著者
新里 貴之 中村 直子 竹中 正巳 高宮 広土 篠田 謙一 米田 穣 黒住 耐二 樋泉 岳二 宮島 宏 田村 朋美 庄田 慎矢 加藤 久佳 藤木 利之 角南 聡一郎 槇林 啓介 竹森 友子 小畑 弘己 中村 友昭 山野 ケン陽次郎 新田 栄治 寒川 朋枝 大屋 匡史 三辻 利一 大西 智和 鐘ヶ江 賢二 上村 俊雄 堂込 秀人 新東 晃一 池畑 耕一 横手 浩二郎 西園 勝彦 中山 清美 町 健次郎 鼎 丈太郎 榊原 えりこ 四本 延弘 伊藤 勝徳 新里 亮人 内山 五織 元田 順子 具志堅 亮 相美 伊久雄 鎌田 浩平 上原 静 三澤 佑太 折田 智美 土肥 直美 池田 榮史 後藤 雅彦 宮城 光平 岸本 義彦 片桐 千亜紀 山本 正昭 徳嶺 理江 小橋川 剛 福原 りお 名嘉 政修 中村 愿 西銘 章 島袋 綾野 安座間 充 宮城 弘樹 黒沢 健明 登 真知子 宮城 幸也 藤田 祐樹 山崎 真治
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

徳之島トマチン遺跡の発掘調査をもとに、南西諸島の先史時代葬墓制の精査・解明を行なった。その結果、サンゴ石灰岩を棺材として用い、仰臥伸展葬で埋葬し、同一墓坑内に重層的に埋葬することや、装身具や葬具にサンゴ礁環境で得られる貝製品を多用することが特徴と結論づけた。ただし、これは島という閉ざされた環境ではなく、遠隔地交易を通した情報の流れに連動して、葬墓制情報がアレンジされつつ営まれていると理解される。
著者
久保 雅義 津金 正典 笹 健児 榊原 繁樹
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.313-322, 1997
参考文献数
8
被引用文献数
3

A lot of studies about mooring ship motions have done in recent decades, but they are focused on cargo handling criteria. At some ports in open sea, mooring ships move so hard and sometimes mooring lines or fenders are broken. So, when we think about mooring criteria, we have to consider a lot of parameters. In this paper, we study about these parameters and we pick up some cases of mooring accidents at the harbor face to Pacific Ocean. And we find out the results as follows : (1) We can't argue about the mooring criteria correctly if we focus only on ship motions. (2) We can clear up the relation between cargo handling criteria and the mooring criteria. (3) Mooring accidents tend to take place in winter season than other seasons in these cases. (4) In most of those accident cases, mooring ships should shift to offshore earlier stage. (5) The required time length when ships shift to offshore depends on the ship type, the cargo handling way, etc. (6) The difficulty of wave prediction makes so hard to make out mooring criteria. (7) We have to consider long period wave in case of considering the mooring criteria. (8) There are trade off relations between the safety of mooring ship and the berth efficiency. (9) It is necessary to grasp the effect of moored ship motions by wave and wind correctly, if we want to avoid mooring accidents.
著者
宮下 純夫 木村 学 MELINIKOV M. ROZHDESTVENS SERGEYEV K.F 榊原 正幸 石塚 英男 岡村 真 木村 学
出版者
新潟大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

