著者
藤本 泰文 久保田 龍二 進東 健太郎 高橋 清孝
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.213-219, 2012 (Released:2013-04-24)
参考文献数
27
被引用文献数
7 3

オオクチバスとブルーギルは,日本各地に移殖された外来魚で,ため池はその主要な生息場所となっている.本研究では,オオクチバスおよびブルーギルのため池からの用排水路を通じた移出状況を調査した.私たちは宮城県北部に位置する照越ため池の用水路と排水路に,ため池から流出した魚類を捕獲するトラップを設置した.4 月下旬から 7 月下旬の調査期間中,これらの外来魚は用水路と排水路の両方から何回も流出しており,その流出のタイミングは,それぞれの水路の通水期間に限られていた.体長 125 mm の成魚のブルーギルも流出していた.ため池の魚類生息数を池干しによって調査した結果,ため池に生息する外来魚のうち,オオクチバスは 4. 0%,ブルーギルは 7. 1%が流出していたことが示された.外来魚の流出は繰り返し生じ,生息個体数の数%が流出していたことから,外来魚の流出は稀な現象ではなく一般的な現象である可能性が高い.この結果は,ため池が下流域への外来魚供給源となっていることを示す.周辺地域への被害拡大を防ぐためにも,ため池の外来魚の駆除は重要だと言える.
著者
根岸 雅夫 笠間 毅 福島 俊之 田畑 穣 小林 和夫 井出 宏嗣 高橋 昭三
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.121-124, 1991-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7

39歳女性の筋炎症状を伴った全身性強皮症〔progressive systemic sclerosis (PSS) 〕を精査加療した.患者は強度のレイノー現象にひき続く一過性の頭痛が頻発していた.附加観察として, 本症例を含む6例のPSS患者に寒冷刺激負荷試験を行い, その前後における眼底血管の変化を観察した.その結果レイノー現象に伴って頭痛を訴える患者群には眼底動脈の拡張が認められた.以上よりレイノー現象は四肢末端にとどまることなく大脳内末梢血管にも影響していることが示唆された.
著者
浅井 康文 佐藤 昌太 坂脇 英志 相坂 和貴子 加藤 航平 水野 浩利 前川 邦彦 丹野 克俊 森 和久 奈良 理 高橋 功 目黒 順一
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-27, 2011 (Released:2018-03-01)
参考文献数
6

北海道では、ドクターヘリ(3機体制)と北海道防災ヘリなどとの共存体制や、さらなる航空機医療の充実を目的に、2010年5月北海道航空医療ネットワーク研究会が設立された。本研究会では、試験事業として民間企業からの寄付によって小型ジェット機を1ヶ月間チャーターし、患者搬送、医師搬送、臓器搬送を実施したので、その結果と運航の可能性や課題等について報告する。結果は、総出動件数16件で、患者搬送9件(要請11件)、臓器搬送4件、医師搬送3件であり、事故なく安全に運航できた。また、着陸可能な北海道内の8空港で見学会を開催し、普及活動も同時に実施した。1ヶ月間の固定翼機運航の成果を踏まえて、北海道地域再生医療計画に基づき、2011年度より3年間に渡り、固定翼機(メディカルウイング)の運航が実地される。
著者
水野 健太 渡部 要一 小林 正樹 野口 孝俊 青木 康哲 山本 隆信 高橋 充
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.78-84, 2012-01-15 (Released:2012-01-20)
参考文献数
9

In the construction of the D-runway in Tokyo International Airport (Haneda Airport), “the settlement prediction and management system (HSAP)” which can efficiently evaluate the consolidation settlement of artificial reclamation was developed. The reclamation history data base which reflected the actual construction until July, 2009 and the reclamation plan after that was made. The actual measurement and the calculation value were compared and the various consolidation parameters were identified. Moreover, the long-term consolidation test and constant strain rate consolidation test were executed, and the secondary consolidation parameter was set based on the isotache model's concept. Based on the prediction result of the residual consolidation settlement, the filling height of the D-runway at the start of in-service period was decided to be 0.70m, which is required from the aviation operation.
著者
高橋 有紀子
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.12, pp.736-745, 2020-12-05 (Released:2020-12-24)
参考文献数
34

