著者
高橋 和子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-20, 2011 (Released:2012-03-23)
参考文献数
47

本研究は,世界最高齢の舞踏家大野一雄が38年間勤務した捜真女学校における「ダンス授業」や「クリスマス行事での聖劇」に着目し,どのようなダンス教育をしたのかを舞踏活動との関連も含めて探ることを目的とする。研究方法として,文献,大野一雄アーカイブ資料,および女学校関係者への半構造化面接法などにより得られた資料を,(1)経歴(教育・舞踊関連年表)の作成,(2)体育教科におけるダンス指導とマスゲーム『美と力』振付の点検評価,(3)聖劇とサンタクロース扮装の点検評価,などの観点から分類整理し,考察を行った。その結果,大野は半世紀以上にわたり捜真女学校に関わり,ダンスや聖劇を通して「形を教え込む」のではなく,「真剣な言葉かけ」によって自己の内面に対峙させ,「自由な表現を引き出した」ことが明らかになった。教育者であり舞踊家であった大野は,謙虚さと奉仕と愛情に満ち溢れた信仰心で子どもや生徒に接し,一連の教育法は世界的に活躍する舞踏家となっても変わることなく,人間の可能性を引き出し生と死のテーマを表現してきたといえる。大野の生き方は創作ダンスや教育の原点にも通じ,ダンス指導法への示唆を得ることができた。
著者
田村 哲樹 千葉 眞 加藤 雅俊 藤田 菜々子 武田 宏子 杉田 敦 森川 輝一 五野井 郁夫 乙部 延剛 齋藤 純一 吉田 徹 中田 瑞穂 山崎 望 高橋 良輔
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、資本主義と民主主義は今後も両立可能なのか、もし両立可能だとすればどのような形でなのか、というテーマを探究する。これは大きな問題であり、かつての社会科学あるいは政治学の主題の一つだったが、次第に顧みられなくなった。本研究は、このテーマそのものを今日的状況を踏まえつつ復興するとともに、両立可能性と不可能性のあり得る複数のシナリオを政治理論的に解明する。そして、この作業を通じて、「経験的事象に根差した政治理論」研究の新たなモデルの提示を目指す。
著者
髙田 琢弘 吉川 徹 佐々木 毅 山内 貴史 高橋 正也 梅崎 重夫
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2020-0022-GE, (Released:2021-02-11)
参考文献数
26

本研究は,過労死等の多発が指摘されている業種・職種のうち,教育・学習支援業(教職員)に着目し,それらの過労死等の実態と背景要因を検討することを目的とした.具体的には,労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センターが構築した電子データベース(脳・心臓疾患事案1,564件,精神障害・自殺事案2,000件,平成22年1月~平成27年3月の5年間)を用い,教育・学習支援業の事案(脳・心臓疾患事案25件,精神障害・自殺事案57件)を抽出し,性別,発症時年齢,生死,職種,疾患名,労災認定理由および労働時間以外の負荷要因,認定事由としての出来事,時間外労働時間数等の情報に関する集計を行った.結果から,教育・学習支援業の事案の特徴として,脳・心臓疾患事案では全業種と比較して長時間労働の割合が大きい一方,精神障害・自殺事案では上司とのトラブルなどの対人関係の出来事の割合が大きかったことが示された.また,教員の中で多かった職種は,脳・心臓疾患事案,精神障害・自殺事案ともに大学教員と高等学校教員であった.さらに,職種特有の負荷業務として大学教員では委員会・会議や出張が多く,高等学校教員では部活動顧問や担任が多いなど,学校種ごとに異なった負荷業務があることが示された.ここから,教育・学習支援業の過労死等を予防するためには,長時間労働対策のみだけでなく,それぞれの職種特有の負担を軽減するような支援が必要であると考えられる.
著者
高橋 久美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.59-67, 2003-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17
被引用文献数
4

