著者
鷲巣 力 加國 尚志 小関 素明 中川 成美 樋口 陽一 三浦 信孝 桜井 均 湯浅 俊彦 渡辺 公三
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の課題は戦後日本を代表する国際的知識人加藤周一の思想を戦後思想史のなかに位置づけることである。本研究の基礎作業が加藤の「手稿ノート」の研究とその成果としてデジタルアーカイブ化して公表することである。本年度は《Journal Intime 1948-1949》《Journal Intime 1950-1951》の二冊について、デジタルアーカイブ化して公開した。昨年公開した8冊の「青春ノート」の抄録を刊行するべく、編集校閲作業を進めた。さらに『加藤周一 その青春と戦争』(共著)の編集執筆も進めた。加藤と丸山眞男との比較研究は、東京女子大学の丸山眞男記念比較思想研究センターと本研究を支える加藤周一現代思想研究センターとの間で研究提携の協定書を締結した。丸山研究センターの川口雄一氏は加藤研究センターの客員協力研究員についてもらい、研究会にて丸山眞男研究の推移について報告した。また『丸山記念研究センター報告』(第13号)に「加藤周一文庫と加藤周一の方法」を寄稿した。さらに山口昌男文庫をもつ札幌大学の公開講座に、本研究の研究者代表である鷲巣と川口雄一氏が参加して、研究報告を行なった。加藤と林達夫との比較研究では、鷲巣が中心となり林達夫研究を進め、成果として『イタリア図書』に「林達夫への精神史的逍遥」の連載を続けた。加藤は生涯を通して反戦を貫き、反戦小説も著わしたが、研究分担者の中川成美は他の戦争文学との比較のために『戦争を読む』(岩波新書)を刊行した。加藤周一記念講演会には、フランス哲学の浅田彰氏を招聘して「普遍的知識人の時代は終わったのか」と題した講演を行なって、加藤がもつ現代的意義について論じてもらった。研究会では、上記の川口氏の報告のほか、猪原透協力研究員の「科学し研究と加藤周一」と題した報告、石塚純一協力研究員の「網野善彦、山口昌男、加藤周一」と題した報告を受けた。
著者
関塚 真美
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.2_19-2_27, 2005-12-31 (Released:2008-02-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

目的産後うつ傾向を早期に発見することの意義は, 心理的健康障害を阻止できることにある。産後うつ傾向の原因は一般に急激な内分泌変動と考えられているが, 出産満足度が低いと産後うつ傾向が高いことも指摘されている。本研究は産後うつ傾向を出産後ストレス反応と位置づけ, ストレス反応を産後うつ尺度およびストレス関連物質にて評価し, 出産満足度と出産後ストレス反応の関連を明らかにすることを目的とした。対象および方法調査期間は2004年4月から10月であった。対象者は54名で, 妊娠末期と産褥早期に質問紙調査とストレス関連物質の測定を実施した。質問紙では「基本的属性」, 「分娩経過」, 「出産時不安尺度」, 出産満足度として「出産体験の自己評価尺度」, ストレス反応の主観的指標として「産後うつ尺度」を調査し, ストレス関連物質として分泌型免疫グロブリンA (secretory Immunoglobrin A : 以下, s-IgA) を測定した。結果出産満足度の低い群は高い群に比較し, 産後うつ得点が高く (35.1±7.9点), s-IgAが低値 (23.8±13.4μg/ml) であったことから, 満足度の低い群ではストレス反応が高いことが示された。しかし, 産後うつ傾向が高い群はs-IgAが有意に低いということはなく, ストレス反応の評価には関連がなかった。結論出産満足度の低い群は, 高い群に比較し産後うつ傾向が高く免疫能が抑制されていることから, ストレス反応が高いことが示され, 出産満足度を高める意義が示唆された。
著者
小関 泰之 伊東 一良
出版者
一般社団法人 レーザー学会
雑誌
レーザー研究 (ISSN:03870200)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.887-892, 2011-12-15 (Released:2015-09-03)
参考文献数
38

We introduce stimulated Raman scattering (SRS) microscopy, which enables label-free biological
著者
石間 妙子 関島 恒夫 大石 麻美 阿部 聖哉 松木 吏弓 梨本 真 竹内 亨 井上 武亮 前田 琢 由井 正敏
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.118-125, 2007-11-30
被引用文献数
1

