著者
今西 伸行 西村 浩一 森谷 武男 山田 知充
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.3-10, 2004-01-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

雪崩発生に伴う地震動の特徴を把握するとともに,雪崩の発生地点と規模を推定する手法を確立するため,4台の地震計を用いて,2001年1月から4月までの80日間,北海道大学天塩研究林内で観測を行った.期間中に,対象域で確認された雪崩の86%にあたる50例の震動波形を得ることができ,地震計によって高い確率で雪崩発生のモニタリングが可能であることが判った.ほぼ同地点で発生した雪崩による震動は類似した波形を示すこと,震動の卓越周波数と地震計から雪崩発生点までの距離との間には負の相関があり,これから発生点の推定が可能であること,また雪崩の運動エネルギーと位置エネルギーとの関係を用いて,雪崩質量の推定が可能であることが示された.
著者
金森 寛充
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

飢餓ストレス誘発による心筋オートファジーは自己細胞内蛋白や細胞内小器官を分解しエネルギー産生を代償することで心機能を維持した。急性心筋梗塞においてオートファジーはエネルギー産生を代償し心筋細胞死を抑制することで梗塞サイズを縮小した。また慢性心筋梗塞においてリモデリング抑制と心機能改善に関与した。すなわちオートファジーは心保護的作用がありこれを促進させることは心筋梗塞の新しい治療手段となりうることが示唆された。
著者
森下 昌紀
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.40-63, 2006-01-26 (Released:2008-12-25)
参考文献数
85
著者
劉 一イ 森 健
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.142-148, 2022-03-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
48

無害な外来抗原と自己抗原に対する免疫寛容が破綻することで生じるアレルギーや自己免疫疾患は、近年患者数が増加している。その寛解に向けて、抗原に対する免疫寛容を誘導する免疫寛容療法が研究されてきた。免疫寛容療法では、抗原を効率的かつ特異的に目的の免疫細胞に送達した後、これらを寛容性の表現型や不応答などへと導く必要がある。その際、医薬品には、抗原に対する免疫反応の回避、免疫細胞の標的化、および免疫細胞の調節の3つの機能が求められる。本稿では、抗原特異的な免疫寛容を誘導する戦略と医薬品の設計について概説し、最近の研究の例を紹介するとともに、将来展望を述べる。
著者
森 顕登
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.63-79, 2015-03-23 (Released:2017-03-24)

戸籍制度は親族関係を公証する国民登録制度であるが、この制度のもとに作成される戸籍は災害のたびに存在の危機にさらされてきた重要文書の一つである。昨今の例では2011年の東日本大震災で4つの自治体の戸籍正本が滅失しているが、先の大戦でも空襲によって戸籍を滅失させた自治体が相次いだ。例えば旧東京市部では7区の戸籍が被害を受け、そのうち3区はそのすべてを滅失している。来たるべき空襲に備えて戸籍はどのように管理されていたのか。そして、滅失した戸籍はいかにして再製が図られたのか。この二つの問いの答えを得るべく、法務省民事局編『民事月報』26巻2号(1971年刊)に掲載された戸籍実務家による座談会を分析する。
著者
森田 昌敏
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.1083-1096, 1981-11-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
73
被引用文献数
1 2

生体に取り込まれた金属は血流にのって移動し, いろいろな臓器に到達し, 様々な化学変化を受けながら, 一部は貯蔵 (あるいは蓄積) され, 残りは排泄されていく。吸収から始まる, これらの一連のプロセスは, 各種のフィードバック回路を内蔵した化学反応系であるが, その内容は非常に複雑精緻であり, 今日においても未解明の部分が多い。本稿では, 重金属の生体内での代謝を, 吸収, 輸送, 体内分布, 排泄にわけて記述した。重金属の代謝に関する研究は, 栄養学, 毒物学を中心とし, 分析化学や生化学のような基礎科学から臨床医学のような応用科学まで広い範囲の研究者によってなされてきており, その記述内容は著者のバックグランドによって, かなり左右される。ここでは科学者から見た代謝が書かれている。分析技術の最近の進歩についても若干触れている。
著者
小森 陽一
雑誌
成城国文学
巻号頁・発行日
no.1, pp.41-52, 1985-03
著者
高川 晋一 植田 睦之 天野 達也 岡久 雄二 上沖 正欣 高木 憲太郎 高橋 雅雄 葉山 政治 平野 敏明 葉山 政治 三上 修 森 さやか 森本 元 山浦 悠一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.R9-R12, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
7
被引用文献数
8

