著者
三浦 麻子 小林 哲郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.123-132, 2016-11-30 (Released:2016-11-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

This study focuses on “satisficing” (answering behaviors in which participants do not devote appropriate attentional resources to the survey (Krosnick, 1991)) in an online survey and aims to investigate, via various indices, to what extent these behaviors are observed among students whose participation was solicited by the researchers in their universities. This study also aims to explore effective techniques to detect individuals who show satisficing tendencies as efficiently and accurately as possible. Online surveys were carried out at nine universities. Generally speaking, the predictive capability of various types of detection indices was not high. Though direct comparison with online survey panels was impossible because of differences in measurement methodology, the satisficing tendencies of university students were generally low. Our findings show that when using university students as samples for a study, researchers need not be “too intent” on detecting satisficing tendencies, and that it was more important to control the answering environment, depending on the content of the survey.
著者
林部 均
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.160, pp.1-28, 2010-12-28

藤原京は,わが国はじめての条坊制を導入した都城といわれている。そして,その造営にあたっては,複雑な経過があったことが,『日本書紀』の記述や近年の発掘調査から明らかとなりつつある。ここでは,条坊制のもっとも基本となる要素である条坊がいつ施工されたのかについて,具体的な発掘調査をもとに検討を加えた。その結果,もっとも遡る条坊施工から,もっとも新しい条坊施工まで20~30年の年代幅があることが明らかとなった。もっとも遡る条坊施工は,天武5年(676)の天武による「新城」の造営に対応することは問題ないとして,もっとも新しく施工された条坊がどういった性格のものであるのかをあらためて検討した。それは,もっとも新しく施工された条坊の施工年代が,明らかに藤原宮期まで下がるからである。この事実について,藤原京は大きな都城であるから単なる造営段階の工程差とも解釈は可能であろう。しかし,ここでは,あらためて藤原京の造営過程,そして,発掘調査で確認される実態としての藤原京を検討していくなかで,大宝元年(701)に制定・公布された大宝令による改作・再整備の可能性を指摘した。それは,もともと王宮・王都のかたちには,その時々の支配システムが如実に反映されているという考古学からの王宮・王都研究の基本原則にもとづく。この原則にたつかぎり,藤原京は天武・持統朝の造営であり,持統3年(689)に班賜された浄御原令の政治形態を反映した都とみなくてはならない。そして,大宝元年の大宝令の制定・公布により,もともとから存在する藤原京と新しい法令との間に齟齬が生じることとなり,その対応策として,改作・再整備がおこなわれたと考えた。また,『続日本紀』慶雲元年(704)の記事も,そのような文脈の中においてはじめて解釈が可能ではないかと考えた。いずれにしても,これまでの藤原京の研究は,大宝令を前提に,その京域などの研究が進められてきた。しかし,藤原京の造営は,それを遡ることは確実であり,その前提こそ見直さなければならないのではないかと問題提起をおこなった。
著者
永田 章人 小林 直樹 米澤 明憲
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
日本ソフトウェア科学会大会講演論文集 日本ソフトウェア科学会第20回記念大会 (ISSN:13493515)
巻号頁・発行日
pp.7, 2003 (Released:2003-12-17)

型付き言語MLにおけるメモリ管理手法として,リージョン推論に基づく方式がTofteらによって提案,実装されている.この手法では,通常のMLの型システムにメモリ情報(リージョン)を付加して拡張した型システムに基づいて型推論を行うことで,各オブジェクトの生存区間を推定し,メモリの解放・獲得のためのコードをコンパイル時に挿入する.リージョンに基づくメモリ管理は,ガーベジコレクションに比べて早期にオブジェクトを解放でき,また,参照カウントによるメモリ管理方式に比べて実行時のオーバーヘッドが少ない.しかしながら,リージョン推論はMLの静的な型推論の拡張であるため,他の言語,特にSchemeのように動的に型付けされた言語に適用できるかどうかは自明でなかった.本研究では,CartwrightらのSoft typeとリージョン付き型システムとを統合することにより,動的型付き言語に対してもリージョン推論に基づくメモリ管理が行なえることを示す.
著者
吉田 由美 安齋 ひとみ 糸井 志津乃 林 美奈子 風間 眞理 刀根 洋子 堤 千鶴子 奈良 雅之 鈴木 祐子 川田 智惠子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.277-287, 2018 (Released:2018-06-29)
参考文献数
36

