著者
粕谷 誠
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.36-72, 1990-01-30 (Released:2010-11-18)

It has been commonly accepted that the Zaibatsu holding companies held control over its subsidiary companies by giving permission to appoint managers, to make a huge long-term investment, to establish branches, and so on. But we have few studies about Zaibatsu control over banking companies. The purpose of this paper is to make clear how Zaibatsu holding company (Mitsui Gomei) controlled its subsidiary bank (Mitsui Bank) in the 1910s.Without agreement of the directors board of Mitsui Bank, Managing Directors could not (a) make or revise rules or regulations of the bank, (b) establish branches and appoint managers of branches, (c) change the tacit cartel treatment on deposit interest rate among main banks, (d) change maximum amount of loans of each branch, (e) underwrote public and corporate bonds, (f) closed contracts with foreign banks, while they could change the preferred interest rate of deposits for special customers and make loans (except asked politically). The board of the bank needed the permission of Mitsui Gomei when it (a) made or revised important rules, (b) established branches and appointed managers of branches, (c) underwrote bonds.In 1917, the board meetings were held 57 times, of which 25 meetings could not make decisions because the number of those present didn't reach a quorum. The quorum is five of six members of the Board, into which Mitsui families sent two members. From this fact we can infer that the board meetings didn't play an important role in decision making.In 1919, Mitsui Bank issued new stock partly by public subscription, the Board added two members in it. The two were the new stock owners, and they had not been working for the companies controlled exclusively by Mitsui Gomei. It was the first time for the Board to accept the outsiders. After 1919 the Board could make any decisions without agreement of Mitsui Gomei formally. At this time the Board made some codes which empowered Managing Directors to make decisions in particular matters without agreement of the Board, but the codes consisted mainly of the customs which had prevailed in the Board.
著者
粕谷 誠
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.29-55,ii, 1987-10-30 (Released:2009-11-06)
被引用文献数
1

The amount of deposits of Mitsui Bank increased rapidly after 1886, leading to a corresponding increase in the amount of loans by the bank. In spite of these favorable circumstances, the bank had held a lot of bad loans because it lacked the ability to review requests effectively. T. Masuda, president of Mitsui Bussan Kaisha, was anxious about the state of Mitsui Bank. He asked K. Inoue, the former Minister of Finance, for help and advised T. Nishimura, vice-president of Mitsui Bank, to place more effort at loan collection. But Nishimura didn't translate Masuda's advice into action, as he was a man of indecision. Consequently, Mitsui Bank lost the confidence of bankers and the amount of nongovernmental deposits decreased from 17, 117 thousand yen to 12, 612 thousand yen in the first half of 1891. Masuda complained to Inoue that Nishimura could not cope with the crisis of Mitsui Bank. Then Inoue asked H. Nakamigawa, president of Sanyo Railway Company, to enter Mitsui Bank and institute reforms. Nakamigawa entered Mitsui Bank in August 1891. He collected outstanding loans to Higashi-Honganji and recieved collateral from other borrowers. But I think it must be emphasized that Mitsui Bank had already been recieving collateral prior to Nakamigawa's entry and that he wrote off bad loans by reducing reserve fund which had been maintained since the bank's establishment in 1876. (It had several kinds of voluntary reserve accounts because its financial status in 1876 was very bad.) He was able to pay back the bank's borrowings from the Bank of Japan by the end of 1892 because the bank's deposits had increased and the amount of governmental bonds which it held decresed.
著者
谷 誠司
出版者
常葉大学外国語学部
雑誌
常葉大学外国語学部紀要 = Tokoha University Faculty of Foreign Studies research review (ISSN:21884358)
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-10, 2016-03-31

