著者
塚田 亨 徳永 千穂 酒井 光昭 南 優子 佐藤 幸夫 榊原 謙
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.743-747, 2014 (Released:2014-04-29)
参考文献数
7

要旨:肺動脈原発腫瘍は極めて稀な疾患であり,未治療の場合は予後1.5 カ月ともいわれる悪性の疾患である.症例は62 歳女性.咳嗽と血痰を主訴に受診.造影CT で肺動脈肉腫と診断,左右肺動脈はほぼ腫瘤に占拠され突然死の可能性が高いと判断し手術適応とした.麻酔導入後に心停止となり,緊急開胸し人工心肺を開始,主肺動脈から右肺動脈に嵌頓した腫瘍を摘出,肺動脈は馬心膜で再建した.左肺気管支の断端の確保も可能であり人工心肺離脱後に左肺全摘を施行し腫瘍を完全に摘出した.病理組織より左肺動脈内膜肉腫と診断,腫瘍断端は陰性であった.術後補助化学療法については明確なプロトコールがないことより選択しなかった.現在術後36 カ月が経過しているが,再発を認めず外来で経過観察中である.左肺動脈原発血管内膜肉腫に対して,肺動脈再建・左肺全摘術を行い術後36 カ月の生存期間を得た.肺動脈原発血管内膜肉腫の予後改善のためには,完全切除をめざした積極的な手術が有効と考えられた.
著者
榊田 朋広
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部考古学研究室
雑誌
東京大学考古学研究室研究紀要 (ISSN:02873850)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.39-92, 2009-03-20

続縄文時代から擦文時代にかけての社会の大きな変動期を研究するための基礎作業として、北大式土器の編年を現在の資料水準に則り整備した。北大式の編年は、先行研究に対する内省的検討や相互批判の欠如が多くの混乱をもたらし、いくつもの案が乱立しているのが現状である。そのため、近年の資料の増加にもかかわらず、研究そのものは深刻な停滞状況に陥りつつあるといっても過言ではない。そこで、まず研究の流れを概観し、今日もとめられる北大式研究が、資料の実態に即した時間軸の設定と、土器の型式学的変遷の見極めであることを指摘した。次に、土器の特徴や出土状況といった考古学的情報を最大限に活用し、現在設定し得るかぎりの時期区分案を提示した。さらに、隣接諸型式からの影響も考慮しつつ、北大式の成立・変容の実態について詳細に論じた。
著者
三井 利幸 榊原 浩之
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.777-782, 1999-08
被引用文献数
1 1

非破壊で印影中の朱肉を顕微分光分析計で測定し,日本で製造されている13種類の市販の事務用朱肉の異同識別を行った.方法は次のとおりである.試料を50倍に拡大後,顕微分光分析計を用いて380から760nmまでの間を5nm間隔で各波長に対する吸光度を測定した.得られた76の吸光度値を380nmの吸光度値で除した.1試料から得られた76の数値を用いて多変量解析法の一種であるクラスター分析,主成分分析,KNN,SIMCAで検討した.その結果,主成分分析以外は,いずれの3方法を用いても13種類の事務用朱肉間の異同識別が可能であった.更に,印影は押印されてからかなり長期間放置されている場合があることから,放置時間についても検討したところ,1日10時間蛍光灯を照射する方法で,24か月間放置しても異同識別には全く影響が認められなかった.
著者
三橋 伸夫 佐藤 栄治 黎 庶旌 本庄 宏行 望月 瞬 宇賀神 直彬 榊 京太郎 陶 鋒 斉藤 太紀
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中国広州市の城中村および近郊農村を対象に、急速な経済成長を背景として行われた都市化、高密度住宅化を防止するための産業振興および居住環境整備の方策について検討した。その結果、これら農村集落がその歴史文化的,産業的な特性を生かした経済的振興と居住環境整備を両立させることには多くの障がいがあることが明らかとなった。不安定な外部経済への依存は持続的な集落経営に結びつかず,村(村民委員会)による将来計画の策定が望まれる。広州市は近郊農村の農業・観光産業育成に向けた技術的支援と資金提供を行うべきことを提言する。
著者
榊原 良太
出版者
JAPAN SOCIETY FOR RESEARCH ON EMOTIONS
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.40-49, 2014
被引用文献数
3

This paper reviews the research trend of reappraisal and the issues it confronts, with emphasis on the subtypes of the strategy. First, the paper reviews the concept of reappraisal within Gross's process-model. Then, it presents the emotion regulation effects of reappraisal and its influences on psychological well-being. After that, the paper addresses the controversial points of the past research that treated reappraisal as a single strategy. In doing so, the need of the perspective from the subtypes of reappraisal is discussed, and some studies focusing on the subtypes of reappraisal will be reviewed. Finally, the paper concludes with some problems in the preceding studies of reappraisal and discussions on desirable direction for future research.
著者
岸本 宏子 羽石 英里 ERICKSON Donna エリクソン ドナ 細川 久美子 鈴木 とも恵 河原 英紀 竹本 浩典 榊原 健一 藤村 靖 新美 成二 本多 清志 中巻 寛子 長木 誠司 八尋 久仁代
出版者
昭和音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

