著者
倉林 敦 熊澤 慶伯 森 哲 土岐田 昌和 澤田 均
出版者
長浜バイオ大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フクラガエル属(Breviceps)は、皮膚から分泌する糊によって雌雄が体を接着して交尾する、奇妙な四足動物である。我々は、発見以来60年間謎のままであったフクラガエル糊について、その物理的特徴と、構成蛋白質、およびその候補遺伝子を明らかにしつつある。本研究では、アフリカにおいてフィールドワークを行い、生殖用の糊という形質の、起源・要因・過程など、適応進化の実体を生態学・系統学・分子遺伝学の側面から解明する。この過程で、生態学・形態学的解析、新種記載、人工繁殖研究などもあわせて実施し、謎の多いフクラガエルとその近縁属の自然史について新たな知見を加えることを目的としている。本年度は、11月に南アフリカの西ケープ州、および、東ケープ州においてフクラガエル類の観察、採取を行なった。西ケープ州では、ジャイアントフクラガエル・ローズフクラガエルに加え、昨年採取はできたものの、実験前に死亡したクロフクラガエルを採取した。さらに、ケープタウンから30 kmほどの地点で、ナマクワフクラガエルを採取した。本種の分布はケープタウンから300kmほど北からと考えられていたため、これは本種の新産地の発見となった。東ケープ州では、ヘイゲンフクラガエルの採取を試みたが、成功しなかった。また、北ケープ州に分布するサバクフクラガエルを現地共同研究者に採取していただき、実験に供した。各種の糊分泌物を採取し、その強度を測定した。その結果、上記のうち1種(特許申請の関係で公表しない)は、極めて接着力の強い糊を持ち、その接着力は、アロンアルファなどの市販の接着剤を上回ることさえあった。また、フクラガエルの糊の接着力は、1)体の体積(重量)に比例して強くなる、生息地の土壌の硬さに比例して強くなる、という2つの仮説があったが、本年の研究からはそのどちらの仮説も否定された。
著者
末森 明夫
出版者
九州大学大学院比較社会文化研究院
雑誌
障害史研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.99-110, 2021-03-25

本稿は上古・中古日本の文献および先秦より宋明期にいたる中国の文献にみる啞字彙・啞語彙の位相を対照し、唐代中期の啞語彙位相と上古・中古日本の啞語彙位相のずれに焦点をあて、その中に『日本書紀』「巻27天智天皇紀」にみる建王関連記述「啞不能語」の位置づけをはかった。その結果、「啞不能語」の「啞」は日本の文献において《不言》の意味で用いられた「啞」の最初期用例であると共に、《笑声》と《オフシ》という意味の二重性を内包する可能性が窺われた。This paper focuses a Chinese character 啞 in a sentence, citing a deaf member of the imperial family in Japan, Takeru-no-Miko, in a historical chronicle "Nihon Shoki" on the basis of comparison between history of words related to the deaf-mute in Japan and China in the ancient and middle ages. The consideration suggests that the sentence was the earliest example as the 啞 meaning the deaf-mute observed in historical documents in Japan, and that the 啞 would be used as a polysemic word implying not only the deaf-mute but also smiling.
著者
佐伯 香織 平松 朋子 秋山 蘭 生野 佐織 小田 民美 森 昭博 左向 敏紀
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.17, no.Suppl, pp.46-47, 2014-06-30 (Released:2015-04-15)

健常ビーグル犬に対し、血糖降下作用があると言われる桑の葉を0.5g/head添加した食事を給与し、糖脂質代謝に与える影響について比較検討した。桑の葉添加食ではコントロール食と比較して食後30分の血糖値が有意に低値を示し、桑の葉摂取が食後の血糖値の上昇を抑制することが明らかとなった。さらに、桑の葉添加食ではコントロール食と比較して食後30分、180分の血中インスリン濃度に低下傾向が見られ、桑の葉摂取が食後のインスリン分泌を抑制する可能性が考えられる。また、血中TG濃度には変化が見られず、今後も検討する必要がある。
著者
森 創 堀口 逸子 清水 隆司
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.267-272, 2013-06-30 (Released:2014-11-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