目的 本研究では,医療機関を活動の場とするがんピアサポーターへ行われている支援と必要としている支援について明らかにすることを目的とする。方法 対象は,がん患者会団体からがんピアサポーター活動中の研究参加候補者の紹介を受け,研究参加への同意が得られたがんピアサポーター10人である。質的記述的研究方法により,インタビューガイドを用いたインタビューを2014年7月から10月に実施した。逐語録よりコードを抽出し,サブカテゴリー化,カテゴリー化した。得られた結果を研究参加者に確認し内容の確実性を高めた。本研究は目白大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。結果 研究参加者は40歳代から70歳代の男性2人,女性8人の計10人であり,医療機関でがん患者や家族の個別相談,電話相談,がんサロン活動を行っているがんピアサポーターであった。医療機関を活動の場とするがんピアサポーターへ行われている支援として,4つのカテゴリー【がんピアサポーター同士での学び合いと支え合い】【利用者から得る学びと元気】【がんピアサポーターの自己研鑚】【病院と行政からの協力】が生成された。がんピアサポーターが必要としている支援として,7つのカテゴリー【がんピアサポーター同士の学びと支えの環境】【がんピアサポートに関する学習】【確かで最新の情報】【社会のがんに関する理解と協力】【活動や患者会団体に対する経済的支援】【がんピアサポート活動のしくみの改善】【がんピアサポ—ター養成講座の質保証】が生成された。結論 がんピアサポーターへ行われている支援として,がんピアサポーター同士が相互に支援し合い,利用者から学びと元気を獲得し,自己研鑽し,周囲からの協力を得ていた。必要な支援として,がんピアサポーター同士がさらに向上していくための学びの場と支える環境,活動を支える確かで最新の情報を求めていた。また,相談等の場面で対処困難な場合もあり,病院など周囲からの助言や情緒的な支援を必要としていた。社会のがんに関する理解と協力,活動や患者団体に対する経済的支援,病院におけるがんピアサポーター配置の制度化やがんピアサポーター養成講座の質保証など多面的な支援が望まれていた。医療機関を活動の場とするがんピアサポーターへの支援はまだ十分ではなく,上述のような,さらなる支援の必要性が明らかになった。
著者
徳田 恵一 益子 貴史 小林 隆夫 今井 聖
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.192-200, 1997-03-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
2

動的特徴 (音声のデルタ及びデルタデルタパラメータを含む混合連続分布HMMから音声パラメータ列を生成するための高速アルゴリズムを提案する。ここでは, 尤度最大の意味で最適な音声パラメータ列を生成することを考え, この問題を現実的な演算量で解くため, 適応フィルタリングにおけるRLSアルゴリズムと類似の手法を用いて高速アルゴリズムを導出した。また, 提案アルゴリズムにより, 静的及び動的特徴の統計情報(平均及び共分散)を反映した音声パラメータ列の生成が可能となることを例によって示すと共に, 提案アルゴリズムの音声の規則合成への応用について考察を加えている。
著者
千葉 剛 小林 悦子 佐藤 陽子 井出 和希 池谷 怜 山田 浩 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.234-240, 2017-10-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
8
被引用文献数
3

健康食品の利用が原因と思われる健康被害の事例において,保健所を介して厚生労働省へ報告が上がってくるのは年間20件程度しかない.その原因を明らかにするために,消費者(調査1:44,649名,調査2:3,000名),医師・薬剤師(各500名)を対象にアンケート調査を実施した.2016年の一年間に健康食品の利用が原因と思われる体調不良を経験した消費者は17%いたが,保健所に連絡した人はそのうちの11%のみであった.保健所に連絡しなかった理由は「報告するほどの被害ではなかったから」が最も多かった.2016年の一年間に患者から健康食品の利用が原因と思われる健康被害の相談を受けたことがある医師は7%,薬剤師は4%であった.保健所に報告したのは医師,薬剤師ともに6%のみであった.保健所に報告しなかった理由は「健康食品が原因と断定できなかったから」が最も多かった.
著者
菊池 将司 林 則夫 鑓田 和真 坂田 梢 氏田 浩一 松田 悟志 手塚 雄一
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1169-1176, 2016

