著者
森田 眞円
出版者
真宗連合学会
雑誌
眞宗研究 (ISSN:02880911)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.70-86, 2011-01
著者
佐賀 信之 森田 哲平 新井 豪佑 徳増 卓宏 幾瀬 大介 石部 穣 笹森 大貴 横山 佐知子 五十嵐 美紀 横井 英樹 岩波 明
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.751-759, 2016 (Released:2017-06-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2

2014年4月より2015年3月までの1年間に昭和大学附属烏山病院を初診し,DSM-IV-TRの診断基準によってADHD(注意欠如多動性障害)と診断された成人ADHD患者54名(男性30名,女性24名,平均年齢29.4±7.9歳)を対象とした.うつ病など他の精神障害の診断を受けているものは被験者54名中4名であった.被験者らに知的な遅れはなく平均15年の高等教育を受けていた.全被験者に対し,次の評価尺度を施行した.抑うつ症状については,SDS(Self-rating Depression Scale)を,不安症状についてはSTAI(State Trait Anxiety Inventory),ADHD症状の程度については,CAARS-S(The Conners' Adult ADHD Rating Scales),自閉症スペクトラム障害の症状の程度についてはAQ(Autism-Spectrum Quotient),知的機能についてはJART(Japanese Adult Reading Test-25)で評価を行った.その結果,被験者らの抑うつ症状は日本人の神経症圏における抑うつの度合いと同程度であった.不安症状は,STAIの段階IVに相当する高い不安であった.自閉症的傾向は健常人より有意に高かった.項目間の相関をSpearmanの相関係数を用いて解析を行うと,ADHD症状と抑うつ症状の間には,弱いが有意な正の相関がみられた.ADHD症状と不安症状の間には,中程度の有意な正の相関がみられた.本研究の被験者の多くは気分障害や不安障害の診断を受けていないが,それでも,被験者が有する不安症状や抑うつ症状の程度は,健康人のそれと比して高いものであった.さらに,ADHD症状が強い場合,不安症状や抑うつ症状が強くなる可能性があることが示唆された.
著者
森本 宏 菊川 義宣 村上 尚史
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.146, no.4, pp.225-232, 2015 (Released:2015-12-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

尋常性ざ瘡は,脂腺性毛包での毛包漏斗部の角化異常に伴う閉塞およびPropionibacterium acnes(P. acnes)などの細菌増殖による炎症惹起を含め,多因子が絡み合って発症する疾患とされる.過酸化ベンゾイルは,分解に伴い生じるフリーラジカルが,尋常性ざ瘡の病態に関与するP. acnesなどの細菌の細胞膜構造などを障害することで抗菌作用を発揮すると考えられる.また,角層中コルネオデスモソームの構成タンパク変性に基づいて,角質細胞間の結合を弛めて角層剥離促進をもたらすと示唆される.これらの薬理学的機序により,過酸化ベンゾイルは細菌増殖を抑制し,毛包内に貯留した皮脂放出を促すことで尋常性ざ瘡を改善する.尋常性ざ瘡患者を対象とした国内臨床試験において,過酸化ベンゾイルゲル2.5%を1日1回,12週間塗布することにより,治療開始2週後からプラセボに対し有意な炎症性および非炎症性皮疹数の減少を示した.また長期投与試験により,52週後まで皮疹数減少が維持されることを確認した.さらに,被験者に認められた副作用はおもに適用部位である皮膚に発現したもので,多くは軽度の事象であり,いずれも無治療あるいは薬物治療で回復した.本剤は,52週間塗布することによりP. acnesの抗菌薬感受性を低下させることなく,かつ抗菌薬感受性に関わらず皮疹改善効果に影響は認められなかった.さらに,本剤塗布後,過酸化ベンゾイルは安息香酸および馬尿酸に代謝され,尿中に排泄された.以上から,過酸化ベンゾイルゲル2.5%は,尋常性ざ瘡治療において忍容性が高く持続的な治療効果が得られる薬剤であり,海外と同様に本邦での標準的な治療薬の一つとして期待が持てる.
著者
森 真一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.404-421, 2011-03-31 (Released:2013-03-01)
参考文献数
21

