著者
古関 喜之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.261-279, 2017 (Released:2017-12-16)
参考文献数
20

バナナの生産・流通・消費においてグローバル化が進んでおり,多国籍アグリビジネスは重要な役割を演じている.しかし,日本と台湾との間には,植民地時代を背景として,独特な生産と流通の仕組みが維持され,日本市場は台湾バナナにとって依然として重要な存在である.日本市場がグローバル化の影響を受けて多様化する中で,台湾はバナナの生産と輸出において大きな変化を迫られている.本稿では,輸出自由化後の日本向けバナナ産業の特徴について検討した.輸出自由化後,台湾では,国内価格の影響を受けて輸出価格が決定されるようになった.日本では,台湾バナナの品質が向上し,流通過程の統合の動きがみられた.しかし,依然,伝統的な流通が残っており,川下主導で価格決定される日本側との差異が浮き彫りになった.製糖会社の土地による輸出用バナナ栽培では,借地面積に上限があり,生産者を保護しながら輸出強化を図るという新たな局面を迎えている.
著者
関 成人
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.445-450, 2015-01-15 (Released:2016-05-19)
参考文献数
20

前立腺肥大症に対する手術治療として,波長532 nm のLBO レーザーを用いる光選択的レーザー前立腺蒸散術(PVP)ならびにHo:YAG レーザー(波長2140 nm)による前立腺核出術(HoLEP)は,いずれも標準術式である経尿道的前立腺切除術(TURP)と同等の治療効果を示す一方で,周術期の出血リスクの軽減や術後のカテーテル留置や入院期間の短縮が期待できる有用な方法として我国において普及が進んでいる.
著者
成田 泉 関 理恵 澤田 美佳 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.33-44, 2017-05-31

本研究では、保育所で行われている保育カンファレンスと保育実践の循環とその効果から、障害のある子どもに関する保育カンファレンスのあり方について検討した。その結果、「多様な意見やアイディアがでる保育カンファレンスであり、さらに子どもの姿から、保育実践を再考することができるような保育カンファレンスであること」、「園全体の共通理解を促進し、保育者が共通した保育方針をもつことができる保育カンファレンスであること」、「子どもの興味や関心から保育方法を探り、保育実践につなげることのできる保育カンファレンスであること」の3つが障害のある子どもを支援し保育者の効力感在高める保育カンファレンスのあり方として重要であることが示唆された。
著者
関 秀行
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.11-18, 2013-08-31 (Released:2017-10-31)

慶應義塾大学メディアセンターでは海外の図書館・図書館活動との連携を重視した図書館運営を行っている。目録フォーマットと図書館システムの国際標準化を基盤に,Googleブックス図書館プロジェクト,OCLC Research Library Partnershipなどの国際的な活動に参加しており,職員の海外図書館研修にも力を入れている。本稿では,それぞれの活動を概観として報告し,「国際化」を支える背景について述べる。
著者
友田 陽 関戸 信彰 徐 平光 川崎 卓郎 ハルヨ ステファヌス 田中 雅彦 篠原 武尚 蘇 玉華 谷山 明
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.570-578, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
15 17

