著者
添田 暢俊 斎藤 拓朗 竹重 俊幸 浅野 宏 武藤 亮 高間 朗 渡部 晶之 遠藤 俊吾 五十畑 則之 三潴 忠通 鈴木 朋子 金子 明代 伊関 千書 関本 信一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.011-018, 2015-01-31 (Released:2015-05-13)
参考文献数
25

要旨:消化器外科手術後では術後せん妄の併発により重篤な合併症を併発することがある。抑肝散はせん妄に対する効果が報告されているが,経口摂取が困難な時期には使用しにくい。そこで抑肝散の座薬を作成し安全性と効果を検討した。【方法】座薬は漢方薬エキス製剤にホスコH─15を加えて作成し1日4回使用した。消化器外科手術を行った227例を対象とし,せん妄の程度は8時間毎にNEECHAM Confusion Scale(以下,Nスケール)により評価し。治療は抑肝散を第一選択とし8時間後にNスケール20pt以上へ上昇した場合を有効と判定した。【成績】227例中,Nスケール19点以下のせん妄は26例(11.5%)に認めた。この26例中23例に対して抑肝散座薬を使用し,有害事象を認めず,17例(73.9%)で有効であった。【結論】消化器外科手術後のせん妄において,抑肝散座薬は安全に使用可能で73.9%で効果を認めた。
著者
鈴木 克明
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43084, (Released:2019-10-29)
参考文献数
33

我が国の教育工学研究におけるインストラクショナルデザイン(ID)研究の位置づけについて概観し,教育革新が求められている今日の研究基盤としてID研究が果たすべき役割について述べた.我が国では初等中等教育における授業設計と企業研修の文脈でのIDに乖離が見られた時期があり,その後高等教育には教員の能力開発(FD)の文脈でIDの諸概念が浸透していった.今後研究基盤としてIDが果たすべき役割として,デザイナーになり革新的な実践を共創すること,デザイン研究でIDの知見拡大に貢献すること,脳科学の知見でIDを再解釈・精緻化すること,次世代の大学を創出する一翼を担うこと,教えないでも育つ教育を実現すること,ID専門家育成上級講座に参画することを提言した.
著者
松本 良 奥田 義久 蛭田 明宏 戸丸 仁 竹内 瑛一 山王 梨紗 鈴木 麻希 土永 和博 石田 泰士 石崎 理 武内 里香 小松原 純子 Antonio Fernando FREIRE 町山 栄章 青山 千春 上嶋 正人 弘松 峰男 Glen SNYDER 沼波 秀樹 佐藤 幹夫 的場 保望 中川 洋 角和 善隆 荻原 成騎 柳川 勝則 砂村 倫成 後藤 忠則 廬 海龍 小林 武志
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.43-71, 2009-02-25 (Released:2010-04-05)
参考文献数
46
被引用文献数
65 59