全国的な鳥類の分布情報データを用いて,各種の分布を決める要因や生息数の増減に影響する要因等を探る上で,どのような生活史・生態・形態的な特性をもった鳥において変化が見られるのかを検討することは,効果的な解析手法の1つである.こうした解析を行なうためには日本産鳥類の形態や生態に関する情報が必要である.そこで,今回,海鳥類を除いた日本でみられる鳥類493種について,生活史や生態,形態の情報についてとりまとめ,データベース化した.このデータベース「JAVIAN Database(Japanese Avian Trait Database)」は,さまざまな研究を行なう上でも有用な情報と考えられるため,ここに公開した.
著者
森山 至貴
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.103-122, 2011-06-30

社会的マイノリティをめぐる議論は,差別の考察と結びつくかたちで常にカテゴリー語を1つの重要な論点としてきた.しかし,当該カテゴリー成員にとっての呼称が果たす意味や意義については,考察されていない.そこで本稿では,ゲイ男性およびバイセクシュアル男性の自称としての「こっち」という表現を取り上げ,この論点について考察する.具体的にはゲイ男性またはバイセクシュアル男性13人に行ったインタビューの結果を分析する.<br>ゲイ男性とバイセクシュアル男性の集団を指す「こっち」という「婉曲的」な呼び名が〈わたしたち〉を指すために用いられる理由はいくつかあるが,そこに「仲間意識」のニュアンスが込められている点が重要である.この点には「こっち」という言葉のもつトートロジカルな性質が関連しており,「仲間」であることは性的指向の共通性には回収されない.また,「仲間意識」を強く志向するこの語彙を用いることによって「仲間意識」を発生させることも可能である.ただし,それが投企の実践である以上,他の言葉よりは見込みがあるにせよ,「仲間」としての〈わたしたち〉が必ず立ち上がるとは限らない.<br>反例もあるにせよ,曖昧さをもったトートロジカルな「こっち」という言葉は柔軟で繊細なかたちで〈わたしたち〉を立ち上げるための言葉として存在しており,このことは意味的な負荷の軽減がマイノリティ集団の言語実践にとって重要ではないか,との洞察を導く.
著者
今井 佐恵子 松田 美久子 藤本 さおり 宮谷 秀一 長谷川 剛二 福井 道明 森上 眞弓 小笹 寧子 梶山 静夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.112-115, 2010 (Released:2010-04-26)
参考文献数
9
被引用文献数
5

2型糖尿病患者を対象に,野菜を米飯の後に摂取した場合と米飯の前に摂取した場合の,摂取後の血糖値および血清インスリン値を無作為クロスオーバー法により調べた.野菜から先に摂取すると,米飯から先に摂取した場合と比較して,30分後の血糖値は217±40 mg/dlから172±31 mg/dl(p<0.01),60分後は208±56 mg/dlから187±41 mg/dlと低値を示した.インスリン値も30分後,60分後共に有意に抑制された.「食べる順番」を重視した容易な教育方法が食事指導に重要であると考える.
著者
島本 龍 森下 友一朗 北川 高史
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.107-110, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
5

原子力発電所のコンクリート構造物は,設計および施工時の品質管理活動により,耐久性が確保された構造物であるが,運転開始後も技術者による保守管理活動が継続的に行われている。高経年化技術評価においては,コンクリートの強度低下等の劣化事象に影響を及ぼす劣化要因毎に長期的な健全性評価を実施しており,保守性の高い評価体系となっている。プラントの長期停止時に進展の可能性が否定できない要因に,コンクリート強度低下事象に対する中性化および塩分浸透が挙げられるが,いずれも将来にわたって大きな裕度をもって健全性が確保されている。
著者
栢森 良二
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.86-95, 2014-02-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1

