著者
森山 昭雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.67-92, 1987-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31
被引用文献数
10 7

本稿は,東濃地方と三河山地東部地域に分布する土岐砂礫層と明智礫岩層とが相互に対比されることを明らかにし,当時の古水系とそれらの砂礫層堆積後に生じた地殻変動ならびに地形発達を論じたものである.土岐砂礫層と明智礫岩層は同時期に堆積したものであり,これらの砂礫の供給源が木曽川(付知川)水系であることを論証した。また,従来知られていなかった活断層が三河山地には数多く存在することを明らかにして,その断層地形と断層面を記載した。これらの断層群は東西圧縮応力場で生じた共役の断裂系であり,そのほとんどが土岐面形成後に活動したことを明らかにした.さらに,木曽川・土岐川・矢作川の大規模な流路変遷と水系変化に着目して,断層ブロック運動に先行する大規模な波状変形が起こったことを推論した.
著者
森山 倭成 岸本 秀樹 木戸 康人
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.161, pp.35-61, 2022 (Released:2022-05-20)
参考文献数
46

肥筑方言における主語は,生起する環境が主節か埋め込み節かにかかわらず,ガ格の代わりにノ格で標示させることが可能である。先行研究では,肥筑方言のノ格主語が,ガ格主語とは異なり,主語移動(A-移動)を起こさず,vP内に留まると主張されてきた。しかし,本論では,肥筑方言のノ格主語は,vP内に留まるのではなく,TPとvPの間に挟まれたAsp(ect)Pの指定部位置へ主語移動を起こすことを論じる。このことを示すために,まず,未確定代名詞束縛とサー感嘆文に関する言語事実から,ガ格主語はTP指定部位置に移動する一方で,ノ格主語はガ格主語よりも低い構造位置で認可されることを示す。次に,vP分裂文に関するデータから,ノ格主語が主語移動を受けてvP指定部よりも高い位置に移動することを示す。特に,vP分裂文のデータはノ格主語が動詞句内に留まることができないことを示す強い経験的な証拠を提供する。
著者
森山 武
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
南太平洋から見る日本研究 : 歴史、政治、文学、芸術
巻号頁・発行日
pp.89-101, 2018-03-30

新領域・次世代の日本研究, オタゴ, 2016年11月24日-25日
著者
森山 一郎
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.101-118, 2016 (Released:2017-05-25)
参考文献数
21

