著者
横山 由衣 玉那覇 亜紀子 島袋 雄樹 中村 清哉 又吉 達
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-178_1-H2-178_1, 2019

<p>【症例紹介】複合性局所疼痛症候群(以下、CRPS)に関する治療は様々な報告がされているが、有効な治療方法は確立されていない。今回、外傷後に生じたCRPSにより慢性的な上肢痛と日常生活に支障をきたす症例を経験した。本症例は更衣動作を1人でできるようになりたいという目標があった。疼痛は自発痛だけでなく運動イメージ時にも出現した為、機能的側面だけでなく認知的側面に着目し、段階的な課題設定を行い、理学療法を展開した結果、疼痛軽減、疼痛頻度の軽減がみられた。本症例について考察を交え報告する。</p><p>30歳代、女性、Ⅹ-1ヶ月交通事故で受傷し、事故直後は右上下肢に疼痛・痺れが出現し、上肢の自動運動が困難であった。徐々に下肢症状は改善するも上肢の激痛は持続し、X年にCRPSと診断された。他院でリハビリテーションを行っていたが疼痛増強のためX+2年一時リハビリテーション中断された。X+3年に当院ペインクリニック外来を受診し、外来リハビリテーションで理学療法を開始した。現在まで、腕神経叢ブロック注射後に理学療法を1~2週間に1回実施している。</p><p>【評価とリーズニング】X+3年、視診では皮膚・爪に萎縮性変化及び皮膚色変化、浮腫・皮膚乾燥の症状を認めた。疼痛は右頸部から肩甲骨周囲にかけて灼けるような痛み、上肢にかけて電気が走るような痛みがあった。頸部・上肢・手指の運動イメージだけでも疼痛・不随意運動があった。NRS3~10/10点と変動的であった。Short-Form McGill Pain Questionnaire-2(以下、SF-MPQ-2)87/220点で特に間欠的で32点、神経的で29点であった。Neuropathic pain symptom inventory(以下、NPSI)では44/100点となり、誘発痛10/10点、異常感覚・知覚障害7/10点であった。患側上肢の自動運動は不可であった。SF-8™スタンダード版により30/42点であった。これらの評価よりADL・IADLでは介助を要す状態であり、目標である更衣動作では患側上肢の袖通しが一番の課題となった。</p><p>【介入内容および結果】X+3年、機能的側面アプローチとしてROMex実施した。手指を中心に患側上肢を他動的に動かし、運動方向をイメージしてもらいながら健側上肢で同様の動きを模倣・注視するよう促した。患側上肢のイメージのみでも疼痛増悪、不随意運動が出現した為、認知的側面へのアプローチも必要と考えられた。X+3年5ヶ月から運動イメージ時の疼痛改善を目的にメンタルローテーションを実施した。段階付けとして文字や図形から開始し、手の写真を用いた。解答時間の短縮、正答率に合わせて徐々に角度を増やし、手指・手関節から肘関節、肩関節を含めた複合的な画像へと難易度を設定した。これを健側から患側へと難易度の設定を行った。次に上肢帯の複合的な動作や頸部の各運動方向を多角的に撮影した動画を用いて3人称の運動イメージの強化を図った。徐々に運動イメージ時の疼痛が自制内となった為、次の段階として自己身体(1人称)においても同様のイメージが出来るよう促した。上肢帯の運動イメージでは疼痛が消失したが頚部のイメージは疼痛増強を認め、介入継続が困難であった。X+4年の生活状況は患側上肢の自動運動はみられないものの、コンタクトレンズを入れる、靴下を履くことが可能となっていた。X+5年1ヶ月からmirror therapyを開始した。観察から他動運動・触刺激(体性感覚)、自動運動と難易度を設定し実施した。患側上肢のイメージ、疼痛軽減が図れた為、現在は目標である更衣動作を意識し、触刺激(袖通しの感覚と探索課題)を中心に理学療法を行なっている。認知的側面に対し、段階的な理学療法を施行することで疼痛軽減、疼痛頻度の軽減に繋がったと考える。高取<sup>1)</sup>らは、身体図式の再構築が良好な運動イメージ形成に貢献し、安静時VAS値の低下を示したと述べている。本症例においても良好な運動イメージ形成により疼痛軽減に繋がったことが示唆された。X+6年の生活状況は更衣動作における変化点は少ないが友人との外出頻度が増えるなど生活範囲が拡大している。</p><p>【結論】CRPSによる慢性疼痛に対して認知的側面に着目し、段階的な課題設定を行い、理学療法を施行した。これらが疼痛軽減、疼痛頻度の減少に繋がったと考える。CRPSに対する理学療法は確立されたものがなく、様々な疼痛発生機序を念頭に置きながら過去の事例報告を踏まえ効果検証を積み重ねていくことが重要であると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、当院倫理委員会にて承認を得た。患者にはヘルシンキ宣言に基づいて文書と口頭にて目的、方法、個人情報保護、不利益等について説明し同意を得て実施した。</p><p>文献<sup>1)</sup>高取克彦、他:脳卒中後CRPS type1に対する運動イメージプログラム(MIP)の試み―1事例研究デザインによる予備的研究―</p>
著者
石井 裕正 横山 裕一 堀江 義則
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.7, pp.877-887, 2000-07-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
61
被引用文献数
1

