著者
桑原 恵介 金森 悟 鈴木 明日香 渋谷 克彦 加藤 美生 福田 吉治 井上 まり子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-007, (Released:2023-06-08)
参考文献数
26

目的 本邦の公衆衛生専門職大学院は疫学,生物統計学,社会行動科学,保健政策・医療管理学,産業環境保健学を基本5領域に据えて教育を行ってきたが,その現状と課題に関する知見は乏しい。そこで,帝京大学大学院公衆衛生学研究科を教育活動事例として,公衆衛生学修士課程(Master of Public Health, MPH)での教育の現状と課題,改善案をまとめることとした。方法 MPH教育の目標と授業科目の記述には,帝京大学大学院公衆衛生学研究科2022年度履修要項を参照した。課題と改善案は,同研究科での各領域の担当教員から意見を抽出し,要約した。活動内容 疫学では問題の本質を定式化して,データを収集・評価し,因果効果について推定できるように,討議を含む講義が行われきたが(計8科目),新たな公衆衛生課題への応用や技術革新へのキャッチアップの担保が課題である。生物統計学ではデータと統計学を理解し,解析を実践するための講義・演習が行われてきた(計9科目)。課題としては学生の理論の理解と講義難易度の設定,新しい統計手法の教材不足が浮かび上がった。社会行動科学では人間の行動を理解し,課題解決に向けて行動するための講義・演習・実習が行われてきた(計8科目)。課題としては,様々な行動理論の限られた時間内での習得,多様なニーズとの乖離,実践で役立つ人材育成が示された。保健政策・医療管理学では世界や地域の課題を発見・解決するために,政策や医療経済的視点も交えて講義・演習・実習を行ってきたが(計19科目),グローバル人材の輩出や行政実務者の入学不足,合理的・経済学的思考やマクロ経済的変化の認識の不足が課題である。産業環境保健学では産業・環境による影響と対策を法律・政策も含めて理解するための講義・演習・実習を行ってきた(計9科目)。課題としては最新技術や環境保健,社会的に脆弱な集団等のテーマの充実が挙げられた。結論 帝京大学でのMPH教育の振り返りを通じて,時代に即したカリキュラム編成,多様な学生,求められる知識・技能の増加,実務家の実践力醸成といった課題に対処していくことが,次世代の公衆衛生リーダーの育成に向けて重要であることが示唆された。こうした課題を解決していくために,公衆衛生専門職大学院での教育内容を全体像の視点から定期的に見直し,改革を行う不断の努力が求められよう。
著者
長峯 岳司 永瀬 守 鈴木 一郎 中島 民雄 長峯 岳司
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

α型の燐酸三カルシウム(α-TCP)粉末は水との反応により、ハイドロキシアパタイト(HA)に転化し、常温で凝結硬化する事が知られている。この反応は酸の存在により促進するが、この凝結硬化のみでは硬化物は脆弱で人工骨としては利用し難い。私達は、この反応系に多糖体(デキストラン)を加える事により人工骨として十分な強度の硬化物を得るのに成功した。本材料はこの硬化の過程で形態付与が可能となり、付形成に優れているため、組織親和性も優れていれば臨床的な応用範囲はかなり広いものと考えられる。本研究では、この硬化物の組織反応について観察するとともにHA顆粒との複合剤としての利用も検討した。蒸留水とグルタール酸とデキストランを14:6:25の比率で混合し、これを多糖溶液とする。α-TCP粉末とこの多糖溶液を7:5の比率で混合し練和すると、2〜5分で硬く硬化する。この硬化の過程で形成を行う(TCPインプラント)。これを家兎の下顎骨外側の骨膜下に移植し1、2、4、12、24週後に屠殺し下顎骨を摘出、HE染色にて組織学的に生体反応を観察した。さらにこの材料とHA顆粒の複合材を家兎に同様に移植し、同様に組織反応を観察した(TCP-HAインプラント)。両者で活発な骨新生が観察され、グルタールや酸やデキストランによる阻害は殆ど観察されなかった。この材料は、人工骨として十分な強度を持ち、硬化の過程で形態付与が可能となり付形成に優れ、また本実験にて生体親和性も優れていることが観察され、いままで再建術等で用いられていたHA顆粒の欠点を補うものとして有用である事が確認された。
著者
村上 敏史 五十嵐 麻美 宮野 加奈子 上園 保仁 八岡 和歌子 上野 尚雄 鈴木 恵里 石井 妙子 松田 裕美
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.159-167, 2019 (Released:2019-07-16)
参考文献数
28
被引用文献数
1

