の流れが隠されており、また、儒教思想と仏教思想のどちらを国家が選択したかなど、さまざまな歴史的背景も読み取れるのである。本研究では、わずかな記述のみに残る「八〓舞」を中心に、日本の宮廷楽舞の始源的要素について考察したものである。
著者
見並 史彬 小林 幹門 伊藤 孝行
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第70回, no.コンピュータと人間社会, pp.639-640, 2008-03-13
著者
関根 康正 杉本 良男 永ノ尾 信悟 松井 健 小林 勝 三尾 稔
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1990年代以降のインド社会において宗教対立が深刻化しているが、それが経済自由化と平行現象であることに注目した。本研究は、近年のグローバリゼーションの進展と「宗教空間」の変容をどのように対応づけられるのかを、具体的な日常現場の調査を通じて明らかにすることをめざした。この基礎研究によって、日常現場から見えてくるHindu Nationalistとは言えない「普通」の人々の宗教実践から、政治的な場やメディアなどでの「宗教対立」の言説を、正確に相対化し、「宗教対立」問題を見直すのである。明らかになってきたことは、生活現場の社会環境の安定性の度合が、「宗教対立」現象に関与的な主要因子である点である。要するに、それが不安定になれば上から「宗教対立」の言説に惹かれて不安の由来をそこに読みとってしまう「偽りの投影」に陥りやすくなるのである。逆に、安定性が相対的高い村落部では現今の「対立」傾向を知りつつも生活の場での「共存・融和」を優先させている現実が明らかになった。各地の現地調査から共通して見出された重大な事実は、そうした村落部でおいてさえ、都市部ではなおさらであるが、宗教のパッケージ化が進んできていることである。これは、生活文化におけるローカルな知識の急速な喪失を意味し、それと入れ替わるように生活知識のパッケージ化が進行し、宗教面においてもしかりである。宗教版グローバル・スタンダードの浸透現象である。これは、「宗教対立」を起こしやすい環境を整えることにもなる。その意味で、私達が注目した宗教の裾野や周辺現象(スーフィー聖者廟、女神信仰、「歩道寺院」、村落寺院、地方的巡礼体系、部族的社会様態など)への関心とそれに関する詳細な実態報告は、それ自体パッケージ化やスタンダード化に抗するベクトルをもつものであり、そうしたローカルな場所に蓄積されてきた知恵を自覚的に再発見する環境づくりを整備することが、「宗教対立」という言説主導の擬態的現実構築を阻止し解体のためにはきわめて重要であることが明らかになった。

1 0 0 0 OA 妙行日課

著者
林鳳宣 著
出版者
平楽寺書店
巻号頁・発行日
1916
著者
有波 裕貴 赤林 伸一 坂口 淳
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.81-84, 2018

<p>本報では沖縄電力を除く一般電気事業者9社を対象として発電設備構成と電気料金プランを調査する。それぞれの一般電気事業者の発電構成と供給電力量から時刻別一次エネルギー消費原単位の算出を行う。原発稼働時及び停止時の一次エネルギー消費原単位と電気料金の分析を行い、昼間・夜間電力の利用による一次エネルギー削減効果及び金銭的インセンティブの妥当性の検討を行う。</p>
著者
足立 明彦 小林 英一 渡邉 義之 米山サーネキー 智子 早坂 典弘 鈴木 誉 岡本 美孝 佐伯 直勝
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.597-603, 2011-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
13
被引用文献数
3 8

CBS(carotid blowout syndrome)は,頭頚部腫瘍に対する放射線治療後に,遅発性に動脈破裂をきたす致死的疾患として知られている.今回,放射線治療後36年および2年を経て大量出血で発症し,血管内治療で良好な結果が得られた2例を報告する.1例目は,瘤内塞栓をしたものの,2週間後に再出血し,母動脈を閉塞した.2例目は,虚血耐性を確認できたため,同様にtrappingにて止血を得た.大量出血で発症するCBSは緊急の止血処置を要する.将来的には膜付きステントに期待が寄せられるが,現時点では閉塞試験が不可能な際にも,救命目的に母動脈閉塞を要する場面は少なくない.その際,照射野を外してのendovascular trappingは永続的止血を得る確実な方法であり,有効と考えられた.
著者
舟橋 春彦 小林 眞理子 竹内 三郎 Alexander Clemmens
出版者
日本物理教育学会第36回物理教育研究大会実行委員会
雑誌
日本物理教育学会 第36回物理教育研究大会 講演予稿集
巻号頁・発行日
pp.140-141, 2019-08-08

2019年度日本物理教育学会年会、第36回物理教育研究大会 : 2019年8月8日(木) - 9日(金) 北星学園大学。
著者
林屋,均
出版者
日本AEM学会
雑誌
日本AEM学会誌
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, 2002-06-10

