著者
森山保 著
出版者
広文堂書店
巻号頁・発行日
vol.第5編 第5学年用, 1913
著者
森山 由紀子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.62-77, 2010-04-01

被支配待遇から丁寧語に変化した「ハベリ」の出現は900年前後とされ、『古今集』詞書の「ハベリ」もその例とされることが多い。本稿は、奥村(1957)の指摘を再検証し『古今集』諸本間の異同の分布と意味分類を対照することによって、『古今集』に当初からあった「ハベリ」は、すべて「人の存在」の意味の範囲内で用いられたものに限られることを明らかにした。このように、丁寧語として拡張した例を一例も持たない『古今集』詞書の「ハベリ」は、手紙引用部の1例を除き、11Cの和文に見られるような丁寧語ではなく、上代と同じ被支配待遇として、または、「仮想被支配段階」という丁寧語の前段階にあたる過渡的な例として考えるべきである。なお、手紙引用部の1例については、『伊勢』の他の1例とともに、900年当時、本来被支配待遇であった「ハベリ」が、すでに対人コミュニケーション場面に転用されていたことを明確に示す例として位置づけられる。
著者
前田 慶明 浦辺 幸夫 藤井 絵里 森山 信彰 岩田 昌 堤 省吾 沼野 崇平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,全身振動刺激(Whole Body Vibration:WBV)の効果は下肢筋力の増強のみならず,成長ホルモンの上昇や骨代謝および骨密度の増加が報告されている。しかしながら,WBVを併用したトレーニングが体幹筋力や動的バランスに与える効果を示した報告は渉猟し得た限りでは見当たらない。本研究の目的は健常男性を対象に,WBVを併用したトレーニング(WBV群)を8週間実施し,WBVを使用しない群(非WBV群)に比べて体幹筋力や動的バランスに相違があるかを明らかにすることである。仮説は非WBV群に比べて,WBV群の方が体幹筋力や動的バランスが向上するとした。【方法】対象は健常男性20名(年齢26.5±4.7歳,身長170.0±5.3 cm,体重63.9±7.1 kg)とし,無作為にWBV群(10名)と非WBV群(10群)に群分けした。なお,研究デザインは無作為化比較試験とし,3回/週で8週間の介入を各群で実施した。トレーニングのプロトコールは1セット6項目で構成された体幹筋トレーニングを以下の順序で実施した。種目は左右サイドブリッジ,プランク,シットアップ,左右ツイストを各30秒間ずつ実施し,各項目間には30秒間の休憩を挟んだ。介入前後でのトレーニング効果を判定する指標は,体幹屈曲・伸展の最大等尺性筋力,スクワットジャンプとカウンタームーブメントジャンプの跳躍高,動的バランス指標の一つである下肢最大リーチ距離を測定するY Balance Test(前方,後外方,後内方),機能的な動きを評価するためのスクリーニングテストであるFunctional Movement Screen(FMS)を測定した。統計解析には二元配置分散分析を行い,その後に多重比較にはBonferroni法を用いた。統計学的解析は統計ソフトウェアSPSS Ver. 21.0 for Windows(IBM社)を使用した。有意水準は5%未満とした。【結果】WBV群の平均体幹屈曲筋力は8週間後に34%増加し,有意な交互作用を示した(F=6.79,p<0.01)。Y Balance Testの前方リーチ距離は17%増加し,介入効果を示す有意な相互作用を示した(F=11.00,p<0.01)。その他の項目では有意な差を認めなかった。【結論】本研究はWBVを併用した群と併用しない群でトレーニングを8週間実施し,体幹筋力や動的バランスに効果に相違があるかを検討した。その結果,WBV群が非WBVに比べて有意に体幹筋力や動的バランスが向上した。全身振動が不随意的かつ持続的に筋収縮を促し,それを継続的に実施した結果,体幹筋力や動的バランスをより効果的に向上させたと考える。この結果は理学療法やスポーツ現場で行うトレーニング方法として有用な情報であり,理学療法研究として意義があると考える。本研究では介入後フォローアップを実施しておらず,今後は長期的な介入効果を検証する必要がある。
著者
石川 清一 岩本 真帆 正田 健 加藤 達洋 岩崎 良和 宮本 俊八 赤井 祐一 佐藤 秀樹 蓮沼 理 水野 滋章 加藤 公敏 森山 光彦
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.98-99, 2008-06-15 (Released:2013-08-02)
参考文献数
4
被引用文献数
1