小売業者主導の垂直的流通システムについては、これまで資本統合を伴わない管理型を中心に検討が進められてきた。しかし、実際には、小売業者が生産段階の垂直統合に乗り出す例は少なくない。このような企業型と呼ぶべき生産段階への関与は、小売業者主導の垂直的流通システムに関して看過されてきた嫌いがある。そこで本稿では、その最も初期的な事例であり、かつ長期にわたる取り組みを経て品質面での競争優位を獲得したダイエーの牛肉事業を取り上げ、その展開プロセスとそれが成果を生むに至った要因を検討した。本稿における検討の結果、ダイエーの牛肉事業が垂直統合を通じて競争優位を獲得することができたのは、それが牛肉という漸進的な技術・品質改善が有効な商品分野であったこと、垂直統合の継続性が担保されたこと、過度に物量を追求しなかったことによるものであることが示唆された。このような検討結果は、小売業者主導の垂直的流通システムに関して、垂直統合の観点も含め、さらに詳しく検討する余地があることを示している。
著者
森山 裕太 青木 久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<br><br>1.はじめに<br><br> 岩石海岸における特徴的な波食地形に波食棚がある.波食棚とは,海崖基部から海側に向かって平坦面をもち,その海側が急崖となっている地形である.波食棚の高さは,波の侵食力や岩石の抵抗力(力学的強度)などの諸要因によって規定されると報告されている.本研究では,まず静岡県須崎半島の岩石海岸に卓越する波食地形を把握する.そして恵比須島に発達する,火山角礫岩と砂岩からなる波食棚の形成高度の違いについて,岩石の抵抗力という観点から定量的に明らかにすることを目的とする.<br><br>2.調査地域の概観<br><br> 須崎半島は,静岡県下田市東部に位置する半島であり,伊豆半島ジオパーク下田エリアの一部となっている.恵比須島は,須崎半島南部の沖にある小さな島であり,須崎ジオサイトとなっている.恵比須島を調査地域として選定した理由は,(1)島の周囲には「千畳敷」と呼ばれる火山角礫岩と砂岩で構成される波食棚が発達すること,(2)それらの波食棚は近接して存在するため,作用する波の侵食力や潮汐の場所的違いが少なく,波食棚の地形と構成岩石との関係を考察しやすいと考えたためである.<br><br>3.調査方法<br><br> まず地形図の読図と現地観察に基づき,須崎半島南部に発達する波食地形を分類し,地質図を用いて,構成岩石との対応関係を調べた.次に,恵比須島に発達する波食棚を構成する火山角礫岩と砂岩の分布を調べ,地質図の作成を行った.さらに火山角礫岩と砂岩からなる波食棚に測線を設け,レーザー距離計を用いた縦断面測量を行い波食棚の形成高度を把握した.またシュミットハンマーによる岩石強度の計測を行った.<br><br>4.結果・考察<br><br> 須崎半島南部の岩石海岸は火山角礫岩,砂岩,安山岩で構成されており,波食棚の地形が卓越することがわかった.安山岩からなる海岸では,一部海食崖(プランジングクリフ)となっている海岸も存在した.<br><br>恵比須島に発達する波食棚は,火山角礫岩の波食棚のほうが砂岩の波食棚よりも高い位置に形成されていた.構成岩石の強度は火山角礫岩のほうが砂岩よりも大きな値を示した.このように力学的強度の大きい火山角礫岩の方が,砂岩に比べて波食棚の形成高度が高いという結果は,火山角礫岩の波食棚は砂岩に比べ,波によって下方に侵食されにくく,高い位置に形成されていることを示唆している.
著者
重政 香代子 森山 浩志
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.549-556, 1999-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

ヒト顎二腹筋の前腹と後腹を結ぶ中間腱の詳細な形態を検討するためにその形状, 支持組織, 滑液包様構造, 角度, 舌骨からの距離などの観察を行った.前腹側の腱膜形態と中間腱の支持形態をそれぞれ4型に分け, 顎二腹筋の中間腱部分の形状と舌骨との関係についての形態計測学的な評価を行い, 滑液包様構造物が加齢に伴なって増加することを見出した.顎二腹筋の中間腱部分についての教科書の記述は加齢変化を含めて修正の必要がある.
著者
森山 祐輔 有森 和彦 中野 眞汎
出版者
一般社団法人 日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.245-251, 1992-06-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

The statistics indicates that the constitution of children, which includes height and body weight, has developed during the last 40 years.Therefore, we investigated that body surface area of children at present for every age which was calculated with Fujimoto's formula was greater than that in 1948.So we reexamined pediatric dose obtained from Augsberger's I, Augsberger's II, Young's, and Fujimoto's formula.The pediatric dose ratio based on body surface area in 1948 much more corresponded with the dose ratio obtained from the Augsberger's II formula.On the other hand, the pediatric dose ratio based on body surface area for every age in 1987 was shifted to higher dose ratio compared with that obtained from the Augsberger's II formula. The pediatric dose ratios obtained from three formulas except Fujimoto's formula indicated lower dose ratio than that obtained from Fujimoto's formula.Furthermore, under the age of five, pediatric dose ratio calculated from Fujimoto's formula was higher than that calculated from Du Bois's formula.The difference between the two dose ratios was larger as the age of children was lower.Consequently, considering big change in the constitution of children during the last 40 years, there may be a possibility to estimate lower pediatric dose than the dose which was required in the present children, if the pediatric dose was eviluated with Augsberger's II formula.
著者
森山 央朗
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.413-440, 2009-03

