著者
玉野 雅裕 加藤 士郎 岡村 麻子 星野 朝文 高橋 晶
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.275-280, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

高齢の慢性心不全患者は増加しており,感染の合併などで高率に急性増悪を来し,フロセミド静脈注射,トルバプタン内服治療が行われている。しかし,一定の頻度で難治性患者(フロセミドやトルバプタンに対するノンレスポンダー)が存在し,臨床上問題になっている。今回我々は,難治性の心不全に五苓散が著効した2症例を経験した。五苓散投与により2症例とも尿量が増加し,症状,理学所見,各種の検査所見は著明に改善した。さらに退院後,これらの薬剤は継続投与され,心不全の増悪による再入院は約1年間にわたって回避された。この結果は,五苓散の臓器,組織の水の偏在を正常化する作用,および腎集合管におけるトルバプタンの作用を再活性化させた可能性が考えられ,今後,慢性のうっ血性心不全に対する五苓散併用の有用性が示唆された。
著者
真島 理恵 高橋 伸幸
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.436-444, 2005-12-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
24
被引用文献数
6 2 3

Although there have been a number of studies that theoretically and empirically examined altruism based on direct reciprocity, few have been conducted on how altruism based on indirect reciprocity emerges. Recent advances in biological research, however, have suggested possible answers to the question. For instance, Nowak and Sigmund (1998a, b) proposed that what they called image scoring strategy made indirect reciprocity possible. After critically examining their work, Leimar and Hammerstein (2001) pointed out several limitations to the theory, and instead proposed standing strategy as an explanation. Although careful attempts to replicate the findings by them and Panchanathan and Boyd (2003) supported the arguments against image scoring, we reveal that standing strategy was not a satisfactory answer either. Based on a series of evolutionary simulations, we propose a new strategy, which we call strict discriminator, as an alternative. Strict discriminators are discriminating altruists, similar to the altruists with image scoring or standing strategy, but they are different in that its criterion for discrimination is stricter: unconditional altruists are excluded from their reciprocity.
著者
高橋 克也
出版者
埼玉大学図書館
雑誌
図書館と県民のつどい埼玉2009 : 展示説明
巻号頁・発行日
2009

図書館と県民の集い埼玉2009平成21年11月28日(土)、浦和コミュニティセンター(浦和駅東口 浦和パルコ/コムナーレ)官立浦和高等學学校記念資料室資料特別出展の展示説明
著者
本江 昭夫 鈴木 啓助 岩間 和人 高橋 英紀 稲村 哲也 山本 紀夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

平成12年8月30日〜10月22日に、本江、稲村、山本は、チベット自治区東部へ行き、ヤクとヒツジの遊牧を主体とする牧畜業と、コムギとオオムギを主体とする農業の現状について調査した。さらに、平成12年5月25日6月6日に、高橋、鈴木は、チベット自治区のラサの東40kmにある中国科学院農業生態実験站、および、西部の当雄において、コムギ畑の熱・水収支、葉面積と気孔の挙動、降水および地下水の電導度・pHを測定し、低炭酸ガス濃度、低水蒸気圧というチベット高原特有の低圧環境の特性と作物の反応を調査した。一般の畑では、標高3800m以下でオオムギとコムギが栽培されていた。これより標高の高い所では自然草原を利用した、ヤクとヒツジの遊牧が行われていた。今回調査したチベット東部は、湿潤、温暖な気象条件下で針葉樹林があり、前年に調査した中部とは全く異なった景観であった。林芝では、水田、リンゴなどの果樹栽培も行われており、従来のチベットに対する認識を根底から覆す必要があると思われた。ムギ畑に多数侵入している雑草エンバクを秋に抜き取り、水洗後に根を切り取り、乾燥して越冬用の飼料として利用していた。畑に多数見られた雑草エンバクは、雑草としてではなくて、むしろ、青刈り用飼料として栽培していると、見なすべきである。以前はオオムギ栽培が主体であり、チベット族の人はザンパ(ムギこがし)を主食としていた。しかし、漢族の人が増加するにつれ、コムギを主体とする食生活へと変化していることを、前年に続いて観察した。ラサ近郊ではコムギ畑の栽培面積が拡大しているが、地方では、オオムギ栽培が今までどうり行われていた。コムギ栽培が拡大している理由として、化学肥料の利用にともなうコムギの単収の増加が大きいことが判明した。ラサ近郊では、ジャガイモやトウモロコシなどの栽培、あるいは、トマト、ナスなどをビニールハウスで栽培するケースが増大していた。都市住民の所得増加が消費生活の水準を高くしていることが確認された。同時に、地方の農民との所得格差が拡大していることも確認できた。
著者
内藤 明美 森田 達也 神谷 浩平 鈴木 尚樹 田上 恵太 本成 登貴和 高橋 秀徳 中西 絵里香 中島 信久
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.255-260, 2021 (Released:2021-08-24)
参考文献数
20

【背景】医療において文化的側面への配慮は重要である.本研究は沖縄・東北を例に首都圏と対比させ国内のがん医療・緩和ケアにおける地域差を調査した.【対象・方法】沖縄,東北,首都圏でがん医療に携わる医師を対象とした質問紙調査を行った.【結果】553名(沖縄187名,東北219名,首都圏147名)から回答を得た.地域差を比較したところ,沖縄では「最期の瞬間に家族全員が立ち会うことが大切」「治療方針について家族の年長者に相談する」「病院で亡くなると魂が戻らないため自宅で亡くなることを望む」などが有意に多く,東北では「特定の時期に入院を希望する」が有意に多かった.東北・沖縄では「がんを近所の人や親せきから隠す」「高齢患者が治療費を子・孫の生活費・教育費にあてるために治療を希望しない」が多かった.【結論】がん医療・緩和ケアのあり方には地域差があり地域での文化や風習を踏まえた医療やケアに気を配る必要がある.
著者
高橋 秀幸 松下 将典 高尾 勇輝 森 治 角田 博明
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.21-30, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
14