A number of extensive methane plumes and active methane seeps associated with large blocks of methane hydrates exposed on the seafloor strongly indicate extremely high methane flux and large accumulations of methane hydrate in shallow sediments of the Umitaka spur and Joetsu knoll of the Joetsu basin 30 km off Joetsu city, Niigata Prefecture. Crater-like depressions, incised valleys, and large but inactive pockmarks also indicate methane activities over the spur and knoll. These features imply strong expulsions of methane gas or methane-bearing fluids, and perhaps lifting and floating-up of large volumes of methane hydrate to the sea surface. High heat flow, ∼100 mK/m, deposition of organic-rich strata, ∼1.0 to 1.5%TOC, and Pliocene-Quaternary inversion-tectonics along the eastern margin of the Japan Sea facilitate thermal maturation of organic matters, and generation and migration of light-hydrocarbons through fault conduits, and accumulation of large volumes of methane as methane hydrate in shallow sediments. Microbial methane generation has also contributed to reinforcing the methane flux of the Joetsu basin. Regional methane flux as observed by the depth of the sulfate-methane interface (SMI) is significantly high, < 1 m to 3 m, when compared to classic gas hydrate fields of Blake Ridge, 15 to 20 m, and Nankai trough, 3 to 15 m. δ13C of methane hydrate and seep gases are mostly within -30 to -50‰, the range of thermogenic methane, while dissolved methane of the interstitial waters a few kilometers away from seep sites are predominated by microbial with δ13C of -50 to -100‰. Seismic profiles have revealed fault-related, well-developed gas chimney structures, 0.2 to 3.5 km in diameter, on the spur and knoll. The structures are essential for conveying methane from deep-seated sources to shallow depths as well as for accumulating methane hydrate (gas chimney type deposits). The depth of BSR, which represents the base of gas hydrate stability (BGHS), on the spur and knoll is generally 0.20 to 0.23 seconds in two-way-travel time, whereas the BSRs in gas chimneys occur at 0.14 to 0.18 seconds, exhibiting a sharp pull-up structure. The apparent shallow BGHS is due to the accumulation of large volumes of high-velocity methane hydrate in gas chimneys. The depth to BGHS is estimated to be 115 m on an experimentally determined stability diagram, based on an observed thermal gradient of 100 mK/m. Then the velocity of the sediments on the Umitaka spur is calculated to be 1000 m/s, which is anomalously low compared to normal pelagic mud of 1600-1700 m/s. This exciting finding leads to the important implication that sediments of the Umitaka spur contain significant amounts of free gas, although the sediments are well within the stability field of methane hydrate. The reasons for the existence of free gas in the methane hydrate stability field are not fully explained, but we propose the following possible mechanisms for the unusual co-existence of methane hydrate and free-gas in clay-silt of the spur. (i) High salinity effect of residual waters, (ii) degassing from ascending fluids, (iii) bound water effect and deficiency of free-waters, and (iv) micro-pore effect of porous media. All of these processes relate to the development of gas hydrate deposits of the Umitaka spur.(View PDF for the rest of the abstract.)
著者
杉原 直樹 高柳 篤史 石塚 洋一 佐藤 涼一 鈴木 誠太郎 小野瀬 祐紀 今井 光枝 江口 貴子
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.66-72, 2020 (Released:2020-05-15)
参考文献数
26

顆粒配合歯磨剤の市販が開始されて,30年以上が経過しているが,その効果をランダム化比較試験を用いて調べた報告はほとんどなく,現状でその効果が明らかになっているとはいえない.本研究の目的は,顆粒配合歯磨剤の歯垢除去効果および歯周組織への影響を検討することである.対象者は歯周病メインテナンスのために歯科医院に通院している患者であり,研究デザインはランダム化二重盲検クロスオーバー試験である.顆粒配合歯磨剤と顆粒非配合歯磨剤を1か月のウォッシュアウト期間をはさんでそれぞれ3か月間使用し,各歯磨剤の使用開始時と終了時に,同一の歯科医師による検診を行った.PCR値と隣接部位のQHI値の変化は,顆粒配合歯磨剤を使用した場合に有意な改善が認められた.歯周組織の状態,歯肉出血の状況,および歯周ポケットの深さについては有意な差は認められなかったが,顆粒配合歯磨剤を使用した後すべての検診項目の値の改善が認められた.また,クロスオーバー試験における持ち越し効果は認められなかった.なお,顆粒配合歯磨剤使用後に顆粒状物質が残存したのは1名1歯であり,特に炎症,悪化などは認められなかった.顆粒配合歯磨剤は顆粒非配合歯磨剤よりも歯口清掃効果が高かった.しかしながら,歯周組織に対する影響においては顆粒非配合歯磨剤との差は認められなかった.
著者
田中 彰 塩原 美敞 日置 勝三 阿部 秀直 西 源二郎 矢野 和成 鈴木 克美
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.273-291, 1990-11-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
38

駿河湾で採集した264個体のラブカChlamydoselachus anguineusをもとに, その生殖について調査した.本種は12月から7月の間に主に採集され, 成長段階および成熟・繁殖段階で棲息域を異にしていると考えられた.雄は全長1, 100mmですでに成熟しており, 雌は全長1,400-1, 500mmの間で成熟に達した.卵巣卵は重さ230-250gになると卵巣壁にある排卵孔から排卵され, 右輸卵管のみに入り, 卵殻腺で卵殻に包まれ, 子宮内に保持される.排卵は約2週間ごとに行われ, 排卵期間は数ヵ月におよぶと考えられる.初期の胚発生は非常におそく, 妊娠期間はすくなくとも3年半におよぶと考えられる.妊娠期間中, 卵巣卵は発達しない.胎仔が全長60-80mmに成長すると, 卵殻はそれからはがれ, 膣を通り排出される.胎仔は子宮内で主に卵黄によって全長約550mm, 体重380gまで成長し産まれる.全長400mm以上の胎仔は母体から栄養分を受けとっていると考えられる.1腹の胎仔数は2-10個体で平均6個体であった.雄の生殖腺指数は一年中ほとんど変化しなかった.雌は卵巣と子宮の状態から明瞭な繁殖時期がないと考えられる.卵殻に包まれた胎仔が最長134日海水中で生存し, その成長率は1月当り10-17mmであった.
著者
池上 重康 木方 十根 砂本 文彦 鈴木 貴仁
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.53-64, 2012 (Released:2017-08-10)