情報化社会の進展がどのくらいエネルギー消費量を増やしているか,それがどのような環境変化をもたらしているかといったことを想像したことがあるだろうか.アメリカのIT企業Ciscoの全世界のモバイルデータトラフィックの予測によると,1984年に204 GB(ギガバイト)だった全世界のデジタル情報量は,2017年には1.5兆GB(1.5 ZB,ゼタバイト,Zetaは1021)へ増加し,2021年には3.4兆GBにまで増加すると予測されている.また,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の資料「JST-LCS 情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響 平成31年」によると,デジタル情報を保存するデータセンター1施設分の電力消費量は,GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)などの大手IT企業が所有する超大規模クラスで2,600 GWh(2018年)にもなり,世界で消費される全電力量の数%をIT分野が消費するまでになっている.COP21で採択されたパリ協定では,温室効果ガスの削減目標などの取り決めがなされたが,具体的な数値目標を定めたものとして1997年の京都議定書が有名である.1997年から約20年が経過し,その間にデジタル情報量は指数関数的な増加を見せ,IT分野での消費電力量は45%も増加しこれに伴う温室効果ガスの排出量も急激に増加している.我が国が目指す未来社会であるSociety5.0は,IoTを駆使した人間中心の社会であるため今後もデジタル情報量の急激な増加が見込まれ,それを下支えするストレージデバイスは重要な基幹技術である.次世代の豊かな社会と環境を両立させるためには,環境に配慮した技術革新が必要不可欠となっている.とりわけ,装置の小型化と台数削減に直結するストレージデバイスの高密度化技術の確立は,データセンターの省エネルギー化を実現していく鍵となる.ストレージデバイスは半導体,誘電体,磁性体を用いるものが種々開発されているが,大容量・安価・不揮発という長所をもつ磁気ストレージデバイスであるハードディスクドライブ(HDD)はデータセンターでメインデバイスとして使われている.HDDはすでに1 Tbit/in2を超える密度(1ビットの面積が2.54 cm×2.54 cmの1兆分の1よりも小さい)を実現しているが,爆発的に増加するデジタル情報に対応するためにさらなる高密度化が求められている.日米のストレージメーカーが中心となって,数年のうちに4 Tbit/in2を達成することを目標に研究開発が進んでいる.高密度化には,磁気記録媒体を構成するナノサイズの磁石のさらなる微細化が必要となる.しかし,ただ単に微細化してしまうと,高温になるHDDの動作環境下では記録情報となる磁石の磁化の向きが熱擾乱のため保持されなくなってしまう.情報の保持のためには磁気異方性を強くしなければならないが,今度は記録情報の書込み,すなわち磁化の向きを反転させるために大きな磁場が必要となる.しかし,HDDに組み込まれるマイクロサイズの電磁石が発生できる磁場にも限界があり,その磁場のみで制御する記録方式はすでに高密度化に対応できなくなっている.この書込みの問題を克服するために提案されたのが,エネルギーアシスト磁気記録である.ナノ磁石の磁化を反転させるときに外部からエネルギーを与えて磁化反転を助けるというイメージである.外部エネルギーとして,熱・高周波磁場・光などが提案されているが,熱および高周波磁場によるエネルギーアシスト磁気記録方式はすでに実用化研究段階に入っている.今後さらに高密度化を進め,かつ省エネデバイスを実現するためには,少しのエネルギーアシストで磁化反転できる,すなわち高効率な磁化反転が実現できるようなエネルギーアシスト方法や材料選択といった課題がある.
著者
渡辺 勝敏 高橋 洋 北村 晃寿 横山 良太 北川 忠生 武島 弘彦 佐藤 俊平 山本 祥一郎 竹花 佑介 向井 貴彦 大原 健一 井口 恵一朗
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-38, 2006-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
247
被引用文献数
6

