著者
河野 功 杢野 正明 鈴木 孝 小山 浩 功刀 信
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.50, no.578, pp.95, 2002 (Released:2003-08-19)
参考文献数
9
被引用文献数
7 7

ETS–VII is a test satellite to perform in-orbit demonstration of autonomous rendezvous docking (RVD) technology, which will be necessary for advanced space activities in the early 21st century. ETS–VII performed three RVD experiment flights, and verified all technical items. ETS–VII demonstrated first autonomous RVD between unmanned vehicles, and remote piloted rendezvous flight position accuracy at docking was about 1cm, and acceleration was less than 1.5mG (low impact docking). In the second RVD experiment flight, ETS–VII detected attitude anomaly and executed disable abort for safety insurance. We present the results and evaluation of three RVD experiment flights in this paper.
著者
鈴木 康夫 徐 桂雲 WEBSTER Robe ITZSTEIN Mar WARD Peter A XU Guiyun VON ITZSTEIN Mark WEBSTER Rob 宮本 大誠
出版者
静岡県立大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

近代病理学の基礎を築いたウィルヒョウ(Virchow)は、すべての病気は細胞の異常に起因する、という「細胞病理学」を確立した。細胞が生命を維持し、複製していくためには、核酸とタンパク質は必須であることは言うまでもない。本研究では、遺伝子の支配を直接受けない第3の生命鎖である糖鎖に焦点を当て、その機能を病気との関連において分子レベルで明らかにすることを目標とし、「糖鎖病理学」ともいえる領域に踏み込む研究を行うことを心がけた。この背景として、著者は、細胞表面の糖脂質、糖タンパク質糖鎖の構造と機能に関する研究を続けてきた.この過程で多細胞生物を構築する細胞はさまざまな接着の形を通して生物個体全体のシステムを維持しており、この乱れが疾患として認識されること、細胞の接着の多くが糖鎖を介して行われることを明らかにして来た.すなわち、糖鎖を介する細胞-細胞間、細胞-バクテリア間、細胞-ウイルス間の接着および認識が病態と深く関わることに注目していた。本研究では、初年度は、主に脈管系の糖鎖を介する接着分子(セレクチン群)の病態への関わりを中心とした研究を行い、次年度はこれに加えて、ウイルス(特にインフルエンザウイルス)の感染における糖鎖認識接着分子の分子生物学的研究を加えた。脈管系細胞には、サイトカインなどの刺激により発現される新しい糖鎖認識レセプタータンパク質群(セレクチンファミリー;E-セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチン)があり、これらは、リンパ球のホ-ミング、好中球やリンパ球の血管内皮細胞への接着と炎症組織への遊走、血小板同士の凝集や、原発癌細胞の転移、浸潤などに深く関わることが我々の研究を含め明らかにされつつある.我々は、本研究において、L-セレクチンやP-セレクチンの新しい糖鎖性リガンドとして硫酸化糖鎖を見出し、さらに、腎炎や肺炎の発症や癌細胞の転移には標的細胞膜の硫酸化糖鎖へのL-およびP-セレクチンを介したリンパ球や血小板の接着が深く関わることを明らかにした。セレクチンファミリーは新しいレクチン様接着分子であり、白血球のローリングによる血管内皮細胞への接着開始において免疫学上極めて重要な役割を担うと同時に、続いて起こるスーパーオキシドやプロテアーゼ産生による組織細胞の損傷などさまざまな病態発現とも深く関わるタンパク質である。本研究では、硫酸化糖脂質であるスルファチドが、L-およびP-セレクチンと特異的に結合する糖鎖リガンドであること、L-およびP-セレクチン依存性の肺炎、腎炎さらに肝炎などを強力に阻止できることなどを見出した。また、スルファチドは、Bリンパ球上に存在しTリンパ球には存在しないこと、Bリンパ球の分化、増殖および抗体産生に深く関わることなど、免疫学上重要な現象を明らかにすることができた。さらに、スルファチドは、TNF-αの産生を抑制し、エンドトキシンショックの予防に極めて有効であることを見出すことができた。一方、インフルエンザウイルスはウイルス膜に宿主細胞表面の糖鎖性受容体への結合に必須なヘマグルチニン、および受容体を破壊する酵素(ノイラミニダーゼ)を有している。インフルエンザA型ウイルスは、ヒトのみならずブタ、トリ、ウマなど多くの動物にも感染し、世界的大流行を起こす。この原因は、ウイルスヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼの変異に起因する。本研究においては、ヒトおよび動物インフルエンザウイルスが認識する糖鎖性受容体の構造を明らかにし、次いで、どのようにして宿主の壁を超えるのかという宿主変異機構の一端を分子生物学的に解明できた。すなわち、インフルエンザウイルスヘマグルチニンの変異は、主として抗体による圧力の他に、受容体認識特異性、すなわちシアル酸分子種[N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)]認識特異性とシアル酸の結合様式(Neu5Aα2-3Galβ1-,Neu5Acα2-6Galβ1-)に対する認識特異性によるウイルスの選択が重要な因子であることを見出した。さらに、このシアル酸結合様式の認識特異性の発現にはLeu226のアミノ酸が極めて重要な役割をしていることも解った。以上の成果は、研究分担者である、Peter A.Ward教授(ミシガン大学・医学部・病理)、Robert G.Webster博士(St.Jude Children's Res.Hospial,Memphis・ウイルス学、分子生物学部門)、Mark von Itzstein教授(Monash University,Victorian College of Pharmacy)、徐 桂雲博士(中国科学院、化学研究所)との共同研究により成された。心より謝意を表するものである。
著者
西本 真一郎 樋浦 望 佐藤 良一 鈴木 一由 浅野 隆司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.199-202, 2002-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
4 4

