著者
今村 文彦 高橋 智幸 箕浦 幸治
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、地滑り津波の発生機構の解明および解析手法の確立を目的とし、非地震性津波の発生する可能性のある地域を評価する手法を提案することを目指している。今年は、現地調査、水理実験、数値モデルの開発を行ったので、異化に実績を報告する。まず、現地調査の対象地域は地中海沿岸であり、ここでは非地震性津波の多くがエーゲ海を中心とし歴史的なイベントが多い。昨年の1999年トルコ・イズミットおよびマーマラ海での調査に引き続き、トルコ共和国エーゲ海沿岸での調査を実施した。ダラマンにおいては、津波の堆積物を発見し、3層構造、各層の中にも2から3の異なる構造を持つことが分かった。これは、地震による液状化、津波の数波の来襲を示唆している。その他の地域では、津波による堆積物を確認することは出来なかった。次に地滑り津波発生モデルの基礎検討として、地滑りが流下し水表面に突入し、津波を発生する状況の水理実験も実施し、既存のモデルとの比較を継続して実施した。斜面角度、底面粗度、乾湿状態などを変化させ、土石流の流下状況と津波の発生過程を観測し、モデル化を行った。実験で明らかになった点として、押し波に続く引き波の存在があり、これは土砂の先端波形勾配に最も関係していることが分かった。さらに2層流のモデルの適用性を検討し、抵抗のモデル化(底面摩擦、拡散項、界面抵抗)をさらに改良した。最後に移動床の水理実験も同時に実施しており、陸上部に堆積する土砂のトラップ条件と水理量との比較検討を行った。津波の遡上後、引き波で砂が戻る前に、トラップ装置を落下させ、砂の移動がないように工夫し、陸上部において、詳細に体積量を測定することが出来た。流速の積分値と堆積量がもっとも関係あることが分かった。
著者
児玉 哲郎 松本 武夫 高橋 健郎 西山 祥行 西村 光世 山下 真一 石塚 真示 林辺 晃 西脇 裕 阿部 薫
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.507-516, 1992-08-20
被引用文献数
7

過去19年間の杯細胞型肺腺癌切除例29例にっいて, 臨床病理学的に検討した.男性12例, 女性17例で, 発生年令は42才から78才, 平均63.8才であった.自覚症状発見は10例で, 喫煙歴は不明1例を除いて, 喫煙者14例, 非喫煙者14例であった.胸部X線写真及び肉眼所見により, 結節型19例と, びまん型10例とに分類された.原発部位では下葉原発が19例(66%)と多く, ことに右下葉原発は15例(52%)であった.手術は全摘1例, 二葉切除5例, 一葉切除22例, 区域切除1例であった.術後病理病期は, I期14例, IV期15例で, IV期はすべて肺内転移例で, びまん型では10例中9例がIV期であった.多発癌2例を除いた杯細胞型腺癌切除例27例の予後をみると, びまん型9例と結節型18例の5年生存率は各々85.2%と26.7%で, 有意差があった(p<0.01).細胞亜型別にはpure type17例とmixed type10例の5年生存率は各々65.9%と30.0%であったが, 有意差はなかった.杯細胞型腺癌27例と性, 年齢, 病期を一致させたクララ細胞型或いは, 気管支表上皮型腺癌切除例81例の5年生存率は各々57.2%と40.5%で, 杯細胞型腺癌の方が予後がやや良好であったが, 有意差はなかった.杯細胞型腺癌は特異な進展形式と細胞性格を示す腺癌の一亜型である.
著者
西脇 志朗 高橋 順一 小平 紘平
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi (ISSN:18821022)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1209, pp.435-438, 1996-05-01
被引用文献数
2 4

