著者
鈴木 公啓
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.389-397, 2012 (Released:2013-03-01)
参考文献数
51
被引用文献数
3 1

Thinness is considered as one type of adornment; as such, it has a psychological function for others. Thus the drive for thinness and dieting were investigated from the viewpoint of impression management. Study 1 investigated a model that the need for approval affects dieting through the outcome expectancies of others' evaluations and the drive for thinness. The results of structural equation modeling indicated high validity for this model. Study 2 investigated the moderating role of self-esteem in the relationship between positive/negative outcome expectancies of others' evaluations and the drive for thinness. The results showed that self-esteem did not act as a moderator between the two components and the drive for thinness.
著者
鈴木 誠
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.107-110, 2011
参考文献数
4

フィンランドで大学に進学する場合は,まず日本の大学入試センター試験に該当するフィンランド大学入学資格試験(Matriculation Examination)に合格しなければならない。その後一定期間の兵役を体験し,一定の学資を貯めた後各大学が行う個別試験を経て,希望する大学に入学する。大学の学費は無償であり,医・教育学部の人気は高い。試験科目は多岐に渡り,高等学校で履修すべき到達度を測定する卒業試験の意味合いも兼ねている。心理学や哲学など日本の大学入試センター試験には見られないものも多い。特に語学については3科目必修となる。これは,フィンランドが国家戦略として目指す多言語活用能力(plurilingualism)育成に基づくものである。試験時間は,基本的には1教科当たり6時間にも及び,受験者に考えさせる論述問題がほとんどである。これらのことは,フィンランドがどのような人材を育成しようとしているかを明確に示すと同時に,日本の大学入試に対して多くの知見を提供するものである。
著者
鈴木 みゆき
出版者
兵庫医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

回復期脳卒中患者に対する排尿援助の実態を明らかにするとともに、入院中の筋肉量の変化量の意義を示し、入院中の筋肉量の変化量を用いて、トイレ排尿誘導を行っていることの評価をした。入院中のADLの変化に入院中の筋肉量の変化量が関係していることが明らかとなり、看護援助の評価指標として筋肉量の変化量を用いることができると確認した。トイレ排尿誘導を実施しているか否かにより、入院中の筋肉量の変化量に有意な違いは認められなかった。少数での検討であったため、今後データ収集を重ねるとともに、より積極的に意図した能動的動作を取り入れた排尿誘導法の検討が課題であることが明らかとなった。
著者
鈴木 理
出版者
日本スポーツ教育学会
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.17-27, 1994-06-30 (Released:2010-08-10)
参考文献数
27

Mosston's spectrum of teaching style is one of the well-known concepts as a teaching method of physical education in the United States. But, unfortunately it has not been discussed enough in Japan. Describing this unique model, this study clarifies its limit and possibility.Mosston's model presents many teaching styles which are different in sharing decision making between a teacher and student. Mosston emphasises teacher behavior rather than student behavior. This indicates that he is much concenned with the initiative at a teacher in the class. This paper argues that it is necessary to describe into details about relationships between student behavior and objectives (outcomes), because the student behavior is equally important to achieve the educational goal. Therefore, this study insists that Mosston's model should be revised with the classification based on 1) teacher centered type, 2) teacher-student type, 3) student centered type, and 4) student independent type. In addition, the model should be redefined in light of the way to organize students: 1) whole class type, 2) small group type, 3) peer tutoring type, 4) individualized type.In short, these propositions are useful to verify effectiveness of each style positively, and to modify Mosston's model through the planning-process-product study.
著者
鈴木 悠平 山崎 勇一 橋爪 洋明 大山 達也 堀口 昇男 佐藤 賢 柿崎 暁 山田 正信
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.108-114, 2015-01-05 (Released:2015-01-05)
参考文献数
20

症例は70歳,女性.末梢の冷感,痺れに対してサプリメント(金時しょうが®)の内服を開始.内服2カ月後より上腹部違和感,食欲低下,褐色尿などの症状が出現.内服中止するも改善せず,中止12日後に当院紹介受診.黄疸,肝機能障害を認め入院.精査の結果,金時しょうが®による薬物性肝障害と診断.保存的治療により改善,第25病日退院となった.退院前に施行した肝生検では薬物性肝障害に矛盾しない組織所見であった.
著者
鈴木 雅之
出版者
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻
巻号頁・発行日
2013-03-25

報告番号: ; 学位授与年月日: 2013-03-25 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(工学) ; 学位記番号: ; 研究科・専攻: 工学系研究科電気系工学専攻
著者
鈴木 俊哉
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.7, pp.1-8, 2009-07-23