潜在ランク理論はShojima(2007) によって提案された新しいテスト理論である。潜在ランク理論は素点ベースの古典的テスト理論と異なり、潜在的な変数(能力値)を対象とする点では項目応答理論と同じであるが、受験者の能力を連続尺度上で評価する項目応答理論とは違い、段階評価をする。本研究ではCEFR-DIALANG の読解尺度にある能力記述文(Can-do statements)を使い、韓国人日本語学習者を対象に5件法の自己評価をしてもらった結果を潜在ランク理論で分析をし、その結果の一部を報告する。
著者
熊谷 誠治 佐々木 恵司 清水 良枝 武田 紘一
出版者
日本素材物性学会
雑誌
素材物性学雑誌 (ISSN:09199853)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.34-38, 2007-12-28 (Released:2010-10-28)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

Japanese rice husk was converted into an adsorbent for the removal of two types of aldehyde vapors. The rice husks carbonized at 250-800°C in N2 for 1h were exposed to vapors containing 1.0 vol. ppm formaldehyde or 100 vol. ppm acetaldehyde (both N2 carrier) in 5 L-gas sampling bags. Maximum adsorption rates of formaldehyde and acetaldehyde were observed for rice husks carbonized at 800 and 600°C, respectively. The adsorption rates of the aldehydes on the carbonized rice husks were higher than or comparable to those of the commercial granular coconut-shell activated carbon (GCSAC), whereas the specific surface area and the total pore volume of the carbonized rice husks were much lower than that of the GCSAC. The surface basic property of the rice husks carbonized at high temperatures was attributed to the intrinsic inorganic matters of K and Ca, which enhanced an uptake of the aldehydes on their surfaces.
著者
武者 篤 一戸 達也 新谷 誠康 布施 亜由美 鈴木 奈穂 福島 圭子 大串 圭太 五味 暁憲 黒田 真右 辻野 啓一郎 横尾 聡
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.154-159, 2018

<p>mTOR阻害剤のエベロリムス(アフィニトール<sup>®</sup>)は結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に有効であるが,口腔粘膜炎が高頻度に発症することが報告されている.今回,エベロリムスの内服治療を行うことになった結節性硬化症患者の口腔管理を経験したので報告する.</p><p>患者は20歳,男性.既往として結節性硬化症,知的能力障害,てんかん,腎血管筋脂肪腫がある.腎血管筋脂肪腫に対する治療としてエベロリムス10mgを内服開始するにあたり,泌尿器科主治医より歯科受診を勧められ当施設を受診した.口腔粘膜に異常所見は認めないが清掃状態は不良であり,頰側転位している上顎左側第二小臼歯鋭縁による口腔粘膜炎発症が懸念された.第二小臼歯の予防的な抜歯と定期健診および口腔衛生指導を行うこととした.頰側転位している第二小臼歯は6カ月後に抜去した.その後数回にわたり口腔清掃不良の時期と一致して軽度な口腔粘膜炎(grade 1)の発症があったものの食欲減退はなく,重篤な口腔粘膜炎発症によるエベロリムスの減量や中止にいたることはなかった.抜歯後も継続して月1回の定期健診を行っているが,口腔粘膜炎が重篤化することはなく,エベロリムス内服治療へ影響することはなかった.</p><p>本症例は口腔粘膜炎を最小限に抑えることができ,重篤な口腔粘膜炎が原因の内服治療の中止や腎血管筋脂肪腫の増大を起こすことなく経過している.これは主治医との連携と,定期健診や口腔衛生指導が適切に行えたことによると考えられた.</p>
著者
入谷 誠 山嵜 勉 大野 範夫 山口 光国 内田 俊彦 筒井 廣明 黒木 良克
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.35-40, 1991-01-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
3

今回,我々は足位,すなわちFOOT ANGLEの変化が,骨盤の側方安定性に関与する中殿筋活動の動態と距骨下関節の内外反角度にどの様に影響をするかをX線学的及び筋電図学的に検索した。その結果,X線学的には,TOE-OUTで距骨下関節は内反し,TOE-INで距骨下関節は外反した。筋電図学的分析では,中殿筋の活動はTOE-OUTからTOE-INに向かって,明らかに増加した。さらに中殿筋の活動量が最も大きかったTOE-IN 30°でアーチサポートを挿入すると,中殿筋の活動量が明らかに低下したことから,中殿筋の活動量はFOOT ANGLEの変化のみならず,足部アーチの状態も大きく影響を及ぼしていることを示唆した。
著者
加藤 彩奈 宮城 健次 千葉 慎一 大野 範夫 入谷 誠
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0078, 2008 (Released:2008-05-13)

