著者
緒方 裕光 馬替 純二
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.331-340, 2005 (Released:2010-08-05)
参考文献数
58

In this paper, an outline of the biological and epidemiological evidence for radiation protection is presented together with the strengths and limitations of these studies in radiation risk evaluation. Various types of research can provide useful information to complement the risk estimates based on atomic-bomb survivor studies, particularly the effects of low-dose and lowdose rate radiation. Some basic issues in synthesizing scientific information for radiation risk evaluation are also discussed.
著者
藤澤 弘幸 高原 利雄 緒方 達志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.719-721, 2001-11-15
参考文献数
9
被引用文献数
6 10

カンキツ'清見'の貯蔵中に発生する果皮障害を防止する目的で, 貯蔵前の乾燥予措処理の影響および長期貯蔵に適する貯蔵温・湿度環境を検討した.乾燥予措の程度が強いほど, 果皮が斑点状に褐色する果皮障害が著しく発生した.貯蔵温度1℃では低温によるピッティングが発生し, 12℃では貯蔵早期から果皮障害が発生した.貯蔵温度を5, 6℃とした場合に障害発生が少なく, 貯蔵環境を高湿度とすることにより障害は顕著に抑制された.'清見'果実は, 予措を施さず, 温度6℃, 相対湿度98%以上の環境に貯蔵することにより, 5ヶ月以上の長期間にわたり果皮障害を免れて貯蔵することが可能であった.
著者
緒方 博司 林 泰夫 上村 光治 泉 清治 外園 不二夫 小糸 博文 伊達 徹 田中 宏明 高木 茂
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.1197-1202, 1991-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
8

Since 1984, we have performed osteosynthesis for intertrochanteric fracture of the femur using CHS method.79 Compression Hip Screws and 12 Captured Hip Screws were used for 46 stable and 45 unstable intertrochanteric fractures of the femur.The mean age was 77.9, ranging from 61 to 96 years.Among 91 patients, 8 patients could not walk even before the injury. 62 patients out of the remaining 83 patients (74.7%) were discharged with one cane gait.The major symptoms of 62 patients who could walk postoperatively were knee pain (25.8%) and thigh pain (9.7%).The major radiographic findings of those 62 patients were shortening of the neck more than 5mm (25.8%). But the shortening of the neck and the knee pain don't seem to correlate to each other.21 patients out of 83 patients (25.3%) were not able to walk on one cane. But systemic complications seemed to be the main causes in more than half of those 21 patients.
著者
小林 由典 大河内 博 緒方 裕子 為近 和也 皆巳 幸也 名古屋 俊士
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-44, 2012-01-10 (Released:2012-06-27)
参考文献数
32
被引用文献数
1