ゼラチンの経口摂取による皮膚コラーゲン合成に及ぼす効果をコラーゲンペプチドの場合と比較検討を行った.(1) ラットにゼラチンを経口投与し,皮膚可溶性画分中のヒドロキシプロリン量を測定したところ,無処理および除毛処理いずれの場合においても,Control群に比べ有意な差は認められなかった.(2) ラットにコラーゲンペプチドを経口投与し,皮膚可溶性画分中のヒドロキシプロリン量を測定したところ,無処理および除毛処理いずれの場合においても,Control群に比べ有意に(p<0.05)高値を示した.
著者
武者小路 公秀 宣 元錫 華 立 早尾 貴紀 小倉 利丸 羽後 静子 野田 真里 梶村 美紀 松原 弘子 鈴木 江理子 塩原 良和 金 敬黙 佐竹 眞明 近藤 敦 浜 邦彦
出版者
大阪経済法科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、グローバル移住の女性化が進む日本と韓国両国の移住者コミュニティにおける人間の不安全状況とこれに対応する移住者自身と市民社会のサポーターの活動において、ヴェトナムとフィリッピンを送り出し国として進められた。その結果、移住女性が直面する公共圏と親密圏における諸問題の性格、特に、移住先と故郷との双方を生活圏とする新しい公共、新しい市民像の形成を目指す移住市民との協力活動の重要性が確認された。
著者
中島 広人 鈴木 啓太
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.1-14, 2023-02-25 (Released:2023-06-27)
参考文献数
38

スズキは真冬に沖合で産卵し,仔稚魚が春先に沿岸浅所に出現する.スズキ浮遊卵仔魚の輸送機構への理解を深めることを目的とし,2019年12月から2020年3月に若狭湾西部に位置する丹後海とその隣接海域において大型プランクトンネットにより定量採集を行った.水平分布調査の結果,スズキ卵は湾央から湾外東にかけて多く,産卵場はこれらの海域を中心に形成されていると考えられた.鉛直分布調査の結果,卵は主に海面に,卵黄嚢仔魚は主に水深40 m以深に分布する一方,前屈曲・屈曲仔魚は主に水深10–20 mに分布することがわかった.丹後海には冬季北西風により駆動される流れが知られており,前屈曲・屈曲仔魚は特に湾奥に向かう中層の流れを利用していると考えられる.産卵場はこの流れの上流側に位置し,成育場が多く存在する湾奥への輸送に貢献していると言える.
著者
藤本 将志 伊藤 陸 小島 佑太 池田 幸司 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.19-26, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
6

The authors use top-down evaluation to determine impairments and perform physical therapy regardless of musculoskeletal or central nervous system disorders. One of the abnormal postures in patients with musculoskeletal disorders is a hunched posture with trunk flexion. In addition to the influence of the trunk, hunched posture tends to become more prominent with the influence of the lower limbs, lifestyle, and aging,. In this paper, we explain how to weigh the relevance of the problems considering the effects of not only the trunk but also the lower limbs, when considering the problems of trunk flexion posture in musculoskeletal disorders. In addition, we also explain the main points for performing examinations and physical therapy for problems of the trunk, while presenting posture and motion analysis of cases and electromyogram data of healthy subjects.
著者
鈴木 邦雄
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.133-150, 2012-07-05 (Released:2018-09-21)