【はじめに】変形性膝関節症(以下膝OA)は立位時内反膝や歩行時立脚相に出現するlateral thrust(以下LT)が特徴である。臨床では膝OA症例の足部変形や扁平足障害などを多く経験し、このLTと足部機能は密接に関係していると思われる。本研究では、健常者を対象に、静止立位時の前額面上のアライメント評価として、下腿傾斜角(以下LA)、踵骨傾斜角(以下HA)、足関節機能軸の傾斜として内外果傾斜角(以下MLA)を計測し、下腿傾斜が足部アライメントへ与える影響を調査し、若干の傾向を得たので報告する。【対象と方法】対象は健常成人23名46肢(男性11名、女性12名、平均年齢29.3±6.1歳)であった。自然立位における下腿と後足部アライメントを、デジタルビデオカメラにて後方より撮影した。角度の計測は、ビデオ動作分析ソフト、ダートフィッシュ・ソフトウェア(ダートフィッシュ社)を用い、計測項目はLA(床への垂直線と下腿長軸がなす角)、HA(床への垂直線と踵骨がなす角)、LHA(下腿長軸と踵骨がなす角)、MLA(床面と内外果頂点を結ぶ線がなす角)、下腿長軸と内外果傾斜の相対的角度としてLMLA(下腿長軸への垂直線と内外果頂点を結ぶ線がなす角)とした。統計処理は、偏相関係数を用いて、LAと踵骨の関係としてLAとHA、LAとLHAの、LAと内外果傾斜の関係としてLAとMLA、LAとLMLAの関係性を検討した。【結果】各計測の平均値は、LA7.1±2.4度、HA3.0±3.9度、LHA10.5±5.5度、MLA15.3±3.9度、LMLA8.1±4.0度であった。LAとLHAでは正の相関関係(r=0.439、p<0.01)、LAとLMLAでは負の相関関係(r=-0.431、p<0.01)が認められた。LAとHA、LAとMLAは有意な相関関係は認められなかった。【考察】LHAは距骨下関節に反映され、LAが増加するほど距骨下関節が回内する傾向にあった。したがって、LA増加はHAではなく距骨下関節に影響するものと考えられる。LA増加はMLA ではなくLMLA減少を示した。これらの関係から下腿傾斜に対する後足部アライメントの評価は、床面に対する位置関係ではなく下腿長軸に対する位置関係を評価する必要性を示している。LA増加に伴うLMLA減少は距腿関節機能軸に影響を与えると考えられる。足関節・足部は1つの機能ユニットとして作用し、下腿傾斜に伴う距腿関節機能軸変化は距骨下関節を介し前足部へも波及する。今回の結果から膝OA症例のLTと足部機能障害に対し、距腿関節機能軸変化の影響が示唆された。今回は健常者を対象とした静的アライメント評価である。今後、症例との比較も含め運動制御の観点から動的現象であるLTと足部機能障害の解明につなげていきたい。
著者
貝谷 誠久 大西 竜哉 弘本 律子 田中 秀和 生駒 一憲
出版者
日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.265-269, 1999
参考文献数
23
被引用文献数
2

健常者12名を対象に,1km歩行による膝伸展筋(大腿直筋,外側広筋,内側広筋)の筋活動を測定し,長距離歩行が膝伸展筋に与える影響を検討した。歩行開始時に比べ1km歩行時では,大腿直筋の活動量が増加し,外側広筋は減少した。各筋の活動量に性差は見られなかった。特に,大腿直筋は,立脚相前・中期で増加し,外側広筋は,遊脚相中期で減少した。歩行開始時と1km歩行時での各筋の1歩行周期中における最大活動時期では差は見られなかった。膝伸展筋において,長距離歩行の獲得には,大腿直筋の持久力を考慮する必要があると考えられた。
著者
細谷 誠 藤岡 正人
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.12, pp.1508-1515, 2019-12-20 (Released:2020-01-09)
参考文献数
23
被引用文献数
1

