著者
野坂 誠士 森田 克彦 村山 正毅
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.348-352, 2020-07-15 (Released:2020-07-15)
参考文献数
9

症例は60歳代,男性.7年前に右下葉扁平上皮癌に対し,開胸下に中下葉切除術を施行した.術後4年目から咳,労作時呼吸苦などの呼吸器症状が出現してきた.術後7年目現在,CTで右上葉肺尖部に気管支拡張を伴う胸膜下コンソリデーションを認め,肺容量は顕著に低下している.呼吸機能検査では拘束型の低肺機能に陥っている.いわゆるPleuroparenchymal Fibroelastosis(PPFE)に相当する病態である.また術前のCTで右上葉にはPulmonary apical cap(PAC)病変が存在しており,開胸術による胸郭運動の制限,PACの存在が複合的に関与してPPFEを発症したと考えられる.開胸術後に術側肺に同様の変化をきたすことは稀ではなく,その発症要因を推測することは重要であるため,文献的考察を加えて報告する.
著者
鈴木 恵輔 加藤 晶人 光本(貝崎) 明日香 沼澤 聡 井上 元 中島 靖浩 前田 敦雄 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.611-615, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
10

ジフェンヒドラミンは抗アレルギー薬,風邪薬,睡眠改善薬などとして用いられている。今回,ジフェンヒドラミン4,990mgを内服した急性中毒例に対して血液透析を施行し,血中濃度測定を行った症例を経験した。症例:22歳,女性。意識障害のため当院に搬送され,眼振や痙攣を認めた。現場に落ちていた空包からジフェンヒドラミン中毒を疑い,人工呼吸器管理,血液透析などの集中治療を行った。第4病日には抜管し意識清明となり,本人よりレスタミンUコーワ錠®などを内服したことを聴取した。その後,合併症なく経過し第8病日に自宅退院となった。血中濃度測定を行うと腎排泄だけでなく,効果が乏しいと考えられていた血液透析によってもジフェンヒドラミンが除去されることが示唆された。したがって,重症のジフェンヒドラミン中毒例では血液透析を考慮してもよいかもしれない。
著者
森畑 明昌
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_147-1_158, 2012-01-26 (Released:2012-02-26)
被引用文献数
1

正規表現はスクリプト言語などで広く使われているが,既存の処理系の多くはバックトラックを用いてこのマッチング処理を実装しており,最悪時の効率が悪い.実用的な様々な拡張を加えた正規表現に対するマッチングアルゴリズム,特に,文字列置換等の用途で用いられる「部分マッチの取り出し」を行えるアルゴリズムが望まれる.本論文では多くの処理系で利用可能な「先読み・否定先読み」をもつ正規表現の有限状態オートマトンへの変換を示す.まず,先読み・否定先読みを持つ大きさmの正規表現を状態数O(22m)の決定的有限オートマトンに変換する手法を示す.次に,部分マッチの取り出しを扱うため,重み付き正規表現を議論する.そして先読み・否定先読みを持つ大きさmの重み付き正規表現を状態数O(22m)の重み付き非決定的有限オートマトンに変換する手法を示す.これらのオートマトンにより効率の良いマッチングを達成できる.
著者
森川 嘉一郎
出版者
青土社
雑誌
ユリイカ (ISSN:13425641)
巻号頁・発行日
vol.39, no.16, pp.124-135, 2007-12
著者
舛森 直哉
出版者
一般社団法人日本外科学会
雑誌
日本外科学会雑誌 (ISSN:03014894)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.171-175, 2010-05-01
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
元森 絵里子
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.22, pp.174-185, 2009-07-25 (Released:2013-03-28)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

This paper analyzes the socialization theory and the repeated criticisms of it. Critics partly believe that the childhood socialization is related to better relations between individuals and society (i.e. the “Hobbesian Problem”), and partly doubt the peculiarity of childhood relationships. Luhmann converted the theory by his original interpretation of socialization, and the concept of “the child as a medium of the education”. However, he still remains inside our sociological imagination concerning individual and society. We should rethink why we have tried to question the relation between individual and society, and, on the one hand, analyze “childhood” as a discourse.
著者
森戸 幸次
雑誌
環境と経営 : 静岡産業大学論集 = Environment and management : journal of Shizuoka Sangyo University
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.55-68, 2019-06-01

1967年の第3次中東戦争で東エルサレムを含むヨルダン川西岸・ガザ地区がイスラエルの占領下に入って半世紀。この間、イスラエルの歴代政権は占領地で着々と入植戦略を展開して来た。本稿では、(1)パレスチナの土地が何を根拠に、いかなる手段により接収されてきたのか、(2)ユダヤ人の入植地はどのように建設、拡張されて来たのか、(3)パレスチナの土地所有の根源はどこにあるのかーを、土地の歴史に遡って明らかにしたい。
著者
梅田 匡純 森下 元賀 川浦 昭彦 河村 顕治
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.222-229, 2018-07-01 (Released:2019-07-15)
参考文献数
27

