著者
林 智広
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は2000年代前半から注目されてきた"特定の材料に対して特異的に高いアフィニティーを示すペプチド(以後、材料結合ペプチドと示す)"の材料認識能を利用し、従来不可能であった溶液中におけるナノスケールの分解能での表面化学組成分析技術を開発することである。我々は以前の研究でターゲット材料に対する結合メカニズムが明らかにされているTi結合ペプチドを用いて探針の設計、測定条件の最適化を中心に上記技術の開発を行った。
著者
林 恵子
出版者
福岡女子大学
雑誌
Kasumigaoka review (ISSN:13489240)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-14, 2008

コールリッジが「動機なき悪意が動機探しをしている」とIagoのOthelloへの復讐に関して言及して以来、多くの批評家は彼の動機に様々な関心を示してきた。"But partly led to diet my revenge, / For that I do suspect the lusty Moor / Hath leaped into my seat" (2.1.275-77)と打ち明けるIagoの台詞は、その信憑性には疑義が付きまとうが、少なくとも彼の悪意の動機を照らし出している。IagoはOthelloと自分の妻Emiliaとの不貞を疑い、「寝取られ夫」にされたと思い込み、それが彼の復讐への動機の一因となっているのだ。「寝取られ夫」の題材は、主として、喜劇に多く見られるものである。このことからして、Othelloは悲劇ではありながらも、バーレスク的様相に彩られていることは否めない。本稿では「寝取られ夫」という喜劇的題材と、ムーア人として表象されたOthelloへの人種差別的観点から生まれるシャリヴァリ的なOthelloとDesdemonaの結婚を分析し、その結婚が大衆祝祭的な価値の転覆関係として表象されていることを考察する。
著者
鈴木 茂夫 小林 伸行 田中 泰夫 中川 正樹 高橋 延匡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.2-11, 1989-01-15
被引用文献数
5

本論文では 日本語情報処理を前提とした研究用計算機システムOS/oにおける日本語プログラミング環境について報告する.OS/oは システム全体で一貫して日本語が使用できるプログラム開発システムを目標としている.そのため フル2バイトの文字コード体系を採用し ファイル名 プログラミング言語の識別子に至るすべての文字に日本語を使用可能とした.これは OS/oを含めたすべてのシステムプログラムの記述言語として開発した言語Cの処理系CATの文字型を2バイト化することにより実現した.文字の書体 大きさなどの文字属性の表現方式として 属性情報を文字コードの実体から切り離し 独立した別のファイルに持つ方式を採用した.文字コードの実体ファイルと属性ファイルの統一的管理はファイルシステムにより実現している.これにより 属性情報を必要としないOSやコンパイラは 文字コードの実体だけを扱うことで 文字属性を意識する必要がなくなる.また 各アプリケーションの要求に応じてOSの機能を動的に拡張する機構を用意し これを利用して日本語変換入力機能を実現した.そして OS/oの一応用として レーザピームプリンタを用いた日本語文書出力システムを開発した.以上のように OS/oでは 日本語の入力 処理 そして出力を含めたトータルな日本語プログラミング環境を実現している.
著者
小林 隆弘
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.271-282, 2007-09-10
被引用文献数
2

大気環境中のナノ粒子に曝露される可能性がある。ラッシュアワーのとき道路沿いの大気中では自動車由来と思われるナノ粒子が増加することが観察される。ディーゼルエンジンは多数のナノ粒子を排出する。一方,極めて粒子径が小さいことから,ナノ粒子は化学的,電気的あるいは光学的な新たな物性を持ち,外界からの光や熱や電圧等の刺激に対して大きい粒子に比較し異なる挙動を示す。このようなことから工業的に生産されるナノ粒子は化学,電子工業,化粧品,医薬,食品,環境技術といったあらゆる分野で使われるようになりつつある。作業環境中においてもこれらのナノ粒子に曝露される可能性が増加しつつある。しかしながら,大気および作業環境中のナノ粒子の曝露評価や健康影響評価はあまり行われていないのが現状である。ここではナノ粒子の曝露評価や健康影響評価の現状と課題について概観した。曝露評価については,屋内・屋外ならびに作業環境中での曝露に関する知見の充実や毒性やナノ材料のライフサイクルを考えた曝露指標の選択とそれに基づく曝露量の計測手法の開発が課題である。また,健康影響評価においては粒子の物理・化学的性状に基づいた体内動態や毒性評価や評価に必要な曝露手法の開発が課題となる。
著者
平林 久
出版者
日本宇宙生物科学会
雑誌
Biological Sciences in Space (ISSN:09149201)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.324-340, 2003 (Released:2005-12-27)