Various methods were employed to measure the austenite volume fraction in a 1.5Mn-1.5Si-0.2C steel. It has been confirmed that the volume fractions determined by transmission electron microscopy, scanning electron microscopy/electron back scatter diffraction, X-ray diffraction and neutron diffraction exhibit a general trend to become larger in this order, although the values obtained by X-ray and neutron diffraction are similar in the present steel because austenite is relatively stable. The austenite volume fractions determined by diffraction methods have been found to be affected by the measuring specimen direction, i.e., texture, even by applying the conventional correcting procedure. To avoid this influence, it is recommended to measure both of volume fraction and texture simultaneously using neutron diffraction. Although synchrotron X-ray shows higher angle resolution, its small incident beam size brings poor statistic reliability. The influence of texture cannot be avoided for transmission Bragg edge measurement, either, which must be overcome to realize 2D or 3D volume fraction mapping.
著者
渡辺 篤 尾関 謙 齊藤 仁十 村上 雅紀 大澤 朋史 泉 直人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年はMRI拡散テンソル画像(DTI)を用いて,神経線維を可視化したTractgraphyや拡散異方性を定量化したFractional anisotrophy(FA)が予後予測に用いられている。脳梗塞後の急性期理学療法において運動麻痺の予後予測は重要ではあるものの,理学療法士が行う運動麻痺の評価のみで予後予測を行う事は難しいのが現状である。本研究ではFA値とFugl-Meyer Assessmentの運動項目(FM-motor)を比較し,FA値を用いた早期における運動麻痺の予後予測の可能性について検討した。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は平成27年4月~平成28年6月に入院した脳梗塞患者であった。取り込み基準はテント上脳卒中であり,年齢が80歳未満,MRI画像上で梗塞巣の著明な増大を認めなかったものとした。退院時FM-motorスコアから重症度別に分類した後,対応のないt検定を実施した。なお,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>DTI撮像にはPhilips社製Achieva 3.0T R2.6のMRI装置を用いて,Extended MR WorkSpace 2.6.3.5にて解析処理した。また,FA値の定量的評価は放射線技師1名で行った。関心領域(ROI)は,起点を橋レベルの中脳大脳脚とし,終点を頭頂部皮質レベルの中心前回から中心後回にかけて設定した。損傷側と非損傷側にROIを設定し錐体路線維のトラッキング解析した。その後,作成した左右のTractgraphyからFAを自動算出した。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>1.対象者について</p><p></p><p>14名の対象者のうち,発症から1週目以内と4週目にDTIの解析とFM-motorの測定が可能であった9名が対象となった。4週目FM-motorスコアから軽症群5名,重症群4名に分類した。年齢67.8±9.2歳,性別 男性4名/女性5名,麻痺側 右片麻痺4名/左片麻痺4名/麻痺なし1名であった。</p><p></p><p>2.FA値について</p><p></p><p>解析までの日数 初回2.3±1.2日/4週目21.5±9.0日,初回FA値は軽症群1.01±0.03/重症群 0.95±0.01(p<0.05)となり,軽症群の初回FA値が有意に高かった。4週目FA値は軽症群0.97±0.01/重症群0.84±0.02(p<0.01)となり重症群のFA値は低値だった。</p><p></p><p>3.運動麻痺について</p><p></p><p>初回FM-motorスコア 軽症群96.2±3.5/重症群13.6±2.8(p<0.01),4週目FM-motorスコア 軽症群99.5±1.0/重症群19.3±7.0(p<0.01)となり,評価期間中に両群間の移行はみられなかった。また,軽症群の運動麻痺はほぼ完全に回復した。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>DTI撮像の課題としてはROI設定で終点を中心前回にする必要があった。FA値の定値を求めるには症例数を増やしカットオフ値を算出する必要があると考えられる。今回の結果から発症から1週間以内のFA値が運動麻痺の重症群を予測できる可能性が示唆された。DTIによる情報は脳梗塞急性期に関わる理学療法士にとって積極的に活用すべきツールであり,今後は理学療法の有効性を検証するために有用になると考える。</p>

2 0 0 0 OA 元亨釈書 30巻

著者
虎関師錬
出版者
大菴呑碩 写
巻号頁・発行日
vol.[9], 1558
著者
山田 知佳 小林 恵子 関 奈緒
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.718-726, 2017 (Released:2018-01-05)
参考文献数
21

目的 問題飲酒の早期発見と適切な介入のための示唆を得るために,交代勤務労働者の飲酒行動の特徴と問題飲酒に関連する要因を明らかにする。方法 A工場の全従業員を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。交代勤務労働者が全員男性であったため,性差を考慮し,日勤者から女性を除外し,230人を分析対象とした。調査内容は問題飲酒の有無,飲酒行動,問題飲酒の関連項目等とし,交代勤務と問題飲酒,交代勤務および問題飲酒と各飲酒行動等の関連について分析を行った。また「問題飲酒の有無」を従属変数とし,単変量解析でP<0.20の変数を独立変数として,年齢を強制投入した上で,変数減少法による二項ロジスティック回帰分析を行った。結果 交代勤務労働者の飲酒行動の特徴として,「自宅」での飲酒が日勤者に比べ有意に多かった(P=0.037)。交代勤務労働者の飲酒理由は日勤者に比べ「よく眠れるように」(P=0.006)が有意に多く,入眠のために飲酒することがある交代勤務労働者が,日勤者に比べ有意に多かった(P<0.001)。 「入眠のための飲酒あり」(OR 6.38, 95%CI:2.11-19.29, P=0.001),「(職業性ストレスの)身体的負担が高いこと」(OR 2.24, 95%CI:1.11-4.51, P=0.024)は問題飲酒のリスク増加と有意に関連が認められ,「家族・友人からのサポートが高いこと」は問題飲酒のリスク減少と有意な関連が認められた(OR 0.75, 95%CI:0.58-0.97, P=0.030)。結論 男性交代勤務労働者の飲酒行動の特徴と問題飲酒の関連要因について検討した結果,日勤者に比べ「自宅での飲酒」,「入眠のための飲酒」が有意に多いことが特徴であった。 男性交代勤務労働者の問題飲酒のリスク増加には,「入眠のための飲酒あり」,「身体的負担が高い」ことが関連し,「家族・友人からのサポート」は問題飲酒のリスク減少に関連していたことから,夜間の勤務終了後の入眠困難感を把握し,飲酒以外の対処行動を支援するとともに,友人や家族からのサポートの重要性について啓発が必要である。
著者
鈴木 ゆかり 関 美分
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.25-31, 2006-01-01 (Released:2017-05-19)