<p>During the arterial phase acquisition of Gd-EOB-DTPA examinations, use of a small volume of the Gd-EOB-DTPA may make it difficult the encoding center of the k-space, and produce blurring. The previous studies revealed the encoding technique of the k-space was one of the most important reasons. However, there is no report to discuss the reasons with quantitative evaluations. The purpose of this study was to quantitatively evaluate the characteristics of the artifacts using different k-space encoding techniques (centric-view ordering (CVO) and sequential-view ordering (SVO)) for liver dynamic MRI in computer simulation study. This simulation study consists of the following steps. First of all, the creation of a time intensity curve, and original simulation images at certain points among the one phase dynamic scanning. Secondly, creation-simulated MR echo data from the created original images using FFT, and encoding simulated k-space using the simulated MR echo data. Finally, a reconstruction of simulated dynamic MR images from the simulated k-space, and to evaluate each simulated MR images, we measured modulation transfer functions (MTFs) from the bar patterns of the reconstructed images. The results of the CVO simulation indicated that the bar patterns were blurring compared to the images encoded by the SVO. The results of the SVO simulation indicated that the bar patterns were not enhanced at late scan timings. In addition, the results of MTFs indicated that there was no edge enhancement at all scan timings and both encoding techniques. In conclusion, it is possible to quantitatively evaluate the characteristics of artifacts using MTF, which was measured by the bar patterns, in liver dynamic MRI.</p>
著者
竹下 潤 小林 宏光 下江 豊 曽根 淳 祖父江 元 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.303-306, 2017 (Released:2017-06-28)
参考文献数
10
被引用文献数
5

症例は65歳の男性.全経過約3時間の一過性の健忘が出現した.3年前にも同様の症状が出現した.認知症状は認めず.神経学的には,小脳失調や不随意運動は認めなかったが,神経伝導検査で末梢神経障害を認めた.MRI拡散強調像で,前頭葉から頭頂葉にかけて皮質下の皮髄境界域に高信号を認め,皮膚生検で神経核内封入体を多数認め,成人発症の神経核内封入体病と診断した.家系内には類症者はおらず,孤発例である.健忘は一過性全健忘と極めて類似し,辺縁系障害が推測された.
著者
萩原 啓二 小林 邦彦
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.98-100, 1995-01-15

1.はじめに ジャッカリン(jacalin)とは熱帯植物jackfruit(図1.日本名:パラミツ,学名:Artocarpusintegrifolia)の種子から得られるレクチンの1つで,もともと1981年にリンパ球のマイトーゲンとして見つけられた,その後1985年にブラジルの研究者によりヒトIgAと結合することが発見されたのを機に注目を浴びたレクチンである.
著者
月時 和隆 林 三徳 柴戸 靖志
出版者
福岡県農業総合試験場
雑誌
福岡県農業総合試験場研究報告 (ISSN:13414593)
巻号頁・発行日
no.24, pp.130-133, 2005-03

ホオズキ新品種'姫提灯'は、着果率が極めて高い'京築地域在来系統A'と、宿存ガクの形状が良好な'京築地域在来系統B'を交配した組み合わせの中から選抜し育成した。'姫提灯'は宿存ガクの先端が尖り、表面の凹凸が少なく良好な形状をしている。宿存ガクの大きさは5cm前後であり、既存の主要品種'タンバホオズキ'と同等である。下位第6節から第20節の着果率は90%と'タンバホオズキ'よりも高く、着果が優れる。切り花長は'タンバホオズキ'や親系統と同等かやや長く、切り花品質が優れる。
著者
丸 三徳 関口 隆昭 林 新 天谷 真一
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.66-73, 2018-05-22