脳卒中患者の歩行獲得にとって,長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)への移行は重要な要素となる.膝継手遊動化のKAFOを装着した歩行練習は,その過程の中で多く経験するが,足部調整には経験則によるところが大きい.AFOを対象にした報告では,足底屈制動の有効性に異論はないが,膝伸展を補うとされる足背屈制動については,推進力が抑制されるなどその見解は分かれる.そこで健常者13名を対象に,膝継手遊動のKAFOを装着し足背屈制限有無の歩行時床反力から検討を加えた結果,足背屈制限を付加した場合においても推進力は維持され,かつ膝関節は伸展方向へ安定させる傾向を示した.この結果からKAFOにおける足背屈制限は,AFO移行に向けた有効適応の可能性を示唆させた.
著者
金森 悟 甲斐 裕子 山口 大輔 辻 大士 渡邉 良太 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-141, (Released:2022-06-30)
参考文献数
23

目的 高齢者の中には運動行動に関心が低くても,健康の保持・増進に必要な歩行時間(1日30分以上)を満たしている者が存在する。しかし,そのような集団の特性は明らかになっていない。そこで,本研究では,運動行動の変容ステージ別に,1日30分以上の歩行を行っている高齢者の特性を明らかにすることとした。方法 本研究は2019年度に日本老年学的評価研究(JAGES)が行った自記式郵送法調査を用いた横断研究である。対象者は24都道府県62市町村在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者45,939人とした。調査項目は1日の歩行時間,運動行動(1回20分以上で週1回以上)の変容ステージ,身体活動の関連要因(人口統計・生物学的要因8項目,心理・認知・情緒的要因3項目,行動要因8項目,社会文化的要因40項目,環境要因3項目)とした。分析は変容ステージで3群に層別し(①前熟考期,②熟考期・準備期,③実行期・維持期),目的変数を1日30分以上の歩行の有無,説明変数を身体活動の関連要因,調整変数を人口統計・生物学的要因全8項目としたポアソン回帰分析とした。結果 調査への回答者24,146人(回収率52.6%)のうち,分析に必要な項目に欠損がある者,介護・介助が必要な者を除いた18,464人を分析対象とした。前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみ,1日30分以上の歩行ありと有意な関連が認められた要因は,人口統計・生物学的要因3項目(配偶者あり,負の関連では年齢80歳以上,および手段的日常生活動作非自立),行動要因2項目(外出頻度週1回以上,テレビやインターネットでのスポーツ観戦あり),社会文化的要因6項目(手段的サポートの提供あり,友人と会う頻度が週1回以上,町内会参加,互酬性高い,趣味が読書,負の関連では趣味が囲碁)であった。結論 高齢者において,前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみで1日30分以上の歩行と関連が認められたのは,人口統計・生物学的要因,行動要因,社会文化的要因の中の11項目であった。変容ステージの低い層でも1日30分以上の歩行を促すには,身体活動を前面に出さず,人とのつながりなどを促進することが有用である可能性が示された。
著者
吉本 裕紀 石橋 慶章 古賀 史記 室屋 大輔 宗 祐人 森光 洋介
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.502-508, 2021 (Released:2021-07-29)
参考文献数
14

症例は70歳代の男性,左水腎症にて他院外来通院中であったが,背部痛が増悪し当院紹介受診となった.精査の結果,S状結腸癌,転移性肝腫瘍(外側区域),原発性左尿管腫瘍の診断となった.S状結腸癌の狭窄が切迫していたため,肝切除は二期的に行うこととし,まず後腹膜鏡下左腎・尿管切除術および腹腔鏡下高位前方切除術(D3)を施行した.術後経過良好で術後第13病日に退院となった.術後の病理所見で,尿管癌は原発性ではなく大腸癌からの転移性腫瘍と診断された.術後のCT検査で切除した左腎付近に腫大したリンパ節があり,転移・遺残が否定できなかったためPET-CTを施行したところS4-5レベルに仙骨骨転移を認めた.転移性尿管腫瘍は高率に遠隔転移を伴い予後不良であるため,集学的治療目的に当院がん治療センター紹介となり現在加療中である.