The biogeography of freshwater fishes in Japan was reviewed in terms of achievements and perspectives. In the last three decades, biogeographic studies have changed from earlier descriptions of the freshwater fish fauna, based on the Linnean classification system, to phylogenetic approaches using various molecular markers. Especially, the phylogeographic approach, which explores the formation of geographic distribution patterns of genealogical lineages within species, has become predominant. Analyses of genuine freshwater fishes have disclosed their speciation and dispersal patterns throughout temperate East Asia since the Neogene, along with the formation of the Japanese Archipelago. In particular, molecular clocks of mitochondrial DNA have played an important role in examinations of biogeographic relationships between the Japanese Archipelago and Chinese continent/Korean Peninsula, and vicariance by Fossa Magna in central Honshu Island. Patterns of range expansion through the sea and landlocking in coldtemperature euryhaline fishes have indicated their speciation and distribution dynamics under the fluctuating climatic conditions of the Plio-Pleistocene. Likewise, phylogeographic implications of unusual biological entities arising from interspecific hybridization or gynogenesis have been discussed. Nevertheless, despite the emphases given to some groups, the present knowledge of phylogeographic patterns of Japanese freshwater fishes is for the most part still insufficient for quantitative analyses of the overall history of the freshwater fish fauna and geographic regions of Japan. Improved research techniques and methodologies for the integration of findings from multiple taxa and/or genes are essential. Further, evolutionary formation of distributional ranges should be considered together with ecological biogeography, including the processes of local adaptation, interspecific interaction and extinction. Modern day disturbances of freshwater fish distributions, including fish transportation, are rapidly leading to artificial distribution patterns and extinctions. Exhaustive phylogeographic analyses should be necessary as a primary requirement for conserving freshwater fish biodiversity in Japan.
著者
土倉 潤一郎 高橋 佑一朗 前田 ひろみ 吉永 亮 井上 博喜 矢野 博美 犬塚 央 川口 哲 田原 英一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.40-46, 2017 (Released:2017-07-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

「1週間に1回以上の頻度」かつ「2週間以上の持続」で再発するこむら返り33例に対して,疎経活血湯を使用した。判定は薬剤開始1ヵ月後に行い,薬剤開始直後から症状が消失したものを「著効」,1ヵ月後に症状が消失していたものを「有効」,1ヵ月後に半分未満へ軽減したものを「やや有効」,1ヵ月後に半分以上が残存したものを「無効」とした。結果は,「著効」12例,「有効」11例,「やや有効」9例,「無効」1例であった。1ヵ月後までに23/33例(69.6%)でこむら返りが消失し,32/33例(96.95%)において半分未満に改善した。さらに3ヵ月後までに29/33例(87.8%)で消失しており,高い有効性を認めた。夜間から明け方のこむら返りに対しては,“夕より眠前”“1包より2包”でより効果を認め,眠前2包の“発作前の集中的投与”が最も有効であった。再発性のこむら返りに対して疎経活血湯は有用だと思われる。
著者
高橋 和雄 藤井 真
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.567, pp.1-17, 1997-06-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
11
被引用文献数
3

長期化・大規模化した雲仙普賢岳の火山災害における道路および鉄道の被害, 代替交通, 復旧対策および交通途絶の影響を明らかにした. 島原半島は地形的に道路が不足しており, 従来から大きな課題であったが, 災害時にその脆さのために孤立状態となり, 地域に大きなダメージを与えた. 本報告では, 道路・鉄道における応急・緊急対策, 恒久対策への取組みを詳しく報告する.
著者
鈴木 千晶 藤崎 賢二 渥美 雄介 竹村 実紀 水野 孝一 永峯 岳樹 天野 智康 山本 英雄 高橋 護
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.273-281, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

The purpose of this study is to measure the hemodynamics on the effect of Valsalva maneuver aiming at pulmonary thromboembolism (PTE) using 2-dimensional (2D) phase contrast imaging of magnetic resonance image (MRI), Philips Ingenia 3.0-tesla (T). The maximal inspiration reduced the blood flow rate in various degrees at all measurement positions, superior vena cava (SVC), inferior vena cava (IVC), pulmonary artery (PA), ascending aorta (AA), and descending aorta (DA). This result suggests that the contrast effect in the PA might become weak during general PA phase to give a substantial influence of Valsalva maneuver in the condition after maximum inspiration. A contrast-enhanced computed tomography (CT) examination aiming at detection for PTE should be scanned without an advance maximum inspiration.
著者
高橋 和良
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.100-107, 2014-03-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
12