顔面神経麻痺による表情筋機能不全に対して, 神経再生を促せば顔面神経麻痺は回復すると考えがちである. しかし, これは誤っている. むしろ再生を抑制することが重要である. 迷入再生を抑制して病的共同運動を予防軽減することが目標である. 表情筋の役割は, 第1に目, 口, 鼻, 耳の顔面開口部を閉鎖することであり, ヒトでは第2に感情表出である. 神経障害が起こると, 早急に回復させるべく顔面神経核の興奮性亢進が起こり, 開口部の閉鎖促進機序が作動する. 骨格筋と異なり表情筋は皮筋である. 同様に顔面神経幹には神経束構造がなく, 約4,000本の神経線維は密接している. 接触伝導や迷入再生が容易に起こり, 4つの開口部は同時に効率的に閉鎖する合目的性の解剖になっている. 感情表出の維持には,むしろ開口部同時閉鎖を抑制する必要がある. Bell麻痺などの膝神経節部での神経炎では, 脱髄であるニューラプラキシアが生じる. しかし,骨性神経管内では浮腫による絞扼障害が加わる. まず栄養血管閉鎖による求心性の遡行変性が生じる. 内膜は温存されている軸索断裂である. さらに絞扼圧迫が強いと, 遠心性ワーラー変性が生じ神経断裂が起こる. 内膜も断裂しているために, 引き続き迷入再生が生じる. 脱髄と軸索断裂線維は1mm/日スピードで再生し, 遅くとも発症3カ月で表情筋に達する. 神経断裂による再生突起の指向性は,随意運動あるいは筋短縮方向に向かう. 迷入再生回路の形成時間と拡がりは, 随意運動と筋短縮の強度に規定される. 最速1カ月で迷入再生回路が形成される. このために, 発症3カ月で顔面神経麻痺が完治しない症例では, 4カ月以降に迷入再生線維が順次表情筋に到着して病的共同運動が顕在化する. 神経断裂線維再生時に随意運動と筋短縮を抑制することによって, 迷入再生を抑制して病的共同運動を予防軽減することがリハビリテーションの原則である. 強力な随意運動を避け, 頻回のマッサージを行い, 眼瞼挙筋による眼輪筋ストレッチを行うことが基本的手技である.
著者
森 健人
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

これまで博物館の収蔵標本は概ね科学の発展のために収集されてきたといっても過言ではない。しかし,博物標本は自然物である。自然物の役割は科学的研究活動にのみ限定されるべきなのであろうか。申請者はそうは思わない。芸術,エンターテイメントを含めあらゆる文化的創作活動に対しても自然物たる博物館標本は貢献できる可能性が秘められている。しかしながら,標本の保守管理上の制約から「誰でも」「自由に」博物館の標本にアクセスできる環境を構築するためには膨大なコストが必要となり,ただちにそれを実現することは不可能である。そこで博物館標本の3Dモデルが重要となってくる。3Dモデルを活用すれば,「誰でも」「自由に」閲覧する環境を比較的低コストで整えることができる。また,「博物館標本に自由にアクセスできる環境」に慣れていない一般観覧者に対しても「確実にクリーン」で且つ「損壊の恐れがない」3Dモデルとの接触は良い導入になると考える。上記を踏まえて,本研究ではフォトグラメトリー(写真測量)を用いて効果的に博物館標本を3Dモデル化する方法を検証し,如何にして公開するかを模索するものである。博物館標本の3Dモデルを公開する方法として申請者は3種の方法を考えた。1)インターネット上での3Dモデル閲覧サイトの公開,2)3Dプリントを利用した博物館内におけるハンズオン展示,3)3Dプリントを利用した博物館外におけるハンズオン展示。1)についてはYoshimoto3D(β)として国立科学博物館HP上にデータベースを掲載した(http://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/yoshimoto/database/index3D.html)。2)については複数の博物館で試験的に公開を行った。3)については現在「路上博物館」という館外展示を試験的に展開している。