- 著者
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野村 恭彦
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.1, pp.121-130, 2004-01-15
本論文では,新たなグループウェア設計の指針となる,ストラテジック・ナレッジ・パターン(SKP)を示す.SKPは,日米のナレッジ・マネジメント(KM)に成功している企業11社の半年にわたっての定性・定量調査を通じて構築された,企業の差別化戦略の3つのパターンである.これまでのグループウェア研究では,協業の目的を持ったグループの知識共有の支援には一定の成果をあげてきたが,KMの成功と失敗の分かれ目である,いかに組織の構成員に知識共有の動機付けを行うかという課題に関しては,十分な議論がなされてこなかった.本論文ではまず,KMに成功している企業は,部門を越えた知識共有が特別な取り組みではなく,「当たり前」の企業文化となっていること,その秘訣は,知識経営の「目的」,焦点を当てるべき重要な「知識」,各個人・組織の仕事の背景である「コンテクスト」の3つの可視化にあることを示す.続いて,本調査を通して発見された3つのSKP,ビジョン主導型KM,プロ型KM,創発型KMを示し,各SKPを実現するためのグループウェア設計指針について議論する.最後に,SKPに基づきグループウェア設計を行うことにより,グループウェアの提供価値を,ミクロなグループ活動支援から,経営戦略に基づく組織全体の知識創造活動支援へと,高めることが可能になることを示す.