It is much easier to find extraterrestrial intelligence than to detect simple organisms living on other planets. However, it is hard to communicate with such intelligence without the mutual understanding of inter-stellar communication protocol. The radio SETI (The Search for Extra-Terrestrial Intelligence) was initiated with the pioneering work of F. Drake in 1960, one year after the historical SETI paper by Cocconi and Morrison(1959). This talk explains that SETI evolves with two bases of science; the understanding of our universe and the development of technology. Since SETI has had strong connection with radio astronomy from its early beginning, the impacts of radio astronomical findings and technological breakthrough can be seen in many aspects of the SETI history. Topics of this talk include the detection of microwave 3 K background radiation in the universe. Interstellar atomic and molecular lines found in radio-wave spectra provide the evidence of pre-biotic chemical evolution in such region. Radio telescope imaging and spectral technique are closely associated with methodology of SETI. Topics of the talk extend to new Allen Telescope Array and projected Square Kilometer Array. Recent optical SETI and the discoveries of extra solar planets are also explained. In the end, the recent understanding of our universe is briefly introduced in terms of matter, dark matter and dark energy. Even our understanding of the universe has been evolutionarily revolved and accumulated after 1960, we must recognize that our universe is still poorly understood and that astronomy and SETI are required to proceed hand in hand.
著者
平林 茂 中西 敏 立野 治雄 三宅 裕昭 平澤 忠
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.350-358, 1984-05-25
被引用文献数
12

前報でその組成について報告した加熱重合レジン9種, ヒートショックレジン3種, 流し込みレジン6種および常温重合レジン1種の計19種の義歯床用レジンの可塑性, 曲げ強さ, 弾性係数, たわみ, 衝撃強さ, 吸水量, 溶解量および色調安定性などの物理的性質を測定し, 比較検討した.全体的にみて, 重合条件の物性に及ぼす影響は大きく, 加熱重合レジンは流し込みレジンおよび常温重合レジンに比較して曲げ強さ, 衝撃強さが高い.ヒートショックレジンは, ほぼその中間の性質を示す.しかし, 架橋剤として1, 4-ブタンジオールジメタクリレートを含有する流し込みレジンの1種は, 他のトリメチロールプロパントリメタクリレートを架橋剤として含有する流し込みレジンに比較して, 従来の加熱重合レジンに匹敵する程度の良好な機械的性質を示す.耐衝撃性レジンは確かに高い衝撃強さを示すが, 反面, 曲げ強さは低く, たわみも大きい.加熱重合レジン中, 餅状期間が長く, その液に架橋剤として21%の1, 3-ブタンジオールジメタクリレートを含する材料は, 最高の抗折たわみ性を示すが, 衝撃強さは低い.流し込みレジン中, その液に親水性モノマーの2-ヒドロキシエチルメタクリレートを約10%含有する材料は, 吸水性が高く, その結果曲げ強さの低下を来した.従来の圧縮成形法に対し, 射出成形法の硬化したレジンの物理的性質に及ぼす効果は特に認められない.
著者
グェンファムタンタオ 岡部 誠 尾内 理紀夫 林 貴宏 西岡 悠平 竹中 孝真 森 正弥
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.269-283, 2011-01-15

