著者
髙橋 広行 金谷 勉 高橋 広行 Hiroyuki Takahashi Tsutomu Kanaya
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.27-47, 2020-07-15

本稿は,衰退傾向にある我が国の地場産業や伝統的工芸品産業の活性化を検討するものである。その活性化のひとつの方法として検討したのが,地域の資源や既存技術を活用し,現在の消費者のライフスタイルに沿った,デザイン性の高い商品を開発していくことである。その目的を明らかにするために,まず,地場産業や伝統的工芸品産業が置かれている状況,および,クリエイティブやデザイン事業を得意とするセメントプロデュースデザインが取り組んできた「みんなの地域産業協力活動」の活動事例を説明した。その後,実際に地域との協業を通じて開発されてきた商品群の中で,より高い成果(販売実績)を産み出すための要件を明らかにするために,複数の要因の相互作用による組み合わせパターンを探る「fsQCA」(fuzzy set qualitative comparative analysis)によるデータ分析を行った。分析の結果,2つの組み合わせパターンが抽出された。主な組み合わせとしては,「熱意」と「企画提案の程度」,そこに「技術力(設備)」が組み合わされる場合,高い販売実績につながることが明らかになった。
著者
高橋,久美子
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, 2003-01-15

性意識の中でもとくにセックス観に注目し,父親と母親のセックス観が性教育に及ぼす影響について検討した。主要な分析結果は以下のとおりである。取り上げた5項目のセックス観のすべてにおいて,父親に比べて母親は否定的で禁欲的な考え方をもっていた。父親と母親の意識の差は,とくに快楽の肯定と男性による女性の道具視の項目で大きかった。母親では,禁欲の必要性の項目が快楽の肯定や女性の道具視の項目との間で関連が認められた。父親と母親のいずれも,性に関する会話への抵抗感をもつものが半数いた。子どもとテレビ視聴時のラブシーン場面において平静という者は予想外に多く,母親でも半数いた。父親と母親のいずれも,性教育の内容として取り上げた10項目のうち,家庭で必要と思う項目と学校で必要と思う項目はほぼ同数の5項目であった。しかし,家庭で必要と思う項目と学校で必要と思う項目の内容は対照的であった。家庭で実際になされた項目は少なく,2〜3項目でしかなかった。父親と母親のいずれも,家庭での性教育の必要性の意識と性教育の実践とは関連が認められた。性教育の実践に対し,父親では性に関する会話抵抗感は直接に関連し,母親では家庭での性教育の必要性の意識を通して関連していた。さらに,セックス観のなかでも禁欲の必要性の意識と性に関する会話抵抗感との間で関連が認められた。
著者
奥本 素子 橋谷田 俊 高橋 明大 阿部 乳坊
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.131-139, 2018 (Released:2018-07-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2

In recent years, the practice of science communication has disseminated scientific knowledge and fostered citizens’ trust and interest in science through dialogue on science-related emotions and values. In this study, we initiated science communication during a Japanese tea ceremony in a traditional café space, throughout which we engaged in dialogue with citizens who did not expect to experience science communication at the event. We analysed the dialogues of eight groups. There was some tendency for both citizens and scientists to initiate conversations in the café space, and this bilateral dialogue was promoted by the understanding of the characteristic of this science café. These results indicate that the design of spaces and the explanation about communication may effectively stimulate dialogue with citizens.
著者
本 秀紀 愛敬 浩二 森 英樹 小澤 隆一 植松 健一 村田 尚紀 木下 智史 中里見 博 小林 武 上脇 博之 奥野 恒久 近藤 真 植村 勝慶 倉持 孝司 小松 浩 岡田 章宏 足立 英郎 塚田 哲之 大河内 美紀 岡本 篤尚 前原 清隆 中富 公一 彼谷 環 清田 雄治 丹羽 徹 伊藤 雅康 高橋 利安 川畑 博昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