音楽学の学際的な研究の試みとしてとりあげた「ソプラノの声の特性」の研究は、音声学、音響学、物理学、医学、声楽演奏、声楽指導、音楽学、音楽療法等の関係分野それぞれに、有益な収穫をもたらした。しかしそれにも増す成果は、研究の進行と共に個々の分野内の研究成果の枠を超えて、「学際的研究」としての総合的な研究への興味が高まって来た。そして、新たな研究代表者の下、本研究の成果を礎とした新たな研究へと発展的に継承されることである(基盤研究C25370117「歌唱時の身体感覚の解明:MRIによる発声器官の可視化と音響分析を中心とした試み」)。
著者
榊原 雅人 寺本 安隆 谷 伊織
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.284-293, 2014
被引用文献数
9

The present study aimed to develop a short-form self-report measure to assess relaxation effects (S-MARE). Participants (<i>N</i> = 190) responded to a questionnaire comprised of 45 items assessing relaxation and non-relaxation based on the Relaxation Inventory (Crist et al., 1989). Exploratory factor analysis identified three factors: physiological tension, psychological relaxation, and anxiety. Each factor was related to 5 items and each had an acceptable Cronbach's coefficient (α = .93, .94, and .85). S-MARE scores pre- and post- relaxation instruction were significantly correlated with the Emotional Relaxation Scale (Tokuda, 2011) (<i>r</i> = .446) and with State Anxiety (<i>r</i> = –.531) (<i>N</i> = 172). There was a significant correlation between the amplitude of the high frequency component of heart rate variability during relaxation instruction and physiological tension scores on the S-MARE (<i>r</i> = .456—.474, <i>N</i> = 24). These results confirmed the reliability and validity of the S-MARE in terms of physiological correlation with cardiac parasympathetic tone, suggesting that the S-MARE is a valid measure of relaxation effects.
著者
榊原 均 木羽 隆敏 信定 知江 小嶋 美紀子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

高CO2により引き起こされる植物の成長促進において、トランスゼアチン型サイトカイニンの生合成亢進が要因の1つであることを明らかにするとともに、その原因となる遺伝子と制御機構を明らかにした。サイトカイニン作用の調節には、量的なものに加え、側鎖修飾による質的な調節機構があることを明らかにした。窒素栄養に応答したサイトカイニン生合成調節は、外環境(硝酸イオン)と内環境(グルタミン代謝)の複数の因子によって制御されていることを明らかにした。
著者
呉 宣児 高木 光太郎 榊原 知美 余語 琢磨 伊藤 哲司 奥田 雄一郎 竹尾 和子 砂川 裕一 崔 順子 片 成男 姜 英敏 周 念麗 渡辺 忠温
出版者
共愛学園前橋国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本の大学と中国、韓国、ベトナムの大学がペアになり交流授業を行い、集団間の異文化理解が起こりやすい授業の方式や素材の検討を行った。授業の素材としては、映画、イラスト-によるストーリ、公的な場所での規範・ルールなどが有用であることを確認した。また異文化理解へのプロセスを検討する分析概念として 「歪んだ合わせ鏡」「対の構造」「対話の接続と遮断」「情動反応」などの用語が有効であることが示された。
著者
榊原 哲也
出版者
立命館大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、ドイツ現象学派内部においてダウベルト、プフェンダー、ライナッハらによって提示された言語行為の考え方の全貌をできる限り明らかにし、それをオースティンに始まる英米の言語行為論の成果と比較検討することによって、現象学の立場から、現象学と英米哲学との架橋を試みるものであった。英米の言語行為論との比較の上に立った、これまでにない新たな「言語行為の現象学」を可能な限り展開することを目指して、本研究は始められた。まず第一に、ドイツ現象学派内部における言語行為の考え方の発展過程を辿って、ダウベルトからプフェンダー、ライナッハに至る思想の全貌をできる限り明らかすることが試みられた。ダウベルト、プフェンダーについては、時間的制約のために、その思想を十分に捉えることができなかったが、しかし、ライナッハについては、近年公刊された新全集の読解に基づいて、そこに明らかに、しかも英米の言語行為論よりも約半世紀も前に、「言語行為」論の考え方が形成されつつあったことが確認された。これが本研究の第一の成果である。その上で第二に、ライナッハの言語行為の考え方と英米の言語行為論(とりわけオースティン)との比較検討が試みられた。これについては、残念ながら、十分な考察がなされたとは言えないが、しかし、次のことだけは、すなわち、現在英米哲学の一つの潮流を為しているオースティン以来の言語行為論に対して、ライナッハの「現象学的」言語行為論が、各言語行為の持つ本質連関を現象学的に解明してくれるという点で、十分寄与しうる余地のあることだけは、少なくとも確認された。以上が本研究の第二の成果である。さらに第三に、「現象学的」言語行為論を基礎づける為に、現象学の流れを解釈し直す試みと、「現象学的記述」をめぐる考究が行われたが、これらは本研究にとって、きわめて有益であった。以上が第三の成果である。以上の成果の一部は、論文の形で公刊され、また一部は立命館大学における講義で開陳された。
著者
水光 正仁 榊原 陽一
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、生理機能の不明なオーファン硫酸転移酵素(SULT)のSULT4A1およびSULT7A1の生理機能解明と生体シグナルの変換・伝達への関与解明を目的に研究を行った。SULT4A1に関しては、ゼブラフィッシュ胚を用いた発生段階での遺伝子発現解析を行った結果、神経系の発生・発達において機能を担っていることを明らかにした。一方、SULT7A1に関しては、基質特異性を検討して、シクロペンテノン型のプロスタグランジン(PGA2や15d-PGJ2)の硫酸化を明らかにした。以上のことから、SULT4A1およびSULT7A1の生理機能と生体シグナルの変換・伝達への関与を明らかにすることが出来た。
著者
榊 美知子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.184-196, 2007-06-30

