著者
藤村 幹 冨永 悌二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.844-850, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

頭蓋外内血行再建術は脳虚血症状を有するもやもや病に対する有効な治療法である. 直接血行再建術による術直後から脳血流改善に加え, 間接血行再建術により慢性期血管新生誘導が期待できる. 鈴木分類で示される本疾患の基礎病態, すなわち内頚動脈系から外頚動脈系への緩やかな血流依存の変換 (IC-EC conversion) といった本疾患に内蔵された生理的代償機構を達成・促進するうえでも, 頭蓋外内血行再建術は完成されたコンセプトを持つ治療法である. Japan Adult Moyamoya Trialの結果を受け, 本術式の適応は出血発症例にも拡大傾向にある. 周術期においては脳虚血や過灌流症候群などの合併症回避が重要である.
著者
大森 孝一 藤村 真太郎 水野 佳世子
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.1-10, 2021 (Released:2021-01-01)
参考文献数
48

Digital transformation (DX) was a term proposed by Stolterman et al., who stated that the ongoing development of information technology could be of service to better people’s lives. DX is reshaping interactions between health professionals and patients, decisions about treatment plans, and medical outcomes. Based on key trends from big data, artificial intelligence (AI) and next-generation communication, DX offers the hope for better medical care of prevention, diagnosis, treatment, and welfare for patients. Big data aggregates information about electronic medical records, insurance receipts, patients’ registries, genome/omics, and biological information from wearable devices. AI health programs enable automatic analysis of endoscopic images, CT images, MR images, and voice data to enable diseases to be diagnosed by machine learning of the inputs gathered from thousands of data sets. Next-generation 5G communication is expected to enable smooth telemedicine with little delay, such as for hearing aid fitting and cochlear implant mapping. Telerobotic surgery has also been reported. Emerging digital technologies will change the face of otolaryngological medical care.
著者
正富 宏之 正富 欣之 富士元 寿彦 増澤 直 小西 敢 藤村 朗子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1910, 2020-05-15 (Released:2020-06-28)
参考文献数
29

世界におけるタンチョウ Grus japonensis Mlerは、大陸個体群と北海道個体群の二つの地域個体群に分かれる。北海道個体群の道東から北海道北部への繁殖域の拡大を、 2003年から 2015年まで航空機により調査した。北海道の北端宗谷地方には、 1860年ころまで確実にタンチョウが生息していたが、その後 2000年代初頭まで、この種の出現記録はなかった。しかし、地上調査により 2002年に日本海に面するサロベツ原野地区で夏に 2羽を見つけ、翌年から飛行調査を行い、 2004年には営巣活動に続いて 45日齢ほどのヒナも観察した。また、 2006年にオホーツク海側のクッチャロ湖地区で初めて 2羽を目撃し、 2008年には繁殖を認めた。その後、 2014年にサロベツ原野地区で 3番い、クッチャロ湖地区で 2番いが営巣し、 2015年は北限となる稚内大沼地区でも 1番いが加わり、計 6番いが就巣し、宗谷地方の主要繁殖適地における営巣地分布拡大を確認した。その結果、 2004年から 2015年までに、ペンケ沼周辺で 13羽、クッチャロ湖周辺で 9羽の幼鳥が育った。これに伴い、宗谷地方の春 -秋期個体群は 2015年までに最多で 15羽(幼鳥を含む)となり、明確な増大傾向を示した。宗谷地方へのタンチョウ進出は、道東における繁殖番いの高密度化によるもので、収容力に余地のある道北の個体群成長は、道東の過密化傾向抑制(分散化)にとり極めて意義深い。しかし、個体は冬に道東へ回帰し給餌場を利用すると思われるので、感染症等のリスクを抱えたままであるし、 2016年以降の営巣・繁殖状況等も不明である。従って、道東と分離した道北個体群創設や越冬地造成等も含めた効果的対応手段策定のため、道北一帯で飛行調査を主軸とする全体的動向把握を継続的に行うことが不可欠である。
著者
藤村 彰夫 安部 正真 矢田 達 田中 智 加藤 學 はやぶさ試料初期 分析チーム
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.74, 2009

宇宙航空研究開発機構に設置された惑星物質試料受け入れ設備(キュレーション設備)は今後の種々のサンプルリターンに対応したものであるが、直近の2010年6月の小惑星探査機「はやぶさ」によるサンプルリターンに備え、設備の機能性能を確認する試験運用を実施した。今回の試験運用で、はやぶさ試料の受け入れ、試料カプセルの開封、試料の取り出しと保管、秤量や分配の手順確認ができた。現時点でクリーンチャンバー内では取り扱うことができない微小なサイズの試料についてのハンドリングを可能にする対応についても今後検討すると共に、直近に迫っている「はやぶさ」試料帰還に備えて、リハーサル運用を実施する予定である。
著者
三田 俊夫 酒井 明夫 上田 均 藤村 剛男 中村 正彦 伊藤 欣司 坂本 文明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-989, 1993-09-15

【抄録】 憑依症状群(キツネ憑き)を中心とするfolie à troisの2例を報告した。発端者はいずれも精神分裂病であり,「家」のうちでは中心的役割を果たし,共同体の文化的脈絡にそって生活していくべき立場にあった。1例は山村,他例は漁村が舞台となっているが,いずれにおいても発端者と継発者とは,地域の民間信仰と俗信を絆として互いの緊密な結びつきを保ち,それを土台に互いの病像を支持し合い,強め合うという傾向が顕著に認められた。従来,本病態の発生には,外部とは隔絶された,長期にわたる同居の期間が必要とされてきたが,本例では,地域と家庭双方における民間信仰の共有が,いわば心性という次元で同居と同様の状況を作り出していると考えられる。これらのことより,本病態の発生因として,従来重要視されてきた遺伝的近接と環境的近接に加えて,地域の伝統風俗や習慣に土台を持つ,信仰,思想上の近接が重要な役割を果たしうることが示唆された。
著者
藤村 潤一郎 Jun'ichiro FUJIMURA
出版者
創価大学人文学会
雑誌
創価大学人文論集 (ISSN:09153365)
巻号頁・発行日
no.7, pp.26-79, 1995-03-01

私は天明七年御買上米一件について勘定組頭土山宗次郎などを通して飛脚問屋の動向をみた。本稿では天明初期の狂歌界の交遊を通して勘定奉行所関係者と三井江戸両替店関係者との動向をみ、併せて飛脚問屋の動向についても考えたい。成稿に当り宮崎修多「大田南畝における雅と俗」から教示をうけたが、所詮私は雅に疎く俗が主であり、かつ国文学の知識が乏しいので本稿は初歩的なものである。