著者
芦原 睦 荒木 登茂子 松野 俊夫 江花 昭一 坂野 雄二 鈴木 理俊 菊池 浩光
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.745-753, 2004-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

医療における心理士の資格について議論されて久しい. 本学会においても, 1995年の第36回日本心身医学会総会(末松弘行会長)の際にワークショップ「臨床心理の現状と今後の課題」で取り上げられて以来, ほぼ毎年議論が続けられている. さらに, 2000年6月にはコメディカルスタッフ認定制度委員会が発足し, 具体的な医療心理士(仮称)制度の制定と運用に関する議論を重ねてきた. 同委員会の2001年12月までの活動報告は, 本誌42巻8号「医療における心理士の資格-現状と現実的問題点を含めて」に記載したので参考にされたい. 今回は, その後の議論を含め, 第44回日本心身医学会総会(石津宏会長)での, パネルディスカッションにおける各パネリストの発表をもとにした総説としたい. まず, 医療心理士の現状と研修という点から, 心理士と医師の各々の立場から述べた松野論文と江花論文を掲載したい.
著者
鈴木 彩加
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.29-42, 2017

<p>1990年代以降に草の根レベルで展開されるようになった保守運動に人びとが参加する理由は、「癒し」や「不安」といった言葉で論じられてきた。しかし、冷戦体制の崩壊やグローバル化の進展などの社会変化に由来する「不安」がナショナリズムへと接続することで解消されるという説は、「不安」が運動を通してどのように「癒される」のかという点について明らかではない。さらに、国内や海外の先行研究では、女性参加者らが運動内で性差別に遭遇していることが示されており、「癒し」と「不安」という説明は女性参加者にも適用できるのか、ジェンダーの観点から慎重に検討する必要がある。本稿では女性の動きが活発だと言われている「行動する保守」を対象に、女性団体A会の非-示威行動で実施した調査から、保守運動の参加者同士の相互行為をジェンダーの観点から考察することを目的とした。</p><p>A会の非-示威行動の場で参加者たちは様々なジョークを話していることから、本稿ではジョークの持つ機能に着目した。「嫌韓」や「愛国心」といった政治意識上「右」に位置するジョークは、参加者たちが共有する知識や価値観をもとに成立しており、参加者同士の交流を円滑にする機能を有していた。しかしながら、「慰安婦」問題に関しては高齢男性の性差別的ジョークに女性参加者たちが「沈黙」する場面が見られ、ジェンダーに関するトピックは参加者間の相違を顕在化させることが明らかとなった。</p>
著者
唐 鈺穎 小野 はるか 小川 祐子 小澤 美和 田巻 知宏 大谷 弘行 清藤 佐知子 鈴木 伸一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.169-177, 2021 (Released:2021-05-21)
参考文献数
27

【目的】対象者の属性を調整した場合,乳がん患者である母親の抑うつ・不安と家族機能が子どものQOLに影響を及ぼすかどうかを検討する.【方法】交絡因子となる対象者の属性別にサブグループに分けて,抑うつ・不安と家族機能を独立変数,子どものQOLの合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った.【結果】各属性のサブグループにおいて,母親の抑うつが高い場合は母親の抑うつが低い場合よりも子どものQOLが有意に低いことが示された.きょうだいの有無のサブグループ,母親の化学療法の受療有無のサブグループにおいて,家族機能による子どものQOLに差異がみられた.【結論】今後,子どもを持つ乳がん患者の家庭を支援する際に,子どものきょうだいの有無や乳がん患者の化学療法の受療有無などといった属性も考慮したうえで,母親の心理状態と家族機能にアプローチする必要があると考えられる.
著者
鈴木 貴之
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.83-94, 2002-11-10 (Released:2009-05-29)
参考文献数
18
被引用文献数
3 1

We have the ability to predict and understand behavior of ourselves and others by attributing various mental states. How can this ability, so-called the theory of mind, be explained? At present, we have two explanations, theory-theory and simulation-theory, and cannot decide which is better. However, if we appreciate that the underlying problem is how to describe the psychological mechanism which generates the phenomena describable as the use of theoretical knowledge, we can see that there remains an important alternative explanation which explains the ability as a kind of pattern recognition.
著者
小畠 郁生 長谷川 善和 鈴木 直
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.161-164, 1970-03-25
被引用文献数
2 2
著者
鈴木 雄大
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-17, 2016-07-31 (Released:2016-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

The causal theory of action, which has been the standard theory of action, presupposes that reasons for action are an agentʼs mental attitudes (e.g. beliefs and desires) and claims that they are the cause of the action. However, in this paper I argue that reasons for action are not the agentʼs mental attitudes but their object (e.g. facts, states of affairs, or propositions), inspired by the idea that reasons must be capable of justifying the action as well as explaining it, and that what has this normative force is not mental items, but something objective. I also solve a problem that derives from cases in which the agent believes things falsely.
著者
鈴木 裕之 中野 実 蓮池 俊和 仲村 佳彦 畠山 淳司 庭前 野菊 清水 尚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.297-302, 2011-06-15 (Released:2011-08-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