Sr_<0.2>Ba_<0.8>Nb_2O_6 ceramics with 1 mol% V_2O_5 addition were fabricated by liquid phase sintering. A com-pact sintered at 1300℃ for 100h had the spontaneous polarization of 6.1×10^<-2>C/m^2 at 50℃ The sharp permittivity peak was observed at 293℃ corresponding to the Curie temperature. The crystal structure had the orthorhombic symmetry with a_0= 1.7654, b_0= 1.7662 and c_0=0.7961 nm at room temperature. The orthorhombic-tetragonal phase transition was found at about 120℃.
著者
高橋 幸雄 牧本 直樹 滝根 哲哉 高橋 敬隆 宮沢 政清 大野 勝久
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

情報通信ネットワークの新しい性能評価法に関して、基本的な研究および応用的な研究を行った。研究自体は個人あるいは少人数のグループベースで行い、月1回の月例会と年1回のシンポジウムの場で情報交換と研究成果の検討を行った。情報通信ネットワークは急速に変容しており、研究の内容も当初予定していたものとは多少違う方向で行わざるを得なかった。研究計画であげたテーマは次の4つであり、それぞれの研究の進展状況は以下の通りである。1. 入力過程の研究 長期依存性(long-range dependence)のある入力過程の研究と複数の入力がある待ち行列の解析が中心であった。そのなかで特筆すべきひとつの結果は、バッファの溢れ率に着目した場合、長期依存的であるかどうかよりも、ピーク時の入力過程の挙動が本質的であることが示されたことである。2. 極限的状況の研究 マルコフ性あるいは大偏差値理論を用いて、客数分布の裾が幾何的に減少することがかなり広い範囲のケースについて証明された。3. 混雑伝播の研究 ネットワークの多様性のため、研究が進展しなかった。4. コントロールの研究 ATMネットワークを中心に多くの研究がなされ、いくつもの新しい考え方が提案された。とくに移動体通信に関するものや料金によるコントロールの研究が始まり、新たな研究の芽が生まれた。
著者
加藤 義春 高橋 正雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.841-846, 1976-12-10
被引用文献数
4

(7.5〜50)%のンルトニウムを含むウラン-プルトニウム混合酸化物中のウラン及びプルトニウムを電位差滴定法を用いて逐次定量した.ウランとプルトニウムの混合酸化物を硝酸,フッ化水素酸に溶解し,硫酸白煙処理を行う.クロム(II)溶液を加えてウランとプルトニウムをそれぞれウラン(IV),プルトニウム(III)に還元した後,塩化カリウム-塩酸緩衝液5mlを加え水で30mlに希釈する.水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを1.0〜1.5に調節した後,白金-飽和カロメル参照電極を浸し,溶液に残っているクロム(II)をクロム(III)に空気酸化する.窒素を通気して溶存酸素を除き,更に窒素通気を続けながら0.1M硫酸セリウム(IV)標準溶液でウラン(IV)を滴定する.ウランの終点に達したら0.02M硫酸セリウム(IV)標準溶液でプルトニウム(III)を滴定する.硫酸白煙処理後,1試料の滴定に要する時間は約30分である.
著者
高橋 哲雄 今田 高峰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.98, no.73, pp.9-14, 1998-05-22

HTV(H-II Transefer Vehicle)は平成13年度11月に技術実証機の打ち上げ、その後運用機が毎年1回から2回予定されている、宇宙ステーションへ物資を補給することを目的とした軌道間輸送機である。HTVはH-IIA3トン級ロケット2段式によって打ち上げられ、宇宙ステーションにランデブーし、宇宙ステーションのロボットアームによって捕獲され、係留される。係留中に補給物資・宇宙ステーションの不要物資を積み降ろしを行い、宇宙ステーションから離脱する。ここでは、HTVのミッション及び安全上特に重要である、ETS-VIIをベースに設計された誘導制御システムについて紹介する。
著者
高橋 勲 蘇 貴家 近藤 正示
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