香辛料は海の冒険者たちの夢を駆り立て,スパイス戦争を引き起こし,結果的には世界の歴史に大きな影響を及ぼしたのである.なぜ香辛料にはそのような影響力があったのかマズローの欲求段階説を用いて説明する.香辛料は薬や化粧品や食品として使用されたが,薬や化粧品に対する欲求は安全欲求と自我欲求である.これに対して,食べ物に対する欲求は生理的欲求である.この生理的欲求が世界の歴史に大きな影響を及ぼした原因であると考えられるのである.そこで,香辛料の歴史を使用方法の視点で見直すこととする.
著者
古賀 麻奈美 長谷 麻由 芳野 千尋 籾井 佑都 松本 彬 田鍋 拓也 有吉 雄司 山本 浩由 甲斐 悟 高橋 精一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H4P3260, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】大脳皮質でストレスと認知された刺激は自律神経系,内分泌系,免疫系を介して全身に伝達され,身体的,心理的な反応を引き起こし,精神疾患以外にも生活習慣病など様々な疾患の引き金になると考えられている.そこでリラクセーションとして用いられている深呼吸のストレス緩和効果を明らかにする.【方法】健常成人女性15名(平均21.8±0.7歳)を対象とした. ストレス後の深呼吸の効果をみるために,深呼吸介入と非介入の条件で測定日を2日以上離してランダムに測定した.対象者には椅子坐位での5分間の安静後にストレス負荷として内田クレペリン検査を15分間実施し,その後,深呼吸群は5分間の深呼吸行い,コントロール群は5分間の安静を行った.深呼吸はストップウォッチを見せながら呼息6秒・吸息4秒の条件で実施した.深呼吸非介入時は安静を保った.安静開始4分後,ストレス負荷12分後,深呼吸開始及び深呼吸非介入時には安静4分後に,唾液アミラーゼを測定(CM-2.1,ニプロ株式会社)した.飲食物の影響を避けるため,食後直ぐには行わなかった.測定は,室温23~26°C,湿度30~50%の環境で実施した.統計学的分析は,二元配置分散分析と多重比較検定を行った.有意水準は5%未満とした.【説明と同意】対象者には本研究の目的および方法を説明し,同意を得たうえで測定を実施した.また,被験者はいつでも研究への参加の同意を撤回する権利を有し,それによる不利益は決して生じないことを説明した.【結果】深呼吸介入時の唾液アミラーゼの値は,それぞれ安静時 45±21.3 KU/L,ストレス負荷時:83.2±33.3 KU/L,深呼吸時:40.7±16.3KU/L であった.深呼吸非介入時の唾液アミラーゼの値は,それぞれ安静時51.7±17.9 KU/L,ストレス負荷時:86.2±23.0 KU/L,深呼吸非介入時:69.8±33.2KU/Lであった.ストレス負荷時と深呼吸介入時には統計学的有意差(p<0.05)が認められたが,深呼吸非介入時には有意差が認められなかった.【考察】本研究の結果,唾液アミラーゼの値からは深呼吸がストレスを緩和する効果があることが示された.ストレス負荷時では,大脳皮質でストレスと認識された刺激により大脳辺縁系が不安,怒りなどの情動を引き起こし,視床下部へと興奮が伝わった結果,内分泌系や自律神経系に作用し交感神経を刺激したことが考えられる.その結果,交感神経系の指標とされるノルエピネフリンの増幅器として働く唾液アミラーゼの分泌が亢進されたことが考えられる.生理学的に,深呼吸をすると迷走神経が興奮して心拍数減少が認められており,副交感神経活動が優位となるといわれている.また,深呼吸時に吸息時間より呼息時間を長くすることで,副交感神経をより高めるという報告もみられた.このことから,深呼吸を行うことで副腎髄質のノルエピネフリン分泌と交感神経の興奮が抑制され,唾液アミラーゼの値は減少し,副交感神経が有意に働いたことでストレスを緩和したと考えられる.【理学療法学研究としての意義】理学療法領域での深呼吸の有用性に関しては,肺気腫や気管支喘息などの呼吸器疾患患者に対する症状改善が報告されている.また,平成19年の労働者健康状況調査では仕事上のストレスを感じている人が58%,すなわち2人に1人がストレスを感じていると報告されている.臨床で接する対象者や医療従事者も日常生活で様々なストレスを抱えていると考えられ,ストレスに対するコントロール法が必要とされている.今回の研究においては,深呼吸を理学療法に取り入れることで治療場面のみならず,予防医療の一環として有用である可能性が示された.
著者
坪木 和久 伊藤 耕介 山田 広幸 堀之内 武 篠田 太郎 高橋 暢宏 清水 慎吾 大東 忠保 南出 将志 辻野 智紀 山口 宗彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2021-07-05