症例は70歳の女性。自宅で呼吸苦を自覚し自ら119番通報をした。救急車内収容時に無脈性電気活動(pulseless electrical activity; PEA)となり,救急隊員による約1分間の心肺蘇生術で心拍再開し当院へ搬送された。当院到着時に再びPEAとなり,アドレナリン1mgを投与し,気管挿管,当院スタッフによる約8分間の心肺蘇生術で心拍は再開した。心エコーで著明な右心負荷所見,胸部造影CTで左右の肺動脈に血栓を認め,肺塞栓と診断した。へパリン3,000単位静注後,肺動脈造影を施行したところ,肺動脈主幹部の血栓は既に溶解しており,造影欠損像を末梢に認めるのみであった。循環動態,呼吸状態ともに安定したため,抗凝固療法のみ行う方針でICUに入室させた。しかし,ICU入室4時間後から徐々に血圧が下がり始め,入室6時間後にはショック状態となった。心エコーで右心負荷所見は改善傾向にあり,肺塞栓による閉塞性ショックは否定的だった。腹部エコーで大量の腹水を認め,腹部造影CTでは血性腹水と肝裂傷を認め,胸骨圧迫による肝損傷から出血性ショックに至ったと診断した。硫酸プロタミンでへパリンを拮抗し,大量輸血で循環を安定させ塞栓術による止血を試みた。しかし,肝動脈と門脈からの血管外漏出は認められず,塞栓術による止血は不可能であった。静脈性出血の自然止血を期待し腹腔内圧をモニターしながら,腹部コンパートメント症候群に注意しつつ経過観察した。第2病日循環動態は安定し,第9病日抗凝固療法を再開した。第10病日人工呼吸器離脱し,第40病日独歩退院した。心肺蘇生術後の患者では,蘇生術に伴う合併症の発生を常に念頭に置きながら,原疾患の治療にあたることが重要である。
著者
林 恒太朗 古明地 秀治 三橋 匠 飯村 康司 鈴木 皓晴 菅野 秀宣 篠田 浩一 田中 聡久
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2021-SLP-136, no.37, pp.1-6, 2021-02-24

近年の信号処理・機械学習技術の進展によって,発声時や傾聴時の音声を頭蓋内脳波から推定したり再構成することが可能になりつつある.一方で,想像している発話の推定は,脳波と正解ラベルの同期を取るのが困難であることもあり,めぼしい成果が出ていないのが現状である.本稿では,想像音声と脳波が適切に同期していれば,発声や傾聴時脳波の場合と同様に,脳波から音声をデコーディングできるという仮説を立てた.そこで,短い文が映し出された画面を実験参加者に呈示し,文字の色を1文字ずつハイライトすることで,想像時のタイミングや想像速度を制御できる実験を設計した.その上で,音声想像,音声傾聴,発声の3種類タスクを課し,そのときの頭蓋内脳波を記録した.さらに,傾聴タスクでは呈示した音声,発声タスクでは実験参加者の発話を記録した.計測した頭蓋内脳波に対して,発声または傾聴時の音声のメルケプストラム係数をもちいたエンコーダ・デコーダモデルによって,想像音声を学習・推論した.想像時の頭蓋内脳波からデコーディングした文の文字誤り率は,最良で約17%を達成した.
著者
丸茂 喜高 鈴木 宏典 片山 硬
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.614-621, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

This study proposes an idea that encourages driver's motivation to drive altruistically. We focus on an existing intersection that disturbs the throughput of upstream vehicles by right-turn vehicles waiting a gap acceptance to turn right. We investigated some scenarios that oncoming thru traffic mandatorily give a right-of-way to the right-turn vehicles to make enough time-gap for right turning. Here, it is assumed that the effects of giving a right-of-way to the right-turn vehicles are provided to a driver of approaching thru vehicle via onboard indicator. A verified traffic simulator examines the effects of prioritizing behavior on traffic flow. Numerical analysis showed that the traffic throughout in congested states was gradually improved when prioritized right-turn vehicles increases. Also, penetration of the prior right-turn vehicles is effective to mitigate not only the collision risk at the intersection but also the total CO2 emission over the arterial road.
著者
鈴木 生郎
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1_15-1_28, 2008 (Released:2009-07-31)
参考文献数
21

The paradox of coincidence, a paradox about the relation between a material object and its stuff, has been paid a great attention to in recent metaphysics. In this paper, I compare two influential approaches to this paradox; sortalism and fourdimensional worm theory, and defend sortalism. I give the following two arguments. (1) Worm theory, like sortalism, must introduce sortal concepts to resolve the paradox. So both approaches owe the (almost) same theoretical burden to explain how sortal concepts work. (2) Worm theory, unlike sortalism, introduces sortal concepts in a very problematic way.
著者
鈴木 由美
出版者
吉川弘文館
雑誌
日本歴史 (ISSN:03869164)
巻号頁・発行日
no.790, pp.92-100, 2014-03
著者
蓑毛 雄吾 佐藤 誠 鈴木 寿晃 神崎 正斗
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.J75-J79, 2016 (Released:2016-02-25)
参考文献数
20