フライホイールをバッテリーに代るエネルギー貯蔵要素とした高性能長寿命無停電電源を試作、開発することを目的とする。主な成果は、1.10kw1分のシステムについては本予算以外の物で、試作は完了しているがまだ、真空システムに問題があり実験には入っていない。2.真空の問題についてはチタンから高性能のジルコニウムゲッタに変更し、3ヶ月ほど運転試験を行なったがOリング、容器(鋳物製)よりのリークが確認され現在ステンレス等用いて対策中である。3.IGBTを使用し16kHzのスイッチングで無騒音化し(従来品の5dB減)、かつソフトスイッチングで損失を減らしフアンレス、長寿命化を図った。その結果、フィン温度を13℃下げることができた。4.寿命が短く大型の電解コンテンサを除去するため、電解コンテンサレスインバータを採用した。コンテンサ容量は停電時からの立ち上げでも200μF以内で可能でフイルムコンテンサの使用が可能となった。5.電流追従速度の改善の結果、整流器負荷で出力電圧歪を1%にでき、かつ中性点電圧制御の結果トランスレス化が可能となった。6.上記の手法を用い入力力率99%以上が1/5負荷以上の領域で達成できた。7.寿命に関係のあるフォトカプラをパルストランスと放電回路を併用したもので取り換え全システム15年以上の長寿命化を達成できた。8.効率94%が目的(市販品90%以下)で、スイッチング損失回収回路、アモルファスリアクトルなど採用したが93%が限度であった。9.フライホイール電動発電機に直接トルク制御を用い回転センサレス化を図り、真空容器の設計を簡単にし真空度を高められる構造にできた。などの成果が得られた。試作予算、真空系に問題はあり主に5kWのシステムで実験を行なったがほぼ所定の目標を達成できた。
著者
高橋 龍一
出版者
弘前大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

以下の2つの成果が得られた。それぞれについて以下で記述する。1.重力レンズを受けた宇宙背景輻射の疑似マップ(温度&偏光ゆらぎ)の作成まず、重力レンズを受けていない宇宙背景輻射の2次元マップを用意する。面積は4πの正方形(全天と同じ)、温度と偏光揺らぎの2次元マップである。宇宙背景輻射の揺らぎのパワースペクトルからガウス揺らぎを仮定し作成した。次に、N体シミュレーションを用いて、宇宙の大規模構造を作成した。最終散乱面から我々に届くまでの光の経路を、非一様宇宙を伝播する光の重力レンズシミュレーションを使って計算した。そこから10度×10度の領域を取ってきて、重力レンズを受けた宇宙背景輻射のマップ(温度&偏光ゆらぎ)を作成した。揺らぎのパワースペクトルを計算し、理論モデルと比較し、完全に一致していることを確かめた。現在、2次元マップから手前の構造形成の情報を引き出す計算も始めている。2.宇宙背景輻射の温度揺らぎに対する重力レンズの影響の再計算ダークマター(暗黒物質)による宇宙の大規模構造の揺らぎのパワースペクトルを最新のN体シミュレーションを用いて計算した。その結果、計算の分解能が上がった影響で、これまで考えられていたよりも小スケールで揺らぎが大きくなることを見出した。この結果を用いて温度揺らぎのパワースペクトルを計算すると、小スケール(約1分角以下)で10%程度これまでの計算よりパワーが上がることが示された。
著者
高橋 吾郎
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

レセプト(診療報酬明細書)データベースを利用し、春季アレルギー性鼻炎患者と定義された患者について、その受療動向と処方された薬剤パターンについて検討を行った。レセプト母集団のうち、小児の約15%、成人の約7%が医療機関を受診していた。患者の約50%が耳鼻科を受診していた。患者の2/3は、1シーズンに1. 2回しか受診しない。また、薬物の中では、第2世代抗ヒスタミン薬の処方がもっとも多かった。
著者
古川 照美 西沢 義子 中路 重之 木田 和幸 梅田 孝 高橋 一平 高橋 一平
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

子どもの生活環境を考えた場合、家庭での生活習慣は重要である。本研究では、中学生時期の親子に対しての生活習慣改善を促す介入プログラムの検討を目的に、親子関係と子どもの生活習慣の関連、及び親子の身体特性の関連について検討した。その結果、親子で身体特性及び生活習慣の関連が認められ、さらに親子関係が子どもの生活習慣に影響を与えていることが示唆された。子どもの生活習慣改善のためには、親子関係を見据えながら、親をも含めた支援が必要である。
著者
長友 康行 高橋 正郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

