著者
宇野 裕之 横山 真弓 坂田 宏志 日本哺乳類学会シカ保護管理検討作業部会
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-38, 2007 (Released:2007-08-21)
参考文献数
65
被引用文献数
19

ニホンジカ特定鳥獣保護管理計画 (2002-2006年度の期間) の現状と課題を明らかにするため, 29都道府県及び大台ケ原地域を対象に2006年6月から9月までの期間, 聞き取り調査を行った. 管理目標は主に 1)個体群の存続と絶滅回避, 2)農林業被害など軋轢の軽減, 3)個体数削減, 及び4)生態系保全に区分できた. 個体数や密度のモニタリング手法には, 1)捕獲報告に基づく捕獲効率や目撃効率, 2)航空機調査, 3)ライトセンサス, 4)区画法, 及び5)糞塊法や糞粒法が用いられていた. 航空機調査, 区画法及び糞粒法を用いた個体数推定では, 多くの事例 (30地域中の11地域) で密度を過小に評価していたことが明らかとなった. 個体数の過小評価や想定外の分布域の拡大によって, 個体数管理の目標が十分達成できていないと考えられる地域も多くみられた. フィードバック管理を進めていく上で, モニタリング結果を科学的に評価し, その結果を施策に反映させるシステムの構築が必要である. そのためには, 研究者と行政担当者の連携が重要である. また, 県境をまたがる個体群の広域的管理と, そのための連携体制を築いていくことが大きな課題だと考えられる.
著者
寺田 己保子 岩本 紗八香 井上 薫 横山 真理 高田 奈津子 澤田 篤子 伊野 義博 松本 絵美子
出版者
日本学校音楽教育実践学会
雑誌
学校音楽教育研究 : 日本学校音楽教育実践学会紀要 (ISSN:13429043)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-84, 2012-03-31

課題研究1年目は『21世紀音楽カリキュラム』に基づいたこれまでの実践を振り返り、どのような実践が可能になったのか実践者からの感想も含めてその成果と課題を確認し、今後の研究の方向性を見出していくことがねらいである。全体を2部構成とし、第1部は実践発表、第2部を討論とした。第1部の実践発表では、『21世紀音楽カリキュラム』に基づいた日本伝統音楽の実践としてこれまでどのような実践が行われてきたのか、その指導内容に焦点をあて、「伸縮する拍を感じて自分たちのわらべうたをつくって歌おう」岩本紗八香氏(小学校)、「高い音と低い音を感じてわらべうたでふしづくりをしよう」井上薫氏(小学校)、「拍の特徴を感じ取って《ソーラン節》《小諸馬子唄》を味わおう」横山真理氏(中学校)、「カラ三味線で長唄をうたおう」高田奈津子氏(高等学校)の実践発表が行われた。第2部ではこれを受けて、実践についての成果と課題について、伝統音楽の理論的立場から澤田篤子氏、伝統音楽の指導方法等の立場から伊野義博氏、学校現場の実践を見る立場から松本絵美子氏がそれぞれ意見を述べ、その後会場からの意見も含めて全体で討論した。
著者
下田 亮介 横山 真男
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2013-EC-27, no.13, pp.1-5, 2013-03-08

チェロという楽器には、普段見かける一般的なアコースティックチェロと骨組みだけで音が静かなサイレントチェロがある。この 2 種類のチェロは、構造や音の大きさなど様々な違いがある。本研究では、この異なる 2 種類のチェロの音に着目し、それぞれの音の周波数を比較することで検証した。それぞれのチェロの各弦と音階を弾き、得られた周波数スペクトルを比較しその特徴について述べる。
著者
間野 勉 大井 徹 横山 真弓 高柳 敦 日本哺乳類学会クマ保護管理検討作業部会
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.43-55, 2008-06-30
参考文献数
22
被引用文献数
4