This study proposes a new method for shape control of non-spinning solar sails, in which Shape Memory Alloy (SMA) wires are exploited. An SMA wire is one of soft actuators that contracts at temperatures above its design value. In the proposed framework, the whole shape of a solar sail membrane is deformed via the contraction of SMA wires distributed over the membrane. The deformation results in the change in solar radiation pressure (SRP) torque acting on the solar sail-craft, which is applicable to fuel-free attitude control. In this paper, we investigate the theory of shape control using SMA wires. It is shown that a membrane under shape control behaves similarly both in a ground experiment and in a finite element method (FEM) analysis, demonstrating the validity of numerical modeling. With this result, the performance of shape control for a large membrane in a space environment is simulated by another FEM analysis. Results demonstrate that the proposed method is capable of producing SRP torque at an effective level for attitude control.
著者
末廣 忠延 水谷 雅年 石田 弘 小原 謙一 藤田 大介 大坂 裕 高橋 尚 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.329-333, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
23
被引用文献数
2

〔目的〕慢性腰痛者における腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の筋活動開始時間との関係を明らかにすることとした.〔対象〕慢性腰痛者25名とした.〔方法〕股関節伸展時の筋活動開始時間を測定した.腰部の臨床不安定性の試験として,prone instability test(PIT)と腰椎屈曲時の異常な動きを評価した.腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の筋活動開始時間との関係は,相関係数を用いて分析した.〔結果〕PITの陽性の結果が両側の多裂筋と対側の脊柱起立筋の活動遅延と相関した.〔結語〕慢性腰痛者において腰部の臨床不安定性の陽性の結果と股関節伸展時の背部筋群の活動遅延が相関することが明らかになった.
著者
大塚 翔太 中嶋 翔吾 柏木 彩矢菜 南 頼康 森沢 知之 高橋 哲也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.593-598, 2012 (Released:2012-12-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

〔目的〕どの程度の強度・時間でのストレッチが局所の血流を変化させ,筋酸素動態に変化を与えるかを調査することを目的とする.〔対象〕全ての測定プロトコルを完遂した健常大学生17名とした.〔方法〕下腿三頭筋に対し5ニュートンメートル(N・m)で60秒,5 N・mで120秒,10 N・mで60秒,10 N・mで120秒のストレッチ4パターンを無作為に合計4回行った.〔結果〕筋酸素動態は,10 N・mでのストレッチを120秒加えた方が有意な変化を示した.特に60秒~90秒間で,5 N・mと比べ有意な差を認めた.〔結語〕一定以上の時間・強度を用いないストレッチでは,ストレッチ中の筋血流制限やその後の反応性充血に乏しく,十分な代謝性の変化が得られないことが確認された.
著者
チャン キャサリン 高橋 儀平
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.79, no.696, pp.301-309, 2014-02-28 (Released:2014-07-10)
参考文献数
13

This paper aims to explore the Hong Kong Government's current public housing policies, and its future plans for accommodating the needs of the elderly and disabled living in public housing. I will also touch on the subject of urban planning in relation to catering for the elderly and disabled. In conclusion, there is a high proportion of elderly people requiring public housing in Hong Kong. High-rise blocks are in particular inadequate relating to barrier-free. That said, it is evident there has been rapid progress in integrating “Barrier-free” requirements into the design of new public housing.
著者
川嶋 太郎 当麻 美樹 高岡 諒 佐野 秀 高橋 晃 伊藤 岳 小野 雄一郎 小野 真義 馬越 健介
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.267-272, 2014-07-20 (Released:2014-07-20)
参考文献数
11

びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic hyperostosis:DISH)にともなう腰椎骨折が原因で腰動脈損傷を生じ,大量後腹膜出血より腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:ACS)をきたした1例を報告する. 症例は77歳男性,歩行中の転倒による腰痛で近医受診後転院となった.造影CTで第2腰椎椎体の水平骨折とDISHによる骨増殖部の直接損傷と思われる腰動脈損傷,大量後腹膜出血を認めた.直ちに経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)を施行したが,膀胱内圧の上昇(39mmHg)に加え呼吸循環障害も出現しACSを合併した.緊急減圧開腹術後にsilo+vacuum packing closureによるopen abdomen managementを施行しACSを解除した.その後,観血的腰椎後方固定術を行い,神経学的後遺症を残すことなく72病日に軽快転院となった.
著者
長谷川 龍樹 多田 奏恵 米満 文哉 池田 鮎美 山田 祐樹 高橋 康介 近藤 洋史
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.188-196, 2021 (Released:2021-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

In the midst of the current reproducibility crisis in psychology, pre-registration is considered a remedy to increase the reliability of psychological research. However, because pre-registration is an unconventional practice for most psychological researchers, they find it difficult to introduce pre-registration into their studies. To promote pre-registration, this article provides a detailed and practical step-by-step tutorial for beginners on pre-registration with Open Science Framework. Furthermore, a typical example what beginners might experience and ways to resolve such issues are provided as supplementary material. Finally, we discuss various issues related to pre-registration, such as transparent research, registered reports, preprints, and open science education. We hope that this article will contribute to the improvement of reproducible psychological science in Japan.
著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。