性意識のなかでもとくにセックス観に注目し, 父親と母親のセックス観が性教育に及ぼす影響について検討した.分析の対象は中学生の子どもをもつ188組の父親と母親である.主要な分析結果は以下のとおりである.取り上げた5項目のセックス観の全てにおいて, 父親に比べて母親は否定的で禁欲的な考え方をもっていた.父親と母親の意識の差は, とくに快楽の肯定と男性による女性の道具視の項目で大きかった.母親では, 禁欲の必要性の項目が快楽の肯定や女性の道具視の項目との間で関連が認められた.父親と母親のいずれも, 性に関する会話への抵抗感をもつ者が半数いた.子どもとテレビ視聴時のラブシーン場面において平静という者は予想外に多く, 母親でも半数いた.父親と母親のいずれも, 性教育の内容として取り上げた10項目のうち, 家庭で必要と思う項目と学校で必要と思う項目はほぼ同数の5項目であった.しかし, 家庭で必要と思う項目と学校で必要と思う項目の内容は対照的であった.家庭で実際になされた項目は少なく, 2~3項目でしかなかった.父親と母親のいずれも, 家庭での性教育の必要性の意識と性教育の実践とは関連が認められた.性教育の実践に対し, 父親では性に関する会話抵抗感は直接に関連し, 母親では家庭での性教育の必要性の意識を通して関連していた.さらに, セックス観のなかでも禁欲の必要性の意識と性に関する会話抵抗感との問で関連が認められた.

5 0 0 0 考古學

著者
高橋健自著
出版者
聚精堂
巻号頁・発行日
1913
著者
安藤 朗 藤本 剛英 高橋 憲一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2983-2989, 2013-11-10 (Released:2014-11-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

我々は腸内細菌を利用してさまざまな食物からエネルギーを獲得している.腸内細菌は糖吸収を促がすだけでなく,食物繊維を発酵して脂肪酸を誘導しこれらがエネルギーとして利用される.一方,腸内細菌の存在は複雑な免疫機構の発達を誘導した.腸管は生体内最大のリンパ装置とされ,ここでは腸内細菌や食物抗原に対する免疫誘導と寛容が巧妙にコントロールされ過剰な免疫応答による組織障害が未然に防がれている.このホメオスタシスの乱れが炎症性腸疾患の発症につながる.一方,機能性消化管障害は,腹痛と便通異常などの症状があるにもかかわらず消化管検査では症状の原因を特定できないことから,腸管運動の機能障害と内臓神経の知覚過敏に起因する疾患と考えられてきた.しかし,最近の研究から機能性消化管障害の病態にも腸内細菌叢の関与が示唆されている.ここでは,腸疾患と腸内細菌叢のかかわり,腸内細菌を標的とした治療の実際について解説した.
著者
高橋 晃周 依田 憲
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.3-19, 2010-05-01 (Released:2010-06-03)
参考文献数
96
被引用文献数
8 7

鳥類は最も機動性の高い動物群であり,自然条件下で個体の生理,行動,生態に関する情報を得るのは困難な場合が多い.この問題を解決するため,動物自身に装着した小型記録計を用いて,自由に動き回る動物の研究を行うバイオロギング技術の開発が進められてきた.バイオロギングは1970年代に単純な潜水深度の記録計から始まり,海鳥類の驚異的な潜水能力を明らかにしてきた.現在,動物装着型記録計は,多様化,小型化が進み,潜水性海鳥類のみならず,鳥類全般での生物学的な研究に利用可能な技術となっている.本論文では,バイオロギングを用いた鳥類研究の最近の進展を,移動,採餌,運動性能,生理状態,認知,社会行動,外的環境の7つの研究分野にわたってレビューした.またバイオロギングが直面する現状における課題,将来の方向性として,記録計の小型化と装着・回収方法の改良,時空間的に相関した大量データを適切に解析する手法の開発,個体ベースで情報が得られる他の研究手法との併用,分野横断的な研究の推進,を取り上げて論じた.バイオロギングによって開ける新しい研究領域は,バイオメカニクス,生理学,行動学,生態学といった既存の学問分野を個体レベルで統合する可能性をもち,自然環境における鳥類の理解を深めることに役立つだろう.
著者
高橋 浩一郎 原 由美子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.2-35, 2020 (Released:2021-04-16)