日本に生息する2種のクマ類個体群の保護管理の現状と課題を明らかにするため,クマの生息する35都道府県を対象に,保護管理施策に関する聞き取り調査を2007年7月から9月にかけて実施した.調査実施時点で,11県が特定計画に基づいた施策を実施しており,9道県が特定計画の策定中あるいは策定予定と回答した.特定計画によらない任意計画に基づく施策を実施していたのは5道県であった.12都県はツキノワグマに関する何らかの管理計画,指針などを持たなかった.特定計画及び任意計画を実施している道府県の主な管理目標として,1)個体群の存続と絶滅回避,2)人身被害の防止,及び3)経済被害軽減の3項目が挙げられた.数値目標を掲げていた10県のうち8県が捕獲上限数を,2県が確保すべき生息数を決めていた.特定計画,任意計画の道府県を合わせ,捕獲個体試料分析,出没・被害調査,堅果豊凶調査,捕獲報告などが主要なモニタリング項目として挙げられた.また,個体数,被害防止,放獣,生息地,普及啓発などが主要な管理事業として挙げられた.地域個体群を単位として複数の府県が連携した保護管理計画は,西中国3県のみで実施されていた.被害に関する数値目標の設定とそのモニタリング,個体群動向のモニタリング手法の確立,地域個体群を単位としたモニタリング体制の確立が,日本のクマ類の保護管理上の最大の課題であると考えられた.<br>
著者
佐々木 智章 横山 真一郎 関 哲朗
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2000, pp.33-38, 2000-09-25

ベンチャー企業創成時, 企業には資源や信用が無い. そして, それが無いことによって経営不能に陥る要因が多数ある. よって, 経営不能に陥る要因を洗い出し, それに対する対処方法をもとに経営を行っていく必要がある. 本研究では創業してから約1年になる小規模自転車店の実務経験を通じて, ベンチャー企業創成時の成否構造について分析を行っている. 今回は創業時に行った経営不能をトップイベントとしたFTAに対し, 現在どのように問題点に対処し経営を行っているのかを中心に述べていく. 一方, 近年情報技術(IT)の進化によってi-モード, Webなどをはじめ, 汎用性のある様々なコミュニケーションツールが出現してきた. 本研究ではそれらITの効果的な活用方法についても言及する.
著者
三上 秀人 湯 懐鵬 横山 真太郎
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.73, no.626, pp.457-462, 2008-04-30
被引用文献数
1