本稿の目的は,心理主義化社会とニヒリズムの関係を明らかにすることである.この目的を果たすため,本稿はA. ギデンズの『モダニティと自己アイデンティティ(MSI)』(以下MSIと略す)を心理主義化論として読み,彼が提起する問題を出発点とする.MSIは,「心理学」がニヒリズム克服に寄与する可能性を示唆しながらも,もっぱらニヒリズムの再生産に寄与するものと捉える.ニヒリズムゆえに心理主義を一貫して批判してきた精神科医V. フランクルは,患者が「人生の意味」を発見できるように治療を行い,ニヒリズムの克服をめざす.フランクルの実存分析からは,「心理学」がニヒリズムの克服へと人々を向かわせていることが読みとれる.じつはギデンズも,抑圧された実存的問いが生のポリティクスとして回帰していることを示すことで,人々のニヒリズム克服行動を捉えようとしている.ギデンズやフランクルの著作からは,心理主義化社会において,「心理学」がニヒリズムを背景に隆盛し,ニヒリズムを再生産しているものの,他方でニヒリズム克服にも直接的・間接的に貢献しているように見受けられる.だが,ハイデガーの存在論からすれば,実存分析や生のポリティクスのようなニヒリズム克服の努力こそ,ニヒリズムの本質を表している.心理主義化社会は,二重の意味でニヒリズムであることを明らかにしたい.
著者
廣田 真由美 表 志津子 岡本 理恵 中田(市森) 明恵
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.345-353, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
20

退院支援看護師の,積極的治療が困難になったがん患者への退院支援実践能力を明らかにすることを目的とした.全国のがん診療連携拠点病院120施設の退院支援看護師(以下,DPN) 477名に質問紙調査を行い,198名から有効回答を得た(有効回答率41.5%).対象者のDPN経験年数の中央値は2.5年で,90.2%が看護師経験10年以上であった.退院支援実践能力のうち,退院後のケアバランスの調整力は看護師経験とDPN経験の長い群で有意に高く,退院後のケアバランスの見積もり力と療養場所の移行準備力はDPN経験の長い群と在宅・地域ケアの勤務経験のある群で有意に高かったが,患者家族との合意形成力には経験による有意な差が認められなかった.退院支援の質向上のために,個々の経験を生かした人員配置やベテランDPNの経験知を共有できる仕組みづくりが必要であることが示唆された.
著者
関根 達人 榎森 進 菊池 勇夫 中村 和之 北野 信彦 深澤 百合子 谷川 章雄 藤澤 良祐 朽木 量 長谷川 成一 奈良 貴史
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中世・近世の多様な考古資料と文献史料の両方から、津軽海峡・宗谷海峡を越えたヒトとモノの移動の実態を明らかにすることで、歴史上、「蝦夷地」と呼ばれた北海道・サハリン・千島地域へ和人がいつ、いかなる形で進出したかを解明した。その上で、「蝦夷地」が政治的・経済的に内国化されていくプロセスを詳らかにし、そうした和人や日本製品の蝦夷地進出が、アイヌ文化の形成と変容にどのような影響を与えたか考察を行った。
著者
池添 冬芽 市橋 則明 森永 敏博
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.8-13, 2003-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
19
被引用文献数
6

本研究の目的は,スクワット肢位における前後方向の足圧中心位置の違いが下肢筋の筋活動量に及ぼす影響について明らかにすることである。対象は健常成人12名であった。筋電図の測定筋は大腿直筋,内側広筋,外側広筋,半膜様筋,大腿四頭筋,腓腹筋(内側頭),前脛骨筋の7筋とした。3種類の膝屈曲角度(漆屈曲30,60,90度位)での両脚スクワット肢位について,それぞれ足圧中心を前方位,中間位,後方位で3秒間保持させたときの筋活動を測定した。大腿直筋,内側広筋,外側広筋,および前脛骨筋の筋活動ではすべての角度で足圧中心位置の違いによる主効果が認められ,いずれも後方位で最も高い値を示した。半膜様筋と大腿四頭筋では膝屈曲30度位においてのみ,腓腹筋ではすべての角度で足圧中心位置の違いによる主効果が認められ,いずれも前方位で高くなる傾向を示したが,これらの筋の筋活動量は20%と低い値を示した。本研究の結果,大腿四頭筋や前脛骨筋においては,足圧中心位置を後方位にして大きい屈曲角度でスクワット肢位を保持することによって高い筋活動量が得られることが示唆された。
著者
武田(森下) 真莉子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1038-1042, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
20