2020年は、「新型コロナウイルス」という未知のウイルスによって、世界中がかつてない経験を強いられる年となった。感染が拡大する中、日本では、4月に全国に緊急事態宣言が発出され、小中高校が休校、外出や移動の自粛を要請されるなど、人々の生活が大きく変化することとなった。この間、放送局は、取材や番組収録などに制約を受けつつも、新型コロナウイルス関連の報道にも力を割いてきた。また、この間は、テレビなど既存メディアによる取材が困難になる中、当事者や関係者からのソーシャルメディア等を使った発信が数多く行われ、それをテレビが伝えるというような、両者の相互連関が見られた。そこで、1月中旬から7月末までの期間、テレビがソーシャルメディアと連関しつつ「新型コロナウイルス」に関してどのように伝えてきたか、検証を行った。 日中から夜間の情報番組・ワイドショー、キャスターニュース番組を対象に検証したところ、これらの番組が多くの時間を割いて関連報道を行っており、ほとんどの番組で視聴率も増加していた。伝えられた諸々の内容のうち、「PCR検査」「マスク」「自粛」などに関わる話題は、一貫して伝えられた。また、テレビは一定程度ソーシャルメディア由来の情報を扱い、中でもTwitterを多く利用していた。Twitterの中ではテレビの話題に活発に反応した局面も多々見られ、相当数の投稿がなされた。両者間では、時に話題の往還が見られ、その往還が実社会に影響を与えるケースもあった。
著者
高橋義春
出版者
三菱重工業
雑誌
三菱重工技報
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, 1998-07
著者
今野 健一 高橋 早苗
出版者
山形大学
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.36, pp.57-77, 2006-03-31

はじめに 2005年10月未から11月半ばにかけて、パリの郊外を中心にフランス全土で、大規模な「暴動」(emeutes)が起こった。4人の死者と多数の負傷者、およそ1万台の自家用車への放火、その他膨大な物的損害をもたらし、外国メディアからは<内戦>とまで(かなり大げさに)表現された。ただ、この現象の社会的意味を見定めることは、実はそれほど容易なことではない。暴動の発火点となった大都市「郊外」(banlieues)のフランス的特質や、郊外の大規模公営団地(シテ〔cite〕)に住まう移民出身の住民たちの来歴と生活の現状、(平時)でも1日に90台以上もの車が放火されるという「都市暴力」(violencesurbaines)と今回のような「暴動」の原因と特質、さらに、「郊外」の(社会的困難を抱えた地区)(quartierssensibles)でしばしば若者と衝突する治安部隊(警察・憲兵隊)の運用を中心とするセキュリティの法政策の特質などを考察の姐上に載せる必要がある。問題は多岐にわたり、それぞれが深刻である。本稿では、今回の「暴動」の発生の経緯と事態の推移をフランスの新聞等の報道から再構成した上で、「暴動」に潜む問題事象の幾つかの側面(郊外における若者の都市暴力と移民問題、政府による犯罪予防・治安対策の変遷と特質)につき、限定的ではあるが検討を加え、現時点における我々なりの問題状況の図式化を試みたい。
著者
奥山 睦 高橋 和勧 村瀬 博昭 前野 隆司
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2017年春季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.237-240, 2017 (Released:2017-05-31)

近年、映画による地域活性化が注目を浴びている。主たる議論としては、交流人口拡大のための観光領域、地域アイデンティティー形成のためのコミュニティ領域に集約されることが多い。 映画『未来シャッター』は、中小地域間連携による産官学金、市民の協力により、大田区を拠点とするNPO法人ワップフィルムが企画・製作した。本作は、従来型の地域映画と異なり、鑑賞後の対話を通して、鑑賞者、主催者、制作者、出演者等が各々の立場を越境し、新たなアクションへ繋げていっている。本研究は、本作の構造を明らかにし、協創力を創発して価値の再創造を行うためのファクターを洗い出し、複雑・大規模化する社会課題解決の新たな一方策を提示する。
著者
室賀 清邦 高橋 計介
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.535-541, 2005 (Released:2005-08-24)
参考文献数
69
被引用文献数
3 3

カキの生食などによって起こるノロウイルス食中毒は重要な非細菌性急性胃腸炎の一つであり,これまでに医学や食品・環境衛生学分野で多くの研究がなされてきたが,水産学分野での研究は乏しい。しかし,衛生的なカキ養殖システムを構築するためには水産学領域における研究が必要である。本総説では,内外の研究論文に基づき,ノロウイルスおよびその感染症の概要,感染経路,カキにおけるノロウイルス汚染,および浄化処理法について紹介した。最後に,カキにおけるウイルス取り込み機構などの基礎的研究の必要性を論じた。