より安全・安心な車両走行を実現するため,カーナビの経路探索機能の研究を行っている.実際の道路を走行する際にレーン変更が困難となる経路を探索してしまうという問題の解決に向け,車両のレーン変更を考慮した経路探索方式を開発する.本稿では特に,レーン変更が困難となる経路の検出アルゴリズムを提案する.まず,具体的な事例の分析を行い,問題のある経路となる条件を導出した.そして条件に該当するか否かを,カーナビ用地図データを使って判定する方法を検討した.試作・評価により,発見済みの事例以外の事例についてもレーン変更が困難であるか否かを判定できることを示し,提案方式の有効性を確認した.さらに,検出精度向上に向けたカーナビ用地図データの拡張方針を明らかにした.In order to realize safer and more comfortable driving, we have studied on route calculation function of car navigation systems. To solve a problem that the car navigation systems often provide users with routes including difficult lane-changing, we have developed a route calculation method considering lane-changing of vehicles. In this paper, we propose a method for detecting the route that includes difficult lane-changing. We analyzed case examples of the problem and clarified the conditions for being problematic routes. We considered a method to judge whether the route fulfills those conditions or not by using conventional car navigation map data. By prototyping and evaluating our proposed method, we showed effectiveness of the method that was able to judge whether additional case examples included difficult lane-changing or not. Further, required contents of car navigation map data for improving detecting accuracy were specified.
著者
大谷 明弘 林 典生 おおたに あきひろ はやし のりお Akihiro OTANI Norio HAYASHI
雑誌
最新社会福祉学研究
巻号頁・発行日
vol.13, pp.15-27, 2018-03-31

本研究は, 認知症に伴う行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms ofDementia:以下,BPSD)の背景因子を捉えるためのケアの視点を明らかにするためにCiNiiおよびJ-STAGEを活用した文献研究を実施した.論文145本が対象となり,更に先行研究に基づき5要因(身体的要因,精神的要因,環境的要因,個人的要因,介護者要因)を抽出し,その後分類した.分類結果は,①BPSDの現状把握のための背景因子,②介護施設の現状,③実践的アプローチの現状の3つになった.この結果から,施設での多忙な業務の中でも5要因に着目することでBPSDの背景因子を推定できる可能性が明らかになった.また,介護負担感の概念の広さが,隣接する研究領域に重複させ,分類を困難にしている理由として考えられた.今後は,介護負担感の概念整理と共に本研究で明らかになった5要因に基づく背景因子の推定を実施した上でのケアが,利用者のBPSD減少やQOL向上,更に介護職員の介護負担感に与える影響を明らかにする必要があるIn this research, in order to clarify the viewpoint of care for grasping background factors ofbehavioral and psychological symptoms of dementia (hereinafter referred to as BPSD), a reviewresearch was conducted through utilizing CiNii and J-STAGE. With 145 papers as a subject,based on the previous researches, 5 factors (physical factors, mental factors, environmentalfactors, personal factors, and caregiver's factors) were extracted, and classified afterwards.Consequently, they were classified into the followings; (1) Background factors for grasping thecurrent status of BPSD, (2) Current status of nursing-care facilities, and (3) Current status ofpractical approach. From this result, it has become clear that the background factors of BPSDcan be estimated through focusing on 5 factors despite busy tasks at facilities. Additionally,it was deemed that a broad concept of caregiver's burden made adjacent research areasoverlapped, which resulted in difficult classification. From this time on, it is necessary to clarifythe effects of decreases in users BPSD, QOL improvements, and caregiver's burden exertedby the care in which not only the concepts of caregiver's burden were organized but also thebackground factors based on the 5 factors clarified in this research.
著者
前田 由紀子 立石 和子 谷岸 悦子 松林 太朗
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.11-21, 2018-03-01

【目的】本研究は、精神科に勤務する看護師が認定看護師の資格を取得する過程とその後の経験を明らかにすることを目的とする。【方法】精神科病棟に勤務する認定看護師7 名を対象とし、個別に半構成的面接を実施した。精神科を選択した理由、認定看護師課程を受講した理由と過程、資格取得後の経験についての語りをデータとし、質的帰納的に分析した。【結果】精神科認定看護師を目指した理由は、<専門性の向上><精神科看護師としての自己の人生への問い><職場の改革><役割遂行の向上>の4 カテゴリーに分類された。認定後の経験は、<看護実践能力の向上><認定看護師としての役割遂行><実践におけるジレンマ><精神科認定看護師への評価の低さ>の4 カテゴリーが抽出された。【考察】資格取得の過程は、組織的な目標管理の下ではなく、個々の問題意識からキャリアアップを目指すという特徴があり、認定後の活動への影響が考えられる。組織における精神科認定看護師への理解や活動への支援により更なる活動実績が期待される。