比較憲法研究・憲法理論研究を通じて、(1)先進諸国が「ポスト・デモクラシー」という問題状況の中でさまざまな問題を抱えていること、(2)各国の政治状況・憲法制度の差異等が原因となって、その問題の現れ方には多様性があること、の2点が確認された。そして、「ポスト・デモクラシー」の状況の下で国内・国際の両面で進行する「格差社会」化の問題は、今日の憲法制度・憲法理論において有力な地位を占める「法的立憲主義Liberal Democracy」の考え方では、適切・正当な対応をすることが困難であることを明らかにした。以上の検討を踏まえて、民主主義をシリアスに受け止める憲法理論の構築の必要性が確認された一方、「政治的公共圏」論を抽象論としてではなく、(日本を含めた)実証的な比較憲法研究との関連において、その意義と問題点を検討するための理論的条件を整備した。
著者
古市 瑞希 山本 大介 高橋 直久
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.1-15, 2020-08-25

名古屋工業大学で開発された音声インタラクションシステム構築ツールキットMMDAgentは,FST(Finite State Transducer)形式で記述された対話シナリオに基づいて音声対話の処理を実行し,ユーザは対話シナリオを編集することで対話の内容を自由に構成することができる.しかし,FST形式は一般ユーザには馴染みがなく,対話シナリオを編集することは困難である.そこで,一般ユーザでも対話シナリオを編集できるようにするため,ブロック型ビジュアルプログラミング機能を有する音声対話シナリオ編集システムを提案する.提案システムでは,対話の内容を「ブロック」で表し,パズルのように組み合わせるだけで対話シナリオを作成できる.これにより,対話シナリオについて知識がない一般ユーザでも,対話シナリオを作成することができる.また,提案システムに基づきプロトタイプシステムを実装し,評価実験を行った.その結果,テキストで記述する方法に比べて,提案システムを用いることで短い時間で対話シナリオの作成や内容の把握ができることが分かった.
著者
岩城 忍 涌井 絵美 高橋 美貴 四宮 弘隆 森本 浩一 齋藤 幹 丹生 健一
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.152-158, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
19
被引用文献数
3 5

高齢者の音声障害に対してStemple(1994)らが提唱した原法どおりの方法でVocal Function Exercises(VFE)を施行したので,その結果と有効性について報告する.対象は2013年10月以降に発声困難を訴え神戸大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科を受診した高齢者のうちVFEを行った21例.年齢は67~80歳(平均72.4歳).男性13例,女性8例.6~8週間のベースプログラムの完遂率は85.7%,引き続いて行う約7週間の維持プログラムの完遂率はベースプログラム完遂者中66.7%であった.ベースプログラム終了後には,GRBAS法の嗄声度G(G),maximum phonation time(MPT),mean flow rate(MFR),上限,声域,VHI-10が有意に改善し,maximum expiration time(MET)は延長傾向を示した.練習前と維持プログラム後を比較するとG,MPT,MFR,VHI-10が有意に改善し,上限は拡大傾向を示した.以上より,高齢者の音声障害に対してVFEは有効な音声治療の一つであると考えられた.
著者
高橋 章子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.209-224, 2009-09-30 (Released:2012-03-01)
参考文献数
36