グラスマン多様体への調和写像の線型方程式による特徴づけを利用して、対称空間上に等径関数を構成し、さらにラドン変換により、それら等径関数が球面上の等径関数に変換されることを示した。また、複素射影空間から複素射影空間への定エネルギー密度関数をもつ調和写像のモジュライ空間を線形代数的データを用いて記述した。最後に、エルミート対称空間から複素グラスマン多様体への正則写像に関しても同様の結果を得ることができた。
著者
高橋 公明 池内 敏 ロビンソン ケネス 橋本 雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

大陸沿岸・半島部・島嶼部で構成される東アジアでは、海を舞台とした人間の営みが大きな意味を持つ。本研究では、東アジアの国際関係史、文化交流史および海事史などで扱われている諸課題を相互に連関させ、かつそれらを基礎づけるとものとして「海域史」を位置づける。その立場から既知・未知を問わずに資史料を発掘し、新たな方法論を提示して、これまで見えてこなかった局面に光をあてた。こうした「海域史」の立場から資史料を見たとき、常に大きな困難となるのは資史料の性格である。第1に、中心(国家)から周縁(地域)を見る立場から作成された資史料が多いこと、第2に、「嘘」や「誇張」が含まれた記述を解釈しなければならないこと、第3に、文学作品や舞台表現など、そもそも「事実」であることを保証していないものも、資史料として活用しなければならないことなどである。以上の認識に基づいて、(1)古地図は何を語っているのか、(2)文学表現のなかの言説と「事実」のあいだ、(3)偽使の虚実を超えての3点の課題を設定し、これからの海域史研究における史資料活用の可能性を広げるための検討をおこなった。その結果、研究代表者・研究分担者だけでなく、研究協力者からも多様な成果が提示された。それらの成果は、国際的な学術誌を含め、論文・著書として発表され、最新の成果に関しては研究報告書に結実した。
著者
佐藤 毅彦 児島 紘 高橋 庸哉 前田 健悟
出版者
熊本大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本研究は、IT世紀の理科学習ツール「インターネット天文台・気象台」を開発・設置、教育実践に活用し効果を挙げてゆくことを目標としている。本年度は、熊本大学にインターネット天文台を設置、首都圏に既存の二基と合わせて教育利用を推進した。互いに近接した既存の二基と地理的に離れた後続天文台が渇望され、熊本大学インターネット天文台はまさにそれに応えるものとなった。また、北日本に天体ライブ映像を配信するためのサーバーを、北海道教育大学の札幌校に設置した。熊本大学教育学部附属中一年の理科で、インターネット天文台を利用した授業を行った(平成14年12月)。屋上で天体望遠鏡を使い実際に太陽面を観察した後、インターネット天文台を操作しての太陽面観察とした。インターネット経由の天体観察自体、子供連には初めての経験であり、それは印象的なものであった。黒点の移動を調べるための前日・前々日を含めインターネット天文台をフルに活用し、この実践例から、「各地のインターネット天文台を相互利用することで、天候条件に左右されがちな天体観察の授業を、計画通りに進めることができる」という利点があらためて確認された。星が月に隠れる「星食」現象を捉え、教育学部学生対象に観測会を実施、熊本と関東とで現象に30分もの時間差があることを体験してもらった(熊本と首都圏のインターネット天文台を併用)。教員志望学生のこうした体験は、将来の小中高における教育を豊かにしてゆく大切な要素である。インターネット気象台と、「定点2000」観測点(ライブカメラ含む)、アメダス観測点などインターネット上の気集情報を組み合わせた教材を用い授業実践を行った(平成15年1月、学部生卒業研究の一環)。「青森は雪だった」「高知の天気は予想と違った」など、子供達が主体的に取り組みながら各地の天気の違いを学ぶ様子が見られ、一定の成果を挙げることができた。特定領域内においては、複数の研究と連携が動き始めたところである。その強化は、今後の発展課題である。