著者
西村 香織 永山 くに子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.229-238, 2014 (Released:2015-05-30)
参考文献数
25

目 的 産褥早期に母乳育児をしている初産婦への母乳外来での参加観察と初産婦と実母のインタビューを通した語りから,産褥2週間以内の初産婦の母乳育児をめぐる実母の関わりの特徴を明らかにすることを目的とした。対象と方法 研究参加者はN病院で出産し母乳外来を受診した初産婦と母乳外来受診時に同行した実母の10組。データ収集期間と方法は2010年2月~7月。初産婦と実母の母乳外来における参加観察,および初産婦と実母との同席によるインタビューで,内容は「退院されてからの日々の育児はどうですか」「授乳に関してはどうですか」「お母様からみて娘さんの様子はどうですか」などであった。参加観察と録音したインタビュー内容の逐語録をデータとした。これらを短文化,解釈し初産婦に対する実母の関わりの特徴と考えたサブパターンを抽出,さらに集約化してパターン名を付けた。結 果 母乳育児中の初産婦に対する実母の関わりには[受容的][支持的][教育的]のサブパターンからなる【個人的関わりパターン】と,[食に関する言い伝え][育児観に関する言い伝え]のサブパターンからなる【世代間伝承的関わりパターン】の2つの特徴的な関わりパターンが抽出された。実母の【個人的関わりパターン】は感じ方,考え方,価値観などを含む実母自身の個人的パターンであり,【世代間伝承的関わりパターン】は実母個人にとどまらない世代を繋ぐ慣習の伝播,母から子への言い伝えであると考えられた。母乳育児をめぐる実母の関わりには個々の関わりに加え,世代間の伝承的な関わりがあると考えられた。また,産褥早期の母乳育児を通して,現代の娘に対して実母が初産婦にどう考え関わっているかには受容,支持など肯定的側面がみられる一方で先行研究の教育的姿勢を呈する関わりも存在していると考えられた。しかし,その教育的背景には,本研究結果の肯定的側面と同様に,かつて自分の時代にはできなかった母乳育児を娘にはさせてあげたいという実母の思いが関与していると考えられた。結 論 母乳育児中の初産婦と実母をめぐる関わりの特徴としては【個人的関わりパターン】と【世代間伝承的関わりパターン】であることが示唆された。
著者
大森 玲子 山崎 久子 飯田 有美 岩原 祐子 永山 ケヱ子
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.361-368, 2007-07-01
被引用文献数
4

近年、子どもを取り巻く食環境が変化し、食をめぐる問題が顕在化している。児童生徒の食の問題には乳幼児期からの食習慣が深く関連することから、食の自立能力の基礎を形成する乳幼児期の食育を推進し、望ましい食習慣を体得させることが大切である。本研究では、乳幼児期の食育を実践する上での基礎資料とすべく、保育園児を対象とした食生活等実態調査を行った。調査の分析結果から、「朝食を毎日必ず食べる」子どもは89%であった。朝食メニューをみると、主食が米飯である場合、74%が副食(主菜and/or副菜)を添えるのに対し、パンである場合28%であった。朝食を「ひとりで食べる」子どもも16%おり、このうち78%が祖父母と日常的に食事をする機会のない子どもであった。降園後夕食までの間に46%がおやつを食べ、その内容は「スナック菓子」(55%)、「果物」(30%)の順であった。また、行事食に関して、「しもつかれ」を作る家庭の80%が祖父母と-緒に食事をしていることがわかった。本研究より、子どもの食生活の実態が、子どもを取り巻く家庭の食事環境にも影響を受けていることが明らかとなった。よって、子どもに対し食育を実践するだけでなく、親への啓発活動も必要であることが示唆された。
著者
熊倉 和夫 渡辺 哲 豊島 淳 牧野 孝宏 市川 健 伊代住 浩幸 永山 孝三
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.384-392, 2003-11-25
被引用文献数
6

各種植物の根圏および栽培土壌から分離したFusarium属菌とrichoderma属菌について、イネの重要な種子伝染性病害であるばか苗病および苗立枯細菌病に対する発病抑制能を検討した。Fusarium属菌350菌株、richoderma属菌66菌株について、培養菌液または分生子懸濁液のイネ種子浸漬処理によるイネばか苗病発病抑制効果を検討したところ、両属とも高い発病抑制効果を示す菌株が高い割合で存在することが明らかとなった。また、ばか苗病に対して比較的低菌量処理で高い発病抑制効果を示すものの中には、イネ苗立枯細菌病に対しても高い発病抑制効果を示す菌株が多数認められた。高い発病抑制効果を示す菌株として、トマト根圏より分離したF. oxysporum SNF-356株、ノシバ根圏より分離したrichoderma sp. SK-1株を選抜し、ばか苗病および苗立枯細菌病に対する発病抑制効果を調べたところ、SNF-356株では、1.0×10(7)個/m1以上、SK-1株は1.0×10(5)個/m1以上の分生子懸濁液処理で、両病害に対して対照の化学薬剤であるイプコナゾール・銅フロアブル剤またはオキソリニック酸水和剤に匹敵する高い発病抑制効果を示した。特にSK-1株のばか苗病発病抑制効果は、種子の罹病程度に関わらず安定していた。両菌株を種子処理し、育苗期のばか苗病の発病を抑制した苗を本田に移植したところ、出穂期におげるばか苗病の発病頻度は無処理区に比べて明らかに少なかった。
著者
我部山 キヨ子 永山 くに子 坪田 明子
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