限られた人員構成の中, マニュアルを使って短時間で引継ぎを行い, 確実に成果を出していくことを私たちは求められている。しかし, それを可能にしているところはどれぐらいあるのだろうか。なぜうまくマニュアルを活用できないのか。そして, マニュアルを活用していく際, 多くの人が見過ごしている点は何なのか。新任者の能力向上に大きな影響を与えるのは直接OJTを行う指導者だといっても過言ではない。そこで指導する側の心構えについて再確認をし, マニュアルについては具体的な事例を用い, 活きたマニュアルにするためのコツと, 確実に成果を出すための効果的な引継ぎ方法について伝えていきたい。
著者
杉山 裕美 三角 宗近 岸川 正大 井関 充及 米原 修治 林 徳真吉 早田 みどり 徳岡 昭治 清水 由紀子 坂田 律 グラント エリック J 馬淵 清彦 笠置 文善 陶山 昭彦 小笹 晃太郎
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.149-149, 2009

【目的】放射線影響研究所は、原爆被爆者コホート(寿命調査集団)において、病理学的検討に基づき、1987年までに罹患した皮膚癌の放射線リスクを検討し、基底細胞癌に放射線リスクがあることを報告している。本研究では観察期間を10年延長し、皮膚癌の組織型別罹患率の放射線リスクを再検討した。<br>【方法】寿命調査集団120,321人のうち、原爆投下時に広島市、長崎市とその周辺で被爆し、放射線線量推定方式DS02で被爆放射線量が推定されている80,158人を対象とした。皮膚癌は1958年から1996年までに登録された症例について病理学的な検討を行い、第一癌を解析の対象とした。ポワソン回帰により、皮膚癌における放射線の過剰相対リスク(ERR=Excess Relative Risk)を組織型別に推定した。<br>【結果】寿命調査集団において、336例の皮膚癌が観察された。組織型別には悪性黒色腫(n=10)、基底細胞癌(n=123)、扁平上皮癌(n=114)、ボウエン病(n=64)、パジェット病(n=10)、その他(n=15)であった。線量反応に線形モデルを仮定しERRを推定したところ、基底細胞癌について統計的に有意な線量反応が観察された。前回の解析(1987年までの追跡)ではERR/Gyは1.8(90%信頼区間=0.83-3.3)であったが、今回の解析ではERR/Gyは 2.1(95%信頼区間=0.37-1.2, P<0.01)であった。さらに基底細胞癌の線量反応について赤池情報量規準(AIC)に基づき検討したところ、0.6Gy(95%信頼区間=0.34-0.89)を閾値とし、傾きが2.7(95%信頼区間=1.1-5.1)とする閾値モデルがもっともよく当てはまった(ERR at 1 Gy = 1.1、95%信頼区間=0.43-2.05)。また基底細胞癌においては被爆時年齢が1歳若くなるほどリスクが有意に10%上昇した。<br>【結論】皮膚表皮の基底細胞は放射線に対する感受性が高く、特に若年被爆者において放射線リスクが高いことが確認された。また基底細胞癌における線量反応の閾値は、1Gyよりも低く、0.6Gy であることが示唆された。
著者
関 雅文 朝野 和典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2882-2887, 2013
被引用文献数
1

医療・介護関連肺炎(NHCAP)は日本独自の肺炎の概念である.2011年に発刊されたガイドラインでは,耐性菌に配慮しつつも,誤嚥性肺炎を中心とした高齢者肺炎に特に焦点を当て,治療における倫理的配慮も盛り込まれている.高用量ペニシリン系薬を中心とした抗菌薬治療の一方,今後の肺炎診療において,ワクチンに代表される予防や感染制御の考え方が,特に重要であることが示唆されている.
著者
笹尾 和宏 高須 正和 関 治之 奈良部 隆行 山本 光穂 飯田 哲 山本 博之 栗原 一貴
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.324-329, 2013-09-27

本論文では,顔認識技術と集合知に基づき,主に月および火星表面から俗に「人面岩」とも言われる,人の顔の形をした構造物の探索について報告する.我々はBrightness Binary Feature をはじめとする複数の顔認識アルゴリズムを併用し,NASA が提供した膨大な月および火星表面の衛星画像から人面状構造物を検出した.さらに,検出した映像をユーザが鑑賞,レーティングし,質の良いものを抽出するアプリケーションを試作した.
著者
村山 千代子 村山 知子 尾崎 邦夫 関根 顕
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1-2, pp.65-74, 2013-04-25 (Released:2014-11-14)
参考文献数
15