本稿では,web上の大量のレビュー情報を要約する際の基盤技術として,単語を意味的カテゴリに分類するための手法,Bautextを提案し評価する.Bautextは弱教師付き手法であり,係り受け関係と相互情報量に基づいた名詞・名詞句のカテゴリ分類を行う.Bautextの特徴は以下の4つである.1)既存のブートストラッピング法等は,性能が多数のパラメータに依存するため,ユーザは良い分類精度を得るためのパラメータ設定を試行錯誤して見つける必要があった(小町ら,2010).一方,Bautextにおいてはユーザは多数のパラメータ設定をする必要がなく,少数の種語を与え,各カテゴリと単語の関連度(配属スコア)を計算することにより,漸次種語を増加させ,分類を自動化させている.2)既存のブートストラッピング法では,反復ごとに多数のカテゴリが1つの単語を獲得しようとするときに再度評価のステップがあった.一方,Bautextにおいては,各カテゴリが独立な特徴語集合を持ち,それをもとに各カテゴリへの単語の配属スコアを計算し,最大スコアのカテゴリが単語を獲得することでこの再度評価のステップをなくした.そのため,ブートストラッピング法と比べて高速な分類アルゴリズムとなっている.3)既存のブートストラッピング法では意味ドリフトという課題がある.意味ドリフトの原因は,反復処理の過程において,新しい単語を獲得するために使われる抽出パターン数が定数個であるため,以前の各反復で抽出できた適切な抽出パターンの影響が消されることにあると考えられる.これに対して,Bautextでは,各カテゴリが,独立な特徴語集合に今まで抽出できた適切な特徴語(抽出パータンと同じ役割)を保存することと反復ごとに分類対象の単語をランダムに選択させることにより,意味ドリフトを制御する効果が期待できる.4)目的の分類カテゴリに加えて「その他」カテゴリを導入することで,本来評価対象となりえない単語が「その他」カテゴリに移動し,目的の分類カテゴリの適合率が向上するという特徴がある.評価実験では,まず「その他」カテゴリの導入効果を確認した.また,代表的なブートストラッピング法であるBasiliskおよびEspressoの2手法とBautextとを比較し,両者に比べ,Bautextが分類精度,速度,使いやすさの3点において有効な手法であることを確認した.We present and evaluate Bautext, a method for classifying terms into semantic categories, as a fundamental technique used for review summarization of drastically increasing volume of user reviews on the internet. Bautext is a minimally supervised technique for classifying nouns and noun phrases based on dependency relations and mutual information. Bautext has four important features. 1) There is no parameter that the user must manipulate except for seed words. Using an existing bootstrapping method, the user has to find a reasonable setting of multiple parameters by trial and error, on which the classification accuracy heavily depends (Komachi, et al., 2010). On the other hand, Bautext has no such a parameter, and after specifying seed words, no user intervention is required. 2) Bautext is a fast method compared with state-of-the-art bootstrapping methods. 3) Bautext is supposed to constrain sematic drift with independent feature sets for each category and the randomly choosing a term for classification in each classifation step. 4) We introduce "other" category to improve the precision. Adding an extra "other" category to the target categories, it is possible to improve the precision significantly on the trade-off between precision and recall. In our experiment, we compare Bautext with two major bootstrapping methods, Basilisk and Espresso, which show that Bautext is superior in classification accuracy, computational expense, and usability.
著者
栗本 桂二 磯島 修 直良 有香 穴田 高 小林 芳友 小林 充治 新井 英雄 高柴 正悟 難波 秀樹 横山 雅之 光田 由可 水島 ゆみ 野村 慶雄 村山 洋二 上田 雅俊 寺西 義浩 藤原 一幸 橋爪 彰子 釜谷 晋平 細山 陽子 上羽 建二 大西 和久 白井 健雄 大橋 哲 東 浩介 木岡 慶文 南林 繁良 田中 真弓 北村 卓也 牧草 一人 山岡 昭 浦口 良治 萩原 さつき 福田 光男 小田 茂 林 成忠 竹蓋 弥 米良 豊常 峯岸 大造 梅田 誠 中元 弘 稲富 洋文 ナロンサック ラーシイシン 野口 俊英 石川 烈
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.191-205, 1988-03-28
被引用文献数
5 2

塩酸ミノサイクリン(MINO,日本レダリー,東京)を用いて歯周炎の局所治療法を確立するための研究を行なってきた。本研究は,MINOを2% (力価)に含有する軟膏製剤(LS-007)を臨床的に用い,その有効性,安全性ならびに有用性をもとに用法を検討したものである。4mm以上のポケットを有する辺縁性歯周炎患者45名の119歯を被験歯とし,LS-007とそのプラセボ,および市販のミノマイシン錠(日本レダリー)を用い,微生物学的および臨床的に用法を検討した。その結果,LS-007の局所投与は歯周病治療において,臨床的有効性,安全性および有用性があると結論した。
著者
小林 義行 山本 修司 徳永 健伸 田中 穂積
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.47, pp.1-8, 1994-05-27
被引用文献数
3