1.助産学担当教員198人に卒業時までに必要とする臨床経験回数と経験させたい技術を郵送による質問紙調査を行った。健康診査、助産技術、保健指導などの49項目のうち、経験必要と考える臨床技術で多かったのは、分娩監視装置の装着と判読、分娩経過中の産婦診察で、いずれの項目も、大学教員は他の教育機関の教員に比べると、有意に低率であった。また、7割以上の教員が経験させたい技術項目として挙げたのは、分娩時の酸素吸入、妊娠期の超音波診断、妊娠反応テストであった。2.助産師学生700人(有効回収率90.8%)に対して、卒業時の臨床技術経験の到達度調査を行った。全34項目の平均到達度は2.44で、時期別到達度の平均は分娩期が最も高く(2.60)、以下産褥期(2.47)、新生時期(2.42)、妊娠期(2.38)となった。全項目の平均到達度は専門学校が最も高く(2.55)、次いで専攻科(2.46)、大学(2.29)であった。学生による臨床技術到達度は、実習期間が長いほど到達度が高くなっており、実習時間数が短い大学教育への移行が進む昨今、助産教育における臨床実習のあり方を検討する必要性が示唆された。3.京都府内の産科を要する35施設300人(回収率84.7%)の助産師に対して、卒後教育に関する調査(調査内容:対象の属性、新人助産師の教育システム、施設における助産師の卒後教育とその内容など)を行った。年齢層は20歳代35.8%、30歳代29.9%であった。新人助産師の教育システムはプリセプター制度が最も多く、実践能力の査定時期は就職1年目が多かった。卒後教育上の問題としては、「時間がない」「受講料が自己負担」「助産師独自の内容が少ない」がほぼ半数を占めた。卒後教育の時期で最も重要な時期は1年目と2〜3年目で、卒後教育内容で最も求められているのは「産科救急」「新生児蘇生」「乳房管理」「異常周産期管理」「分娩診断」「分娩技術」でいずれも高次の知識・技術を要する内容であった。卒後教育では新人教育の重要性が指摘されており、卒前教育と卒後教育の連携に重要性が示唆された。
著者
三輪 のり子 大橋 達子 岩城 直子 河相 てる美 滝原 香 吉澤 環 福井 則子 石川 今日子 寺嶋 順子 山本 美千代 梅田 加洋子 堅田 智香子 高木 妙子 細川 佳子 山田 真由美 楠 早苗 若林 理恵子 安田 智美 泉野 潔 永山 くに子 田中 三千雄
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.101-110, 2005-07
被引用文献数
1

本研究では,欧米における内視鏡看護研究の歩みと現状を明らかにすることを目的に文献的考察を行った. MEDLINE (1951〜2003年)とCINAHL(1982〜2003年)のOvidのWeb版(2004年5月7日現在)を使用し, Key wordを"Nursing and Endoscopy"とする全種類の文献のうち,看護系雑誌に掲載されていた109篇を対象に分析を行った.その結果, 1966〜1980年代までは解説が中心であったが, 1990年代に入ると研究報告や症例報告もみられるようになり,文献数は増加傾向を示していた.しかし約50年間において,解説に準ずるものが全体の86%を占め,研究報告8.3%,症例報告4.6%であり,未だに内視鏡看護に関する研究が乏しい現状が明らかとなった.文献は活用目的により,『患者の安全・安楽への援助(48.7%)』『医学知識の習得(22.9%)』『看護業務の質の向上や円滑化(28.4%)』の3カテゴリーに大別された. 1960年代後半は医学知識の習得のための報告が主であったが, 1980年代中頃から患者の安全・安楽への援助に関するものが急増していた.さらに1990年代になると,再び医学知識の習得のための報告があり,看護業務の質の向上や円滑化を図るための報告も次第に定着してみられるようになっていた.これらは報告内容によりさらに12サブカテゴリーに分類された.とくに患者の成長段階・理解力・疾患や病期・心理面など患者の特性に視点を置いた看護の報告や,スタッフの教育や健康管理,関連部門や他職種との連携などの実践に繋がる報告が少なく,この方面への研究の蓄積が今後の課題として考えられた.
著者
小林 麻紀 大塚 健治 田村 康宏 富澤 早苗 上條 恭子 岩越 景子 佐藤 千鶴子 永山 敏廣 高野 伊知郎
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.226-236, 2011
被引用文献数
6