昨年、7 年間の作業を経た CJK 統合漢字拡張 C が ISO/IEC 10646:2003 の Amd.5 として正式に発表された。拡張 C ははじめて原規格分離を適用せずに整理された漢字集合である。拡張 C への中華人民共和国からの申請は辞典類から収集された漢字が大半である。本発表では、その中で最大の収集元である「殷周金文集成引得」に由来する 1800 字程度の図形集合について、典拠を再調査した結果を報告する。拡張 C の統合作業中に提出された典拠確認資料を見ると、この収集は「殷周金文集成引得」の総画索引から、拡張Bまでで符号化済みと思われるものを削って選定したと思われる。しかし、選定された漢字を本文中で確認すると、総画索引には出現するが、釈文では使われていないものも少なくないため、それらを全て申請することの妥当性には疑問がある。また、金石学の分野では「古文字字形表」や「金文編」など過去にいくつもの字書が出版されているが、「殷周金文集成引得」の特徴の一つに、見出し字の大半を宋体 (風の図形) にしている点がある。金文字形に対する宋体 (風の図形) が一意的に定まる、言い換えれば「殷周金文集成引得」で導入された図形文字が (この字書の外部でも) 金文字形に対する識別子として機能するのであれば、他の金石学の字書類と整合する筈である。そこで、代表的な金石学字書である「金文編」と「殷周金文集成引得」の比較を行ない、この結果を報告する。また、これらの結果を踏まえ、「殷周金文集成引得」典拠情報の今後の管理方法について考察したい。After the long efforts during 7 years, finally ISO/IEC 10646:2008 has included CJK Unified Ideographs Extension C. This is the first Hanzi collection which is standardized after the expire of the source code separation rule which was introduced for existing regional character encodings. There are 2 large groups of the sources: Hanzi for personal names (especially from TCA) and Hanzi for post-kaisu palaeographic documents (especially from ROK).In Ext. C, PRC submitted 366 glyphs taken from "Index to Collections of the Inscriptions in Yin-Zhou period" (殷周金文集成引得, I2CIYZ). The book is used to lookup Bronze objects (collected in "Collections of the Inscriptions in Yin-Zhou period" (殷周金文集成引得, CIYZ) including a specified Old Hanzi. Most of 366 glyphs taken from I2CIYZ are suspected to be the glyphs invented only for the specification of Old Hanzi.In this report, the submission by PRC and that by UTC are investigated for their original glyphs based on Bronze or Seal scripts (篆文, Zhuan Wen), and their original shapes (in references and evidences) and modernized shapes (in proposal and submission documents) are compared. The unification rules of CJK Unified Ideographs (ISO/IEC 10646 Annex S) are under revision process, but the discussion is based on the information interchange by the stabilized shapes of Hanzi current in use. The glyphs to specify Bronze script shape can be synthesized by different granurality. In fact, the identification rule by IRG Old Hanzi group for Oracle Bone script (甲骨文, Jia Gu Wen) is incompatible with ISO/IEC 10646 Annex S.
著者
鈴木 克彦
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要 (ISSN:03874761)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.78-94, 1991-08-15

世界27ヵ国の91人へのアンケート調査をもとに日本の学校数育における生徒指導との違いを比較研究した。その結果、西洋個人主義にもとづく生徒指導との大きな相違点やアジア各国の生徒指導とのいくつかの共通点を見いだした。また、日本の生徒指導を見る各国人の「目」には興味深い意見を得ることができた。今後、国際化をめぎした学校教育を行なう揚合、参考となることが多々あると思われる。
著者
山下 澄枝 川喜田 佑介 鈴木 悦子 今田 美幸 神山 和人 市川 晴久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.301, pp.7-11, 2010-11-12
参考文献数
9

Twitterは経営者や政治家も多く利用しており,趣味や挨拶,新製品の発表や政策への意見など公私様々なツイートを投稿している.しかし,大量のツイートにより利用者にとって有益なツイートが埋もれてしまうことがある.そのため,Twitterの情報収集ツールとしての利用には,有益なツイートのみを取得する機能が必要となる.本研究では,ツイートの参照数と単語の出現頻度から,対象とするツイートの有益度を推定する手法を提案する.
著者
当麻 哲哉 瀧塚 博志 鳥飼 俊敬 鈴木 等 小木 哲朗 小池 康博
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.118-128, 2014 (Released:2014-08-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 5