A posthumous work Animal Evolution in Changing Environments with Special Reference to Abnormal Metamorphosis (1987) by a great authority on insect morphology, the late Dr. Ryuichi Matsuda (1920-1986), has been re-evaluated recently by many evolutionary biologists especially in the fields of the so-called 'evo-devo' (evolutionary developmental biology: e.g. Hall 1999; West-Eberhard 2003; Hall et al. 2004 eds.) and 'eco-evo-devo' (ecological evolutionary developmental biology: e.g. Gilbert & Epel 2009). Matsuda himself named his fundamental idea of animal evolution 'pan-environmentalism'. Based on a historical survey of Matsuda's works (a total of 92 titles including original articles, reviews, and books compiled by Suzuki 1988b), the background of his 'Pan-environmentalism' was outlined.
著者
湯口 聡 森沢 知之 福田 真人 指方 梢 増田 幸泰 鈴木 あかね 合田 尚弘 佐々木 秀明 金子 純一朗 丸山 仁司 樋渡 正夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0672, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】 開胸・開腹術後患者に対して呼吸合併症予防・早期離床を目的に、呼吸理学療法・運動療法が行われている。その中で、ベッド上で簡易に実施可能なシルベスター法を当院では用いている。シルベスター法は両手を組み、肩関節屈伸運動と深呼吸を行う方法で、上肢挙上で吸気、下降で呼気をすることで大きな換気量が得られるとされている。しかし、シルベスター法の換気量を定量的に報告したものはない。よって、本研究はシルベスター法の換気量を測定し、安静呼吸、深呼吸と比較・検討することである。【方法】 対象は呼吸器疾患の既往のない成人男性21名で、平均身長、体重、年齢はそれぞれ171.0±5.2cm、65.3±5.6kg、24.9±4.0歳である。被験者は、安静呼吸・シルベスター法・安静呼吸・深呼吸・安静呼吸または、安静呼吸・深呼吸・安静呼吸・シルベスター法・安静呼吸のどちらか一方をランダムに選択した(各呼吸時間3分、計15分)。測定姿位は全てベッド上背臥位とし、呼気ガス分析装置(COSMED社製K4b2)を用いて、安静呼吸・シルベスター法・深呼吸中の呼吸数、1回換気量を測定した。測定条件は、シルベスター法では両上肢挙上は被験者が限界を感じるところまでとし、どの呼吸においても呼吸数・呼吸様式(口・鼻呼吸)は被験者に任せた。統計的分析法は一元配置分散分析および多重比較検定(Tukey法)を用い、安静呼吸、シルベスター法、深呼吸の3分間の呼吸数、1回換気量の平均値を比較した。【結果】 呼吸数の平均は、安静呼吸13.02±3.08回、シルベスター法5.26±1.37回、深呼吸6.18±1.62回であった。1回換気量の平均は安静呼吸0.66±0.21L、シルベスター法3.07±0.83L、深呼吸2.28±0.8Lであった。呼吸数は、分散分析で主効果を認め(p<0.01)、多重比較検定にて安静呼吸・シルベスター法と安静呼吸・深呼吸との間に有意差(p<0.01)を認めたが、シルベスター法・深呼吸との間に有意差は認めなかった。1回換気量は、分散分析で主効果を認め(p<0.01)、多重比較検定にて安静呼吸・シルベスター法・深呼吸のいずれにも有意差を認めた(p<0.01)。【考察】 シルベスター法は深呼吸に比べ1回換気量が高値を示した。これは、上肢挙上に伴う体幹伸展・胸郭拡張がシルベスター法の方が深呼吸より大きくなり、1回換気量が増加したものと考えられる。開胸・開腹術後患者は、術創部の疼痛により呼吸に伴う胸郭拡張が制限されやすい。それにより、呼吸補助筋を利用して呼吸数を増加させ、非効率的な呼吸に陥りやすい。今回、健常者を対象に測定した結果、シルベスター法は胸郭拡張性を促し、1回換気量の増加が図れたことから、開胸・開腹術後患者に対して有効である可能性が示唆された。
著者
鈴木 登紀子 酒井 麻里 山下 重幸 冨田 賢吾 服部 裕一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.3, pp.111-116, 2018 (Released:2018-03-10)
参考文献数
55
被引用文献数
2 2