目的: 開眼状態における脳波測定法を用いた前頭葉脳波スペクトル分析のうつ状態像の判定における有効性について検討した. 対象と方法: うつ状態群22名ならびに対照群21名に対して開眼状態での脳波測定による脳波スペクトル分析を行った. 脳波はFp1, Fp2に相当する位置より導出した. またSelf-rating Depression Scale, Social Adaptation Self-evaluation Scale, Gotow Alexithymia Questionnaireの質問紙調査を行った. 結果: 脳波スペクトル分析において, S波のパワースペクトル値は, うつ状態群で有意な増加を認めた. 脳波の各成分帯域の出現頻度は, うつ状態群でのα成分帯域の有意な低下およびθ成分帯域の有意な増加を認めた. 各質問紙調査においてうつ状態群と対照群に有意差を認めた. 対照群とうつ状態群の設定は, 質問紙調査結果等から妥当と考えられた. 考察: うつ状態群は, 安静時脳波による先行研究と同様に活動時脳波のパワースペクトルが増大すると考えられた. 脳波成分の出現頻度は, 安静時脳波による先行研究の結果と異なるが, 活動時脳波における特徴を示していると考えられた. 近年うつ病の診断や治療効果の判定などについては, 精神科医による問診, また質問紙等をはじめとした評価尺度が多数存在するが, 生理的指標を用いた客観的検査法はいまだ開発途上にある. 脳波検査は, 頭皮電極で得られる脳の電気活動を時間的, 空間的に記録し, 脳の活動状況を客観的に評価するものであるが, 従来の脳波検査は, 電源雑音を遮蔽した専用の脳波計測室で行う必要があった. 近年, 遮蔽空間が不要で覚醒開眼生活行動下での測定が可能な小型脳波計が開発されたが, 今回の結果より, 開眼状態における脳波測定法を用いた前頭葉脳波スペクトル分析について, うつ状態診断補助としての利用可能性が示唆された. 本機器を使用した検査は, 使用に際して環境的制限が少ないこと, さらには被験者にとって非侵襲的であり負担が少ないことから, さらなる研究により利用可能性を検討すべきと考えられた.
著者
藤井 範久 森脇 俊道
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.167-178, 1992-05-20 (Released:2016-12-05)
被引用文献数
2

In order to improve human performance in competitive sports, human motions have been analyzed from various viewpoints. One of the well-known methods is to compare the patterns of joint torques with those of top athletes during the motions. However, such comparisons are not necessarily sufficient to evaluate human motion, since individual differences in muscular forces and anatomical characteristics are not taken into consideration. The aim of this study is to investigate the relationship between the optimal vertical jump (squat jump) motion and the mechanical characteristics of muscular forces. The vertical jump motions of four male subjects were analyzed; their anatomical characteristics are similar, but the muscular force characteristics are different. Each subject performed a squat jump, in response tothe command "jump ashigh as possible," from an initial squat position with 90°hip and knee angles. The reaction force from the platform, the motions of the limb and the body, and the electromyographic (EMG) data were recorded. In order to estimate the optimal control for vertical jump motion under various conditions, a simulation system is applied which is based on the musculoskeletal model with the mean characteristics of muscular forces and the anatomical parameters of the four subjects chosen. In order to investigate the relationship between the optimal vertical jump motion and the mechanical characteristics of muscular force, a series of simulations was carried out by varying the parameters of the musculoskeletal model, such as the force-velocity relationship and the maximum contraction force. The following conclusions are derived from the results of the experiments and the simulations. (1) Change in the force-velocity relationship of human muscles results in a change in the optimal vertical motion and the sequence of the firing pattern of muscles, so that the contraction velocity of muscles does not become extremely large. (2) Changes in maximum contraction forces of some muscles result in changes in the optimal vertical motion and the sequence of the firing pattern of muscles, so that each muscle contracts under the optimal condition for the vertical jump. (3) The firing pattern of muscles is governed by the relationship between the anatomical characteristics and the muscular forces, and the timing of firing is determined by the relationship between the firing patterns and the maximum muscular forces. (4) The maximum contraction forces and the force-velocity relationship have to be improved in order to improve vertical jump performance.
著者
渡辺 雄貴 瀬戸崎 典夫 森田 裕介 加藤 浩 西原 明法
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Suppl., pp.109-112, 2014-12-25 (Released:2016-08-11)