台風は自然災害の最大要因であり、なかでも最強カテゴリーのスーパー台風は甚大な被害をもたらす。地球温暖化に伴い、日本本土へのスーパー台風の上陸が懸念されている。しかし台風強度の推定値と予測値の両方に大きな誤差があることが大きな問題となっている。その最大原因は台風が急速に発達する「急速強化」である。さらにそのとき眼の壁雲が二重となる構造がしばしばみられ、その力学的・熱力学的構造が未解明だからである。本研究課題では、スーパー台風が、なぜ、そしてどのように形成されるのか、それにおける急速強化と二重壁雲構造はどのような役割をしているのかを、航空機観測、地上観測、数値シミュレーションの三本柱で解明する。
著者
廣瀬 卓哉 竹林 崇 児玉 三彦 高橋 真須美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.609-616, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
19

急性期脳梗塞患者に,麻痺手の機能改善に合わせた様々な治療法を,段階的に移行および併用した上肢機能訓練を行った.発症初期より,麻痺手の随意性を積極的に引き出すことを目的に,電気刺激を併用した反復促通訓練,電気刺激併用下の促通反復療法,神経筋電気刺激療法を実施した.次に麻痺手の状況に合わせて,電気刺激や装具を併用した修正CI療法へと移行した.結果,麻痺手の機能改善と生活内使用頻度が向上した.加えて,介入終了から2ヵ月後の評価では,麻痺手機能がさらに改善した.本事例報告において,発症早期より行うエビデンスの示された複合的なアプローチは,急性期でも上肢機能を改善する可能性が示された.
著者
植木 純 神津 玲 大平 徹郎 桂 秀樹 黒澤 一 安藤 守秀 佐野 裕子 佐野 恵美香 石川 朗 高橋 仁美 北川 知佳 玉木 彰 関川 清一 吉川 雅則 津田 徹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.95-114, 2018-05-01 (Released:2018-09-20)
参考文献数
115
被引用文献数
10

呼吸リハビリテーションとは,呼吸器に関連した病気を持つ患者が,可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため,医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である.呼吸リハビリテーションは原則としてチーム医療であり,専門のヘルスケアプロフェッショナルすなわち,医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床工学技士,管理栄養士,歯科医師,歯科衛生士,医療ソーシャルワーカー,薬剤師,保健師,公認心理師,ケアマネージャー等の参加により,あるいは必要に応じて患者を支援する家族やボランティアも参加し行われるものである.また,呼吸リハビリテーションは病態に応じて維持期(生活期)から終末期まで,急性期,回復時,周術期や術後回復期も含むシームレスな介入である.介入に際しては,評価に基づきコンディショニングを併用した運動療法を中心として,ADLトレーニングを組み入れ,セルフマネジメント教育,栄養指導,心理社会的支援等を含む包括的な個別化プログラムを作成,実践する.達成目標や行動計画を医療者と協働しながら作成し,問題解決のスキルを高め,自信をつけることにより健康を増進・維持するための行動変容をもたらすよう支援する.継続への指導は再評価に基づき行い,身体活動の向上を重視する.呼吸リハビリテーションは息切れを軽減,健康関連QOLやADL,不安・抑うつを改善させ,入院回数・日数を減少させる等の有益な治療介入であり,適応のあるすべての呼吸器に関連した病気を持つ患者に実施される必要がある.