The many Arabic local histories compiled between the latter part of the 10th and the first half of the 13th century AD throughout the Islamic World mainly consist of “who’s whos” among ‘ulamā’ (specially ḥadīth scholars) associated with the regions concerned. This article calls these histories “biographical local histories.” The research to date has discussed the biographical local histories in the context of the evolution of Muslim biographical writing and historiography or has utilized them to study the social history of the regions in question. However, little attention has been given to the reasons for compiling the histories and the bibliographical character the genre.Given such a gap in the research, the goal of this article is to clarify the characteristic features of the biographical accounts contained in the histories, which should be the starting point for describing the actual condition of the academic activities of ‘ulamā’s who took on the task of popularizing their compilation.As a result of his analysis of the content, the author discovers that the biographical accounts in the biographical local histories do not describe the local activities of the characters depicted, only the usual activities of any ‘ulamāʼ or ḥadīth scholar relating to the learning and transmission of the ḥadīths and other Islamic knowledge.Therefore, the purpose of compiling the biographical local histories was to provide information to ḥadīth scholars of other regions about the academic careers and evaluation of the ḥadīth scholars associated with the region in question. In other words, these histories were compiled for the benefit of, and embedded in ‘ulamā’ academic activity all over the Islamic World. The author concludes that the popularization of compiling these biographical local histories was a phenomenon that occurred as part of the general interregional intellectual activities of ḥadīth scholars of the time.
著者
森山 徹
出版者
日経BP社
雑誌
日経systems (ISSN:18811620)
巻号頁・発行日
no.306, pp.50-55, 2018-10

デジタル化へのニーズが高まり、ITエンジニアに求められるスキルやノウハウも変わりつつある。実務知識や保有スキルの証明手段の1つであるIT関連の資格も、こうしたトレンドと無縁ではない。日経 xTECH会員へのアンケート調査から、IT資格の浮き沈みを分析。「いる資格」「いらない資格」を探った。
著者
丸山 徹 入江 圭 森山 祥平 深田 光敬
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.111-117, 2017-07-06 (Released:2018-04-16)
参考文献数
19

QRS波の終末部に記録されるJ波は,近年,特発性心室細動との関連が指摘されている.しかし,この波形が遅延脱分極波であるのか,早期再分極波であるのかについては,いまだ議論が多い.J波がアスリートに多く見られ,アスリートの心臓では乳頭筋の肥大や肉柱化,仮性腱索を認めやすいことから,J波とこれらの心内構造物との関連も指摘されている.乳頭筋や仮性腱索にはPurkinje線維が豊富で,心室筋への伝導が遅延して(PV delay),心室不整脈の基質となる場合がある.また,J波と心室遅延電位の関係性も指摘されており,これらはJ波が遅延脱分極成分であることを示唆する.一方,多くの基礎研究は,J波が早期再分極波であることを支持している.また,正常な貫壁性の心室興奮は,心内膜側から心外膜側へ向かうが,肉柱化した乳頭筋はこれを修飾して,反対側の心室壁が早期興奮症候群に近い興奮伝播を呈するようになる(ミニデルタ波).これは,早期興奮症候群でも認めやすいJ波は,早期に興奮を終了した部分から再分極も早期化して生じるためと考えられる.J波が脱分極成分であるか,再分極成分であるかを知るためには,これらの心内構造物の興奮伝播様式や心室全体の興奮との関連を明らかにすることが不可欠である.
著者
河野 芳廣 吉田 裕一郎 田村 幸嗣 森山 裕一 牧原 真治 廣兼 民徳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DbPI1341, 2011