化学物質過敏症(CS)は化学物質の急性曝露あるいは低濃度の慢性曝露によって過敵性を取得し,その後に極低濃度の化学物質曝露によりアレルギー様の症状を示すようになる健康障害である。症状は様々で,疲労感,頭痛,倦怠感,腹痛やぜんそく,皮膚炎など多岐にわたる。CSを診断・治療するには,空気中の汚染物質を除去した専門の治療施設が必要とされており,その清浄度目標値はVOCで10μg/m^3,非メタン炭化水素(NMHC)で30μg/m^3である。治療施設内の清浄度目標値は外気濃度よりも低いため,導入外気は汚染物質を除去する活性炭フィルターが必要であり,室内で発生した汚染物質を除去するために,循環系統にも活性炭フィルターが必要である。一方,建築部材から発生する汚染物質は室内を汚染すると共に,循環系統の活性炭フィルターのコストを高めるため,極力汚染物質の発生の少ない建築部材を選定する必要がある。本研究の目的は,CSの診断・治療施設の建設に先立ち,汚染物質の濃度を低減する技術を確立することであり,本報はその第1報として,治療施設用に開発した特殊活性炭の性能試験と,治療施設の建築部材の選定についての報告である。粒状炭を充填した充填式の活性炭フィルターは長寿命であることから,大風量を処理する場合に使用されるが,発塵量が大きいため,二次側にHEPAフィルターなどの塵埃除去フィルターが必要である。HEPAフィルターはアウトガスの問題と僅かな特有の臭気の問題があり,治療施設では活性炭フィルターの2次側に設置すべきではない。そこで,筆者らは発塵を抑制するために,活性炭表面を珪酸ナトリウムで被覆した特殊活性炭(SAC)を試作した。SACは,椰子殼活性炭を珪酸ナトリウム溶液に含浸して減圧し,その後乾燥して作成した。このSACと市販の椰子殼活性炭について,寿命と発塵の点について性能評価を行った。寿命試験はFig.1に示す実験装置において行った。試験用ガスにはベンゼンを使用し,ホルムアルデヒドについても同様の試験を行った。濃度を一定に調整した空気を供試活性炭に流通させ,経過時間と除去率の関係を調べた。発塵試験はFig.2に示す実験装置において行った。SUS容器に供試活性炭を入れ,HEPAフィルターでパーティクルを除去した空気を流通させ,発塵量を測定した。ベンゼンの寿命試験結果では,SACと市販の活性炭の寿命は同等であった。除去能力は活性炭単位体積あたりの吸着量で決定されると仮定して,東京都心部の外気を導入した場合の寿命を試算した。東京都心部のTVOC濃度をベンゼン濃度に換算して0.5mg/m^3とすると,6000時間と試算された。ホルムアルデヒドの寿命試験結果では,両者とも寿命が非常に短いことが確認されたが,除去率50%以下に低下した後の除去率は,SACの方が優る結果を得た。発塵試験の結果では,SACの発塵量は椰子殼活性炭の1/6以下であり,珪酸ナトリウムによる表面被覆は発塵の抑制に有効であることを確認した。次に,建築部材の決定を目的として,Fig.3に示す小形チャンバー法によりアウトガス試験を行った。試験方法はASTM D5116-90に則った。試験の結果,SUS304,ガルバリウム鋼板,ホーロー鋼板および御影石からはアウトガスは検出されなかった。アウトガス量および視覚的なストレスの観点から,天井および壁にはホーロー鋼板,床材には御影石を採用することとした。カオリン,ロックウールおよび珪酸ナトリウムを混合して試作した新しい目地材からは,アウトガスは検出されなかった。ガスケットとしては,テフロン製ガスケットを採用することとした。ダクトや空調機,制気口などはSUS304を採用することとした。以上の結果より,今回試作したSACの寿命は市販の活性炭と同等以上であり,発塵量は1/6以下に改善されたことから,化学物質過敏症の診断・治療施設において汚染物質除去用活性炭として使用できることを確認した。また,アウトガス試験により最適な治療施設の建築部材を決定したことにより,基本仕様を確立した。
著者
宇野 裕之 横山 真弓 坂田 宏志 日本哺乳類学会シカ保護管理検討作業部会
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-38, 2007-06-30
被引用文献数
15