2015年1月に放送した「第91回東京箱根間往復大学駅伝競走」(「第91回箱根駅伝」)において,往路第5区・復路第6区の箱根エリアの中でコース変更される箇所や山登り・山下りの過酷さと難しさを視聴者に判り易く解説したいという番組制作側からの演出要望があった.そこで,複数の静止画から対象物の3次元情報を再構成する手法(フォトグラメトリー技術)とマルチコプター空撮を組合せることで,高品質なコース解説CG映像を効率的に作成し放送に用いたので報告する.
著者
長谷川 大輔 鈴木 勉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1284-1289, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

近年,モータリゼーションの進行や郊外型の都市構造への変化によって,都市内公共交通の利用者が減少している.そのため,既存の交通手段に代わり,デマンド型タクシーやライドシェアやカーシェアリングなど,様々な交通手段が新たな地域の公共交通サービスとして検討されている.本研究では多様な公共交通システムにおける優位性の理論的考察を目的として,アクセス移動の有無,路線・運行ダイヤ柔軟性の異なる5つの交通手段に関して,需要密度・利用者移動距離の変化による,一定のサービスレベルを実現できるコストの観点から,それぞれが優位となる基礎的条件を導出し,地域公共交通の導入実態を把握した上で,現実の都市の値での比較を行う.分析の結果,都市モデルを用いた理論的検討から,低需要密度におけるデマンド型交通,タクシー,カーシェアリングの優位性が示され,移動距離によっても優位性が変化する事を示した.また,自治体別に需要密度・移動距離を求めた結果,コミュニティバス導入地域は高需要密度・短距離移動であるのに対し,デマンド型導入地域は逆の特徴がある点,デマンド型交通導入地域におけるモデルの適合性が確認できた.
著者
鈴木 正崇
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.185-235, 2004-01

一 はじめに二 津軽石三 又兵衛祭り四 伝説五 伝説の相互比較六 祭祀対象七 祭祀の背景八 カタチの解釈学九 現代へのメッセージ川合隆男教授退職記念号
著者
福田 有希子 高月 誠司 三田村 秀雄 大橋 成孝 家田 真樹 三好 俊一郎 小川 聡 坂本 宗久 茅野 眞男 鈴木 亮 佐藤 千恵 黒島 義明 菊野 隆明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement3, pp.18-23, 2004-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
2

症例は35歳の男性.失神,突然死の家族歴はない.平成15年4月1日午前9時3分頃,通勤途中の電車内で,突然意識消失.駅員が午前9時7分救急隊を要請した.モニター上心室細動(VF)で,救急隊により午前9時15分電気ショックを施行,午前9時24分再度VFとなり,2回めの電気ショックを施行した.その後洞調律を維持し,午前9時45分他院救急救命センターに搬送された.到着時意識レベルは,昏睡状態,JCS300,血圧135/82mmHg,心拍数116/min,洞性頻脈で,瞳孔は3mm大,対光反射を認めず,脳保護のため低体温療法を開始した.復温とともに意識状態は回復し,神経学的にも後遺症を認めなかった.心臓超音波検査,冠動脈造影,アセチルコリン負荷検査を行ったが,異常所見は得られず,当院へ紹介入院した.トレッドミル運動負荷試験,pilsicainide負荷試験では異常所見を認めなかった.6月10日に行った心臓電気生理検査で,Baselineでは不整脈は誘発されなかったが,isoproterenol負荷後の右室期外刺激(400/200ms)で,VFが誘発され,特発性VFと診断し,ICD(植え込み型除細動器)を挿入した.本症例は,医師の指示なく,救急救命士の判断で行った電気的除細動によって一命をとりとめ,さらに社会復帰し得た本邦第1例目の症例であった.
著者
鈴木 貞美
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.43, pp.237-260, 2011-03-31

本稿では、第二次大戦後の日本で主流になっていた「自然主義」対「反自然主義」という日本近代文学史の分析スキームを完全に解体し、文藝表現観と文藝表現の様式(style)を指標に、広い意味での象徴主義を主流においた文藝史を新たに構想する。そのために、文藝(literar art)をめぐる近代的概念体系(conceptual system)とその組み換えの過程を明らかにし、宗教や自然科学との関連を示しながら、藝術観と藝術全般の様式の変化のなかで文藝表現の変化を跡づけるために、絵画における印象主義から「モダニズム」と呼ぶ用法を採用する。印象主義は、外界を受けとる人間の感覚や意識に根ざそうとする姿勢を藝術表現上に示したものであり、その意味で、のちの現象学と共通の根をもち、今日につながる現代的な表現の態度のはじまりを意味するからである。