26種類のAVOCs(塩素化炭化水素17種、単環芳香族炭化水素6種類、二環芳香族炭化水素3種類)の大気および大気水相のサンプリングを、2007年から2010年まで富士山と新宿で行った。2010年における大気中AVOCs濃度は富士山頂で最も高く(7月の平均総濃度:11.6 ppbv、n=5)、新宿(10~12月の平均総濃度:7.9 ppbv、n=52)、富士山南東麓(7月の平均総濃度:6.8 ppbv、n=9)の順であった。富士山頂における単環芳香族炭化水素(MAHs)の大気中濃度は都市域の新宿や国内外の高高度観測地点に比べて異常に高く、局地的な影響を受けている可能性がある。一方、2010年における大気水相中AVOCs濃度は富士山南東麓の雨水で15.8 nM(n=8)、富士山頂の雲水で15.7 nM(n=19)であり、新宿の露水で5.33 nM(n=15)、雨水で3.36 nM(n=30)であった。富士山における大気水相にはAVOCsが高濃度に含まれており、とくに塩素化炭化水素(CHs)は富士山南東麓の雨水および富士山頂の雲水ともにヘンリー則からの予測値以上に高濃縮されていた。大気水相へのAVOCsの高濃縮は大気中濃度、気温、各AVOCsの疎水性だけでは説明ができず、大気水相中の共存物質の影響が大きいものと推測された。
著者
緒方 茂樹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究ではまず、沖縄県教育委員会と連携してえいぶるノートの試作を行った。さらに、宮古圏域における「縦断型ネットワークシステム」への拡充を目指して、定期的な教育相談会と巡回による学校支援・保育所支援を進めた。一方で宮古島における地元の専門家育成を行った。2010年には宮古島市の予算で発達障害児(者)支援室「ゆい」が設置され、先の心理士が専門相談員として採用されたことで、外部からの支援に頼ることなく現地リソースによる支援体制が構築できた。いわゆる「入口」の充実を目的として、児童家庭課と連携した保育所支援を行ったことで支援対象児の早期発見・早期対応が可能となった。
著者
緒方 茂樹 相川 直幸
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は障害児教育における「音楽を活用した取り組み」をより効果的に行うことを目的として計画されたものである。「音楽を活用した取り組み」を理論的に計画し、さらにその教育効果について科学的に評価するためには、音楽が人間に及ぼす効果や影響について客観的に知る事が不可欠である。初年度は琉球大学内にまず脳波計を軸とした生理学的な指標全般の計測システムを整備した。この琉球大学内に整備した計測機器を用いて今年度も引き続き実験的検討を進め、特に健常者を対象とした基礎実験を継続的に行った。この実験的検討から得られた所見として、音楽鑑賞時の脳波変動には、特に「心理的構え」の相違がきわめて大きな影響を与えていることが明らかとなった。次の段階としては障害児を直接的に対象とする前に「心理的構え」について重点的にデザインされた実験的検討を行うことの重要性を指摘した。そのことによって音楽鑑賞時に生じる意識変動の特異性について、今後さらに詳細な所見が得られるものと考えている。さらに昨年度には学校現場や臨床場面での計測を可能とするために小型の計測機器を導入し、その使用の可能性と有効性を検証した。今年度は解析のためのソフトウェアを導入しながら様々な状況での計測を試みた結果、将来的に学校現場やフィールドにおける有用性を実証することができた。一方、混入雑音が多くみられる障害児からの生理学的指標に関わるデータの分析には、デジタル信号処理を応用したフィルタリングの手法を用いた検討を進めてきた。これまでに265次のFIRデジタルフィルタを用いた広域遮断型の特性が有効であることが明らかとなっている。今年度は従来的なアナログフィルタと移動平均との方法論的な比較を行うことによって具体的な波形変化を示しながらその有効性を明らかとした。
著者
牛田 貴之 折田 憲治 松本 達也 緒方 広明 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.697, pp.43-48, 2003-02-28
被引用文献数
1 3

近年の携帯端末の普及・発展により,それらは我々にとって身近になった.それにともない学習者はいつでもどこでもインターネットにアクセスできるようになり,インターネットと携帯端末による,新たな学習の形態も現れはじめている.しかし,現状は個人学習に携帯端末を用いることにしか使われておらず,他の学習者と協調的に学習を進める,という形態は取られていない.そこで我々は,他の学習者と協力して学習を進めるためのワイヤレス・モバイル端末を用いたユビキタス協調学習環境を提案する.
著者
緒方 潤 花尻(木倉) 瑠理 吉松 嘉代 木内 文之 合田 幸広
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.128, no.11, pp.1707-1711, 2008-11-01 (Released:2008-11-01)
参考文献数
11
被引用文献数
4 10