わが国のアルコール飲料の消費量は依然として増加傾向を示しており,それにともないアルコール性肝障害も日常臨床上,ウイルス性肝障害に次いで重要な疾患として位置付けられる.本稿ではアルコール性肝障害の発症機序に関する最近の知見を,特にアルコール代謝との関係から論じ,さらにアルコールによる肝細胞死を特にアポトーシスの立場から考察を加える.また最近行われた全国規模の調査から疫学的にみたアルコール性肝障害の実態についても言及したい.
著者
横山 雄一 井口 和弘 臼井 茂之 平野 和行 ヨコヤマ ユウイチ イグチ カズヒロ ウスイ シゲユキ ヒラノ カズユキ Yuichi YOKOYAMA Kazuhiro IGUCHI Shigeyuki USUI Kazuyuki HIRANO
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.62, pp.68-74, 2013-06-30

グリセロールは肝臓における糖新生や脂質合成の材料であるため、肝臓へのグリセロール流入量の変化は様々な代謝経路に変調をきたす。アクアポリン9(AQP9)は、主に肝臓において発現が見られ、水分子のみならず、グリセロールや尿素などの低分子溶質をも透過させるチャネル型膜蛋白質である。AMP-activated protein kinase(AMPK)は生体内のエネルギーセンサーであり、糖・脂質代謝の恒常性維持に働くセリン/スレオニンキナーゼである。本研究では、AMPKの活性化剤である、5-aminoimidazole-4-carboxamide-1--D-ribonucleoside(AICAR)を、ヒト肝癌由来HepG2 細胞に作用させたところ、AQP9 mRNA の発現量が顕著に減少することを確認した。レポータージーンアッセイや転写因子forkhead boxa2(Foxa2)遺伝子をノックダウンさせた実験の結果から、Foxa2 は、AICAR によるAQP9 遺伝子発現抑制に関わる重要な転写調節因子であることを見出した。AICAR により活性化されたAMPK は、Akt のThr-308 残基とSer-473 残基のリン酸化を促し、それに伴いFoxa2 がリン酸化されて核内から核外へと移行することを明らかにした。したがって、肝臓でのグリセロール輸送の観点からAMPK によるコントロールのもとに、AQP9 は肝臓へのグリセロールの流入量を変化させ、糖・脂質代謝調節に寄与している可能性が示唆された。
著者
横山 和泰 今井 弘一
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.703-719, 1990-09-25 (Released:2018-04-05)