現在、ニホンイヌワシAquila chrysaetos japonicaは天然記念物および絶滅危惧IB類に指定されており、その繁殖成功率は最近30年間で急速に低下している。繁殖の失敗をもたらすと考えられる要因の中で、近年、鬱閉した針葉樹人工林の増加による採餌環境の悪化が注目されつつある。この対応策として、2002年、林野庁は岩手県北上高地に生息するイヌワシの繁殖成績を改善するため、列状間伐による森林ギャップの創出を試みた。イヌワシの採餌環境としての列状間伐の有効性を評価するため、林野庁が試験的に実施した列状間伐区、間伐区と環境が類似している非処理対照区および事前調査によりイヌワシの採餌行動が度々確認された採餌区の3調査区を設け、イヌワシの探餌頻度および北上高地に生息するイヌワシの主要な餌であるノウサギとヘビ類の個体数を比較した。ノウサギ生息密度の指標となる糞粒数は、間伐区において伐採翌年に著しく増加したが、伐採2年後には減少し、3年後には伐採前とほぼ同じ水準まで減少した。ヘビ類の発見個体数は、調査期間を通していずれの調査区においても少なかった。イヌワシの探餌頻度は、調査期間を通して間伐区よりも採餌区の方が高かった。このように、本研究で実施された列状間伐は、イヌワシの餌動物を一時的に増やすことに成功したものの、イヌワシの探餌行動を増加させることはできなかった。今後、イヌワシとの共存を可能にする実用的な森林管理方法を提唱するため、イヌワシの採餌環境を創出するための技術的な問題が早急に解決される必要がある。
著者
伊藤 泰雄 韮澤 融司 薩摩林 恭子 田中 裕之 長谷川 景子 関 信夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.631-635, 1993-03-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
9

われわれは,小児包茎に対しできるだけ用手的に包皮翻転を行い,手術は必要最小限としている.昭和61年以降,包茎を主訴に当科を受診した527例を対象に,包茎の形態を分類し,病型別に治療成績を検討した.病型の明らかな427例の内訳はI型(短小埋没陰茎)22例, II型(トックリ型)86例, III型(ピンホール型)60例, IV型(中度狭窄型)154例, V型(軽度狭窄型) 101例, VI型(癩痕狭窄型) 4例であった.その結果,翻転不能例はI型の13例, 59.1%, II型の17例, 19.8%, VI型の2例, 50.0%のみであった.ピンホール型は一見高度の狭窄に見えるが,翻転不能例は1例もなかった.最終的に手術を行ったのは全症例中32例, 6.1%と少なかった.外来で積極的に包皮を翻転するわれわれの治療方針は,包茎手術を著しく減少させた.
著者
橋本 すみれ 地野 充時 来村 昌紀 王子 剛 小川 恵子 大野 賢二 平崎 能郎 林 克美 笠原 裕司 関矢 信康 並木 隆雄 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.171-175, 2009-03-20
参考文献数
13
被引用文献数
2

線維筋痛症による全身の疼痛に対し,白虎湯加味方が有効であった症例を経験した。症例は65歳女性。自覚症状として,夏場に,あるいは入浴などで身体が温まると増悪する全身の疼痛および口渇,多飲があり,身熱の甚だしい状態と考えて,白虎湯加味方を使用したところ全身の疼痛が消失した。線維筋痛症に対する漢方治療は,附子剤や柴胡剤が処方される症例が多いが,温熱刺激により全身の疼痛が悪化する症例には白虎湯類が有効である可能性が示唆された。
著者
中原 健一 島田 史也 宮崎 邦洋 関根 正之 大澤 昇平 大島 眞 松尾 豊
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1M204, 2018 (Released:2018-07-30)

株式市場における売買審査業務をより効率的かつ合理的に行うために,定量的に見せ玉を検知する手法を提案する.本手法においては,教師ラベルを使用せずに相場操縦行為中に見られる不自然な取引履歴を発見するため,密度比推定による異常検知手法を用いた.東京証券取引所の上場銘柄の中より無作為に選択され,専門家チームによってラベル付けされた118 件の半日単位の一銘柄取引履歴による検証結果によると,見せ玉が疑われる事例の80%は,モデルが予測した異常度順にソートした事例の上位50%に含まれ,実務で使用されている単純な規則によるスクリーニングの結果と比較して更なる精緻化が達成できていることが示された.
著者
関口 佐紀
出版者
政治哲学研究会
雑誌
政治哲学 (ISSN:24324337)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.99-120, 2016 (Released:2019-09-05)
参考文献数
14

本稿は、平成28年8月に東北学院大学で開催された第32回政治哲学研究会での報告原稿に加筆・修正を施したものである。研究会で討論者を務めてくださった中金聡氏(国士舘大学)をはじめ、皆さまから頂いた貴重なご意見に深くお礼を申し上げる。なお本研究は平成28年度科学研究費助成事業(特別研究員奨励費)による研究成果の一部である。
著者
芦沢 真五 森 利枝 花田 真吾 米澤 彰純 太田 浩 関山 健 新見 有紀子 吉川 裕美子
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