ニホンジカ特定鳥獣保護管理計画 (2002-2006年度の期間) の現状と課題を明らかにするため, 29都道府県及び大台ケ原地域を対象に2006年6月から9月までの期間, 聞き取り調査を行った. 管理目標は主に 1)個体群の存続と絶滅回避, 2)農林業被害など軋轢の軽減, 3)個体数削減, 及び4)生態系保全に区分できた. 個体数や密度のモニタリング手法には, 1)捕獲報告に基づく捕獲効率や目撃効率, 2)航空機調査, 3)ライトセンサス, 4)区画法, 及び5)糞塊法や糞粒法が用いられていた. 航空機調査, 区画法及び糞粒法を用いた個体数推定では, 多くの事例 (30地域中の11地域) で密度を過小に評価していたことが明らかとなった. 個体数の過小評価や想定外の分布域の拡大によって, 個体数管理の目標が十分達成できていないと考えられる地域も多くみられた. フィードバック管理を進めていく上で, モニタリング結果を科学的に評価し, その結果を施策に反映させるシステムの構築が必要である. そのためには, 研究者と行政担当者の連携が重要である. また, 県境をまたがる個体群の広域的管理と, そのための連携体制を築いていくことが大きな課題だと考えられる. <br>
著者
大野 善隆 松井 佑樹 須田 陽平 伊藤 貴史 安藤 孝輝 横山 真吾 後藤 勝正
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-147_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】運動量に応じて骨格筋量は変化するが、その分子機構には不明な点が多く残されている。運動時に骨格筋は乳酸を産生し、分泌する。骨格筋には乳酸受容体が存在するため、乳酸は骨格筋にも作用すると考えられる。近年、培養骨格筋細胞を用いた実験において、乳酸によるタンパク合成シグナルの活性化ならびに筋細胞の肥大が報告されている。しかしながら、生体レベルでの骨格筋量に対する乳酸の影響は未解明である。そこで本研究では、乳酸がマウス骨格筋量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 【方法】実験には雄性マウス(C57BL/6J)を用い、足底筋とヒラメ筋を対象筋とした。マウスを実験1:対照群と乳酸投与群、実験2:対照群、筋萎縮群および筋萎縮+乳酸投与群、に分類した。筋萎縮群と筋萎縮+乳酸投与群のマウスには、2週間の後肢懸垂を負荷し、筋萎縮を惹起させた。乳酸投与群と筋萎縮+乳酸投与群のマウスには、乳酸ナトリウム(乳酸)の経口投与(1000mg/kg体重、5回/週)を行った。対照群と筋萎縮群には同量の水を投与した。全てのマウスは気温約23℃、明暗サイクル12時間の環境下で飼育された。なお、実験期間中マウスは自由に餌および水を摂取できるようにした。実験開始後2、3週目(実験1)および1、2週目(実験2)にマウスの体重を測定した後、足底筋とヒラメ筋を摘出した。筋重量測定後、体重あたりの筋重量を算出した。また、乳酸の経口投与が血中乳酸濃度に及ぼす影響を確認するために、乳酸の単回経口投与後にマウスの尾静脈から採血し、簡易血中乳酸測定器を用いて血中乳酸濃度を測定した。実験で得られた値の比較には、一元配置分散分析または二元配置分散分析および多重比較検定を用いた。 【結果】本研究で用いた乳酸の経口投与は、マウスの体重に影響を及ぼさなかった。また、乳酸の単回投与後に血中乳酸濃度の一過性の増加が認められた。実験1において、足底筋ならびにヒラメ筋の重量は乳酸投与により増加した。実験2では後肢懸垂により足底筋とヒラメ筋の重量は減少した。一方、乳酸投与は後肢懸垂による筋重量の減少を一部抑制した。 【考察】乳酸は筋肥大および筋萎縮予防の作用を有すると考えられた。細胞外乳酸濃度の増加が培養骨格筋細胞を肥大させることが報告されていることから、乳酸経口投与による血中乳酸濃度の増加が、筋重量の増加に関与していると考えられた。 【結論】血中乳酸濃度の増加は筋重量の増加に作用することが示唆された。本研究の一部は、日本学術振興会科学研究費(17K01762、18K10796、18H03160)、公益財団法人明治安田厚生事業団研究助成、日本私立学校振興・共済事業団「学術研究振興資金」、公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団「助成金」、豊橋創造大学大学院健康科学研究科「先端研究」を受けて実施された。 【倫理的配慮,説明と同意】本研究の動物実験は、所属機関における実験動物飼育管理研究施設動物実験実施指針に従い、所属機関の動物実験委員会による審査・承認を経て実施された。
著者
横山 真太郎
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.347-355, 1978 (Released:2008-02-26)
参考文献数
56

北海道に生育した群(HK群)とそれ以外の群(非HK群)から成る被験者について,至適環境から寒冷環境移行に伴なう shivering による局所筋産熱と循環機能の心拍数変化を検討した。心拍数評価では,諸家の報告の検討を経て,それが冷刺激による副交感神経性の抑制と産熱の酸素消費増大に伴なう運動時と同様な交感神経性と思われる促進との拮抗関係の上に成り立ち,下降は個体全身にとって軽度の,上昇は重度の寒冷環境条件に対応していると考えるに至った。その観点に立って両群の寒冷適応の異同の説明を試みた。筋電図による局所筋産熱の評価では今回の設定条件においてHK群は体幹部のみを中心に増大していること,及び非HK群ではHK群と同様なグループと体幹部並びに下肢部の筋に増大がみられるグループに分かれ,両群には差異が存在することが明らかとなった。併せて,軽度と重度との間の心拍数の変動に関して,至適時に比して余り変化のない場合と増加状態へ転ずる場合の違いは,shivering が体幹部のみならず四肢部特に下肢部の巨大な筋にまで波及しているか否かによると考えられ,寒冷環境下の心拍数変化の意味付けが深まった。
著者
横山 真理
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.61-70, 2010 (Released:2018-10-01)