最近の合着用セメントの細胞毒性をしらべるために, 市販の5種類18製品の市販品について, 細胞回復度試験法を活用してL-929細胞, HEp-2細胞, Gin-1細胞およびHp細胞を用いて実験を行った.その結果, リン酸亜鉛セメントおよびグラスアイオノマーセメントでは, 練和後3時間目および24時間目ともに, 4種類の細胞に対していずれもきわめて低い細胞回復度であった.カルボキシレートセメントでは, Hp細胞を除く3種の細胞に対して練和後の時間経過にかかわらず低い細胞回復度を示した.しかし, Hp細胞では練和後の時間経過でわずかながら細胞回復度の上昇をみた.グラスアイオノマーセメントでは, リン酸亜鉛セメントと同じく練和後の時間経過にかかわらず, きわめて低い細胞回復度であった.接着性レジンセメントでは5製品中の2製品で低い細胞回復度であったものの, 他の3製品は中等度の値を示した.酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントではグラスアイオノマーセメントと同程度の低い細胞回復度であった.また, 各セメントの実験培養液のpH値は, リン酸亜鉛セメント, グラスアイオノマーセメントおよび酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントでは弱酸性に傾き, カルボキシレートセメントではほとんど変化がなかった.一方, 接着性レジンセメンでは, 5製品で酸性傾向からアルカリ性傾向を示す製品まで認められた.さらに血清添加培養液中での溶解度は, グラスアイオノマーセメントで最も高かった.酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントならびに接着性レジンセメント1製品がつぎに高く, カルボキシレートセメントでグラスアイオノマーセメントの約1/2の溶解度を示し, ついでリン酸亜鉛セメントと接着性レジンセメント1製品であった.他の接着性レジンセメント3製品ではほとんど溶解性が認められなかった.以上の結果から, 合着材の種類あるいは製品によって4種類の細胞に対する影響は大きく異なることが判明した.それには材料組成, 溶解度ならびに試験法の関与が考えられた.さらに合着材の細胞毒性をしらべる上で細胞回復度試験法の有用性も確認された.
著者
梶川 隆 村上 敬子 小橋 真司 寺田 洋明 長田 好規 横山 宏道 竹本 俊二 友田 純
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.45-50, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
14

症例は50歳代, 男性. 2010年2月ごろから出現した早朝の胸部圧迫感を主訴に来院した. 断層心エコー図検査と運動負荷心電図検査は正常であった. 冠攣縮性狭心症を疑いニトログリセリンを処方し, 胸痛時の舌下投与にて軽快を認めていたが, 数日後の夕方, 自宅で胸部圧迫感を訴えた直後に倒れて, 痙攣し, 心肺停止状態となった.妻が目撃し, ただちに胸骨圧迫を行い, 近所の住人に救急隊通報を依頼した. 約4分後に救急隊が到着し, その2分後と4分後に自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)による電気的除細動が施行された. 自己心拍は再開し, 約30分後に搬送された. 来院時の意識状態は, JCSIII-300で, 自発呼吸は微弱であったため, 気管挿管と人工呼吸とを開始した. 12誘導心電図ではIII, aVFでST上昇と, QT延長とを認め, V5~6でST低下を認めた. 入院後, クレアチンキナーゼ(creatine kinase; CK)は正常域を推移した. 第3病日に人工呼吸器から離脱し, 意識は清明となった. 第10病日に行った冠動脈造影では左冠動脈seg.7に軽度の狭窄を認めたが, 左室造影では局所壁運動は正常に保たれていた. カルシウム拮抗薬を処方後, 胸痛の再発はなく, 第12病日に退院した. 神経学的後障害を残さず職場復帰した.福山地区では, 2008年度からの2年間で救急搬送人員数は35,784人で, このうち心肺停止状態が, 777人であった. 一般住民による心肺蘇生処置(cardiopulmonary resuscitation; CPR)は346人(44%)に行われ, 1カ月生存は5.2%であったが, CPR未施行における生存率は3.2%であった. 今後, 地域住民に対する心肺蘇生法とAEDの啓蒙普及活動が必要と考えられた.
著者
折津 政江 横山 英世 野崎 貞彦 村上 正人 桂 戴作
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.595-602, 1999-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

心療内科受診者を対象に, ストレス耐性度チェックリスト(STCL)を施行した.信頼性分析のほか, 因子分析で得られた結果を第1報で報告した健常群で得られた結果と比較検討し, さらに判別分析を行った.平均得点は健常群より有意に低く, 判別分析では, 判別率77.8%で異なる群として有意に分けられた.因子分析では, 「明朗・積極性」「対人寛容性」「自己不確実性」「自己本位」「過緊張」の5因子が抽出された.ストレス耐性をストレッサーに対し, 調和的かつ適正に認知・評価し対処する機能と考えると, STCLはストレス耐性度をある程度推測することができるものと思われたが, より正確に測定するために, 追加すべき要因のほか, 対象の見直しやストレッサーやストレス反応との関連などの検討を重ねることが必要であろうと考えられた.
著者
前田 淳 林 直諒 小幡 裕 竹本 忠良 関根 暉彬 西岡 久寿弥 松野 堅 上地 六男 山内 大三 山下 克子 横山 泉 市岡 四象 本池 洋二 藤原 純江
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.17, no.12, pp.907-913, 1976