モバイルデバイスの画面は小さく,提示する情報である教授メディアは適宜選択しなくてはならないことから,その開発はeラーニングコンテンツの開発方法とは異なる可能性がある.本稿では,講義スライドとインストラクタおよび指示棒の合成,講義スライドとポインタの合成という指示メディアの異なる2通りのコンテンツを開発し,学習者に与える影響を測定するために実験を行った.その結果,パフォーマンステストでは,両コンテンツで学習効果には差がないものの,主観評価では多くの項目でポインタを合成したコンテンツが高い値を得た.
著者
山田 鑑照 尾崎 朋文 松岡 憲二 坂口 俊二 王 財源 森川 和宥 森 俊豪 吉田 篤 北村 清一郎 米山 榮 谷口 和久
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-56, 2006-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
43

経穴研究委員会 (前経穴委員会) は福岡で開催された第54回全日本鍼灸学会学術大会ワークショップIIにおいて、経絡・経穴について3つの検討テーマを6名の委員により報告した。第1テーマ : 経絡・経穴の解剖学的検討1) 経絡と類似走行を示す解剖構造について (松岡憲二) : 遺体解剖による経絡の走行と神経・血管の走行との類似性についての研究。2) 上肢経絡・経穴の肉眼解剖学的研究 (山田鑑照) : 豊田勝良元名古屋市立大学医学部研究員の学位研究である上肢経絡・経穴の解剖学的研究紹介並びに山田の研究として皮下における皮神経・血管の走行と経穴・経絡との関係についての報告。第2テーマ : 日中における刺鍼安全深度の研究1) 中国における刺鍼安全深度の研究と進展状況 (王財源) : 中国刺鍼安全深度研究で権威のある上海中医薬大学解剖学教室厳振国教授のデータの紹介と最近の中国における刺鍼安全深度研究の進展状況報告。2) 経穴の刺鍼安全深度の研究を顧みて (尾崎朋文) : 尾崎が今まで発表してきた経穴部位の刺鍼安全深度の研究並びに厳振国教授のデータと同じ経穴との比較研究。第3テーマ : 少数経穴の臨床効果の検討1) 少数穴使用による鍼灸の臨床効果 (坂口俊二) : 1~4穴使用による鍼灸臨床効果ついての医学中央雑誌文献の検索・分析。2) 合谷-穴への各種鍼刺激が皮膚通電電流量に及ぼす影響 (森川和宥) : 合谷穴-穴への置鍼刺激、直流電気鍼刺激、鍼通電刺激が皮膚通電電流量に及ぼす影響についての研究。
著者
加藤 昂希 杉森 絵里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

Karremans,Claus,&Storoebe(2006)が行った実験によると,パソコン課題をしている被験者の画面に「LiptonIce」という文字を意識下では知覚できない程の短い時間繰り返し提示したところ,喉が渇いている被験者においてのみリプトンアイスティーを飲む人の割合が増えたという。この実験を受け,私は視覚的なサブリミナル効果だけでなく,聴覚的なサブリミナル効果でも同じ様に結果が出せるか否かを検証する事とした。具体的には,喉が渇いている被験者に,サブリミナル音声を忍ばせた音源を聞いてもらい,その後の選択行動に影響があるかどうかを検証した。結果として,サブリミナル効果は出なかったものの,音源をリラックスして聞いてもらった後に直感を頼りに選択してもらう場合において,サブリミナル効果が出やすくなる事が明らかになった。
著者
天野 晃滋 木内 大祐 石木 寛人 松岡 弘道 里見 絵理子 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.147-152, 2021 (Released:2021-05-13)
参考文献数
27