Reversed field pinch (RFP) plasmas have been formed in a TS-3 device and an ohmic heating current drive was applied to support the plasma. In such condition, it was found that the direction of the toroidal field induced by the plasma current naturally inversed. A magnetic structure was finally formed like the spherical tokamak (ST) in which the direction of the toridal field induced by the plasma current is the same as the field generated by the external coil. To understand the dynamical change of the magnetic structure in this process, the toroidal field distributions, safety factor profiles and the profiles of plasma pressure are shown. All of these results indicate the transition phenomena of the magnetic structure from REP to low q ST. This phenomenon is also consistent with the latest report from another organization (Himeji Institute of Technology).
著者
槇原 博史 四方 賢一 国富 三絵 土山 芳徳 四方 賢一 山地 浩明 林 佳子 槙野 博史
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

腎組織へのマクロファージの浸潤は、白血球表面に発現する細胞接着分子が糸球体と間質の小静脈の内皮細胞に発現するICAM-1やセレクチンなどの細胞接着分子と結合することによっておこる。本研究では、糸球体腎炎や糖尿病性腎症の腎組織における細胞接着分子発現のメカニズムを明らかにするとともに、これらの細胞接着分子の結合を阻害してマクロファージの浸潤を抑制する新しい腎疾患治療法(抗接着分子療法)の開発を目指した。本研究の結果、1)糸球体腎炎および糖尿病性腎症患者の腎組織にはICAM-1、E-セレクチン、P-セレクチンが糸球体と間質に発現し、マクロファージやリンパ球の浸潤を誘導していることを示した。2)糸球体過剰濾過により糸球体内皮細胞にICAM-1の発現が誘導され、マクロファージの浸潤を誘導することを示した。3)尿細管上皮細胞に存在するL-selectinのリガンドが尿細管障害にともなって間質の小静脈壁に移動し、マクロファージに発現するL-selectinと結合することによって間質へのマクロファージの浸潤を誘導するというユニークなメカニズムを明らかにした。さらに、このL-セレクチンのリガンドの一つがsulfatideであることを示した。4)L-およびP-セレクチンのリガンドであるsulfatideを投与することにより、腎間質への単核球浸潤と組織障害が抑制できることを示した。5)prostaglandin I2がICAM-1の発現を抑制することによってラットの半月体形成性腎炎に対する治療効果を示すことを示した。これらの結果より、ICAM-1やP-およびL-selectinが腎組織へのマクロファージとリンパ球の浸潤に重要な役割を果たしており、接着分子の結合を阻害することによって糸球体および間質への単核球の浸潤を抑制できることが明らかになるとともに、腎疾患に対する抗接着分子療法の臨床応用の可能性が示された。
著者
林 誠二 村上 正吾 徐 開欽
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地球環境シンポジウム講演論文集 (ISSN:18848419)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.135-141, 2007-08-02 (Released:2011-06-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

To evaluate the flood protection effect of the conversion of polders to retarding basin around the Dongting Lake in the middle region of the Changjiang River, China, we applied the integrated watershed hydrological model using gauged daily precipitation data of 1998 when the second largest flood occurred in the basin in the last century. While the estimated storage capacity of the Dongting Lake increased 11.5×109 m3 by the conversion of polders in comparison with the estimated capacity at the flood period in 1998 at the average water level of 35.0 m, the simulated daily average water levels of the lake showed that the protection of the flood was impossible by only increasing capacity in the confluence between the Changjiang mainstream and the Dongting Lake in case of 1998 flood. The model also simulated that the flood protection was fully achieved at the confluence by making the volume diverging from the Changjiang mainstream to the Dongting lake increase with the diverging ratio at 1950s under the appropriate discharge control by the Three Gorges Dam. These results suggest that “return land to lake” policy around the Dongting Lake probably brings the best flood protection effect when the increased capacity of the lake uses for the control of the water level in the Jinjiang section of the Changjiang mainstream.

1 0 0 0 OA 胆嚢結核の1例

著者
吉武 明弘 金井 歳雄 高林 司 中川 基人 川野 幸夫 向山 小百合 鳥海 史樹
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1415-1418, 2001 (Released:2011-06-08)
参考文献数
9

症例は73歳の男性. 主訴は右季肋部痛. 画像検査で胆嚢底部の著しい拡張と胆嚢結石を認めたため, 開腹手術となった. 術中所見では, 胆嚢体部のくびれと底部の著しい拡張と腹壁への浸潤を認めたため, 腹直筋の合併切除を伴う胆嚢摘出術を施行した. 底部の内溶液は米のとぎ汁状で, 培養検査で結核菌が証明された. 術後1年間の抗結核剤の投与を行った. 本症はきわめてまれであるが, 結核を疑うことが診断に結びついた.