Cannabis plants show a high Δ9-tetrahydrocannabinol content and are used as a psychoactive drug. Therefore the cultivation of hemp and its possession are prohibited by law in Japan. Meanwhile, Cannabis seeds have been used as a component of shichimi-togarashi (a Japanese spice), bird feed, or a crude drug (mashinin). To exclude the possibility of germination, it is officially noticed that hemp seeds must be killed. However, the number of violators has increased in recent years. To judge the ability of seed germination, a germination test is performed. However, the test requires several days and thus has not been used for on-site inspection. In this study, we developed a rapid detection method to determine the ability of Cannabis seeds to germinate using 2,3,5-triphenyl-2H-tetrazolium chloride (TTC). The principle of the assay is as follows. The endogenous respiratory enzymes in hemp seeds convert added colorless TTC into red 1,3,5-triphenylformazan. Consequently, a living embryo is stained red, while red does not appear in the dead seeds. The reaction was active over a pH range of 8.0-9.0, and the optimum activity was found from 40 to 50°C. Under the optimum conditions, we were able to determine the ability of seeds to germinate based on the presence of color within 20 min. Since this method is rapid and simple, it is applicable to on-site inspections. In addition, it could be used as an alternative technique to the germination test, because erroneous decisions is cannot occur under the assay principle.
著者
緒方 正暢 河内谷 清久仁 西尾 信彦 徳田 英幸
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.345-346, 1994-09-20

モービルコンピューティングは,現在最も注目されている技術の1つである.ノート型パソコンやPDAのような携帯型計算機は,従来のデスクトップ型計算機に匹敵する計算能力を備えながらも小型化が進んでおり,携帯可能なマルチメディア端末を実現可能にしている.しかし,分散マルチメディア処理基盤ソフトウェアの研究の多くは,動的に変化しない計算機資源と固定されたネットワーク資源を前提にしている.従って,その成果は携帯型計算機へはそのまま適用できない.我々は,携帯型計算機の特徴を生かした分散マルチメディア処理実現のための新たなソフトウェアプラットフォームの研究開発を行なっている.本稿では,携帯型計算機を使った分散マルチメディア処理における技術的な課題を指摘し,その解決方法について考察する.また,現在開発中の評価用プロトタイプシステムについて述べる.
著者
小牧 元 前田 基成 有村 達之 中田 光紀 篠田 晴男 緒方 一子 志村 翠 川村 則行 久保 千春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.839-846, 2003-12-01
被引用文献数
13

われわれは先にアレキシサイミア評価のための構造化面接法を開発した.今回,引き続きアフレキシサイミアの自記式質問紙Toronto Alexithymia Scale-20 (TAS-20)日本語版の信頼性と因子的妥当性を検討した.対象は健常群347名と心身症・神経症などの患者群940名である.両群で3因子構造モデルは確証的因子分析により確認,再現された.質問紙全体としてほぼ満足できる内容であり,テスト-再テスト間の安定性も高いことから,日本語版TAS-20の信頼性および因子的妥当性は支持された.ただし,第3因子の外的志向に関しては内的一貫性が低く,その質問項目の均質性には問題があり課題として残された.
著者
緒方 規矩雄
出版者
新潟大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

二次元アクリルアミドゲルで分画し単離した動物のリボゾール蛋白から蛋白を抽出して微量のシクエンサーでN末端附近のアミノ酸配列を決定することを試みた。小亜粒子1.8mgを大型の二次元アクリルアミドゲル電気泳動装置で分画したものを、ギ酸で抽出Biogel P-2で精製した21μgを微量のシクエンサーでN末端から32アミノ酸配列を決定しえてS26に対するcDNAのクローンの確認を用いた。蛋白に特異のcDNAの確認に蛋白のアミノ酸組成も重要である。そこで二次元アクリルアミドゲル電気泳動法で分画したArtemia salinaのリボゾーム蛋白0.1μg-1μgについて水解後、ダブシル誘導体に加え、逆相の高速液体クロマトグラフィーを用いることによってアミノ酸を分離定量してアミノ酸組成を測定した。この際微量定量の為蛋白の試量に外からのアミノ酸の爽雑が問題になるが、蛋白分子篩高速液体クロマトグラフィーで目的を達することができた。この様にしてえたアミノ酸組成をチトクロームC、Artemia salinaのリボゾーム蛋白S6、S8について従来のアミノ酸自動分析計によるものと比較したが、チロシンを除いて極めて近い価をえて信頼できる分析法であることがわかった。従来のものが蛋白30-40μg必要なのに0.1-1μgあれば充分である。尚アミノ酸組成をリボゾーム蛋白に対するcDNAの同定に使ったものとしてS11、S26、S35aがある。合成ヌクレオチドをプローブにしてcDNAのクローニングは最近多く行われているが、私共は牛のオプシンについての一次構造かつ18塩基のプローブを作成しcDNAをえることができた。これを組み合わせて、(1)二次元アクリルアミドゲルでの蛋白の分離とN末端附近のアミノ酸配列の決定、(2)それを基にした合成ヌクレオチドプローブの作成、(3)蛋白に対するcDNAのクローン化、(4)(1)又はアミノ酸組成からのクローンの確認、(5)クローンのヌクレオチド配列からの蛋白質のアミノ酸配列の推定というシステム化が考えられた。
著者
緒方 直哉
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.14-15, 2007-01-01 (Released:2011-10-14)
被引用文献数
1
著者
緒方 洋輔
巻号頁・発行日
2012