農薬混入による健康被害事例に対応するため,簡易で迅速な分析法について検討を行った.試料に無水硫酸ナトリウムを加え,酢酸エチルで抽出し,ケイソウ土,C18,グラファイトカーボン(GCB)およびPSAの各カラムで精製を行い,GC-MSおよびGC-FPDで測定を行った.主に毒物あるいは劇物に指定されている農薬から選択した57農薬を測定農薬とし,10種類の加工食品(インスタントラーメン,ハクサイキムチ,コンビーフ,ウナギ蒲焼き,乾燥エビ,冷凍ギョウザ,レトルトカレー,ワイン,チーズおよびバター)を対象に添加回収試験を行った.油脂や食品成分の影響により,測定が困難なものもあったが,添加回収率はおおむね70~120%であり,中毒量の農薬が存在するか否かを簡易迅速に判定することが十分可能であった.
著者
中田 哲也 河合 文平 永山 和男 田中 照二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.233-238, 1996-04-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 7

柴苓湯による薬物性肝障害の1例を報告する.症例は57歳女性.慢性滲出性中耳炎の治療のため近医から柴苓湯を処方され服用していたところ,10ヵ月後に皮膚黄染が出現したため他病院を受診,血清GOT 931, GPT 1,077,総ビリルビン8.5と肝障害が認められ,同病院に入院となった.その後肝障害は順調に改善し,第24病日精査のため当院に転院した.各virusmarkerはいずれも陰性で輸血歴,飲酒歴はなかった.入院中好酸球増多を認めたが,柴苓湯によるリンパ球刺激試験は疑陽性であり,確定診断には至らなかった.退院後3年間の経過観察中,慢性中耳炎に対し近医から2回柴苓湯を再処方され,その度に肝障害を繰り返したことから,同剤による薬物性肝障害と診断した.近年漢方薬による薬物性肝障害の報告が散見されるが,本症例のように長期服用後に発症したり,典型的なアレルギー症状を呈さない例が少なくなく,診断の際に留意すべきである.
著者
富岡 康浩 柴山 淳 永山 篤子
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.11-19, 1997-06-30
被引用文献数
1

1.ガイマイゴミムシダマシ(以下ガイマイと略記)を各種の餌条件で飼育し,発育日数および蛹化率,羽化率を比較した。またガイマイの幼虫(若齢,中齢,終齢),成虫にイエバエの卵および各ステージの幼虫を給餌し,1日当たりの捕食数を調べた。さらにイエバエ幼虫飼育培地にガイマイをいろいろな密度で放飼し,ハエに対する羽化抑制効果を評価した。2.各種の餌におけるガイマイの孵化から羽化までの発育日数(平均±標準偏差)と羽化率は,フスマが37.6±2.5日,51.1%,魚粉が43.2±5.0日,53.3%となり,動物性タンパク質を主成分とし炭水化物をほとんど含有しない魚粉でも発育が十分可能であった。これらを混合した餌では32.1±2.9日,82.2%,合成飼料では32.1±2.9日, 85.6%となり,炭水化物,タンパク質ともある程度含有させると,より発育に適した飼料となった。3.ガイマイは乾燥鶏糞だけでも生育完了が可能であったが,発育日数は54.4±7.0日と遅延し,羽化率も17.7%と低かった。4.ガイマイの成虫,幼虫ともイエバエの主に卵と2日齢までの小さな幼虫を捕食し,捕食数はガイマイ終齢幼虫で最高となり,イエバエ卵を約41個/日,2日齢を約24頭/日捕食した。ガイマイ成虫の捕食数は,卵が18個/日,2日齢が約9頭/日であった。5.イエバエの3日齢幼虫飼育培地にガイマイをいろいろな密度で放飼した際のハエの羽化率は,ガイマイ成虫では80頭放飼でも73.7%であったが,終齢幼虫では10頭放飼で約30%,20頭放飼で約20%となり,成虫より終齢幼虫の方がハエに対する羽化抑制効果が高かった。
著者
小林 麻紀 大塚 健治 田村 康宏 富澤 早苗 酒井 奈穂子 上條 恭子 影山 百合子 高野 伊知郎 永山 敏廣
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.261-269, 2009
被引用文献数
2

1994年4月から2006年3月にかけて東京都内で市販されていた輸入果実加工品600検体について農薬の残留調査を行った.その結果,75検体から30種類の有機リン系農薬,有機塩素系農薬,ピレスロイド系農薬およびカルバメート系農薬,有機窒素系農薬およびその他の農薬が痕跡値(0.01 ppm未満)~0.37 ppmの範囲で検出された.農薬が検出された果実加工品は,果実を乾燥した乾燥果実や搾汁したジュース,また,農薬の検出頻度の高い果皮や全果を原材料に使用しているものであった.農薬を検出した果実加工品について,食品群別平均摂取量から算出したそれら農薬の推定摂取量をおのおののADIと比較したところ,各ADI値の0.1未満~3.9% であった.このことから通常の喫食状況で特に問題はないと考えられた.