感音難聴に対する治療法の開発は, 診断学の向上に比べて進捗が乏しい. その一つの原因は生検による患者内耳細胞の直接の観察が解剖学的に困難なことにある. これまでに代替手法として細胞株やモデル動物を用いた研究が展開され, 有用な情報をもたらしてきたものの, いまなお未解明な科学的課題も多数残されている. 近年, 既存の手法で克服できなかった科学的課題に対し, ヒト細胞および組織の代替となる新しい研究ツールとして, ヒト iPS 細胞を用いた検討が医学のさまざまな分野で展開されている. 山中らによって2006年にマウスで最初に報告された iPS 細胞だが, 続く2007年にはヒト iPS 細胞の樹立方法が報告され, 約十年の間にその応用方法は飛躍的な発展を遂げている. 本細胞は体内のありとあらゆる細胞に分化誘導可能という特徴を持つ. この性質を利用することによって, 体外で目的の細胞を作成し, 細胞移植治療や病態研究, さらには創薬研究への応用が可能である. 国内においても, すでに網膜や脳に対する移植が臨床研究レベルで行われているほか, 複数の疾患において iPS 細胞を用いて発見された治療薬候補の臨床検討が開始されている. ヒト iPS 細胞を用いた研究は, 内耳疾患研究および治療法開発にも応用が可能である. ほかの臓器と同様に, 本細胞からの体外での内耳細胞誘導が可能であり, 誘導されたヒト iPS 細胞由来内耳細胞を用いた研究が展開できる. 内耳研究においてもこれまでに, ① 細胞治療への応用, ② 内耳病態生理研究への応用, ③ 創薬研究への応用, がなされており, そのほかにも老化研究や遺伝子治療法の開発への貢献などさまざまな可能性が期待されている. 本稿では, ヒト iPS 細胞の内耳研究への応用および iPS 細胞創薬の展望を概説するとともに, 最新の試みを紹介する.
著者
松田 咲子 西田 顕郎 大手 信人 小杉 緑子 谷 誠 青木 正敏 永吉 信二郎 サマキー ブーニャワット 戸田 求
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.44-56, 2000
被引用文献数
2

タイの熱帯モンスーン地域において,NOAA/AVHRRデータを用い,植生地域を対象として正規化植生指標NDVIと輝度温度Tsの関係と地表面状態との対応について検討した.その結果, NDVI-Ts関係は地表面状態の乾雨季の変化に対応して明瞭な季節変化を見せた.また対象地域においてNOAA/AVHRRの各ピクセルは,植生面,湿潤土壌面,乾燥土壌面といった特徴的な地表面の混合ピクセルとして扱えることが示唆された.この混合ピクセル的解釈に基づきNDVI-Ts関係を地表面の熱収支的観点から表現するモデルを提示した.本モデルによる定量的な解析からは, NDVI-Ts関係には土壌水分条件が反映することが示唆された.またこの混合ピクセル的解釈に基づくフラックス観測データの広域的拡張の一例として,広域潜熱フラックス推定マップを試作した.そしてこの方法を用いて観測データを拡張する際には,密な植生面上と裸地面上といった,いくつかの極端に異なる地表面上で観測する必要があることが示唆された.
著者
松添 弘樹 七星 雅一 角谷 誠 大西 祥男 清水 宏紀 畑澤 圭子 中村 浩彰 熊谷 寛之 辻 隆之 井上 通彦 則定 加津子 高見 薫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.54-60, 2014