【目的】換気力学では呼吸筋、胸腔内圧や肺容量、肺気量分画(全肺気量、一回換気量、肺活量、機能的残気量など)、姿勢、肺胸郭コンプライアンスの弾性仕事に関する要因や気道抵抗、肺、胸郭の組織抵抗の粘性仕事に関する要因などが関わっている。その中で、呼吸理学療法を行う際に、姿勢の変化で肺気量が影響を受けることは、多くの先行研究により認知されている。陽圧人工換気のポジショニングや体位呼吸療法(腹臥位管理)は、換気改善の効果があり、呼吸生理学的根拠があることは周知のとおりである。今回、陽圧人工換気下の状態で、姿勢の変化(ヘッドアップ)が及ぼす影響について、若干の知見を得たのでここに報告する。<BR>【説明と同意】今回の報告は、当院の倫理委員会の承認を受けている。<BR>【対象】溺水にて救急搬送、搬入時咳嗽あるも、胸部X線にて肺の状態不良、酸素化能低下し、時間を待たず気管挿管、ICUへ。ウィーニングで抜管するも、喉頭浮腫にて気道閉塞し、再挿管。その後、肺炎悪化。PCVの陽圧人工換気にて治療継続。陽圧人工換気管理下で換気モードはPCV(PEEP6cmH<SUB>2</SUB>O、RR30回/min、PCの圧above PEEP24cmH<SUB>2</SUB>O、FIO<SUB>2</SUB>80%)servo i (シーメンス社製)【方法】1日1回を3回にわたり、下記測定項目を理学療法前に計測する<BR>・2肢位における1分間の呼吸(分時換気量、一回呼気量、一回吸気量)をモニタしていく<BR>・ベッド上フラット位(ギャッジアップ0度、下肢挙上なし)から電動にて45度ギャッジアップ座位にし、それぞれの換気量を計測する。<BR>【測定項目】呼吸機能:分時換気量(MVe )、一回吸気量(VTi )、 一回呼気量(VTe )、終末呼気炭酸ガス濃度(EtCO<SUB>2</SUB>)、呼吸数(RR)、動的コンプライアンス(Cdyn)、酸素飽和度(SpO<SUB>2</SUB>)、呼吸パターン(I:E等)循環機能:動脈圧(ART)、心拍数(HR)<BR>【結果】パラメータ平均値は、1回目の仰臥位;MVe7.20±0.02 L/min、VTi238.35±2.33mL,VTe239.23±2.60mL から、45度坐位MVe5.22±0.04 L/min、VTi165.65±4.74mL、VTe171.12±5.13mLと低下、2回目の仰臥位;MVe7.30 L/min、VTi261.50±2.40mL、VTe261.88±1.93mL から、45度坐位MVe5.35±0.05 L/min、VTi200.00±3.66mL、VTe190.27±3.29mLと低下、3回目の仰臥位;MVe6.82±0.04 L/min、VTi259.96±2.49mL、VTe273.27±1.61mL から、45度坐位MVe4.41±0.03 L/min、VTi180.07±4.62mL、VTe175.96±3.11mLといずれも換気量の低下がみられた。<BR>・1、2、3回目における2条件(仰臥位、45度坐位)はいずれも、45度坐位において換気量の低下がみられ、(Wilcoxonの符号付き順位検定)P<0.01で有意差があった。<BR>・Cdynは1,2,3回目いずれも仰臥位は10.4~11mL/cmH<SUB>2</SUB>O、45度坐位は6.3~7.5mL/cmH<SUB>2</SUB>Oと低下した<BR>・EtCO<SUB>2</SUB>は仰臥位では47~57mmHgで45度坐位では64~76mmHgと上昇した。<BR>・姿勢変化時;酸素化能の変化としてSpO<SUB>2</SUB>値は、一回目に97%から93%に低下、2回目は95%から94%、3回目は97%から96%に低下した<BR>【考察】圧規定換気設定の気道内圧は、気道抵抗と肺胸郭コンプライアンスの大、小により、換気量を反映することになる。気道抵抗が大きいほど、肺胸郭コンプライアンスが小さいほど、換気量は減少するということになる。単に、肺胸郭コンプライアンスが小さくなったこともあると考えるが、それに、仰臥位から坐位時に、安静呼気位レベル(FRC)自体が上がり、結果的に気道内圧に影響し、換気量が変化したと考えられるのではないかと推測した。<BR>【理学療法学研究としての意義】陽圧人工換気下では量・圧規定換気や補助換気の付加など、病態にそって設定を変更させる。よって、同条件下での症例が重ねにくい中で、今回は換気量を測定することができた。陽圧人工換気下で、酸素化能の向上、換気改善目的の姿勢アップや呼吸手技を実施する際にはモニターしながら、圧損傷にたいして十分に注意できるようにする必要があることが理解できた。<BR>
著者
小島 世大 石槫 隼人 坂田 美和 武藤 敦子 森山 甲一 犬塚 信博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1E2OS3a04, 2019 (Released:2019-06-01)