症例は70歳男性。癒着性腸閉塞にて癒着剥離術を施行したが,退院約1カ月後より腹痛,下血を認め再入院となった。大腸内視鏡検査,サイトメガロウイルス抗原検査よりサイトメガロウイルス腸炎を合併した潰瘍性大腸炎と診断した。UCの経過中やステロイド投与例においてCMV腸炎の合併を認める報告はあるが,本症例のように明らかな免疫不全患者ではなくステロイド投与歴もない初発のUC患者の合併は稀であるため報告した。
著者
久次米 真吾 野呂 眞人 中島 香織 板倉 英俊 森山 明義 沼田 綾香 熊谷 賢太 酒井 毅 手塚 尚紀 中江 武志 原 久男 坂田 隆夫 杉 薫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.97-107, 2005

<BR>【症例】33歳,女性.<BR>【主訴】動悸.<BR>【経過】生後より,全内蔵逆位・右胸心・右室性単心室・肺動脈弁狭窄症・共通房室弁閉鎖不全症と診断され,3歳時にBlalock-Taussig短絡術を,8歳時にWaterston手術を受けている.23歳時に心房内リエントリーを機序とする心房頻拍(AT)に対してカテーテルアブレーション(CA)を行い,以後,動悸は消失した.最近,週に1回程度の動悸を自覚するようになり来院,Holter心電図でQRS幅の狭い持続性頻拍を認めたため入院した.電気生理学的検査の結果,この頻拍は,前回と類似した房室接合部近傍を起源とするATであり,少量のATPで停止した,AT中の最早期興奮部位に通電したところ,通電中にATは停止し,その後は誘発されなくなった.<BR>【まとめ】成人期まで生存し得た右室性単心室症例に合併した,AT再発例に対するCA成功例を経験したので報告する.
著者
安田 万里子 中川 一美 中川 高志 鈴木 絢子 髙橋 麻美 梶川 歩美 西舘 美音子 野老 由美子 松澤 範子 齋藤 晃 森山 優
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
日健診誌 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.385-391, 2015
被引用文献数
3

日本では、禁煙治療として2006年からニコチン依存管理料が保険適用となり、2008年から禁煙補助薬であるバレニクリン(チャンピックス)が保険適用となった。喫煙率低下に向け、禁煙治療も大きく影響しており、定期的な禁煙治療の評価を行い、有効な禁煙治療を行っていく必要がある。今回我々は、2009年10月1日から2012年3月31日までに禁煙外来にて治療を行った130名(男性97名、女性33名)を対象に、禁煙成功群と禁煙失敗群に分類し、年齢、性別、ブリンクマン指数、TDS、初診時CO濃度値について両者の差異を比較した。有意差が認められたものはブリンクマン指数のみであり、禁煙成功群の方が高い値となった。<br> また、禁煙治療の5回受診を完了した者(5回通院者)は、禁煙成功群93名のうち69名であり、禁煙失敗群では、37名のうち5名であった。禁煙成功率と通院中断の有無に有意差が認められ、禁煙治療5回のプログラムを最後まで通院することが、禁煙の成功を有意に高めていた。<br> 禁煙成功群を対象にし、計5回の禁煙治療終了時点で4週間以上の禁煙に成功している者を完全成功群と定義し、計5回の禁煙治療を中止した者のうち、中断時期から4週間以上の禁煙に成功している者を中断成功群と定義した。禁煙成功群93名のうち、完全成功群は69名、中断成功群は24名であった。完全成功群と中断成功群の1年後の禁煙継続率は完全成功群が73.1%に対し、中断成功群は65.2%であったが、これらの有意差は認められなかった。しかし、2年後の禁煙継続率を見ると、完全成功群が51.1%、中断成功群は31.7%であり、長期的に見ると完全成功群の方が高い値であった。<br> これらのことから、禁煙治療プログラム5回全てに来院することが禁煙治療成功に繋がりやすく、また、長期的な禁煙継続にも影響していると考えられた。
著者
森山 徳長 Norinaga Moriyama 東京歯科大学 Tokyo Dental College
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.249-257, 2006-10-25
参考文献数
10