敗血症は,高齢者人口の増加,悪性腫瘍や移植時の化学療法などによる免疫機能の低下,多剤耐性菌の出現などにより,症例数は増加の一途をたどり,現在においてもなお高い死亡率を有している.敗血症の定義は,これまで「感染によって引き起こされた全身性炎症反応症候群」とされてきたが,2016年になって「感染に対する制御不能な宿主反応による生命に関わる臓器不全」として15年ぶりに改訂された.新しい定義における「臓器不全」には,急性肺傷害,播種性血管内凝固,脳症,肝障害,腎障害に加えて,心機能障害も含まれている.心機能障害により酸素の需要・供給のバランスが損なわれ,多臓器不全の進展につながることから,心機能障害の有無は,敗血症の予後に非常に重要である.実際,敗血症患者で心機能障害が存在した場合は,非常に高い死亡率に関係すると報告されている.国際敗血症ガイドラインで,敗血症性ショックにおいて推奨されている強心薬はドブタミンであるが,その臨床成績には限界が指摘されている.本稿では,敗血症性心機能障害について,これまで報告されてきた病態生理学的メカニズムについて概説し,ドブタミンに替わる新たな強心薬の治療効果の可能性について考察する.
著者
鈴木 拓 早川 克彦 岩本 卓士 大木 聡 鳥居 暁子 雨宮 剛 佐藤 和毅
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.237-239, 2018 (Released:2019-07-25)
参考文献数
9
被引用文献数
2

目的:上腕骨外側上顆炎に対するPRP療法の臨床成績について報告する. 対象と方法:上腕骨外側上顆炎に対してPRP療法を施行した7例9肘を対象とした.従来の保存加療が無効であった患者に対して行い,発症からPRP療法を施行までの期間は平均25か月であった.PRP施行前,施行後1,3,6か月時のVAS,握力健側比,患者評価のPRTEEに関して調査した. 結果:PRP療法施行前,施行後1,3,6か月における手関節背屈抵抗時の平均VAS(53→23→14→4),外側上顆の圧痛の平均VAS(79→38→26→14),平均握力健側比(80→89→104→97),平均PRTEEスコア(53→34→23→20)は治療前と比べて有意に改善した. 考察:PRP療法は,他の保存療法に抵抗性の症例に対しても疼痛を有意に軽減させ,有用な治療と思われる.
著者
村井 聡 塩沢 英輔 鈴木 髙祐 佐々木 陽介 本間 まゆみ 瀧本 雅文 矢持 淑子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.296-306, 2022 (Released:2022-08-31)
参考文献数
28

濾胞性リンパ腫は低悪性度B細胞リンパ腫であり一般に緩徐な経過を示す.経過中に組織学的形質転換Histological transformation(HT)をきたすと予後不良とされる.十二指腸型濾胞性リンパ腫Duodenal-type follicular lymphoma(DFL)は濾胞性リンパ腫の一亜型である.DFLではHTは稀であるとされるが,その発生頻度に関して報告は少ない.DFL のHTの発生頻度を明らかにすることは治療方針を考えるうえで重要な意義を持つ.DFL症例を長期観察と内視鏡検査による連続的な病理組織診断によって組織学的変化を評価しHTの発生を病理学的に検討する.十二指腸・小腸生検により濾胞性リンパ腫と診断された37症例をデータベースから抽出した.節性濾胞性リンパ腫の消化管浸潤例を除外するため,消化管リンパ腫Lugano分類における臨床病期Ⅰ期のみを対象とした.Hematoxylin-eosin染色標本による組織形態学的評価と免疫染色標本による評価を行いHTの発生を評価した.条件を満たしたDFLの症例は20症例だった.診断時のHistological gradeは20症例全例でGrade 1-2だった.臨床的な観察期間は中央値56か月(範囲:12か月~147か月)だった.経過中に臨床的に臨床病期の進行した症例はなかった.病理組織学的にHTが認められた症例はなかった.DFLにおけるHTの発生頻度を評価するうえで,本研究のように単一施設で同一患者において定期的な内視鏡検査・生検を長期の観察期間に渡って行いHTの有無を組織学的に確認すること,ならびにDFLの診断において節性のFLの十二指腸浸潤を確実に除外することは高い信頼性があると考えられた.DFLと的確に診断できる場合にはHTのリスクは低く,節性のFLに準じた集学的治療を行うことは過剰な治療となる可能性がある.
著者
鈴木 麻希子 山下 成実
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.115-120, 2019 (Released:2019-06-14)
参考文献数
21