【目的】終末期がん患者の口腔不快事象に対する半夏瀉心湯の含嗽の有効性を検討した.半夏瀉心湯に蜂蜜を混和することで症状緩和の有効性およびコンプライアンスが向上するか検討した.【方法】対象症例を無作為に振り分けたうえで,半夏瀉心湯または蜂蜜併用半夏瀉心湯含嗽を2週間施行した.開始前後で口腔乾燥,口臭,口内炎,口腔内不快感,含嗽のコンプライアンスについて評価を行った.【結果】対象症例は22例であった.半夏瀉心湯含嗽による口腔内乾燥度の改善,呼気中硫化水素の減少が認められたが,含嗽による臨床効果や含嗽のコンプライアンスと蜂蜜併用の有無に大きな関連は認められなかった.【結論】終末期がん患者の口腔不快事象に対する半夏瀉心湯の含嗽は,患者の生活の質向上に寄与することが示唆されたが,蜂蜜の使用についてはとくに大きな利点は認めなかった.口腔内不快事象を緩和させることは終末期がん患者のケアに有効であると考えられる.
著者
島田 裕之 古名 丈人 大渕 修一 杉浦 美穂 吉田 英世 金 憲経 吉田 祐子 西澤 哲 鈴木 隆雄
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.105-111, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
25
被引用文献数
50

本研究では,地域在住の高齢者を対象としてTimed Up & Go Testを実施し,性差と加齢変化を調べた。また,転倒,活動性,健康感との関係を調べ,高齢者の地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性を検討した。対象は地域在住高齢者959名であり,平均年齢74.8歳(65-95歳),男性396名,女性563名であった。検査および調査項目は,身体機能検査としてTimed Up & Go Test,歩行速度,握力,膝伸展筋力,Functional Reach Testを実施した。質問紙調査は過去1年間の転倒状況,外出頻度,運動習慣,趣味,社会活動,主観的な健康感を聴取した。Timed Up & Go Testを5歳の年齢階級別に男女差を調べた結果,すべての年代において男性が有意に速い値を示した。加齢変化をみると男女とも70歳末満と以上の各年代に有意差を認めた。男性においては他の年齢階級間に有意差は認められなかった。一方,女性では70-74歳と80-84歳,85歳以上,および75-79歳と80-84歳の間,80-84歳と85歳以上の年代間において有意差を認めた。転倒,活動性,健康感との関係では,転倒状況,外出頻度,運動習慣とTimed Up & Go Testの有意な関係が認められた。以上の結果から,高齢者におけるTimed up & Go Testは性差と加齢による低下が明らかとなった。また,転倒,外出頻度,運動習慣と密接な関係が示され,地域保健活動の評価指標としての有用性が確認された。
著者
国分 秀也 冨安 志郎 丹田 滋 上園 保仁 加賀谷 肇 鈴木 勉 的場 元弘
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.401-411, 2014 (Released:2014-10-08)
参考文献数
85
被引用文献数
4 2