人は生きるために食べるが,食事は社会的存在である人にとってそれ以上の意味をもつ.進行がん患者は,腫瘍・治療の副作用・がん悪液質のため「食べないといけないが食べられない」「食べるようにしているが痩せてしまう」というような食欲不振・体重減少を主因とする食に関することで苦悩し,生活をともにする家族も患者とは異なる苦悩を有することが近年の研究でわかってきた.これらを踏まえ,われわれは患者と家族の食に関する苦悩のような心理社会的苦痛における緩和ケア・サポーティブケア・栄養ケアを統合した多職種連携ケアの重要性を指摘し,患者と家族の食に関する苦悩の評価尺度を作成している.現時点では,患者と家族の食に関する苦悩のケアは世界的に確立されておらず,これら苦悩の多職種による統合ケアを開発すること,さらにこの統合ケアの効果を検証すること,また将来的には,本邦のがんセンター・がん診療拠点病院での実践・普及を目指す.
著者
森 正人
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.1-27, 2005-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
117
被引用文献数
1 2

本稿は,「節合」という概念を手掛かりとして, 1934年の弘法大師1100年御遠忌で開催された「弘法大師文化展覧会」を中心として,弘法大師が日本文化と節合され,展示を通して人々に広められる過程を追う.この展覧会は,戦時体制に協力する大阪朝日新聞と御遠忌を迎えた真言宗による「弘法大師文化宣揚会」が開催したものであった.この展示には天皇制イデオロギーを表象する国宝や重要文化財が,弘法大師にも関係するとして展示された.また展示会場は近畿圏の会館や百貨店であり,特に百貨店では都市に居住する広い階層の人々に対して,わかりやすい展示が試みられた.このような種別的な場所での諸実践を通して国民国家の維持が図られた.ただし会場を訪れた人々は,イデオロギーの中に完全に取り込まれてしまうのではなく,それを「見物」したり,娯楽としてみなしたりする可能性も胚胎していた.
著者
北見 由奈 森 和代
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.37-45, 2010 (Released:2010-06-01)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2

The purpose of this study was to examine the relationship between job search stressors, mental health and social skills in Japanese university students. The subjects were 448 Japanese university students (171 males, 277 females). The questionnaire contained demographics, the state of job hunting, the 12-item General Health Questionnaire Japanese version (Nakagawa & Daibo, 1985), the Job Search Stressor Scale (Kitami, 2009), and the 18-item Kikuchi's Social Skills Scale (Kikuchi, 1988). 1) Analysis by t-test revealed a significant difference in the job search stressors between groups with high and low social skills. 2) The result of regression analysis revealed that low social skills showed higher job search stressors and stronger influence of job search stressors on mental health. These results suggest to reduce job search stressors and to promote mental health by improve the social skills.
著者
杉原 隆 吉田 伊津美 森 司朗
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

日本全国の幼稚園・保育所109園の4〜6歳児、約12,000名を対象に運動能力測定および家庭と園の環境調査を行った。運動能力発達ならびに、運動能力と環境要因の関係について分析した結果の概要はおおよそ以下のようである。幼児の運動能力は1986年頃から1997年頃にかけて大きく低下し、1997年から2002年にかけては大きな変化はなく現在に至っていることが確認された。運動能力の発達に最も大きく関係していたのは、園と家庭での運動遊び時間や頻度などの運動経験要因であった。園環境としては、遊び友達の数、保育形態、担任の運動の得意不得意など心理社会的環境は運動発達と関係していたが、所在地や園舎園庭の広さや遊具の数など物理的環境との間にははっきりした関係が認められなかった。特に保育形態に関しては、一斉指導で運動指導をしている園より自由遊び中心の保育をしている園の方が運動能力が高いという注目すべき結果が得られた。家庭環境としては、遊び友達の数、家族構成、親の意識といった心理社会的環、遊び場の有無と運動遊具の数といった物理的環境の両者が運動発達と関係していたが、住宅形態や居住階層はほとんど関係していなかった。全体としてみると、運動発達との関係の強さは運動経験、心理社会的環境、物理的環境の順となり、分析の結果、環境(間接要因)⇒運動経験(直接要因)⇒運動発達という因果関係が認められた。
著者
小森 めぐみ
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.149-155, 2018