本研究では,手がかりイベント法(event-cueing technique)を利用し,(1)自伝的記憶がどのように構造化されているのか,(2)自伝的記憶の感情情報がどのように保持されているかに関して検討を行った。46名の大学生に手がかり語を8語呈示し,関連する自伝的記憶を1つずつ想起させた後(cueing events;手がかりイベント),各手がかりイベントに関連する自伝的記憶(cued events;想起イベント)を2つずつ想起するよう求めた。その結果,(1)想起イベントと手がかりイベントは高い時間的近接性を持っていること,(2)想起イベントを思い出す際に,手がかりイベントと同じテーマに関する記憶が想起されやすいことが示され,自伝的記憶がテーマごとに領域に分かれた構造を持つことが明らかになった。更に,自伝的記憶の領域と感情の関連について階層線形モデルによる分析を行ったところ,領域ごとに異なる感情状態と関連していることが明らかになった。このことから,自伝的記憶と感情の関連や,自伝的記憶による感情制御を検討する際に,自伝的記憶の領域構造を考慮する必要があることが示唆された。
著者
榊 美知子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.184-196, 2007-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34

本研究では, 手がかりイベント法 (event-cueing technique) を利用し,(1) 自伝的記憶がどのように構造化されているのか,(2) 自伝的記憶の感情情報がどのように保持されているかに関して検討を行った。46名の大学生に手がかり語を8語呈示し, 関連する自伝的記憶を1つずつ想起させた後 (cueing events; 手がかりイベント), 各手がかりイベントに関連する自伝的記憶 (cued events; 想起イベント) を2つずつ想起するよう求めた。その結果,(1) 想起イベントと手がかりイベントは高い時間的近接性を持っていること,(2) 想起イベントを思い出す際に, 手がかりイベントと同じテーマに関する記憶が想起されやすいことが示され, 自伝的記憶がテーマごとに領域に分かれた構造を持つことが明らかになった。更に, 自伝的記憶の領域と感情の関連について階層線形モデルによる分析を行ったところ, 領域ごとに異なる感情状態と関連していることが明らかになった。このことから, 自伝的記憶と感情の関連や, 自伝的記憶による感情制御を検討する際に, 自伝的記憶の領域構造を考慮する必要があることが示唆された。
著者
舘 〓 榊 泰輔 荒井 裕彦 西澤 昭一郎 ホセ・フェリペ ペラエス・ポロ
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.172-184, 1989
被引用文献数
14 14

この研究は, 安定的な接触作業を実現するマニピュレータのインピーダンス制御法に関するものである.この方法は, マニピュレータの機械的インピーダンスを見かけ上変化させることにより, ロボットと環境との間の動的な相互作用を制御する.<BR>従来のインピーダンス制御法では, 力センサまたはトルクセンサを用いているため, マニピュレータの部品点数が増えたり構造が複雑になるという問題があった.<BR>この報告では, 力センサやトルクセンサを使用せずにインピーダンス制御を行う方法を提案する.マニピュレータの各軸の角速度・角加速度を推定し, 目標とするインピーダンスを実現するために各軸に必要なトルクを内部モデルから計算し各軸に加え制御する.2自由度のDDマニピュレータをもちいた接触作業によりその有効性を検証した.