本邦の通貨は7世紀末の富本銭や和同開宝などの鋳造貨幣に始まるが,17世紀始め頃から紙幣の流通が行われたという.伊勢の商人の間での流通が発端とされている.江戸幕府以後(17〜19世紀)は藩札が各藩内のみで流通したが,全国で流通する紙幣は明治新政府の「政府官札」が始まりで,明治5年には旧日本銀行株式会社,その他の私立銀行でもお札を発行した.その後政府官制の日本銀行券に統一され,全国で流通した.第二次大戦終了後の一時的混乱を経て,日本銀行券はA-D券を順次発行し,2004年11月を期して1万,5千,1千円の新E券を発行しようとしている.福沢の肖像のみ不変で,文化人・科学者として樋口一葉と野口英世が新券の肖像に採用されるが,その理由・経過等を祥述する.
著者
森山 無価 大野 京子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.193-195, 2014 (Released:2016-04-19)
参考文献数
9

近視は欧米に比してアジア諸国で頻度の高い疾患であり,特に我が国は世界有数の近視国である.近視人口は年々増大傾向にあり,視覚障害の原因としても大きな割合を占めている.近視の薬物治療については,大きく近視進行の抑制と近視による合併症の治療とに分けられ,前者はまだ保険適応でないものが多いが,後者については近年保険適応となった薬剤も出てきた.本稿では,最近注目されている近視治療に用いられる薬剤に焦点を当てて概説する.
著者
亀垣 航 森山 甲一 武藤 敦子 犬塚 信博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.2P203, 2018 (Released:2018-07-30)

リアルタイム戦略ゲームでは、人間の能力に合わせてコンピュータの認識能力に制限をかけた条件下では、人間のプレイヤーに勝利することは困難である。 常に多くのパラメータがごくわずかな時間で変動し続けるため、限られた時間内で膨大な量の情報を処理して行動を選択することが求められるからである。 モンテカルロ木探索の計算時間を増加させることで行動選択能力の向上が見込まれるが、ゲーム環境の変化への対応が遅れてしまい、悪化する可能性が推測される。 本論文では、応答時間を延長させることによって、モンテカルロ木探索の探索時間増加による行動選択能力の向上と、ゲーム環境の変化への対応能力である即応性の兼ね合いを観察する。
著者
殿内 暁夫 森山 裕理子 青山 嘉宏 土岐 春歌
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.437-444, 2016 (Released:2018-07-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

著者らは,白神山地由来の微生物資源の産業利用を通じた地域貢献を目的として,酵母Saccharomyces cerevisiaeの分離を進めている。十分に検討された分離・同定スキームにより,これまでに多数の菌株を得ている。加えて,本稿には自然環境から酵母を分離する際に有用な示唆に富んだ内容も含んでいる。また,産学官の研究会を組織し,広報・普及活動を行っており,一部については商品開発もなされている。解決すべき課題もあるというが今後の展開が期待される。
著者
工藤 貴徳 森山 貴子 柿崎 善史 葛西 伸彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.316-321, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
12
被引用文献数
1

糖尿病患者における薬物療法の導入は,時として重症低血糖を引き起こす.今回,特に医療機関における処置を必要とした低血糖発症の原因を明らかにするために,2009年10月から2010年9月の1年間に当院救急外来に低血糖で搬送された51例(複数回搬送された患者を含む),うち2型糖尿病患者33名の臨床的背景について検討した.HbA1c(以下,HbA1cはJDS値で表記)<6.5 %群は≥6.5 %群に比べて,平均年齢が有意に高値(78.8±3.9 vs 70.3±11.2歳),スルホニル尿素(SU)薬の使用が有意に高率だった(47.1 vs 13.3 %).搬送後,入院となった患者は帰宅できた患者に比べて平均年齢が77.5±8.5歳と有意に高値(p<0.05)であった.治療内容については,入院患者は帰宅患者に比べて,SU薬の使用が52.6 %と有意に高率(p<0.01)であった. SU薬は臨床で広く処方されているが,高齢者ではSU薬による厳格な血糖管理が低血糖を引き起こす可能性を高める.そのため,臨床の場では薬物療法,とくにSU薬による低血糖の危険性に留意して,常にその危険性と対処法を患者に指導する姿勢が重要と考えられた.
著者
森山 寛
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.980-982, 1995-08-01
参考文献数
1
被引用文献数
1
著者
我那覇 ゆりか 田原 美和 森山 克子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.166, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】沖縄は四方を海に囲まれた島嶼県であり、亜熱帯の気候風土のなかで育まれた地域の食材を用いた日常食、行事食は日本本土とは異なるものも多い。今回は、沖縄本島中南部の3地域に焦点をあてて聞き書き調査を行い、「芋」を用いた料理を中心に次世代に伝え継ぎたい家庭料理を検討した。【方法】本調査は、日本調理科学会特別研究に基づき行った。調査地域は、沖縄県中部の読谷村宇座、沖縄市登川、沖縄県南部の那覇市与儀、以上の3地域とした。読谷村2名(83、85歳)、沖縄市3名(70歳~74歳)、那覇市3名(71~78歳)を対象とし、昭和30年から40年頃までに定着した家庭料理および伝承したい家庭料理について、その料理名、食材、調理・加工法などを聞き書きした。【結果】沖縄は第二次大戦後しばらくはンム(甘藷)を主食としていた。当時は、シンメー鍋(大きな鍋)で大量に水煮・蒸煮し、スクガラス(アイゴの稚魚)の塩漬けや味噌汁、豆腐汁などの少ないおかずとたくさんのンムを食べた。また、ンムを季節の野菜と一緒に味噌汁に入れたり、ンムクジ(澱粉)にして保存性を高め、ンムクジを用いた料理を作り日常的に食した。ターンム(田芋)は高級食材であり行事や御祝いの際に食べた。沖縄市では、ヤマンム(山芋)がよく採れたため、塩茹でにしたり、スーチカー(塩漬け豚肉)と炒めて食べた。今回、聞き書き調査を行った読谷村宇座、沖縄市登川、那覇市与儀で共通に伝承したい芋料理はンムクジブットゥルー、田芋でんがく、ドゥルワカシー等であった。
著者
森安 昭太 森山 真光
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.55-58, 2017

