- 著者
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深井 健司
羽田 清貴
加藤 浩
井原 拓哉
奥村 晃司
杉木 知武
川嶌 眞人
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, 2017
<p>【目的】</p><p></p><p>我々は変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の膝関節における立脚初期の衝撃吸収作用に着目し,健常者と比較して膝伸展筋群を過剰に収縮させ衝撃吸収を行っていることを筋電図学的側面から報告した。この時期は床反力後方成分の制動区間に相当し,どのように床からの衝撃力を受けて運動量を変化させているのか明らかにされていない。そこで今回,力学的側面から立脚初期の衝撃吸収作用について床反力前後成分力積値及び床反力入射角度を用いて検討を行った。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>被検者は,膝OA患者14名(平均年齢70.0±7.9歳。以下,膝OA群)と健常成人15名(平均年齢35.0±11.7歳。以下,対照群)で全例女性であった。課題動作は5mの歩行路上の自由歩行とした。計測下肢から一歩目を踏み出し,床反力計を踏むように指示した。一歩目の歩幅の距離は被検者の身長の40%になるように設定し,5回実施した。計測は,赤外線カメラ8台を備えた三次元動作解析装置Vicon-MX13(Vicon Motion Systems社製)と床反力計(AMTI社製)1基を用いて実施した。床反力前後成分は体重で正規化し,後方成分を制動期平均力積値(Braking Mean Amplitude;以下,BA),前方成分を駆動期平均力積値(Propulsive Mean Amplitude;以下,PA)としそれぞれ求め,同時に立脚期時間も算出した。また,床反力前後成分と鉛直成分から初期接地時と後方成分ピーク値時の床反力入射角度を求め,90°以下を制動,90°以上を駆動と規定した。同時に,初期接地から後方成分ピーク値までの床反力入射角度の変化量も算出した。統計学的解析は,Dr.SPSSII for Windows11.0.1J(エス・ピー・エス・エス社製)を用い,2群間の比較は2標本の差の検定,床反力入射角度と角度変化量,BA,PA,立脚期時間との関連性の検討はSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>初期接地の床反力入射角度[deg]は対照群で93.26±4.29,膝OA群で86.13±4.01と対照群が有意に高値を示した。角度変化量[deg]は対照群で9.77±4.46,膝OA群で3.33±3.91と対照群が有意に高値を示した。PA[N・s/kg]は対照群で0.29±0.05,膝OA群で0.12±0.09と対照群が有意に高値を示した。立脚期時間[sec]は対照群で0.61±0.02,膝OA群で0.66±0.03と膝OA群が有意に高値を示した。また,初期接地の床反力入射角度は角度変化量とPAに正の相関(r=0.93,p<0.01,r=0.56,p<0.01),立脚期時間に負の相間(r=-0.56,p<0.01)を認めた。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>初期接地の入射角度は膝OA群が小さく,90°以下では制動を示す。膝OA群は,初期接地より前方への加速を制動し,後方成分ピーク値まで角度変化量を減少させたまま維持されていた。これは立脚初期において床からの衝撃力を小さくし,前方への加速の制動を最優先させることで,立脚期後半での推進力を十分に発揮できず,立脚期時間を延長させることで歩行速度を維持している可能性が示唆された。</p>