主に英米圏において従来É. デュルケムは,社会秩序を,集団の価値観や信念が個人を拘束することで成立すると,論じたのだとみなされてきた.だが近年,これとは異なる解釈が提出されている.H. ガーフィンケルは,人々が互いに相互行為に参加することによって秩序が形成されるという見方を,デュルケムも採っていたと考えている.ガーフィンケルによって着目されたデュルケムのこのような側面とはどのようなものなのだろうか.本稿は,ガーフィンケルの提起を受け,これまで構造主義,客観主義の代表とみなされてきたデュルケムのうちに存在している,相互行為論との接点を示すことを目的としている.そのために『社会分業論』を中心に,デュルケムがどのような状態を秩序とみなしたかを検証した.デュルケムは,社会を個々人が相互に自由に形成するものと捉えていた.デュルケムのこの見方には,J.-J. ルソーからの影響が認められる.他方,現在でもデュルケム解釈に大きな影響を与えているT. パーソンズは,これとは別の社会形成の論理に則っているため,これまでデュルケムのこの側面に焦点があてられてこなかった.本稿は,T. ホッブズ「秩序問題」との関係を軸として,2つの社会形成の論理を比較することによって,ルソーから影響を受けたデュルケムの社会形成の論理が,根本的な点でガーフィンケルの相互行為論と共通性をもっていることを論じている.
著者
吉田 純 高橋 三郎 高橋 由典 伊藤 公雄 新田 光子 島田 真杉 河野 仁 植野 真澄 田中 雅一 Fruhstuck Sabine Dandeker Christopher Kummel Gerhard Patalano Alessio
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

現代日本のミリタリー・カルチャーの2つの構成要素、すなわち、(a)メディア・大衆文化に表現される戦争・軍事組織のイメージ、(b)軍事組織(自衛隊)に固有の文化について、平成26年度には歴史社会学的観点から、平成27~28年度には比較社会学的観点から、それぞれ調査研究を実施した。研究方法としては、インターネット意識調査、文献調査、映像資料調査、博物館・資料館等の現地調査、および関連研究者・実務者へのインタビュー調査等の方法をとった。これらの調査研究で得られた知見を総合した研究成果を、平成29年度中に、研究代表者・分担者の共著として出版予定である。
著者
岩田 健太郎 北原 エリ子 高橋 哲也 長谷川 信 横田 一彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.796-801, 2020-07-15

高橋 本日は,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の患者に直接対応されている最前線の先生方にお集まりいただきました.最初に自己紹介を兼ね,それぞれの現場で何が起こっているのか,これまでの経緯をお話しください. 岩田 当院ではCOVID-19患者を受け入れて以降,受け入れ初期,緊迫期,安定期という3段階で進んできました.緊迫期は院内感染と並行して健康観察に伴う職員の離脱が増え,病院全体が不安に覆われていました.それから日々情報がアップデートされ,目の前の変わりゆく変化に常に対応していかなければいけない時期でもありました.この時期は災害と同じだったと技師長とよく話しています.その後,COVID-19の実態がある程度見えてきて,現在は安定に向かいつつあります.
著者
奥山 睦 高橋 和勧 村瀬 博昭 前野 隆司
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.237-240, 2017

近年、映画による地域活性化が注目を浴びている。主たる議論としては、交流人口拡大のための観光領域、地域アイデンティティー形成のためのコミュニティ領域に集約されることが多い。 <br> 映画『未来シャッター』は、中小地域間連携による産官学金、市民の協力により、大田区を拠点とするNPO法人ワップフィルムが企画・製作した。本作は、従来型の地域映画と異なり、鑑賞後の対話を通して、鑑賞者、主催者、制作者、出演者等が各々の立場を越境し、新たなアクションへ繋げていっている。本研究は、本作の構造を明らかにし、協創力を創発して価値の再創造を行うためのファクターを洗い出し、複雑・大規模化する社会課題解決の新たな一方策を提示する。
著者
高橋 朋子 遠藤 新
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.25, no.60, pp.899-904, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
10

Under the ordinance on littering and non-smoking in Yokohama city, smoking is not allowed in the “No-smoking areas” designated 8 areas in the city to maintain pleasant urban environments. Even strict conditions for smokers, complaints and requests regarding butts and violation on the ordinance still have been claimed. In this case study, we analysis the complaints and requests which were received bureau of civic affairs using methods of text mining. Then we conducted interview with the department of community environment which is in charge of outdoor smoking. In the consequence, we could suggest two gaps. One is requests from residents and the city’s countermeasures for outdoor smoking, and other is recognition gaps between residents and the city. To challenge such a cross organizational issue, the collaboration of the administration and communities might be effective for coexistence among various residents.
著者
前澤 裕之 松本 怜 西田 侑嗣 青木 亮輔 真鍋 武嗣 笠井 康子 Larsson Richard 黒田 剛史 落合 智 和地 瞭良 高橋 亮平 阪上 遼 中須賀 真一 西堀 俊幸 佐川 英夫 中川 広務 笠羽 康正 今村 剛
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