複合名詞の解析は、実用的な自然言語解析システムの実現において、解決しなければならない困難な問題の1つである。本論文では、語の共起の統計的な情報とシソーラスを用いて日本語複合名詞の構造を解析する方法について述べる。語の共起関係は16万語の4文字熟語から獲得した。新聞、用語集から抽出した平均4.9の漢字からなる複合名詞を解析し、最終的に約80%の精度で解析することができた。Analyzing compound nouns is one of the crucial issues for natural language processing systems, in particular for the systems that aim wide coverage of domains. In this paper, we propose a method to analyze structures of Japanese compound nouns by using both statistics of word collocations and thesauruses. An experiment is conducted in which 160,000 word collocations are used to analyze compound nouns of which average length is 4.9. Finally, the accuracy of the method is about 80%.
著者
中嶋 康博 荘林 幹太郎 小川 茂男 合崎 英男 高橋 太郎 山田 七絵 佐藤 赳 鄭 暁雲 宋 敏 王 維真
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

メカニズムデザインの手法を用い、中国南西部の湿潤地域と中国北西部の乾燥地域のそれぞれにおいて、農業生産者の土地資源および水資源の利用に対する望ましい政策介入について分析した。分析においては地理情報システムおよびリモートセンシングの技術を活用し、地域の空間的な特徴を内生化した経済モデルの設計を行った。
著者
松沢 哲郎 ハムル タチアナ クープス カテリーナ ビロ ドラ 林 美里 ソウザ クローディア 水野 友有 加藤 朗野 山越 言 大橋 岳 杉山 幸丸 クールマ マカン
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 = Primate research (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.45-55, 2004-06-30
被引用文献数
1 15

The present paper reports the death of wild chimpanzees through a flu-like epidemic at Bossou, Guinea, West Africa. The community at Bossou has been studied continuously since 1976. Records from the past 28 years show that the number of chimpanzees in the Bossou community has been relatively stable, at around 20 individuals. In late November 2003, chimpanzees at Bossou began to cough. Within a month, five chimpanzees died: two very old females, one adolescent male, and two infants. The mothers of the two dead infants continued to carry the corpses, which eventually mummified. One mother used a stick to chase flies away from the dead infant's body in addition to using her hands. The transportation of infants' mummified bodies may be yet another example of cultural behavior unique to this community. A 12 year-old young mother, who lost her first offspring in this epidemic, remained with the community for two months following the death of the infant, after which she disappeared, most likely immigrating to a neighboring community. We inspected the year-by-year change of age-sex composition in the Bossou community. This revealed that the proportion of old members gradually increased while many young members immigrated. Such a gradual change in the population in addition to the epidemic suggests that this community is in serious danger. The paper also introduces our conservation efforts to attempt to save this important community: the "Green corridor project" which entails the planting of trees in the surrounding savanna in order to create a passage between Bossou and the Nimba Mountains, 4 km away. This might be a model case of connecting chimpanzee habitats that have become isolated through increasing human activity, a very common problem in West Africa.
著者
林 宇一
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
演習林 (ISSN:04934326)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-39, 2011-03

林業労働において,一般求職者の応募が増加傾向にあり,森林組合作業班員の雇用は一般労働市場における位置づけという側面から捉えていく必要がある。そこで,本報告では,兵庫県但馬地域内の7森林組合作業班員を対象に,現在の就労状態及び彼らが林業を職業としてどのように捉えているのかを明らかにすることを目的とした。具体的には,回答者の属性,回答者への森林組合の待遇,そして,回答者の森林組合の仕事に対する認識の3つの視点から把握した。結果,回答者は殆どが既婚者で家族と同居しており,新卒は少なく,殆どが1回以上の職業経験を経た転職者で,家族とのつながりが強く,地元就職志向が非常に強い事が示唆された。また,林業の自然を相手に出来る点が求職者を引き付け,危険な部分が求職者から敬遠される点であることがわかった。また,賃金の高低が林業の就職理由と離職理由の上位に位置しており,他の職業選択と同様,林業の職業選択や就労継続,仕事上の関心事として賃金が大きな影響を与えていることが示唆された。
著者
中林 拓馬 加戸 啓太 平沢 岳人
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.17, no.37, pp.1053-1056, 2011-02-20 (Released:2011-10-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Augmented Reality or Mixed Reality is a technology to extend or enhance human senses by putting the CG which is processed by computer into the real world.The authors developed a tool for architectural design, using AR/MR and scale model. This tool enables the review by superimposing CG on the model. In addition, the authors proposed the solution of the problem of occlusion and optical integrity.In this paper, the authors report implementation details and preliminary experimental results of this tool.
著者
福島 逸成 林 徹夫 浦野 良美 龍 有二 渡辺 俊行 赤司 泰義
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.66, pp.57-66, 1997-07-25
参考文献数
11
被引用文献数
7

