著者
横山 智
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.287-304, 2001-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
40
被引用文献数
2

1991年に甚大な台風被害を受けた福岡県矢部村に右いて,斜面崩壊地の分布と台風災害の復旧状況に関わる,自然的要因ゲ人的要因,経済的要因を分析し,台風災害地の森林管理問題を考察した.分析地区の崩壊地は台風災害地と重なり,また大半の崩壊地は災害復旧がなされていない林分であった.崩壊地の発生要因には,自然的要因のほかに,台風災害復旧を行っていない,すなわち森林管理を放棄するという人的要因も関与していた.森林管理が放棄される傾向にある森林所有属性は不在村森林所有者であり,在村森林所有者と比較して災害復旧速度が相対的に遅い.また,復旧には,経済的要因も加わり,多くの要素が相互に関与しあって,森林管理の放棄に結びっいている状況を明らかにした.森林管理は,自然資源を活かした地域振興を試みる山村の存立基盤にも大きく影響するため,不在村森林所有者の問題をはじめとする森林の維持管理対策が山村には必要不可欠である.
著者
久永 明人 伊藤 隆 新沢 敦 横山 浩一 喜多 敏明 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.501-505, 2002-01-20
参考文献数
9
被引用文献数
3

閉塞性睡眠時無呼吸症候群に半夏厚朴湯が有効であった1例を経験した。症例は32歳の男性で, 21歳頃よりいびきと睡眠時無呼吸を指摘され, 27歳時に口蓋垂軟口蓋咽頭形成術を受けたが改善なく, 日中の過度の眠気を自覚するようになり来院した。「咽中炙臠」と考えられる咽喉部不快感を認めたため半夏厚朴湯エキス (ツムラ, 7.5g/日) を投与し, 2週間後には咽喉部不快感が消失した。1ヵ月後にはいびきが消失し, 日中の過度の眠気が自覚的に改善した。投与前と投与5ヵ月後に終夜睡眠ポリグラフィを施行したところ, 無呼吸指数は19.2から10.3に, 無呼吸低呼吸指数は19.2から12.8に改善していた。本例の経過から, 半夏厚朴湯が上気道抵抗を上気道下部において減弱させた可能性があると推察した。
著者
村上 隆史 一色 正男 杉村 博 横山 悠平
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.33, pp.1-7, 2015-01-19

全世界的にエネルギーマネジメントの重要性が,叫ばれ続けているなか,日本国内においても,エネルギーの高効率利用は,20 世紀後半より継続して高い関心を持ち続けている.特に 2011 年 3 月 の東日本大震災以降は,エネルギーマネジメントの効率化を目的とし,Home Energy Management System (以下,HEMS) を中心にマルチベンダ相互接続を実現するための仕組み作りや商品化の加速が進んできている.ただし,HEMS の対象範囲での電気使用量は,エネルギー全体の 1/3 程度であり,エネルギーマネジメントをさらに有効にしていくためには,HEMS 以外のエネルギー機器へ拡張していくことが重要になる.業務用機器のネットワーク接続における課題は,標準化が十分に進んでおらず,マルチベンダ接続が困難な状況である.そこで,民生用途の HEMS で確立した技術の展開を検討し,業務用機器へ拡張時の課題を整理するとともに,ツールを用いて通信インタフェースの展開が可能であることを検証する.The importance of global energy management is being cried in the all over the world. Also in Japan, High-efficiency utilization of energy is very interesting from the end of the 20th century. Especially since the Great East Japan Earthquake of March 2011, the scheme to achieve a multi-vendor interoperability and the commercializing any kind products for energy are accelerating focusing around Home Energy Management System (below, HEMS). However, the electrical consumption in the scope of HEMS is about one third of the total energy. In order to enable more effective energy management, it is important to extend the scope other than HEMS. An issue in the network connection between the energy equipment other than HEMS is that the standardization is not sufficiently advanced and multi-vendor connection is a difficult situation. Therefore, we consider deploying the techniques established in HEMS of consumer applications and organizing some issues. And we verified that it is possible to extend communication interface from HEMS to range of other than HEMS by using a tool.
著者
横山 寿 西村 昭史 井上 美佐
出版者
水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:03889149)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.142-147, 2002-08-31
参考文献数
17
被引用文献数
11

現在、日本の海面魚類養殖業は自家汚染に伴う環境問題に直面しており、その解決策として漁場環境を的確に評価する手法や漁場の環境容量を推定する手法を開発することが求められてる。移動性の少ないマクロベントスは局所的な個々の場所の指標性に優れる。この特性を利用して、マクロベントスの生息状況に基づいた増養殖漁場における種々の環境基準が提案され、マクロベントスを生物指標とした魚類養殖場のモニタリング調査や環境評価が行われるようになってきた。魚類養殖場では全世界的な汚濁指標種である多毛類がしばしば優占的に出現する。また、宮城県下のギンザケ養殖場では多毛類や甲殻類が特異的に高密度で分布することが報告されている。しかし、これらの知見は1~数カ所の養殖場から得られたものがほとんどで、環境条件や養殖規模が異なる多くの試料に基づいて養殖活動がマクロベントス群集に及ぼす影響を総合的に解析した例は見当たらない。前報では、養殖規模や地形が異なる熊野灘沿岸の22カ所の養殖場から夏季のマクロベントスと水質・底質の試料を得て、マクロベントスの群集パラメータと養殖生産量、養殖場の物理的環境要素の指標とした内湾度指数EDおよび化学的諸環境要因との相互の関係を解析した。本報では、同漁場で行った冬季調査の結果を加え、マクロベントス群集の種組成に及ぼす内湾度指数と養殖活動の影響を解析し、群集型の判別により漁場環境を評価するとともに、持続的な生産を可能にする適正養殖量を推定することを試みた。
著者
橋本 ルイコ 浅野 勝佳 渡嘉敷 唯章 陰地 義樹 廣瀬(安元) 美奈 高良 亮 豊里 哲也 吉野 敦 池端 真美 劉 瑩 久米田 裕子 横山 耕治 髙橋 治男
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.179-186, 2013-07-31 (Released:2013-12-10)
参考文献数
19
被引用文献数
4 6