近年ICカードの普及に伴い、ICカートのログデータを用いた人の行動分析に関する研究がされている。本研究では、非負値多重行列因子分解 (Non-negative Multiple Matrix Factorization,NMMF)を用いたユーザの行動パターンを抽出し、因子行列を用いたクラスタリングし、クラスタリング結果を用いて決定木学習によるパターンと属性情報の関係を分析する手法を提案する。最後に、我々は提案手法を用いて入退室データの分析を行い、その有効性を確認する。
著者
村田 健児 金村 尚彦 羽田 侑里子 飯島 弘貴 高栁 清美 森山 英樹
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.61-66, 2011 (Released:2011-03-30)
参考文献数
15

加齢により関節軟骨は退行性変化を呈し,主要構成要素であるプロテオグリカン含量やⅡ型コラーゲンの減少が認められる。この関節軟骨の退行性変化は運動がもたらす関節への機械的刺激によって抑制および修復させることが報告されている。本研究では老齢ラットモデルの距腿関節軟骨を組織学的に分析し,走行運動およびバランス運動が距腿関節軟骨にあたえる影響を検討した。結果,老齢ラット群の関節軟骨は若齢ラット群と比較してⅡ型コラーゲン及び関節軟骨厚が減少し,関節軟骨表層部に亀裂が認められた。一方で,老齢ラット通常飼育群に比較してバランス運動群の軟骨厚が増加していた。このことから加齢によって距腿関節軟骨退行性変化を呈するが,関節運動を伴う機械的刺激によって関節軟骨変性を抑制,改善に作用する可能性があることが示唆された。
著者
室生団体研究グループ 八尾 昭 茅原 芳正 別所 孝範 鎌田 浩毅 山本 俊哉 渕上 芳孝 石井 久夫 森山 義博 西尾 明保 寺戸 真 八尾 昭
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.97-108, 2008
参考文献数
52
被引用文献数
2

中新世の室生火砕流堆積物は近畿地方,紀伊半島中央部に分布し,その面積は1.9×10^2km^2に達する.室生火砕流堆積物は基底相と主部相に区分できる.基底相は層厚50m未満で異質岩片を含む溶結した火砕流堆積物と火山豆石を含む降下火山灰,火砕サージ堆積物で構成される.主部相はさらに下部にはさまれる層厚30m未満の斜方輝石を含むデイサイト質火山礫凝灰岩と上部の層厚400mを超える膨大な黒雲母流紋岩質火山礫凝灰岩に分けられる.主部相の基質はほとんどが溶結した結晶凝灰岩である.基底相には中礫大未満のチャート,砂岩,頁岩などの岩片が含まれており,室生火砕流堆積物を供給した地域の基盤岩を構成していた.室生火砕流堆積物は以前から中期中新世の熊野・大峯酸性岩類など大規模な珪長質火成岩が分布する南方から供給されたと推定されていた.異質岩片のチャートにペルム紀〜ジュラ紀の放散虫化石が含まれ,その給源火山の一部は秩父帯にあった可能性がある.秩父帯では半円形の断裂に沿って火砕岩岩脈群が貫入する大台コールドロンが存在しており,膨大な火砕流を噴出したことが推定される.
著者
水上 宏二 平田 祐子 森山 友幸
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.47-51, 2016 (Released:2016-03-31)
参考文献数
12

アスパラガスの半促成長期どり栽培において若茎調製残渣(以下,若茎残渣)の糖度と貯蔵根糖度との関係性を検討し,以下の知見を得た.春芽収穫期間中の若茎残渣糖度は,収穫始めは高く,収穫が進むにつれて漸次低下する傾向が認められ,定植後7~9年では3年および5年と比べて顕著に高く推移した.この株の生育年数による若茎残渣糖度の水準の違いは,夏秋芽でも同様な傾向がみられた.若茎残渣糖度の経時変動は,貯蔵根に蓄積された糖の濃度を推定できる貯蔵根糖度の変動と似通った.両糖度間には,春芽収穫期間が相関係数r = 0.9166の高い正の相関が,夏秋芽収穫期間ではr = 0.6963の正の相関が認められた.これらのことから,若茎残渣糖度をもって貯蔵養分の蓄積状況を推定できることが示唆される.