路面電車郊外とは,19世紀末に米国で展開した路面電車沿線に開発された郊外住宅地のことを指す。日本の地方都市における路面電車郊外像を探るべく,10の事例報告を通して類型化し,郊外住宅地の概念にどう位置づけられるか考察した。人口変動に伴う宅地化圧力と都市計画の実施状況を軸に以下の類型を見出した。人ロポテンシャルの高い都市では典型的な路面電車郊外が形成されたが,それ以外の都市では土地区画整理を計画したが連続的な宅地形成には至らず,都市計画事業を実現できず宅地化の萌芽に留まる例もあった。日本の路面電車郊外は自発性を含み,理念先行ではなく都市のポテンシャルに即して形成された郊外住宅地であると位置づけられる。
著者
鈴木 尚
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.23-37, 1989 (Released:2008-02-26)
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

本首塚人骨を,群馬県八幡平首塚をはじめ,他の中世人骨と骨学的に比較し,本首塚が伝説の通り,戦国時代に由来することを認めた。また中世の合戦には,男性のほか,常に女性が1/3ほど参加したらしい。頭骨の損傷の中には,貫通銃創を疑わせるものがあり,頭皮を剥ぎ,鼻をそぎ,鋸引きさかれたものもある。中世日本人の頭骨は,長頭型,広顔型など一連の現代人とはちがった形質を具え,鎌倉材木座人はその典型とみなされる。
著者
鈴木 有美 木野 和代
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.487-497, 2008-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
35
被引用文献数
49 34

本研究の目的は, 共感性の多次元的アプローチに従い, 他者の心理状態に対する認知と情動の反応傾向をそれぞれ他者指向性-自己指向性という視点から弁別的に測定しうる多次元共感性尺度 (MES) を作成し, その信頼性と妥当性を検証することであった。先行研究における概念定義の議論および既存尺度の構成を概観し,「他者指向的反応」「自己指向的反応」「被影響性」「視点取得」「想像性」の5つの下位概念を設定した。これらを測定する項目を作成し, 質問紙調査を実施した。大学生871名から得られた回答について因子分析を行った結果, 5つの下位概念に対応する5因子が得られた。α係数, I-T相関係数, 再検査信頼性係数などの結果から信頼性を検討した。また, 既存の共感性尺度および共感性との関連が予想される概念を測定する尺度との相関から妥当性を検討した。今後, 自我発達との関連など認知・情動反応傾向の指向性を規定している要因の検討を進めることが, 共感性に関する応用研究において有益と考えられる。
著者
鈴木 香峰理 永野 靖彦 森 隆太郎 國崎 主税 今田 敏夫 嶋田 紘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.1955-1959, 2008 (Released:2009-02-05)
参考文献数
25
被引用文献数
3

症例は59歳,男性.2004年10月 右季肋部痛を主訴に当院を受診した.同部位に著明な圧痛,反跳痛を認め,また,腹部CTでは回腸周囲のfat densityの上昇および右側腹直筋の肥厚を認め大腸憩室炎と診断された.入院後絶飲食,抗生剤投与を行い症状は一時改善したが,経口摂取開始後再び発熱と上腹部痛を認め開腹手術を施行した.圧痛部位の直下に手拳大の腫瘤を認め,空腸,横行結腸が巻き込まれていたため,腫瘤を含め小腸部分切除及び横行結腸部分切除術を施行した.腫瘤内部は膿瘍を形成しており,内部に小腸と交通する爪楊枝を認め,爪楊枝による消化管穿孔と診断した.爪楊枝による消化管穿孔は稀で,病歴から誤飲の有無を聞き出せないことも多く,診断に難渋する.本症例は,急性腹症の鑑別診断のひとつとして重要な症例と考え報告した.
著者
神谷 知至 本田 孝也 鈴木 修 桐生 恭好 高橋 伸 角本 陽一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.759-765, 1985-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