2013年3月に, 本邦でもメサドン内服錠の臨床使用が開始された. メサドンは, モルヒネ等の他のオピオイドと異なる薬理作用をもち, 呼吸抑制およびQT延長といった重篤な副作用を発現することがある. その原因の1つとして, 体内薬物動態が非常に複雑であることが挙げられる. メサドンは大半が肝臓で代謝されるが, その代謝酵素はCYP3A4, CYP2B6およびCYP2D6など, 多岐にわたる. また, 自己代謝誘導があること, アルカリ尿で排泄が遅延すること, 半減期が非常に長く定常状態に到達するまでに長時間要すること等の問題がある. これらの複雑なメサドンの薬物動態を十分に理解して使用されなければ, 血中メサドン濃度が一定に保たれず, 一過性に上昇することによる重篤な副作用が起きる可能性がある. 本論文では, 臨床医師あるいは薬剤師がメサドンを安全に臨床使用するために必要な薬物動態についてまとめた.
著者
石井 政憲 城戸 滉太 太田 力 柴田 寛之 山田 健太郎 鈴木 孝治 チッテリオ ダニエル
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.94-105, 2016-02-10 (Released:2016-02-13)
参考文献数
29

患者のすぐそばで行える医療診断 (その場診断) が重要であるという考えが,臨床現場において普及しつつある.近年,マイクロ流路を紙の上に設けることで,コストやユーザーの負担を抑えながら,実用に即した分析ができる検査チップを開発する研究が世界的に盛んである.2007年,Whitesidesらにより提唱されて以来注目を集め,現在ではmicrofluidic paper-based analytical devices (μPADs) の呼称が定着している.マイクロ流路と身近な素材である紙の組み合わせにより,複雑な操作を伴う分析や多重項目測定を,比色法や蛍光法,電気化学的手法などを用いて,低コストかつ簡便に行えるμPADsが数多く開発されている.μPADsは基材が紙であることから,主に印刷による作製技術が進歩を見せている.中でも,様々なデバイス生産で工業的にも活躍しているインクジェット技術が,μPADsの大量生産や機能性付与が可能なアプローチとして着目されている.本稿では,将来の実用化に期待の集まるμPADsの製作技術や応用例の現状について,特に汎用性の高いインクジェット技術に焦点を当てながら解説する.
著者
野並 慶宣 斉藤 信 佐々木 康弘 鈴木 敦士
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.698-703, 1983-12-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
14

新鮮殼付鶏卵およびあひる卵を70℃あるいは100℃に30分間加熱した後凍結,解凍した場合の卵白の微細構造を透過型電顕で観察し,解凍卵白中に分離している液の組成を分析し,またオボムチンを希釈あるいはpHを5.50とすることにより沈でん,除去した卵白を同様に加熱,凍結,解凍し,その微細構造を観察し,次の結果をえた。(1)新鮮生卵白の微細構造は鶏とあひるとでは明らかに異なるが,いずれの場合も電子密度の極めて高い線維状構造が認められ,オボムチンを除去した卵白ではこの構造は認められない。(2)電顕図において,卵白蛋白質は加熱により電子密度の高い塊状となり,加熱温度が高くなるとこの塊の周辺部の電子密度は増大して塊の輪郭は明らかとなる。オボムチンを除いた場合は,加熱により生じた塊は互に接続するものが多くなり,酸によりオボムチンを除いた場合は,蛋白質は大部分電子密度の高い大きい塊となるが,酸によるこの変化はあひる卵より鶏卵において著しい。(3)分離液の重量の卵重に対する割合はいずれの加熱条件下においても鶏卵とあひる卵で差はないが, 70℃,30分間加熱のあひる卵の分離液中の固形物含量は他の場合より著しく少ない。(4)分離液中の窒素は, 100℃, 30分間加熱の鶏卵,あひる卵および70℃, 30分間加熱の鶏卵の場合は蛋白態のものが多いが, 70℃, 30分間加熱のあひる卵の場合は大部分が非蛋白態である。また分離液中のヘキソサミン,ウロン酸は鶏卵よりあひる卵に多い。(5)鶏卵およびあひる卵の分離液中の遊離の糖のペーパークロマトグラフィーによる分析結果は,新鮮鶏卵卵白の透析性糖のそれとは異なる。
著者
鈴木 寛之
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