サハリン島は地質学的に日本列島の延長であり,環太平洋造山帯の一部を担っている.本研究では,サハリン南部の詳細な調査をおこない,サハリンにおける沈み込み・付加テクトニクスについて解明するとともに,日本での結果とあわせ,環太平洋造山帯のテクトニクスに迫ることを目的としている.これまでの成果は以下のように要約される.1.アニバ岩体:アニバ湾の北部及び東海岸には白亜紀付加体ーアニバ岩体が露出している.本岩体は緑色岩類が卓越する点で,白亜紀付加体の典型である四万十帯とは異なる.北部海岸の岩体は構造的・岩相的に二つのユニットに区分される.上部ユニットでは玄武岩から陸源砕屑物に至る一連の層序が観察され,下部ユニット上に衝上している.下部ユニットは主に玄武岩とメランジェからなり,石灰岩ブロックもしばしば含まれる.構造は,沈み込み帯における初生的な構造を表していると考えられる.スラストシ-トが繰り返す東フェルゲンツ構造を示す.アニバ湾東海岸ではメランジェが卓越しており,石灰岩のブロックを多数含むという点でやや異なる.構造的には,北部海岸と同様の覆瓦構造を示す.石灰岩とチャ-トの互層の出現は,本地域の付加体が海洋島などから由来していることを示唆している.2.ススナイ帯:本帯は神居古潭帯の延長に位置する高圧変成帯で,サハリン東海岸の50Kmにおよぶ調査により,南へ向かって各々が多数のスラストシ-トからなる5つのドメインが識別された.ドメイン1は緑色片岩ーチャ-トー泥質片岩と緑色片岩の互層から,ドメイン2は玄武岩質岩ーメタチャ-ト,泥質片岩と緑岩片岩ないしメタチャ-トの互層,泥質片岩からなっている.ドメイン3の最下部はメランジェから,上部は砂質岩を伴う泥質片岩からなる.ドメイン4は玄武岩が大量に出現することで特徴づけられ,上位は石灰岩ないしチャ-トを含む玄武岩質堆積岩,黒色頁岩によって覆われている.ドメイン5は黒色頁岩と珪質片岩の互層からなっている.緑色岩やメランジェが出現しない点で異なっている.変形作用は3時相が識別された.D1時相は東ないし北東方向のL1線構造とS1片理面の形成,D2時相は全域に発達する,北東走向の非対称褶曲,シ-ス褶曲,北西方向の線構造などによって示される.センスは南方を示す.D3時相は直立した褶曲軸面をもつ開いた褶曲で,褶曲軸は北東走向で水平に近い.D1ーD2時相はダクタイルな変形であるが,D3時相はブリットルな変形を示している.変成作用は塩基性岩の鉱物組み合わせに基づいて,パンペリ-石ーアクチノ閃石帯(ドメイン3,4,5)とパンペリ-石ーエピド-トーアクチノ閃石帯(ドメイン1,2)の二つに分類される.前者に出沼する青色片岩はNa角閃石ーNa輝石ー緑泥石ーヘマタイト,後者の青色片岩はエピド-トーNa角閃石ーNa輝石ー緑泥石の組み合わせを示す.Na角閃石はマグネシオリ-ベカイトでありNa輝石はジェ-ダイト成分に乏しいエジリン輝石ないしエジリン普通輝石である.最高変成条件は200ー300℃,4ー5Kbarと見積られる.また,変成作用の時期はD2時相と考えられる.3.玄武岩類の岩石学的特徴:主要成分・微量成分分析に基づいて,アニバ岩体とススナイ岩体に大量に出現する玄武岩類には,NーMORB,TーMORB,EーMORB,OIT,アルカリ玄武岩にわたる様々な岩石が存在していることが明かとなった.大局的な傾向としては,アニバ岩体はアルカリ玄武岩とOITが,ススナイ岩体ではTーMORBが卓越しているという特徴がある.これらのことから,アニバ岩体の多くは海山ないし海洋島に,ススナイ岩体は海台に由来する可能性が強い.4.化石年代:アニバ岩体のチャ-トや灰緑色頁岩からチトニアンとコニアシアンを示す放散虫が確認されている.5.今後の展望:現在,化石年代や岩石の放射年代,鉱物分析などが進行しつつある.これらのデ-タが得られて全体的な検討が進むと,海洋地殻物質の付加・上昇過程が解き明かされ,サハリン南部は付加体の形成を解明する世界的な典型となることが期待される.また,そのためにはさらに広域的な調査が求められる.
著者
PERRY 史子 榊原 和彦 福井 義員
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

豊かな都市生活環境を創り出す一つの大きな要因である、誰でもがアクセスできる都心公共空間、アーバン・インテリアを対象とし、その空間計画やデザインの方向性を見出す事を目的として、具体的な研究対象地を設定して実態調査を実施した。その実態把握・分析に基づき、都市空間の中でのアーバン・インテリアの位置付け、空間形態の類型、空間的特徴を導き出した。さらに、空間の重なりも含めてアーバン・インテリア空間の実態を総合的に、簡単に把握できるように、GISを応用した視覚的表示システムを構築した。
著者
砂田 寛司 堀越 哲郎 榊原 学
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.65-75, 2009-03-31

これまでの研究でヨーロッパモノアラガイの成体(殻長21 〜 26 mm)を用い,嫌気状態下での呼吸行動を1回のKCl 提示により減少させるone-trial conditioning を行うことにより長期記憶が形成されることと,オペラント条件づけにおいて,モノアラガイの捕食者であるザリガニの溶出物(crayfish effluent: CE)を含むザリガニ飼育水中で,条件づけを行うと,pond water(PW)下でトレーニングを行ったときと比較し,長期記憶の保持時間が延長されることが報告されている(Lukowiak et al., 2008).本研究ではCE 環境のone-trial conditioning に対する長期記憶の形成と,延長の効果を成長段階で呼吸様式の変化がある幼生(殻長12 〜 16 mm)と成体に分けて検討した.長期記憶の形成に伴う電気生理学的な活動の変化を,呼吸行動の中枢リズム発生器(CPG)であるRPeD1 と,RPeD1 を抑制的にシナプス結合する殻引込みの介在ニューロンRPeD11 から記録した.その結果,幼生においてPW 環境でトレーニングしても長期記憶は形成されないが,CE 曝露後に行うトレーニングにより長期記憶が形成された.また成体ではCE 曝露後のトレーニングでは長期記憶の保持時間は延長した.またRPeD1 で見られる電気生理学的な活動の減弱は,少なくともRPeD11 がもたらす興奮性増大の影響を受けていることが示唆された.
著者
榊原 秀訓 岡田 章宏 大田 直史 庄村 勇人 友岡 史仁 洞澤 秀雄 田中 孝和 上田 健介 萩原 聡央 和泉田 保一
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