アリス・テグネールは、子ども期特有のものの見方、感じ方や生活や遊びの世界を反映した膨大な数の歌を創作し、「子どもの歌」の概念の形成に寄与した。テグネールによる子どもの歌が20世紀前半までの初等教育における音楽科の授業に与えた歴史的意義は、礼拝で扱う賛美歌が主な教材であった時代に、 宗教教育に従属した音楽の授業の目標から音楽的感受の形成という教育による人間形成を目指す目標への転換を促す実践的な力となり、新しい目標を実現し得る音楽的環境 (教材を構成する子どものための文化的素材) を学校内外で用意した点にある。本稿で分析した音楽教科書は、編纂過程、曲目の分類や配列、題材、民間伝承歌の集成、押韻詩による音楽的特質、構図や挿絵の効果等、幼児学校用音楽教科書として画期的な特徴を持ち、民衆学校制度発足以降の変遷をたどった音楽の授業における教材の歴史の到達点がそこに表れていると意義づけられる。
著者
木村 孝子 山澤 和子 堀 光代 長屋 郁子 横山 真智子 辻 美智子 川田 結花 土岐 信子 長野 宏子 西脇 泰子 山根 沙季
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本各地には、各地域の自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は、地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着してきた岐阜県岐阜地域の郷土料理と、その暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。<br>【方法】日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」調査に参画し、岐阜県岐阜地域の本巣市、山県市、瑞穂市を調査した。対象者はその地で30年以上居住した60歳代~80歳代女性9名で、家庭の食事作りに携わってきた人である。<br>【結果】農業が主であった本巣市・瑞穂市では、日常食は米、小麦、自家栽培された作物を中心に朝はご飯、味噌汁、漬物、昼は農作業のため弁当(白飯、梅干しや紅しょうが、芋の煮物)、農作業の合間には「みょうがぼち」、夜は雑炊に漬物を食した。混ぜご飯の「おかきまわし」もよく食べられた。山県市は急峻で石灰質の土地のため、白飯は貴重であり、飯に小麦粉を混ぜてこね、みょうがの葉で巻いた餅を食した。里芋や芋茎、干した里芋の葉、手作りのこんにゃくを使った料理、味噌も家で作り、芋を使った味噌煮は日常食であった。本巣市、山県市では大根の古漬けをしょうゆや味噌味の煮物にしていた。伝え継ぎたい家庭料理には、みょうがぼち、芋もち、里芋の煮っころがし、芋茎の酢の物や煮物、おばこ煮、十六ささげの味噌和え、千石豆の胡麻和え、桑の木豆のフライ、ねぐされもち、おかきまわし、味噌煮などがある。
著者
南 昌平 横山 真弓 石嶋 慧多 下田 宙 栗原 里緒 宇根 有美 森川 茂 前田 健
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.e29-e35, 2022 (Released:2022-02-15)
参考文献数
50