Thesis (Ph. D. in Neuroscience)--University of Tsukuba, (A), no. 6186, 2012.3.23
著者
今西 康次 緒方 健志 松塚 敦子 田崎 貴子 藤岡 利生 明石 光伸 牧野 芳大 西園 晃
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.18-23, 2003-01-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

慢性活動性胃炎, 消化性潰瘍の原因のみならず, その長期にわたる感染が胃MALTリンパ腫や胃癌の発生にも関係すると考えられているHelicobacter pyloriの感染経路については口-口, 糞-口感染, 特に飲料水がその主なものと考えられているが不明な点も多い. 今回, 大分県内で飲用に供されている井戸水中のH. pylori混入の可能性を探るために, 同県内39箇所43検体の井戸水 (開放式, 閉鎖式, 湧き水式) について, H. pylori特異的PCR法と培養による検討を行った. その結果, ureA遺伝子領域で4カ所, 16SrRNA領域で1カ所, H. pylori遺伝子が検出されたが, 培養ではいずれも陰性であった. これよりH. pyloriの飲料水, 特に井戸水を介した感染の可能性が改めて示唆された.
著者
緒方 茂樹
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.219-222, 1997-12-28

第1章序論 音楽がもつ治療効果を巧みに用いた音楽療法の技術にみられるように,音楽は生体の心身両面に対してきわめて効果的な影響を及ぼしうる媒体である。音楽行動のひとつである鑑賞という場面を考えた場合,そこにはまず音楽があり,次に聞き手としての生体の存在がある。聞き手にとって音楽は外部環境として捉えられ,一方で生体自身がもつ内部環境として,身体の生理過程が作り出す生理的状態と,それに密接に結びつく意識あるいは心理的状態が存在する。特に受動的音楽鑑賞という音楽行動において,身体的には静的な状態におかれている場合が多く,その際の生理的状態である覚醒水準は容易に低下する可能性があると考えられる。一方,心理的状態は,まず外部環境としての音楽自体と接することに対して動機づけられた態度,すなわち心理的「構え」のあり方が問題とされねばならない。その上で,主観的な報告として聞き手が外部環境としての音楽を享受していたとするならば,そこには音楽に対する興味や注意,あるいは情緒的反応のような特異的な心理的状態の存在を推定することができる。本研究の目的は,音楽を鑑賞することによって生じる心理的状態の変動を,生理的状態の変動から客観的に明らかにすることが可能かを検証することにある。この領域における従来の研究の多くは,音楽鑑賞時に明らかな覚醒を維持した状態のみを資料として扱っており,生理的状態の変動である覚醒水準の変動そのものを取り扱った研究はみられない。本研究では従来の考察枠組みに対する反省に基づき,脳波を生理的状態の指標とし,音楽が生体に与える影響を一連の覚醒水準の変動として捉えた。一方で生体の心理的状態の変化を知るために,音楽に対する聞き手の主観的な体験についても同時に求めた。この生理的状態と心理的状態の関係から,受動的音楽鑑賞時における生体の覚醒水準の変動について検討を試みた。このことによって,精神生理学の分野にあって未だ包括的な知見が得られていないこの領域において,音楽療法あるいは環境心理学等に関わる基礎的な理論構築に有効な所見が得られるものと考えられる。