行政組織だけではなく、サードセクターを含む民間組織が行政サービスの提供を行ってきている。また、目標設定・協定締結や検査・評価が多用されてきた。公益事業関係では消費者組織の権限が強化され、都市計画領域では住民参加も進んでいる。同時に、サービス提供主体間の協働、透明性・情報公開やアカウンタビリティの確保、サービス提供労働者の労働条件確保、利用者の人権保障を目指した改革がなされ、公務員の伝統的価値を守る規範も策定されている。
著者
榊 宏之 大村 佳之 松浦 信男 河田 敏勝 落合 穣 山田 知美 臧 黎清 西村 訓弘 Sakaki Hiroyuki Omura Yoshiyuki Matsuura Nobuo Kawada Toshikatsu Ochiai Yutaka Yamada Tomomi Zang Liqing Nishimura Norihiro
出版者
三重大学社会連携研究センター
雑誌
三重大学社会連携研究センター研究報告
巻号頁・発行日
no.18, pp.57-60, 2010

現在、N-95 マスクは空気・飛沫感染する結核菌や、インフルエンザ感染対策用として用いられ重要な役割を担っている。しかしながら、臨床的なニーズを充足できていない点も有しており、その一つとして、近年その感染拡大が社会問題となっているインフルエンザの感染対策に対する N95 マスクのフェイスフィット性が挙げられている。また、メーカー毎にサイズ、構造にもばらつきがあり、実際のパンデミックの際に個々人に対して最適なフェイスフィット性のマスクを提供することに困難を極めることが指摘されている。本研究では、マスクのサイズと、その構造に着目し、人の体格、顔の形状などを検討することで、より多くの人にフィットする最適サイズを検討すると共に、人の呼吸を利用し理論的にフィット性を高めるマスクの構造について検討を行った。検討結果を基に、外周の隙間からの吸込みを防止する構造のマスクを考案し、その試作品を作製した。試作マスクは、体格、顔の形状が異なる幅広い対象者に対してフィット性が高く、感染防御に有効であることが確認され、この結果から、N95 マスクを改良した試作マスクの構造原理を基に開発を進めることで、パンデミックの際にも 1 サイズでより多くの人にフィット性の高いマスクの創出が可能であることが示唆された。
著者
境田 清隆 榊原 保志 高橋 日出男 榊原 保志 高橋 日出男
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

仙台市においては海風、長野市においては山風という局地循環がヒートアイランドを緩和している実態を観測結果から捉えようとした。仙台では春季から夏季にかけての海風吹走日に、3~5℃の気温低下が観測されるが、その効果は都心でも低減しなかった。長野においては、北西方向の裾花川から吹き出す山風が都心を冷却している実態が明らかになった。また東京都心では海風を含む南風吹走時に新宿などの風下に強雨が発現することが明らかになった。
著者
桝潟 俊子 野崎 賢也 松村 正治 佐藤 亮子 榊田 みどり
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、グローバル化のもとでローカル・フードムーブメント(地産地消やCSA:地域が支える農業、AMAP:農民農業を支える会、短い流通など)が、内外で広がりをみせている。また、欧米諸国では、ローカル・フードシステムの再評価がすすんでいる。本研究では、欧米におけるローカル・フードムーブメントの動向および日本各地の事例調査にもとづき、「安全・安心」「安全保障」「環境」以外の社会的な視点・論点(たとえば、食をめぐる社会関係や食と農のシステムを支える労働の社会的公正など)を導入し、日本におけるローカル・フードシステムの意義について実証的検証を行った。
著者
市原 寛 榊原 正幸 大野 一郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.746-757, 2004-12-15
被引用文献数
1 1

四国北西部に存在する南北系の地形構造の一つ,松山平野"堀江低地"について,重力異常探査および既存のボーリング資料により検討を行った.ボーリング資料より,低地下に東落ちの基盤深度の不連続帯およびこれに向かって急傾斜する堆積層の地層境界面の存在が明らかになった.また,重力探査によると,明瞭な負のブーゲー異常帯が低地とほぼ平行に存在することが明らかになり,その西端部の急変帯は上記の基盤深度の不連続帯によることが解明された.これらのデータより,走向が北北西-南南東で,東落ちの堀江断層が低地下に伏在すると推定される.堀江断層は正断層成分を持ち,堀江低地下に堆積盆を形成しており,南方の中央構造線活断層系の分布域まで延長されると考えられる.堀江断層は,少なくとも更新世には活動していたと推定される.
著者
山本 和弘 榊 広光 北目 茂 木村 義徳
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.760-760, 1982-04-25