29年度は研究会を連続しておこなった。11月18日(土)に実施した公開研究会では、文部科学省の進藤和澄国際企画室長(高等教育局高等教育企画課)に加えて、毛受敏浩(公益財団法人日本国際交流センター執行理事)、Chris Burgess(津田塾大学教授)、吉本圭一(九州大学主幹教授、第三段階教育研究センター長)の各氏による講演を行い、意見交換をおこなった。定住外国人、高度人材を受け入れていくプロセスに、NQFやFCEなどのシステムが整備されていく必要があることが提言された。12月7日(木)に実施したセミナーでは、「日本におけるFCE発展の可能性をさぐる」と題して、太田浩(一橋大学国際教育センター教授)、森利枝(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 研究開発部教授)両氏による講演を行い、12月5日に閣議決定で参加が決定した東京規約に関連して、FCEの運用にかかわる議論を深めた。さらに、3月には1週間にわたって欧州のFCE機関を訪問し、各国におけるFCEの運用と実務にかかわる調査をおこなった。まず、英国における外国成績評価(FCE)の公式な認証機関であるUK-NARICを訪問し、Cloud Bai-Yun (UK-NARIC 代表)をはじめ担当部門スタッフと面会した。FCEの実務、運用、評価ガイドライン、スタッフ職能開発などについて調査をおこなった。FCE評価実務とUK-NARICのリソースをどう活用しているかを分析した。次にアムステルダム自由大学を訪問し、入学審査部で外国成績をどのように判定しているかのヒアリングをおこなった。オランダにおけるFCE専門機関であるNUFFICを訪問し、NUFFICとしてのFCE業務、大学への情報提供のプロセス、他のFCE機関との国際連携、ワークショップ等の運営などの実情をヒアリングした。同様にドイツにおいてもFCE機関でのヒアリングを実施した。
著者
関崎 悠一郎 須田 真一 角谷 拓 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.25-35, 2012-05-30 (Released:2018-01-01)
参考文献数
34

現在でもイトトンボにとって比較的良好なハビタットとなるため池が多く残されている北上川水系久保川の流域において、イトトンボ類の分布に影響する要因を、コイの直接・間接的影響に焦点をあてて検討した。調査地域のため池56ヶ所において、2008年4月〜2010年7月に調査を行ない、イトトンボ成虫の個体数と水草の被度、池に隣接する林縁の有無、コイおよびウシガエルの生息の有無、周辺の森林面積と池密度などを記録し、出現種ごとの出現頻度と諸要因との関係を階層ベイズ法により分析した。なお、解析では水草被度およびウシガエルの有無の期待値を、それぞれコイの有無と池密度の関数とすることで、コイによる水草被度を介した間接効果と池密度によるウシガエルを介した間接効果についても定量化を行なった。種ごとに認められた傾向は、湿地を好むとされる絶滅危惧種モートンイトトンボが水草に高い依存性を示すなど、概ね既知の種生態に合致するものであった。全種共通の傾向としては、水草被度が有意な正の効果を示し、水草被度にはコイの存在が有意な負の効果を示した。ウシガエルの存在に対する池密度の影響が有意な正の効果を示した一方で、コイとウシガエルのイトトンボへの直接効果は有意ではなかった。これらの結果から、調査地域において現在、イトトンボの生息に最も大きく影響している要因はため池内の水草であり、コイは、直接捕食よりも水草を減少させる生態系エンジニアとしての効果を通じて、イトトンボに間接的な負の影響をもたらしていることが示唆された。
著者
篠田 英和 関山 華子 西本 勝太郎
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.38-43, 2007-02-01
被引用文献数
6 8

高校生198名,中学生258名,幼稚園児と小学生(以下,園児・小学生と略す)187名,計643名の柔道部員について<I>Trichophyton tonsurans</I>(<I>T. tonsurans</I>)感染症の集団検診を行った。高校生198名(男170,女28)では培養陽性者50名(男46,女4)で,この中には,頭部白癬単独例9名(4.5%),体部白癬22名(単独例15,頭部白癬合併例3,hair brush<HB>法陽性合併例4),手白癬1名,無症候性保菌者18名(9%)を含んでいた。全体部白癬22名中7名(31%)が頭髪にも菌を有しており,高校生の露出部位の体部白癬を診た場合にはHB法を含む頭髪の入念な検索が必要である。また高校生の頭部白癬例と保菌者に対し,検診3~4カ月後,治療内容についてのアンケート調査と,同時に2回目のHB法を行った。頭部白癬では抗真菌剤内服期間が1.5カ月以上で菌は陰性化し,保菌者では初回HB法コロニー数3以下の症例では抗真菌剤内服治療を受けなくても抗真菌剤含有のシャンプーによる洗髪のみで菌は陰性化することがわかった。中学生では258名中14名(5.6%,HB法陽性例11名,頭部白癬2名,体部白癬3名,保菌者3名,重複あり),園児・小学生では187名中2名(1%,体部白癬2名)から<I>T. tonsurans</I>が見出され,園児・小学生への感染の拡大が確認された。本感染症では保菌者になりやすいことや,体部白癬の発疹が非定型疹を呈しやすく湿疹と誤診されることなどからKOH鏡検,培養,HB法を積極的に行なうことが重要である。