許しと感謝のエクササイズは、ネガティブな出来事や自身の弱さ等に「ゆるします」や「ありがとう」と唱えることで,それらをありのままに受け入れ、さらにポジティブな面を見出し、最終的には些細で当たり前な出来事(目が見えること、家族がいること等)への気づきを通してより前向きな捉え方を身に着けていくことを目指すものである。うつ病16名を含む23名の患者を無作為比較試験を行った結果、BDI-II、自己受容感、日本版寛容性尺度、反応スタイル尺度の問題への直面化および日本版-外傷後成長尺度は、介入により有意に改善することが明らかとなり、本プログラムはうつ病を主とした患者に対して有用であると考えられた。
著者
山岸 輝樹 鈴木 雅之 広田 直行 服部 岑生
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.78, no.686, pp.801-806, 2013-04-30 (Released:2013-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

The purpose of this study is to propose a method of evaluation and visualization of accessibility to regional facilities for elderly peoples, and to verify the validity of proposed method through comparative study of 3 residential areas.In this study, the following subjects were studied.1) In each area, the different type of facility is the cause of poor accessibility for many blocks.2) If facility location lacks continuously, there are poor total accessibility blocks.3) In the near future, the accessibility to Regional facility will become a problem for many blocks around Tokiwadaira-danchi and around Kitanarashino station.
著者
木田 千晶 鈴木 裕子
出版者
日本子育て学会
雑誌
子育て研究 (ISSN:21890870)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.15-28, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1

本研究では、「ママ友」との関係が構築されるプロセスを通して、子育てをする母親らの「ママ友」という存在の捉え方を明らかにすることを目的とした。それによって、変わりゆく社会の中で母親たちが求める子育て支援のあり方を検討するための基礎資料を得る。対象者は、第1子を幼稚園に通わせた専業主婦である母親7名である。妊娠の判明から就学直後までの他の母親との関係を半構造化面接によって調査し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。 その結果、4つのカテゴリー【存在を認識】【関係の質の判断】【自分の中での位置づけ】【関係の進展】及びそれに含まれる11のサブカテゴリー、32の概念が作成された。母親たちが「ママ友」という存在を捉えるとき、【存在を認識】することによって「ママ友」を意識し始め、多様な【関係の質の判断】をしながら、【自分の中での位置づけ】を行い、その後、【関係の進展】を経験することが認められた。母親らにとっての「ママ友」は、繰り返される関係構築のプロセスにおいて、その存在の捉え方が変化し続けることが示された。「ママ友」は、母親自身の子育て状況や周囲の環境の変化によって、ポジティブな存在にもネガティブな存在にもなり得る、決して安定した存在でないことが示唆された。
著者
立花 哲也 鈴木 愛 高森 基史 伊能 智明 青木 美穂子 千葉 博茂
出版者
Japanese Society of Psychosomatic Dentistry
雑誌
日本歯科心身医学会雑誌 (ISSN:09136681)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-25, 2002-06-25 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

Lafutidine (FRG-8813) is a new H2-receptorantagonist that not only has a strong inhibitory effect on gastric secretion but also augments the gastric mucosa protection factor and dilate arterious in the gastric submucosa and enhances gastric mucosal blood flow via capusaicinsensitive afferent neurons.Its presence in the tongue too, suggests that lafutidine may be effective for patients diagnosed with glossodynia. This treatment was attempted with 50 glossodynia patients, who received lafutidine in doses of 10mg twice daily for 8 weeks.The pain amelioration rates (reduced and better) were 54.0%(27/50 cases) after 2 weeks, 60.0%(30/50 cases) after 4 weeks, 80.0%(40/50 cases) after 6 weeks, and 84.0%(42/50 cases) after 8 weeks. The pain level on VAS was 46.8mm on average before administration, and 12.1mm on average after 8 weeks.The administration of lafutidine exhibited good clinical efficacy, safety and utility in the treatment of glossodynia.
著者
高野 真悟 阿部 順子 鈴木 賢一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.755, pp.87-96, 2019 (Released:2019-01-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