本研究は,福岡における住宅の冷房用電力消費量に及ぼす気象条件や住宅仕様や住まい方などの影響について検討したものである.まず,調査データを基に冷房用電力消費量を推定し,福岡の戸建て住宅の年間冷房用電力消費量が札幌の約6倍,那覇の約1/3倍であることなどを明らかにした.そして,在来住宅と断熱気密住宅について,気象条件,通風利用,冷房機器の使われ方,などによる冷房用電力消費量を試算し,断熱化が全国的に夏季電力消費量の削減に有効であること,実際の住まい方を想定すれば福岡の冷房用電力消費量は断熱気密住宅でも在来住宅より大きくなること,福岡の住宅仕様としては断熱化に加え日よけの工夫や通風の利用が欠かせない条件であること,などを示した.
著者
小林 弘明
出版者
公益社団法人日本航海学会
雑誌
航海 (ISSN:0450660X)
巻号頁・発行日
no.95, pp.77-80, 1988-03-25

船体の運動状態を重視するミクロな航行シミュレーションを実施する場合の船体運動の数学モデルを概説する。数学モデルとしては,船体に働く流体力を直接的に表現する流力モデルと,船体運動を操作量に対する応答方程式として表現する応答モデルがある。
著者
林 壮一
出版者
立教新座中学校・高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は次の2点である。(1)安価な可搬型ノートパソコンであるNetBookとサーバー用ノートパソコンを無線LANで接続してネットワーク(モバイルラーニングシステムMobileLearningSystem)を構築し,(2)中学校・高等学校の理科の実験・授業の中でパソコンを活用した授業(実験群)とそうでない場合(統制群)とで学習効果を比較し,デジタル教材の有効性を検証することである。(1)については,サーバーパソコンの設定,アンテナの設定など,ネットワーク構築のために必要とされる基礎知識は少なくなく,サーバーの構築は容易ではなかった。しかし,外部に接続されていないネットワークは,授業管理/教場管理をする上では非常に有効であった。ただし,OSに標準搭載されるゲーム類などの削除も必要であり,その一方でパソコンに詳しい生徒(中学生)の悪戯防止についてはさらに一考が必要であった。今後,更にコンピュータを学校の授業に導入する場合には,OS標準のゲーム,画面の設定など生徒が容易に変更できないシステムが必要であると思われる。(2)については,中学生でも高校生でもデジタル教材を利用することによって,教科書に記述されていないより発展的な内容に気づかせたり,学習の質を向上させたりするのに有効であることが確認できた。しかしその一方で,デジタル教材を導入した授業が普及しにくい理由の一端も垣間見ることができた。特に,通常の教材を用いた授業展開とデジタル教材を用いた授業展開とが異なる場合には,授業で想定している展開の順番とデジタル教材の中での順番とが異なっていると,授業者はデジタル教材を利用することによって生徒が何をどのように理解したかを把握できなくなり,結果的にデジタルコンテンツが授業者の「授業に対する意図」を妨げてしまうからである,と考えられた。実際に行った授業では,統制群で授業の展開に沿って理解が進むのに対し,実験群では授業の展開に沿わない形で理解が進んでいくことが確認された。しかし,知識の定着を両群間で比較(大地のつくり,運動の法則,音の性質,静電気,等の4つの単元)したが,どの単元でも有意な差は見られなかった。以上のことから,教材が比較的小さな単元ごとにまとまっているデジタル教材が使いやすいことや,サーバーやパソコン内にコンテンツがあれば,インターネットとの接続は必須ではないことなどが確認できた。今後は,選択授業や探求学習などの発展的な学習で,どのようにデジタル教材を利活用することが学習者の意欲を高めることになるのか,また,どのようなICT機器を学習のどの場面でどのように活用することが学習者の意欲や知識の定着に有効なのか等,調べていく予定である。