ハイビジョン映像の品質を超える高精細なビデオ?フォーマットが開発されているが、その伝送のための高速データ通信技術は必ずしも一般家庭への適用が容易ではない。家庭向けには、高速通信というテクニカルな要求だけではなく、取り扱い易さ、接続不良のない信頼性、入手しやすい価格等の条件が満たされる必要があり、高速通信で代表的な石英系光ファイバーは、脆く折れやすい上、低コストで精度のよい簡単接続が困難なため、消費者のニーズに合わない。この研究では、折れにくく高速通信が可能な屈折率分布型プラスチック光ファイバーの端面に、球状のガラス・コリメータレンズを組み込んだ超小型ビーム拡大インターコネクトを、低コストで精度の高いボールペン製造技術の応用で実現し、4K3D高精細非圧縮映像伝送実験によるシステム検証を行った。
著者
トモリ アキラ 鈴木 宏隆 浦山 益郎
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.598, pp.87-94, 2005
被引用文献数
1 3

1.研究の背景・目的 ため池は灌漑用に築造された農業用施設である。都市化に伴い、多くのため池は灌漑用水としての利水機能を失いつつある。しかし、利水機能だけでなく治水機能、オープンスペース機能、余暇のための空間提供機能、動植物生息機能など多面的な機能をもっており、都市環境の質的向上に資する可能性をもっている。ため池に関する研究としては、灌漑施設としての水管理に関するもの、老朽ため池の整備に関するもの、ため池の分布や都市化によるため池の改廃に関するものが多い^<2)〜6)>。ため池を都市の環境資源としてみた研究は、中山^<7)>、浦山ら^<1)>、客野ら^<8)>など少ない。また、ため池の水辺における使われ方を分析したものは森ら^<9)>程度であり、都市環境資源としてため池を活用するための設計指針は少ない。そこで、本研究ではため池を活用した公園整備のための知見を得ることを目的に、ため池のある公園とない公園の利用実態を調査し、特にため池の水辺で行われる余暇活動の特徴について明らかにしようとしたものである。2.研究の方法 名古屋市内のため池のある細口池公園とため池のない植田中央公園(図1)を対象に、2004年10月の平日と休日に観察調査とインタビュー方式のアンケート調査を行った(表1・2)。細口池公園は地区公園、植田中央公園は近隣公園に指定されているが、住宅地と中学校が隣接しており、遊歩道、プレイグラウンド、プレイフィールドなど同様の施設をもっていること、両ため池とも近隣からの利用者が多いことなど類似性が高い。相違点としては、公園の規模、ため池の有無である。3.両公園における余暇活動 1)余暇活動の種類 両公園の利用実態を把握するため、散歩、動的活動(ジョギング・スポーツ・友達と遊ぶ・子供と遊ぶ・虫取り)、静的活動(休憩、食事・ピクニック・読書・おしやべり・デート昼寝・緑を眺める・花を眺める・池を眺める・鳥を眺める・動物を眺める・虫を眺める)の3種類に分けて、午前6時から午後5時40分の間、20分ごとに活動位置を地図上にプロットした。細口池公園では休日に延べ4463、平日に延べ1607、植田中央公園では休日に延べ3040、平日に延べ1768の活動が観察できた。両公園ともに休日の利用が多い。また、ため池のある細口池公園では散歩が多いことがわかった。2)余暇活動の種類別に見た空間特性図6のようにゾーンごとに余暇活動を集計した結果、プレイフィールドとプレイグラウンドでは、両公園とも動的行為が集中していた。両公園の違いは、遊歩道を含む堤防エリアにみられた。細口池公園の堤防(水辺空間)では散歩や静的活動、動的活動が多様に行われていた。また、散歩の活動数は植田中央公園周辺の堤防エリアに比べると約3倍もあり、ため池の水辺には利用者が多いこと、利用時間が長いことを示している。4.余暇活動の類型化とその特徴 1)両公園における活動 公園の利用内容を把握するために、表2の選択肢を用意して、インタビュー方式によって複数選択の回答を求めた。両公園の相違点は、細口池公園に散歩および景観を享受する行為である緑を眺める、花を眺める、池を眺める、鳥を眺める等の静的活動が多いことである。一方、植田中央公園では、広いプレイフィールドがあることからスポーツと子供と遊ぶという利用内容が多かった。2)活動の類型化 利用内容21項目をクラスター分析した結果、表3のように7つに類型化できた。類型1(散歩)と類型2(スポーツ)は単一目的の活動類型である。類型3は、散歩+花を眺める、類型4散歩+緑+池を眺める、類型5は散歩+緑+花+池+鳥を眺める、類型6は散歩+おしゃべりのように、複数の活動を行っている類型である。類型7はその他である。類型3〜5(散歩しながら周囲を眺める行為)は、ため池のある細口池公園に特化した余暇活動であることが注目される。3)類型別に見た活動の特徴 活動類型別に利用者属性をみた(表4)。類型1と類型3〜6は、50才代・60才代の中高年齢層が毎日あるいは週に数回、一人で行う日課的な余暇活動であり、細口池公園に多い類型である。一方、類型2と7は若い層が多く、週に数回あるいは月に数回訪れるような余暇活動であり、植田中央公園に多い活動類型であった。4)類型別に見た公園を利用する理由 細口池公園に多い類型1および類型3〜6には、「周辺に緑が多いから」や「鳥や花があるから」を選択するものが多く、散歩できる機能と同時にため池の景観機能を求めてやって来る類型ということができる。5.結論 1)公園内に設けられた施設(プレイフィールドとプレイグラウンド)は動的目的の活動に利用されている。2)ため池周辺の水辺空間は散歩によく使われている。同時に静的活動にも動的活動にも多様に利用されている。3)公園の使われ方を活動の組み合わせによって類型化すると単一目的2つ、多目的の利用5つの合計7つに類型化できた。4)類型1、類型2、類型6と類型7は両公園でみられたが、散歩しながら周辺を眺める活動である類型3〜5はため池のある細口池公園に特化した利用であった。5)類型3〜5の利用理由は、「周辺に緑が多いから」、「花や鳥があるから」と「水面があるから」などため池のもつ特性を享受しようとしたものである。6)以上のことから、ため池を活かした公園整備をするということは、これらため池のもつ便益を享受できるような利用を可能にすることということができる。
著者
鈴木 栄幸 加藤 浩 伊東 祐司
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.9-10, 1993-03-01