近年,医療ニーズは従来の生活習慣病などから,難病やがんなどのアンメットメディカルニーズの高い領域に拡大しており,それに伴って創薬ターゲットが大きく変わりつつある.アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの難治性中枢神経系疾患も競争率の激しい創薬ターゲットの中の1つであり,世界的規模で治療薬の開発が精力的に進められている.その中でも脳内で作用する内因性ペプチド,病態の進展を抑制するワクチン,原因物質あるいは病変部位を標的とする抗体医薬等のバイオ医薬の治療薬としての開発に注目が集まっている.しかしながら,ヒト臨床試験における成功率は著しく低く,例えばアルツハイマー病を対象とした臨床試験は,直近5年間の間に5つ以上の臨床試験が第Ⅲ相で中止となった.開発成功率が低い原因としては,適切な精神疾患動物モデルがないために,中枢疾患の病理や病態が十分に解明されていない等の本質的なことが考えられるが,薬物の脳移行性の絶対的な低さも起因していると考えられる.脳には血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)と血液脳脊髄液関門があることにより,循環血液と脳内の物質の輸送が厳密に制御されており,一般的な投与ルートである静脈内投与からBBBを透過できるバイオ医薬の物質量は極めて限られている.したがって,これを克服する革新的DDS技術の開発が急務とされている.水溶性低分子薬の脳移行性を高める方法としては,脂溶性を高めるプロドラッグ化,tight junction modulatorやP糖タンパク質等の排出トランスポーター阻害剤との併用投与,また受容体介在性トランスサイトーシスなどを利用した創薬が行われてきたが,バイオ医薬脳内移行性の改善にこれらの方法を適用することは難しい.一方,鼻腔内には,投与された物質が血液を経由せずに脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)あるいは脳に直接移行するルートがあることが古くから知られていた.そして近年,その実際の経路である鼻腔内の嗅上皮から嗅球にいたる嗅覚経路を脳への薬物輸送経路として積極的に利用する基礎および臨床研究が進展しつつある.現在,我々も生体膜透過性modulatorである細胞膜透過ペプチド(cell-penetrating peptides:CPPs)※を用いて,鼻腔経路からのバイオ医薬の効率的脳内移行を図る脳内デリバリー法の構築を目指して研究を進めている.本稿では,このNose-to-Brain Deliveryにおける最近の研究動向について,我々の知見を含めて紹介する.
著者
広瀬弘忠 杉森 伸吉
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学心理学紀要
巻号頁・発行日
no.1, pp.81-86, 2005-03
被引用文献数
1
著者
黒川 貴幸 石川 智一 吉田 和明 森田 健太郎
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.527-532, 2016-06-30 (Released:2016-06-30)
参考文献数
10

事例:平成25年8月,航海中に乗員が自殺した。発見時から同僚が心肺蘇生(以下CPR)を長時間行うも,蘇生できなかった。AED記録データを解析し,事案発生約20日後,医師がCPRデブリーフィング(以下DBF)を行った。最小限の講義後,AEDの記録心電図波形を公開し,胸骨圧迫の質につき解説した。後日CPRに関与した同僚に調査し,対象者15名中全員が「DBFを受けてよかった」と回答し,12名がCPRへの前向きな意見を出した。考察:本DBFにより,自分達のCPRを振り返ることで,グリーフケアの一助になった可能性がある。またCPRの必要性や重要性につき理解を得たと考える。一方DBFの効果についての評価手法や実施時期につき,今後検討を要する。結語:自殺事案発生後,CPRに関与した一般隊員に対しCPR-DBFを行った。CPRの必要性やグリーフケアの観点から,CPR-DBFは有用だった可能性がある。