第2章実験1. 音響的環境条件と心理的「構え」が脳波的覚醒水準に及ぼす影響 本研究ではまず,受動的音楽鑑賞時における生体の全般的な覚醒水準の変動パタンを把握するための実験的検討を行った(実験1)。実験場面,すなわち外的環境は聞き手にとって可能な限り演奏会会場に近い,自然な音楽鑑賞の場面を設定するよう努めた。対照条件は,従来行われてきた研究との比較のために無音響と一定音圧の白色雑音を用いた。さらに実験中の入眠について統制する心理的「構え」に関する条件を付加した。受動的音楽鑑賞時において,生体の覚醒水準は明らかな覚醒状態を維持するとは限らず,半睡状態(入眠移行期,段階S1)にあることが多いことが明らかとなった。さらに主観的体験として被験者は「睡眠状態にあった」とする自覚体験に乏しいことも明らかとなった。また実験中に可能な限り覚醒状態を維持するよう求めた場合(心理的「構え」の条件),脳波的にみて特徴的な所見が認められた。すなわち,音楽鑑賞時と白色雑音聴取時の間の脳波活動の相違は,特に入眠移行期において認められ,その相違は少ないが,徐波帯域成分値あるいはスペクトル構造の相違として捉えることができた。このことは,音楽を鑑賞することによって鎮静効果がもたらされた可能性を示唆するものである。一方,各脳波的覚醒段階の出現比率に関しては,音楽鑑賞時と対照条件との間に有意な量的差異が認められなかった。従来の研究の多くが用いてきた一定音圧の白色雑音は,対照刺激としての妥当性に問題があった可能性がある。今後は,生体の覚醒水準の変動に直接的に影響を及ぼす,楽曲に固有の音響的な要素(音圧等)を統制する方法論的な工夫が不可欠である。第3章楽曲の定量化と新たな対照刺激の開発 脳幹網様体賦活系の働きを重視する古典的な理論では,覚醒水準は刺激入力の強さあるいは量に依存して変動すると考えられている。ここで音楽のもつ物理音響的側面からみた3大要素には,高低(pitch),音圧(loudness),音色(timbre)がある。音楽という外部環境が,生体の内部環境である覚醒水準に影響を与える場合,刺激入力の量あるいは強さは,これらのうち音圧の要素が最も直接的に関わっていると考えられる。このことから本研究では,まず音圧の要素に着目した楽曲の定量化を試み,次に楽曲のもつ音圧の時間的な変動をシミュレートした白色雑音を出力させる変調装置を開発した。この変調装置は,元の楽曲のもつ音圧変動を選択的に抽出し,その変動パタンに従って,一定音圧の白色雑音を変調するものである。このことから,元の楽曲と同一の音圧変動をもつ白色雑音を,対照刺激として呈示することが可能となった(変調雑音)。
著者
河津 隆三 田島 文博 牧野 健一郎 大川 裕行 梅津 祐一 赤津 嘉樹 緒方 甫
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-21, 1999-03-01

これまで,車いすフルマラソンでは,選手の握力などの上肢筋力がレースタイムに影響することが報告されている。しかし,車いすハーフマラソンでは上肢筋力とレースタイムの関係を調査した報告はない。今回我々は大分国際車いすハーフマラソン部門に参加した4人の選手を対象にして,肘伸展筋力の等運動性筋力測定を,毎秒60°,120°,240°の角速度で行った。選手は全員完走し,そのレースタイムとピークトルク値を比較した。我々の測定では肘伸展筋力と車いすマラソンレースタイムとの間には全ての角速度において有意な相関を認めたが,肘屈曲筋力については相関はみられなかった。この結果より,車いすハーフマラソンにおいて幅広い角速度での筋力強化がレースタイムの改善に有用であることが考えられた。