日常の歯科臨床において,心地よく咬めることは歯科治療の最終到達地点であり,そのために「咬合」が重要なテーマとなる.咬合の診査は模型診断,エックス線写真等の画像診断・キャディアックスなどの下顎運動診査機器による診査など多岐にわたるが,体表診査は特別な機器を必要とせず,患者の負担が少ない.術者の解剖学の知識と観察眼があれば診断が可能なため,咬合診査のベースとして体表診査を行うことが重要であると考える.表情筋・咀嚼筋・顎顔面骨格の対比と下顎偏位の関連性について考察し,矯正治療と下顎位の修正を含む咬合治療を行い良好な結果が得られたので報告する.【顎咬合誌 33(1・2):65-74,2013】
著者
石川 大介 栗山 和子 関 洋平 神門 典子
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.8, pp.1-7, 2010-01-21
参考文献数
12

Q&Aサイトにおけるベストアンサーを計算機が推定可能か検証するために,人間の被験者によるベストアンサー推定実験を行った.ベストアンサー推定実験にはYahoo!知恵袋データを利用し,「恋愛相談」と「パソコン」のカテゴリーから各50問を使用した.被験者二人による推定結果は,「恋愛相談」では正解率50%と52%(ランダム推定結果は34%),「パソコン」では正解率62%と58%(ランダム推定結果は38%) であり,いずれもランダム推定結果を上回った.また,被験者二人のκ係数は,「恋愛相談」では0.454(moderate),「パソコン」では0.613(substantial) であった.In order to verify whether a computer can estimate the best answer on a Q&A site, a best-answer estimation experiment was carried out with human examinees. The Yahoo! Chiebukuro data was used for the best-answer estimation experiment, and 50 questions each were used for the categories of"Consultation of love"and"Personal computer."The estimated result by two examinees for the correct answer rate was 50% and 52% (randomly estimated result: 34%) in "Consultation of love" and 62% and 58% (randomly estimated result: 38%) in "Personal computer"; therefore, each estimated result exceeded the randomly estimated result. Moreover, the kappa coefficient of the two examinees was 0.454 (moderate) in "Consultation of love" and 0.613 (substantial) in "Personal computer."
著者
関 義元 箕輪 良行 境田 康二 笠倉 貞一 伊藤 善一 栗原 宣夫 金 弘
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.718-724, 2002-11-10

背景:日本国内において,PADPの導入が推奨される基準を満たす地域または施設があるかどうか,未だ検討された報告はなくPADPの妥当性は定まっていない。目的:千葉県船橋市の心停止を調査し,この地域または地域内の施設におけるPADPの導入が推奨されるかどうかを検討する。方法:船橋市は人口550,079人,面積は85.64km<sup>2</sup>, 65歳以上人口は68,878人で全人口に対する割合は12.6%の都市である。1998年4月から2000年3月までの調査期間にドクターカーが出動した心停止700例につき,船橋市ドクターカー出動記録を用いて後ろ向きにウツタイン様式に基づいた調査を行った。船橋市における単位人年当たりの蘇生対象となった心停止の発生頻度が1,000人年当たり1例以上という基準を満たすかどうか,また,各施設においては5年間に1回以上のAEDの適切な使用が見込まれるかどうか,すなわち5年間に1例以上の目撃された心原性心停止が発生するかどうかを検討した。大規模施設として,ららぽーとスキードームザウス,船橋オートレース場,および2か所の競馬場(船橋競馬場,JRA中山競馬場)の4か所,3施設群を選び,入場者数当たりの目撃された心停止の発生頻度についても調査した。結果:蘇生対象となった心停止は492例発生し,1,000人年当たりでは0.45例となり基準を満たさなかった。駅,老人ホーム,診療所では,5年間に1例以上の目撃された心原性心停止は発生せず基準を満たさなかった。大規模施設では入場者100万人当たりの目撃された心原性心停止は0.35-1.33例の発生があった。すべての施設群で,5年間に1例以上の目撃された心原性心停止の発生があり基準を満たした。結論:今回の検討では,千葉県船橋市において地域でPADPを導入することは推奨されない。今回調査した大規模施設ではPADPの導入が推奨される。ただし,競馬場では医師が開催日に常駐しており,現状でも医師の使用を前提としたAEDの設置が有用と考えられた。

2 0 0 0 OA 聚分韻略 5巻

著者
虎関師錬
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],