2016年,近畿地方で2頭の死亡したアライグマが発見された.これらアライグマからオーエスキー病ウイルス(PRV)が分離された.分離されたウイルスの全ゲノム配列を解析した結果,国内で使用されているワクチン株にはないgE遺伝子を保有しており,野外株であることが判明した.同地域のイノシシ111頭とアライグマ61頭の血清についてPRVに対するウイルス中和試験を実施した結果,13頭のイノシシが抗体陽性(11.7%)となり,アライグマはすべての個体で陰性であった.死亡したアライグマの発見地域は養豚場におけるPRVの清浄地域であり,イノシシからアライグマへのPRVの種間伝播が強く疑われた.以上より,本報告はアライグマにおける初のPRV自然感染例であり,イノシシから異種動物へ致死的な感染を引き起こす可能性が明らかとなった.
著者
辻 美智子 堀 光代 西脇 泰子 木村 孝子 長屋 郁子 坂野 信子 長野 宏子 山澤 和子 山根 沙季 横山 真智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】岐阜県に伝承されている家庭料理の中で、おやつとして食べられている料理の特徴についてまとめることを目的とした。<br />【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」のガイドラインに沿い、岐阜県の家庭料理について平成24年~27年に聞き書き調査を行った。調査対象地域を岐阜、西濃、中濃、東濃、飛騨の5圏域に分類した。対象者は調査地で30年以上居住し、家庭の食事作りに携わった43名である。聞き書き調査の結果からおやつに関する料理を抽出し、圏域別に特徴をまとめた。<br />【結果】岐阜圏域の「みょうがぼち」は、空豆餡を小麦粉生地で包み、茗荷の葉を巻き、蒸して作られ、初夏の食材を活かし田植えの合間に食されていた。西濃圏域の今尾地区の「竹寒天」は、竹神輿の材料である竹の中に寒天液を流し込んで作られ、左義長に出されていた。中濃圏域では初午の「まゆだんご」や端午の節句や田植え休みの「ぶんだこ餅」など、米や米粉に砂糖や小豆を加えたおやつを作り、ハレの日に食されていた。中濃・東濃圏域では、新米の収穫時期に「五平餅」が作られ、来客時にも供されていた。東濃圏域の「からすみ」は、米粉に好みの味(黒砂糖、抹茶、胡桃、紫蘇など)を加えて蒸したものであり、桃の節句には欠かせないものであった。また、秋には特産の利平栗を用いた「栗きんとん」や「栗蒸し羊羹」も親しまれていた。飛騨圏域の「甘々棒」はきな粉を主原料とした飴菓子であり、かつて寒冷地の農業普及に大豆の栽培が奨励され、大豆を美味しく食べる工夫がされていた。内陸県である岐阜県のおやつは、田畑や山などで収穫される季節の食材を活かし、小麦粉・米・米粉に砂糖、小豆などを用い、折々の喜びを食にも込めていた。
著者
井上 莞志 田中 健太 田中 貴宏 松尾 薫 横山 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.931-938, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

近年、地球温暖化と都市ヒートアイランド現象による都市高温化が進んでおり、特に多くの人が利用する都心部においては、快適な屋外空間を形成するために、熱環境改善策を積極的に取り入れた都市環境デザインが求められる。またこのような取り組みを効果的に進めていくためには、都市内における熱環境改善策導入が優先度の高いエリアの抽出が必要である。そのため、広域の気温分布形成要因の分析から中心市街地周辺の気候的特徴(特に海風効果と河川効果)を把握し、さらに中心市街地の熱環境の詳細な現状把握とその形成要因分析を行った上で、中心市街地における熱環境改善策導入推進エリアを抽出することを目的とした。その結果、都心部の昼間の気温分布は河川距離、周辺緑量、周辺建物密度に影響を受けており、その中でも陸風が止み、かつ海風が十分に発達する前の時間帯で地表面被覆の影響が相対的に強くなる。これらの気温形成要因と猛暑日の定義から熱環境改善策導入推進エリアの抽出し、建物密度を減らしつつ、緑化を推進することが効果的であることを示唆した。
著者
横山 真哉 寺田 裕樹 猿田 和樹 陳 国躍 張 興国
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.89-90, 2019-02-28

交通事故における状態別死者数は歩行者が最も多く、その中でも高齢歩行者が犠牲になるケースが多い。また、歩行者事故のうち約7割が道路横断中に発生することも明らかになっている。そこで、我々は高齢歩行者の車道横断能力を教育することによって、交通事故の低減に貢献することを考えた。過去に様々な横断体験シミュレータ―が開発されているが、交通環境を3DCG、歩行を足踏みや手動ボタン等で再現する場合が多く、現実感が失われ、完全に横断を再現できていない。したがって、本研究では実在の車道に仮想の車両を重畳する拡張現実を用いた車道横断能力教育システムを開発し、若年者及び高齢者に対するシステムの有効性を評価したので、その結果を報告する。