This report explains the concept of arts in health in the UK is and how it is implemented and financially managed by which organizations in British hospitals. In the UK, artistic activities are understood to contribute to the comfort and recovery of patients and the people around them. These activities are offered through partnerships between the government and arts in health organizations. Arts in health activities are diverse. We can classify them into eight fields, including arts in psychotherapy, arts on prescription, participatory arts programs for specific patient groups, arts in healthcare technology, arts-based training for staff, general arts activities in everyday life, arts in the healthcare environment, and arts in health promotion. These activities are offered strategically with specific objectives and targets. The targets are not only patients but also the people around the patient, such as a patient's family, visitors, medical staff, and citizens. While British hospitals have profited from various artistic activities in healthcare since the 1970s, most Japanese hospitals do not use them. This is due to the Japanese belief that medical treatment by experts is the most important function of a hospital, not recuperation. UK arts in health organizations are classified into four types of organization in partnership with hospitals: the internal section of National Healthcare Service (NHS) hospital type, the hospital charity type, the exclusive to specific NHS hospital type, and the independent type. An arts in health organization has three functions, including arts in health activities, research and development (investment, provide grants, development of resources, and investigation on efficacy), and organizational management (fund raising, public relations, and report). The importance of these three functions differs depending on the social and historical background of the organization. The three leading hospitals in the UK—Chelsea and Westminster Hospital, Royal London Hospital, and Great Ormond Street Children's Hospital—are filled with diverse visual art work collections of museum quality, selected by an art manager. These collections are installed to enhance the well-being of the people who use the hospital. Information about the practices in these three hospitals demonstrates the benefits and the costs of arts in health. These three hospitals have specific art management organizations, which provide various art programs in their hospitals, conduct research in collaboration with universities and other researchers, and manage finance and promotion to sustain their activities. They work for their own specific hospitals, but they possess autonomous human and financial resources. In the UK, the intervention of art in healthcare provides useful health outcomes, such as enhanced feelings of happiness and well-being, and the reduction of national medical costs. This view is shared by the government, policymakers, NHS staff, and arts in health organizations. Today, artistic activities are developing in Japanese hospitals. The UK model provides an excellent example of good practice, especially how to implement the autonomous management of Japanese arts in health activities.
著者
山岡 順太郎 藤岡 秀英 勇上 和史 鈴木 純 足立 泰美
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
pp.2017.004, (Released:2017-11-20)
参考文献数
17
被引用文献数
3

近年,日本の労働者における心の健康(メンタルヘルス)の問題が深刻化している。メンタルヘルス問題に関するこれまでの研究では,精神疾患の発症に至る蓋然性の高さを示す指標が用いられてきたものの,精神疾患の発症や受療の有無をアウトカムとした分析は乏しかった。そこで本研究では,中小企業労働者における精神疾患の受療行動と,個人や企業の特性との関係を明らかにする。具体的には,全国健康保険協会・兵庫支部の90万人の被保険者のレセプト(診療報酬明細書)データを使用し,記述統計ならびにロジット・モデルの推計により,「精神及び行動の障害」による受療率の差異を検証した。その結果,中小企業労働者の精神疾患の受療率は男性や働き盛り層で高く,代理指標を用いた従来の研究の知見とは部分的に異なる結果が得られた。また,都市部の受療率がそれ以外の地域より統計的に有意に高く,医療供給サイドの要因や生活要因の存在が示唆された。さらに,労働者の個人属性の影響を考慮してもなお,産業間の受療率の格差が大きく,特にホワイトカラー職種が中心の産業の受療率が高いことが確認された。このことは,メンタルヘルス問題の発生や対策を考える上で,産業構造や職務内容の変化,さらに人的資源管理などの要因を検証することの重要性を示唆している。