<p>This study attempted to replicate Kamise, Hori, and Okamoto's (2010) survey on perceived occupational stigma among Japanese workers by conducting a survey with employees in a <i>host club</i>—a male cabaret club—in the Kansai region, Japan, to investigate their perceived occupational stigma, coping strategies, occupational self-esteem, and egalitarian sex-role attitudes. The results showed that host-club employees perceived extreme occupational stigma, where novices, part-time workers, and those with fewer work assignments showed higher levels of perceived stigma. Regarding coping strategies, attribution of discrimination and disengagement were used frequently, while valuing and group identification were used only rarely. Structural equation modeling showed that group identification positively enhanced occupational self-esteem. However, contrary to previous research, individuals who perceived more stereotyping rarely used group identification. Stigma awareness facilitated attribution of discrimination, resulting in lowered occupational self-esteem, and egalitarian sex-role attitude significantly influenced valuing and attribution of discrimination.</p>
著者
森 由紀 大村 知子 大森 敏江 木岡 悦子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.949-958, 1999-09-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

携行品運搬における背負い方式の有用性に関する研究についてすでに報告した。本報では背負い方式が一般的である小学生の学習用具携行に関する実態調査および実験を行い次のような知見を得た.(1) 通学用鞄のタイプに関して, 個人の自由に任せている学校があったが, 1年生の大部分はランドセルを使用していた.6年生が使用している通学用鞄のタイプは, ランドセルが70。0%, リュックサックが20.4%, その他が9。6%で, 高学年ほどランドセルの使用が減少し多様化する傾向がみられ, ランドセルの体格への不適合もその一因であると推察された.(2) 教師はランドセルの使用について, 両手をあけることの安全性や丈夫であるなどの長所を挙げる一方で, 1年生には重すぎる, 高学年には窮屈で格好が悪いなどの問題点を指摘していた.(3) 通学用鞄に学習用具重量を加えた携行総重量の体重比は, 1年生では平均14.8%, 4年生では 11.2%, 6年生では9.0%であり, 低学年ほど体重の割に重いものを携行していた.学習用具の内容は教科書, ノート, 筆記用具の他, 副教材, 補助教材などであった.(4) 低学年児童を被検者とするランドセル背負い実験では, 荷重圧が肩中央部および腰椎部に大きく加わり, 学習用具重量が増すほど荷重圧も大となった.特に, 肩中央部において静立時の荷重圧に対する歩行時の最大荷重圧の比率が大となる傾向がみられた.(5) 体型によって荷重圧の分布が異なり, 背面が平らな者は肩中央部への荷重圧が大きく, 腰部後面が平らな者は腰椎部への荷重圧が大きいという特徴がみられた.(6) ランドセル背負い時の姿勢観察の結果, 静立時, 歩行時いずれにおいても, 学習用具重量が増すほど前傾姿勢をとることが認められた.以上のことから, 低学年児童にとっては重すぎる負荷を軽減する方策を, 高学年児童には体格に適合する携行方法を, 中身の問題とともにそれぞれ検討する必要があると考えられる.
著者
大場 啓介 長嶺 拓夫 森 博輝 佐藤 勇一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.81, no.824, pp.14-00593, 2015 (Released:2015-04-25)
参考文献数
8

This paper describes the investigations of the characteristic about the sound generation of a nose flute experimentally. The nose flute is attached to the upper part of a container. If air is passed to a nose flute, sound will occur. The volume of a container is changed and the generated sound is measured. The natural frequencies of an experimental device are calculated and we confirm that it is in agreement with frequency of sound generated in experiment. We show that nose flute is a unique musical instrument with the point that a nose flute has only an edge part and uses people's mouth for a resonance body part. The frequencies of resonance sound can be calculated from the capacity in a mouth, the thickness and the area of an opening of a nose flute. When people play a nose flute, it is thought that only the first mode of vibration is used.