近年, 加工食品は多様化し, その利用も増加しているため, 食品添加物として使用されている無機リンの過剰摂取が懸念されている。また, 無機リンの吸収率は有機リンよりも高いことが知られている。しかしながら, 国民健康・栄養調査では, そのリン量が考慮されている加工食品は一部に限られ, 無機リンとしての摂取量は不明である。そこで, 本研究においては, 加工食品における添加無機リンおよび総リンの定量を行った。小スケールの陰イオン交換カラムでも直線濃度勾配法により, オルトリン酸, ピロリン酸, トリポリリン酸を効率よく分離し, 90%以上回収することができた。測定した食品の中には, トリポリリン酸を含むものもあり, 総リン量に占める無機リンの割合が50%を超えるものが複数あった。また, 一般に, 食品のリン/たんぱく質比は15 mg/gとされているが, それを超えるものも複数見られた。これらの情報は慢性腎臓病患者にとって有用な情報となると考えられる。
著者
鈴木 雅夫 島田 二郎 村川 雅洋 深田 祐作 鈴木 雅夫
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

マグネシウムは多くの酵素活性や細胞内伝達系において重要な役割を担う生体内で4番目に多い陽イオンである。本研究の目的は、マグネシウムの鎮痛効果とその機序を明らかにすることである。1.種々の予定手術患者を対象に、周術期の血清イオン化マグネシウム濃度を測定し、術式、手術時間、輸液量、出血量、尿量との関連を検討した。血清イオン化マグネシウム濃度は手術時間の経過とともに減少し、手術終了後徐々に回復した。血清イオン化マグネシウム濃度の減少は、体表手術や開頭術に比べて開腹術で大きかった。また、長時間手術、輸液・出血・尿量の多い手術で減少の程度が大きかった。2.帝王切開術後患者と婦人科手術患者を対象に、マグネシウム投与の有無による術後鎮痛薬の必要量の差を検討した。いずれの群においてもマグネシウム投与患者は、非投与患者に比べて、術後鎮痛薬の必要量が少なかった。3.雄性Wistar系ラットを用い、Neurometer CPT/Cによる疼痛閾値に及ぼすマグネシウムの影響を検討した。C線維を介する疼痛閾値はモルヒネ2mg/kgの腹腔内投与によって上昇したが、マグネシウム2mM/kg及び4nM/kg単独投与では変化せず、モルヒネとマグネシウムの相互作用も認められなかった。4.雄性Wistar系ラットを用い、ヒスタミン刺激に腰髄後角のc-fos発現を指標として、マグネシウムの鎮痛機構を検討した。c-fos陽性細胞は、ヒスタミン刺激と同側の脊髄後角側部に多く、I、IIそしてX層に主に観察された。ヒスタミン刺激側脊髄でのc-fos陽性細胞数は、マグネシウム150及び300mg/kg投与によって減少した。以上の結果から、周術期にマグネシウムを投与することは臨床的に鎮痛効果があり、この鎮痛効果は脊髄後角の二次求心性神経の反応抑制によることが示唆された。
著者
荒井 弘和 榎本 恭介 鈴木 郁弥 町田 和梨 深町 花子
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = BULLETIN OF Sports Research Center, HOSEI UNIVERSITY (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.5-9, 2023-03-31

本研究の目的は,大学生アスリートにおけるスポーツ・ライフ・バランスの現状,および理想と現実のギャップを検証することであった。さらに,初年次学生である1年生と2-4年生の間でスポーツ・ライフ・バランスの指標を比較したうえで,理想と現実のギャップとウェルビーイングとの関連も検討した。大学生アスリート149名のデータを分析したところ,(1)スポーツ・ライフ・バランスは,時間的なバランスも,精神的なバランスも,やや競技生活に偏っていた。(2)学年差を検討したところ,精神的なバランスは,2年生以上の方が競技の比重が大きかった。(3)時間的なバランス・精神的なバランスともに,バランスの現状と理想と現実のギャップが,ウェルビーイングと部分的に関連していた。