暗号通貨の一つであるビットコインを取引で利用する企業が増加しているが,ビットコインの秘密鍵が漏洩した場合の損失は避けられない.<br>秘密鍵を管理する既存のハードウェアウォレット(HW)は,ホストがインターネット接続状態でも使用でき,ボットによるHWの不正操作のリスクがある.<br>そこで,ホストがインターネットからの切断を確認してHWの使用を許可するHWとホスト間のプロトコルを提案し実装を行い,通常のトランザクション生成と提案手法のトランザクション生成との実行時間を比較する.<br>結果,提案手法は通常のトランザクション生成方法よりもオーバーヘッドが存在するが,安全性が向上することを報告する.
著者
佐々木 厚 吉村 正久 鈴木 誠一 森山 厳與 金浜 耕基
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.187-194, 2013
被引用文献数
2

赤色電球形蛍光ランプによる暗期中断時間と光強度がスプレーギクの開花と花房の形状に及ぼす影響について,秋ギク'ゴールドストックダークリネカー'および夏秋ギク'コイアローム'を用いて調べた.光源として,市販の白熱電球(対照光源,75 W)および660 nmの波長をピークにもち,赤色光を多く含む赤色電球形蛍光ランプ(21 W,試作品)を用いた.その結果,いずれの品種とも,商品価値の高い整った花房の形状を示す花芽分化抑制可能な光合成有効光量子束密度(PPFD)の下限値は,同じ暗期中断時間で比較すると,赤色電球形蛍光ランプを使用した場合に白熱電球を使用した場合より低かった.秋ギク品種では,赤色電球形蛍光ランプを使用して1時間の暗期中断を行った場合,花芽分化抑制可能なPPFDの下限値が示されたが,白熱電球を使用した場合では示されなかった.さらに,いずれの品種においても,赤色電球形蛍光ランプを使用した場合の花芽分化抑制可能なPPFDの下限値と,これに対応する暗期中断時間の積の値がほぼ一定になったことから,花芽分化抑制可能なPPFDの下限値と暗期中断時間は反比例の関係にあり,ブンセン-ロスコーの相反則が成り立っていると考えられた.<br>
著者
西山 浩司 清野 聡子 石原 大樹 森山 聡之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_191-I_198, 2016
被引用文献数
1

2015年9月1日午前3時台,対馬海域で発生した突風の影響で漁船が転覆する死亡事故が起こった.しかし,夜間は目視ができず,突風の予測も難しい現状にある.そこで本研究では,対馬事例を含めて,2007~13年に前線活動に伴って陸上で確認された,西日本・東日本の突風事例(54事例)を対象に,気象レーダーの分析に基づいて,突風を取り巻く降水域の特徴を調べた.その結果,突風発生時間の緯度経度0.2度幅の狭い範囲で,80%以上の事例で強い降水強度の領域(80mm/h以上)を捉えた.また,緯度経度1度幅の範囲に拡大すると,発生1時間前に70%程度の事例で強い降水強度を捉えた.従って,前線活動に起因する突風の場合,発生1時間前までであれば,気象レーダーで強い降水強度の領域の接近を監視することで,夜間の突風被害から身を守ることが可能と考えられる.