東京女子医科大学学会第243回例会 昭和57年1月22日 東京女子医科大学本部講堂
著者
塩村 耕 高橋 亨 阿部 泰郎 榊原 千鶴
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本で最重要の文化資産は古典籍であるが、どのような内容の書物が存在するのか、把握し難い状況にある。そこで、記述的な書誌DBを提唱し、そのモデルケースとして、古典籍の宝庫として知られる西尾市岩瀬文庫について悉皆調査とDB作成を行い、2010年11月に公開を開始することが出来た。最大かつ最も詳細な書誌DBで、これにより資料間にある先人未知の連関が判明し、将来にわたり、文庫の活用につながるものと期待される。
著者
榊原 寛
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

二年目の平成21年度は,前年度の成果に加えて3つの研九行よっこ.一つ目は、PBNゲートウェイ間のネットワークを、首藤らによるOverlayWeaverというDHTベースの実装を採用した.昨年度のプロトタイプ実装では、10台程度までしかスケールしない設計であったのに対し、今年度は数万台単位でのPBNゲートウェイの接続も可能としている.今後は、PBNの想定する環境に最も適したDHTアルゴリズムの選定を行なって行く予定である.二つ目は、異種ネットワークノードにより構成されるオーバレイの管理APIの整備である.前年度は単一のオーバレイの利用のみ可能であったが、今年度のAPI整備により、任意の名前を持つ任意個数のオーバレイの作成が可能となった.異種ネットワークノードは、任意の数のオーバレイに参加可能である.今後は異なるオーバレイを結合させる際、どのようにアドレスやルーティングを変更するべきかについて研究を進めて行く予定である.最後は、仮想アドレスに関してである.昨年度のプロトタイプ実装では、仮想アドレスはスタティックなアドレス空間しか利用できなかったが、本年度の実装では、任意のアドレス空間を指定し、オーバレイネットワークのアドレスとして利用可能にした.また、異なるオーバレイが結合した際に発生しうる、アドレスの衝突の回避アルゴリズムについて考案した.
著者
高山 守 榊原 哲也 西村 清和 小田部 胤久 中島 隆博 藤田 正勝 美濃部 重克 安田 文吉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

哲学、芸術、国家の密接な関係が、「家族」、「理性の目的論」、「ケア」、「場所の記憶」、「国民文化」、「日本的な自然」、「自然の人間化」、「世俗化」、「啓蒙」、「近代の超克」、「新儒家」、「家」、「お店」、「かぶき(傾き)-歌舞伎-」、「道理」、「鬼神力(怨霊)」、「観音力」、「まつろわぬもの」等々の概念を媒介に、深層レベルで明らかにされた。
著者
塩村 耕 高橋 亨 阿部 泰郎 榊原 千鶴
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

人間とは動物の中で唯一死の概念を有する「死を知る人(homo memor mori)」であり、そうであるがゆえに未来へ本を遺し、過去の本を読む「本の人(homo librarius)」でもある。したがって、書物は人類の遺した文化遺産の中で最重要のもので、我々は遺されたそれらの全体像を出来るだけ明らかにすべき責務がある。この研究計画の目的は、古典籍の宝庫として知られる西尾市岩瀬文庫の古典籍全1万8千点について、各書籍の書誌、成立、内容を詳細に書き込んだ、いまだかつて見られないような「記述的(descriptive)」な書誌DB(データベース)を完成・公開し、そのことを通して新たな時代の書誌目録のあり方を全国の所蔵機関や文庫に提案することにある。本研究計画に先立つ事前調査を含めて6年間の集中的調査を経て、現在1万1千点について調査入力が終了した。また、DB公開運用の先行モデルとして、並行して調査を進めてきた名古屋大学附属図書館神宮皇学館文庫について平成17年4月より書誌DBを公開し、新たに判明した問題点を改善した。まだまだ前途は遼遠ながら、岩瀬文庫という豊富にして多彩な内容を含む一大文庫について、DBを完成公開する夢の実現が具体化しつつある。正直に言えば、古典籍にかかわる一研究者として、珠玉の知見に満ちたDBを公開することに躊躇する気持ちは、調査開始以後しばらくの間は強くあった。しかしながら、大量の古典籍-その全ては死者の遺したものである-に触れる中で、書物と人間との関わりについて体感開悟するところがあり、今ではDBの公開が書物の活用に大きく資するものであり、そのことが書物を遺してくれた先人たちに対する報恩となることを確信している。そして、このようなDBが方々の文庫に備わることによって、日本の人文学が新たな局面に一歩を踏み出すに違いない。