近年、火星では赤外望遠鏡やキュリオシティなどによりメタンが検出され、その起源については、生物の可能性も含めた活発な議論が展開されている。また、2010年には、ハーシェル宇宙望遠鏡に搭載されたHeterodyne Instrument for the Far Infrared(HIFI)により、低高度で酸素分子の濃度が増加する様子が捉えられ謎を呼んでいる。系外惑星のバイオマーカーの挙動を探る上でも、こうした分子の変動を大気化学反応ネットワークの観点から詳細理解することが喫緊の課題となっている。現在、東京大学航空工学研究科の中須賀研究チームが火星への超小型深宇宙探査機/着陸機の検討を進めており、我々はこれに搭載可能な簡易なTHz帯のヘテロダイン分光システムの開発検討を進めている。火星大気の突入速度とのトレードオフの関係から超小型衛星に搭載できる重量に制限があるため、現時点で観測周波数帯は450 GHz帯、750 GHz帯の2系統で検討しており、地球の地上望遠鏡からでは地球大気のコンタミにより観測が難しいO2やH2O,O3や関連分子、それらの同位体の同時観測を見据えている。これにより、昼夜や季節変動に伴う大気の酸化反応素過程に迫る予定である。これらの分子の放射輸送計算も実施し、バージニアダイオード社の常温のショットキーバリアダイオードミクサ受信機(等価雑音温度:4000 K)、分光計にはマックスプランク研究所が開発したチャープ型分光計(帯域1GHz)を採用することで、火星の地上から十分なS/Nのスペクトルが得られる見込みである。重量制限から追尾アンテナなどは搭載せず、ランダーではホーンアンテナによる直上観測を想定している。着陸はメタン発生地域近傍の低緯度の平原を検討中であるが、現時点ではまだランダーとオービターの両方の可能性が残されている。ランダーによる観測の場合は、off点が存在しないため、通常のChopper wheel法による強度較正が行えない。そこで、局部発振源による周波数スイッチと、2つの温度の黒体/calibratorを用いた較正手法を検討している。システムを開発していく上でPlanetary protectionも慎重に進めていく必要がある。本講演では、これら一連のミッションの検討状況について報告する。システムや熱設計の詳細は、本学会において松本他がポスターにて検討状況を報告する。
著者
高橋 有里 桐田 隆博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.410, pp.69-74, 2006-11-30

乳児の泣き声が育児中の女性に及ぼす心理生理的影響について,育児ストレスとの関連性から検討した.他人の乳児の泣き声を聴取中の母親の心拍数,皮膚コンダクタンス変化と,泣き声聴取後の拡張期血圧を測定した.その結果,他人の乳児の泣き声は母親にとってネガティブな感情を高める刺激であったが,母親は泣き声に注意を集中し,心拍数が減少した.育児ストレス度では,生理的指標に差は見られなかった.しかし,泣き声を聞いて抑鬱・不安感情が高くなった母親は拡張期血圧が上昇するなどのストレス反応が確認された.また,泣き声に対する不快度が強い母親は,皮膚コンダクタンス反応が大きいことや,心拍数が時間の経過とともに統制条件と差がなくなることから,乳児の泣き声に対する耐性が低いことが示唆された.
著者
高橋 進 中西 輝政 山口 二郎
出版者
岩波書店
雑誌
世界 (ISSN:05824532)
巻号頁・発行日
no.556, pp.p36-59, 1991-07