症例1 : 30歳代, 女性. アルコール依存症, 神経性食思不振症にて精神科外来加療中であったが1 年前より通院を中断していた. 2012年5 月下旬の夕食後, 突然の痙攣様発作で救急要請. 救急隊到着時, 心室細動波形で心肺蘇生を開始, 合計3 回の電気的除細動が施行され当院搬入となった. び漫性左室壁運動低下を認め, 血清カリウム2.2mEq/L, 血清リン1.1mg/dLと電解質異常を認めていた. 入院後電解質補正を行い不整脈は消失したが, 低酸素脳症のため意識レベルの改善なく経過した. 症例2 : 40歳代, 男性. 2012年5 月下旬より下肢筋力低下, 起立困難から脳梗塞を疑われ近医で頭部精査入院となったが, 明らかな脳神経疾患は認めなかった. 前医第2 病日の朝食後, 突然心室細動が出現し心肺蘇生が施行されるも, 難治性心室頻拍となり某院救急センターへ搬送. 冠動脈造影にて有意狭窄はなかったが, 薬剤的, 電気的にもコントロール困難で経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) 挿入下に当院に紹介搬送となった. 当院では多形性心室頻拍 (torsades de pointes ; TdP) を認め, び漫性に左室壁運動が低下しており, 血清カリウム : 1.6mEq/L, 血清リン : 1.6mg/dLと電解質異常を認めた. 入院後電解質補正によりTdPは消失, PCPS抜去にいたるも低酸素脳症から意識障害が遷延し第10病日に死亡退院となった. 両症例ともアルコール依存症を背景に持ち, カロリー摂取後の致死的不整脈出現からrefeeding症候群の関与が疑われた. 慢性低栄養患者に発症した若年性心肺停止患者ではrefeeding症候群の可能性を常に考慮する必要があると考えられた.
著者
吉田 明日美 髙田 和子 別所 京子 田口 素子 辰田 和佳子 戸谷 誠之 樋口 満
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.305-315, 2012 (Released:2012-12-13)
参考文献数
31
被引用文献数
1 11

【目的】女性スポーツ選手を対象に,二重標識水(DLW)法で測定した総エネルギー消費量(TEE)と,食事記録法より求めた総エネルギー摂取量(TEI)から算出したTEI評価誤差に対する種目や身体組成,食事摂取状況の関連を明らかにすることを目的とした。【方法】大学女性選手38名(陸上中長距離9名,水泳10名,新体操7名,ラクロス12名)を対象とした。体重補正済みTEE(cTEE)はDLW法で求めたTEEと調査期間中の体重変動から算出し,TEIは同期間に実施した食事記録法による食事調査から計算した。【結果】cTEEとTEIは,陸上 2,673±922 kcal/day,2,151±434 kcal/day,水泳 2,923±749 kcal/day,2,455±297 kcal/day,新体操 3,276±497 kcal/day,1,852±314 kcal/day,ラクロス 2,628±701 kcal/day,2,329±407 kcal/dayであった。TEI評価誤差は,陸上-13.6±24.1%,水泳-13.3±14.3%,新体操-42.0±15.3%,ラクロス-2.8±38.3%であり,種目間の比較では新体操が有意に過小評価していたが,身体組成や食事摂取状況には競技特性はみられず,同一種目間の個人差が大きかった。評価誤差の大小で2群に分けた高精度群(評価誤差-8.4±10.7%(値の範囲:-24.8%~+14.5%))は過小評価群(-40.9±8.8%(-56.3%~-28.7%))よりTEE,脂質エネルギー比率が有意に低値であり,菓子類摂取量,食事回数,炭水化物エネルギー比率が有意に高値であった。TEEが小さいことは高精度群への分類に独立して関連していた。【結論】女性選手の評価誤差には,TEEが独立して関連し,種目や食品群別摂取量,エネルギー比率,食事回数が関連する可能性が示された。今後は,対象種目の再検討や対象者数の増加とともに,心理的,社会的要因を含めた,評価誤差に関連する要因の検討が必要と考えた。