東京女子医大,成人医学センターの定期検診受診者1,391名および同消化器内科に肝疾患のため入院した発端者20名(急性肝炎8名,慢性肝炎6名,肝硬変3名,肝癌3名)の家族90名を対象としHBs抗原およびHBs抗体についてsubtypeを中心に検討を加えた.<BR>定期検診受診者の抗原陽性看は1.4%,抗体陽性者は27.4%であり,肝疾患患看家系では抗原陽性者は41.1%,抗体陽性者は34.4%で定期検診受診者より明らかに高率であり,特に抗原の陽性率が高い.<BR>subtypeでは定期検診受診者,肝疾患患者家系とも抗原はadr,抗体はRが優位であり,定期検診受診者で6ヵ月間隔で2度施行できたものでsubtypeの変動したものはなかった.肝疾患患者家系では肝硬変,肝癌群に兄弟,子供に抗原,抗体の集積がみられ,subtypeでは抗原がadwの家系は急性肝炎の1例のみで,他は抗原はadr,抗体はRであり,同一家族内でsubtypeの異なるものはなかった.
著者
横山 慎一郎 足立 良富 棚橋 光彦
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.506-514, 2015-09-20 (Released:2015-12-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

高圧水蒸気圧搾蒸留とは,木材圧縮成形の原理を利用し,蒸気釜内で原料を圧縮成形し,その際生じる圧搾汁の蒸留分を回収するものである.本研究では,スギ(Cryptomeria japonica)およびヒノキ(Chamaecyparis obtusa)枝葉部から,アロマオイルとして用いる精油および固形燃料を,同一工程で作出する技術の確立を目的に,高圧水蒸気圧搾蒸留処理の条件について検討を行った.高圧水蒸気圧搾蒸留処理により,常圧蒸留にて10時間で抽出される量(3.80および11.4 g/㎏)以上の精油(13.2-15.6および26.4-33.6 g/㎏)が40分間で得られることが明らかとなった.また,180℃(1.0 MPa)よりも140℃(0.4 MPa)で処理をした方が,得られる精油の匂い成分が常圧水蒸気蒸留と類似しており,かつ抽出量も多かった.本処理残渣のかさ密度は,スギ枝葉部で約18倍(440 ㎏/㎥),ヒノキ枝葉部で約7倍(460 ㎏/㎥)に向上した.さらにこれらの残渣は,廃棄物固形化燃料としての規格を満たしていた.
著者
横山 真男 斉藤 勇也
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.22, pp.1-6, 2015-02-23

1980 年代から 2000 年にヒットした邦楽の楽曲構造を分析し可視化を行った.対象として,オリコンランキングの 1980 年から 2007 年の各年で Top10 に入る楽曲について調査した.本研究では,曲のサビに注目し,コード進行の頻度やパターン,シンコペーションの数,動機のパターンを取り上げ,年毎にその特徴を分析した.We analyzed and visualized the music structures of the Japanese pop music that made the hit from the 1980s to 2000s. The musical pieces investigated here are that the music ranked in Top10 at each year of the Oricon ranking from 1980 to 2007. In this study, we focused on sabi (chorus) of the music and investigated the characteristic of the chord progression, the number of syncopation and the pattern of the motive.
著者
赤尾 勝一郎 横山 正 米山 忠克
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.341-348, 1994-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
40

微生物と植物は互いに言葉 (シグナル) の交換によって対話 (コミニュケーション) しているらしいということが以前から予想されていた。最近, 窒素固定微生物 (根粒菌) とマメ科植物との共生関係の成立過程で行われている対話の内容が解明されつつあり, この対話を通じてイネ, ムギなどの非マメ科植物にも窒素固定能を賦与させることの可能性について議論されるようになったので, これらについて解説していただいた。