筆者らは、教育におけるコンピュータを「教えるための道具」としてではなく、学習者の思考や話し合い等を支援し促進する「活動のための道具」として位置づけている。本稿では、筆者らが開発した教育用のプログラム言語「アルゴブロック」を取り上げ、その概要・特徴を述べるとともに、思考・共同作業の道具としての適格性について、利用実験の結果を交えながら考察する。
著者
鈴木 克彦 秋本 崇之
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.69-74, 2012 (Released:2012-10-24)
参考文献数
32
被引用文献数
1

近年の microRNA (miRNA) の発見と,血中に miRNA が安定に存在しているという知見は,バイオマーカーとしての miRNA の可能性を示した.さらに最近,血中に分泌された miRNA が他所にて遺伝子発現を抑制しうると報告されるに及び,従来のホルモンやサイトカインを中心とした細胞間情報伝達の概念は大きく変更を余儀なくされる可能性がある.そこで本総説では,血中 miRNA の種類や機能について概説し,バイオマーカーとしての miRNA に関する最新の知見をまとめ,身体運動の影響を含めたストレス負荷条件における変化や予測される機能に関して概説する.
著者
野家 啓一 川本 隆史 篠 憲二 清水 哲郎 鈴木 淳子 座小田 豊
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ヘラクレイトスの「万物は流動する」(panta rhei)やゼノンのパラドックスを引くまでもなく、哲学の源流をなす思想家たちにとって《動き》は重要なテーマであった。モノの動きとヒトの動きにはどれほどの共通性があり、どこが違うのか。あるいは同じ動物の動きの中で、人間の動きにはどんな特徴があるのか。「人の移動の哲学」は、そうした哲学の根本問題に立ち返りながら知の組み替えを図り、同時に現代の社会と文化の変動が突きつけてくる実践的な難問に応答することを試みるものである。1年目は、「人の移動」を《哲学する》方法論の探究に主力を費やし、研究代表者の野家啓一は、「人の移動」がもたらす境界領域としての「異界」に注目する作業を始めた。2年目は、「人の移動」を可能にする空間のあり方を主たる検討課題とした。次いで、「人の移動」に関連する文化現象の一例として、「メタファー」を取り上げ、東北哲学会との合同シンポジウムを開催した。3年目は「人の移動」を可能にする時間のあり方の吟味から共同研究をスタートさせた。次いで、「人の移動」の哲学の基礎理論を固めるべく、世界的に再評価の動きが見られる哲学者ディルタイを取り上げ、東北哲学会との合同シンポジウムを開催した。哲学・倫理学の研究者を核として、社会心理学、比較文化論・農業経済学という関連領域の第一線のメンバーを分担者に加えた本研究の成果は、すでに各種のシンポジウムで公開したほか、東北大学倫理学研究会の協力のもと三冊におよぶ資料集を発行し、関係諸機関に送付してある。さらに研究代表者・協力者の個別の論文・報告にも共同研究の成果は折り込み済みである。