最も普遍的に存在するカビのひとつ,A. niger にマイコトキシンの産生性が発見され,食品工業上重要な役割を担う A. niger や沖縄で泡盛の醸造に伝統的に用いられてきた黒麹菌の安全性が問題視されている. また,A. niger とその近縁種である黒麹菌は形態的に類別することは困難であることから,ミトコンドリアチトクローム b DNA 遺伝子などを用いて分子遺伝学的に解析し,これらの菌を正確に分類するとともに,マイコトキシン産生性との関係を明らかにすることによって黒麹菌など実用株の安全性についての検証を行った.
著者
斎藤 眞理 清野 康夫 植松 孝悦 栗田 雄三 横山 晶 Saito Mari Seino Yasuo Uematsu Takayoshi Kurita Yuzo Yokoyama Akira
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.109, no.7, pp.332-337, 1995-07

In comparison with operation, we observed more recurrence after external beam radiotherapy for roentogenographically occult lung cancer. Then, since July 1991, we have treated that lung cancer, with external beam radiotherapy and intraluminal afterloading irradiation using ^<192>Iridium thin wire. The indication of this method is roentogenographically occult lung cancer, diagnosed inoperable for their respiratory function, age, and complications, and for refusal of operation. Up to Sept. 1994, 36 patients (44 lesions) were treated by this method. The follow-up period ranged from 0 to 41 months. Recurrence occured in 2 cases on whom an operation was done:one is well and the other is alive with disease. Radiation pneumonitis required treatment was observed in another 2 cases. Other recurrence or severe complications from irradiation have not been observed. We think this treatment is effective for roentogenographically occult lung cancer.
著者
中川 佐和子 吾妻 俊彦 横山 俊樹 牛木 淳人 田名部 毅 安尾 将法 山本 洋 花岡 正幸 小泉 知展 藤本 圭作 久保 惠嗣 椎名 隆之 近藤 竜一 吉田 和夫 浅野 功治 山崎 善隆
出版者
The Shinshu Medical Society
雑誌
信州医学雑誌 (ISSN:00373826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.365-370, 2008 (Released:2010-10-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

A 56-year-old woman was found to have a solitary mass shadow on chest radiograph in a health examination. Transbronchial examination on two occasions did not yield any diagnostic findings. Both the high level of CA19-9 and the increasingly large shadow were suspected to be indicative of lung cancer, so we performed left lower lobectomy. The pathological examination of the resected lung revealed a granulomatous lesion without malignant findings. A few colonies grew on a liquid medium, and were identified as Mycobacterium avium by PCR. After operation, the increased CA19-9 leval normalized gradually. There are few reports presenting a solitary pulmonary mass shadow and high CA19-9 level due to nontuberculous mycobacterial disease.
著者
味岡 直己 横山 明弘 横澤 勉
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.907-921, 2007

本報では置換基効果を利用した連鎖縮合重合法によって合成できる分子量分布の狭い縮合系高分子を含むさまざまな高分子アーキテクチャーの合成およびその自己集積化について述べる.芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリエーテルを一成分とする一次構造の制御された AB, ABA, BAB, ABC ブロック共重合体やスターポリマー,スターブロック共重合体,ミクトアームスター共重合体をポリマーどうしのカップリング反応,リビング重合末端を利用した方法,末端修飾を行うマクロ開始剤法,オルソゴナル開始剤を用いたマクロ開始剤法で合成した.それらの自己集積では特異的な集積構造が形成された.<br>
著者
知場 貴洋 齊藤 政典 伊丹 悠一 兪明連 横山 孝典
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2702-2714, 2012-12-15

本論文では,異なるノード上のタスク管理やタスク間の同期を可能とする位置透過性のあるシステムコールを有する分散リアルタイムOSについて述べる.本論文の対象は,自動車制御などの分野で用いられている分散型の組み込み制御システムである.まず,全ノードで統一した時刻に基づく動作を可能とするため,ネットワークにTDMAプロトコルに基づくリアルタイムネットワークであるFlexRayを用いてノード間でOSが管理する時刻の同期を行う手法を提案する.また,ノードの違いを意識しないアプリケーション開発を可能とするため,異なるノード間でタスクの起動や同期が可能な位置透過性のあるシステムコールを提案する.そして,自動車制御向けのリアルタイムOSであるOSEK OSを拡張し,提案した機能を有する分散リアルタイムOSを実装する.OSEK OSのタスク管理やイベント管理に関わるシステムコールに位置透過性を持たせ,異なるノード上のタスクを対象にシステムコールを発行可能にする.通信量を考慮してFlexRay通信のパラメータを設計した場合,位置透過性のあるシステムコールのネットワーク通信時間を含む最悪応答時間は予測可能である.The paper presents a distributed real-time operating system that provides location-transparent system calls for task management and inter-task synchronization. The target application of the operating system is hard real-time embedded systems such as automotive control systems. The operating system manages distributed tasks based on the global time supported by the clock synchronization of FlexRay, which is a real-time network based on a TDMA (Time Division Multiple Access) protocol. By using the operating system, we can develop a distributed control application program with location-transparent system calls. The distributed real-time operating system is an extension to OSEK OS, which is a standard operating system in the automotive control domain. The worst case response time of a remote system call of the operating system is predictable if the FlexRay communication is well configured.