10 0 0 0 OA 愛国行進曲

著者
森川 幸雄[作詞]
出版者
ビクター
巻号頁・発行日
1938-06
著者
渡辺 理文 杉野 さち子 森本 信也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.71-84, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
15

本研究では,理科を専門とする小学校教員1名を対象にし,対象者のもつアセスメント・リテラシーの具体を個性記述的に分析して示した。また,その対象者がアセスメント・リテラシーを自覚的に用いて授業を計画・実践した事例を示した。方法として,AbellとSiegelの提案するアセスメント・リテラシーの理論的枠組みとモデルを援用した。この枠組みとモデルは,評価の目的,対象,方略,解釈・行動に関わる四つの知識で構成されている。半構造化面接によって,対象者のもつアセスメント・リテラシーの具体を分析し,その具体を枠組みにして,小学校第6学年「水溶液の性質」の授業を計画・実践した。結果として,教師が自身のもつアセスメント・リテラシーを自覚的に用いた授業事例を示すことができた。日本の理科教師のアセスメント・リテラシーの分析に,AbellとSiegelの提案する枠組みとモデルは援用可能であった。
著者
衛藤 恵美 今岡 信介 森 淳一 若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.10-16, 2022 (Released:2022-08-25)
参考文献数
43

要旨:【目的】回復期リハビリテーション(以下,リハと略)病棟に入院した80歳以上の脳卒中患者の転帰に口腔機能がどのように影響するか明らかにする.【対象と方法】80歳以上の脳卒中患者241例を退院先が在宅か施設かで群分けし,基本属性,医学的属性,入院時および退院時の機能的自立度,口腔機能を後ろ向きに検討した.また転帰先への影響因子とカットオフ値を検討した.【結果】在宅群は,入院時ROAG得点は,有意に低値であり,入院時FIM運動項目,認知項目,退院時FIM総得点,FIM運動項目,認知項目は,有意に高値であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,入院時ROAG総得点(オッズ比1.19)とFIM運動項目(オッズ比0.96)が在宅退院に影響を及ぼす関連要因として抽出された.またカットオフ値は,入院時ROAG総得点(≦13点)とFIM運動項目(≧30.1点)であった.【結論】入院時の口腔機能から,在宅退院が困難と予測される高齢脳卒中患者の抽出と目標設定に寄与する可能性がある.
著者
今村 知子 杉森 文夫
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.247-252, 1989-09-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
8

1.羽色などの外部形態に基づく繁殖期のカルガモの雌雄判別を試みるため,栃木県内で得られた80個体を材料に,雌雄による外部形態の違いを観察した。2.上尾筒,下尾羽及び腹に雌雄の差異が認められた。中央尾翼,翼鏡,三列風切及びみずかきの色にも変異が認められたが,雌雄の違いによるものであるとは判断できなかった。3.カルガモの雌雄判別を行う場合,上尾筒,下尾筒及び腹が有効な部位であるといえる。4.野外においてカルガモを観察する場合,至近距離であれば雌雄を判別することは可能であると思われる。
著者
武田 健太朗 大庭 真梨 柿爪 智行 坂巻 顕太郎 田栗 正隆 森田 智視
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.25-50, 2015-07-20 (Released:2015-09-08)
参考文献数
47
被引用文献数
6 6

It is expected to develop new drug more efficiently by incorporating historical data into the current study data. Borrowing historical data which is sufficiently similar to the current data allows increasing power and improving the accuracy of the estimated treatment effect. On the other hand, if the historical data is not similar to the current data, there is a potential for bias and inflated type I error rate. Power prior and hierarchical model are widely known as the Bayesian approaches with borrowing strength from historical information. They have the advantage of deciding the amount of historical information continuously depending on the similarity between historical data and current data. Our goal is to introduce power prior and hierarchical model while showing some examples, and provide a review of points to keep in mind when these approaches are used in the clinical trials.
著者
森川 和則 片岡 咲
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.36, 2010

制御幻想とは、偶然によって決まり制御できない事象をある程度自分の意思や行動でコントロールできると思いこむ認知錯覚であり、一般にギャンブルの状況で現れるとされる。ギャンブルを用いた先行研究のほとんどではまだ起こっていない一回限りの賭けで賭け金の大きさを従属変数としてきた。また、まだ起こっていない事象に対する予期的な制御幻想と、すでに起こった事象に対する回顧的制御幻想とは別々のパラダイムで研究されてきた。これに対し、本研究では、より現実的な反復ギャンブル状況(ルーレット)を用い、ギャンブルから得られる満足感と予期的制御幻想および回顧的制御幻想を同じパラダイムで研究した。実験ではコンピュータ上でルーレットゲームを作成し、回転するボールが減速し始めるタイミングを参加者が手動で決定できる条件とコンピュータが自動的に決定する条件とで満足感と制御幻想を測定した。手動条件で強力な制御幻想が生じた。