慢性甲状腺炎・慢性膵炎を合併した原発性胆汁性肝硬変(PBC)の男性症例を報告する.症例は66歳男性,全身倦怠感と肝腫大あるため入院となった.検査成績で血清Al-P値が28.5K-Auと高く,軽度の肝機能障害も示した.血清抗ミトコンドリア抗体および抗甲状腺抗体は陽性であった.免疫二重拡散法にて抗ミトコンドリア抗体のCおよびDが確認されたが,特にDの検出は本邦で初例である.甲状腺生検は慢性甲状腺炎像を呈し,肝楔状生検像は典型的な慢性非化膿性破壊性胆管炎を示した.膵機能は中等度に障害され,ブドウ糖負荷試験は糖尿病型であった.Sicca症候群も後に出現した.結局本症例を慢性甲状腺炎・慢性膵炎・sicca症候群を合併したPBCと診断した.多臓器障害を強く示唆し,しかも今までにほとんど検出されたことがない抗ミトコンドリア抗体Cおよび特にDが認められた男性のPBC例を報告した.
著者
鈴木 常彦
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2019-CSEC-87, no.10, pp.1-8, 2019-11-26

多数の利用者が共用する DNS 権威サーバでは共用であるがゆえの多くの脆弱性が発生しうる.本論文では共用 DNS 権威サーバにおける多様な危険性のある状況 (キャッシュ兼用,親子同居,lame delegation,public suffix ゾーン,放棄された CNAME,sibling domain) に分けて章立てし,それぞれにおける脆弱性 (DDoS, キャッシュポイズニング,ゾーンの乗っ取りなど) について解説,考察し,注意喚起する.
著者
鈴木 素
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.369-376, 2021 (Released:2021-09-04)
参考文献数
14

Covid-19は私たち人類に多くの気づきを与えた。そのひとつに先進諸国を中心に経済活動優先で進めてきた「人類中心の世界」から①変異ウィルスと②地球環境(気候変動による海面上昇,自然災害,水や食料・資源の枯渇問題等),そして③AI(2045年シンギュラリティ)とが共存する世界に突入したことを実感した。更に日本では急速に高齢化が進んでいる。持続可能な社会の実現のためには毎日着用するスマートテキスタイルやスマートウェアのイノベーションが欠かせない。従来型のアナログ洋服から未来のスマートテキスタイル・ウェアの進化について考察してみる。
著者
川久保 善智 大野 憲五 岡崎 健治 波田野 悠夏 竹下 直美 鈴木 敏彦 橋本 裕子
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

1907年、京都市三玄院で石田三成の墓が発掘され、頭蓋の石膏製のレプリカが作成されたが、その直後に紛失していた。このレプリカが2014年、約100年ぶりに再発見された。本研究では、このレプリカの表面形状をレーザースキャンで3Dデータ化し、破損箇所の補修や皮膚形状のシミュレーション等を行い、それらの結果を加味し、3Dプリンターで出力した頭蓋の復顔を行う。
著者
鈴木 真吾
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.3, pp.151-174, 2010-03

本論は『家畜人ヤプー』の作者であり、その全貌がいまなお明かされていない覆面作家沼正三と、1970年頃から沼の代理人として活動し、1983年に自身が沼だと名乗り出て以降も、沼との距離を注意深く保ってきた作家、天野哲夫に関するものである。2008年11月30日に死去した天野が沼の本体だという意見が主流を成す一方、天野が沼の本体ではないという意見は今日においてもなお支配的である。しかし、本論は沼の真の正体を考察するものではない。元来、仮想の人格を持った架空の人物として設定されていた「沼正三」が、何故、現実に存在する一個人であるという前提で語られてきたのかという点を問題にしつつ、『家畜人ヤプー』の作者の正体をめぐる騒動であった1980年代初頭の「『家畜人ヤプー』事件」を中心に、沼という覆面作家を巡る議論がどのように展開されたかを論じると共に、体系的に語られることのなかった天野について、沼としての天野ではなく、沼と対位法を成す存在としての天野を論じていく。