著者
伊藤 謙 宇都宮 聡 小原 正顕 塚腰 実 渡辺 克典 福田 舞子 廣川 和花 髙橋 京子 上田 貴洋 橋爪 節也 江口 太郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.157-167, 2015-03

日本では江戸時代、「奇石」趣味が、本草学者だけでなく民間にも広く浸透した。これは、特徴的な形態や性質を有する石についての興味の総称といえ、地質・鉱物・古生物学的な側面だけでなく、医薬・芸術の側面をも含む、多岐にわたる分野が融合したものであった。また木内石亭、木村蒹葭堂および平賀源内に代表される民間の蒐集家を中心に、奇石について活発に研究が行われた。しかし、明治期の西洋地質学導入以降、和田維四郎に代表される職業研究者たちによって奇石趣味は前近代的なものとして否定され、石の有する地質・古生物・鉱物学的な側面のみが、研究対象にされるようになった。職業研究者としての古生物学者たちにより、国内で産出する化石の研究が開始されて以降、現在にいたるまで、日本の地質学・古生物学史については、比較的多くの資料が編纂されているが、一般市民への地質学や古生物学的知識の普及度合いや民間研究者の活動についての史学的考察はほぼ皆無であり、検討の余地は大きい。さらに、地質学・古生物学的資料は、耐久性が他の歴史資料と比べてきわめて高く、蒐集当時の標本を現在においても直接再検討することができる貴重な手がかりとなり得る。本研究では、適塾の卒業生をも輩出した医家の家系であり、医業の傍ら、在野の知識人としても活躍した梅谷亨が青年期に蒐集した地質標本に着目した。これらの標本は、化石および岩石で構成されているが、今回は化石について検討を行った。古生物学の専門家による詳細な鑑定の結果、各化石標本が同定され、産地が推定された。その中には古生物学史上重要な産地として知られる地域由来のものが見出された。特に、pravitoceras sigmoidale Yabe, 1902(プラビトセラス)は、矢部長克によって記載された、本邦のみから産出する異常巻きアンモナイトであり、本種である可能性が高い化石標本が梅谷亨標本群に含まれていること、また記録されていた採集年が、本種の記載年の僅か3年後であることは注目に値する。これは、当時の日本の民間人に近代古生物学の知識が普及していた可能性を強く示唆するものといえよう。
著者
向井 茂 金銅 誠之 森 重文 中山 昇 井出 学 大橋 久範 髙木 寛通
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

Enriques曲面は古典的で非常に興味深い代数曲面である.ルート不変量にE7型格子をもつものを詳しく調べ、モジュラー不変量を用いて標準的楕円fibrationの定義方程式を書き下した.大橋久範と共同で,Enriques曲面にMathieu 型の半シンプレクティック作用をもつ有限群を分類し,Nikulinと金銅による有限自己同型Enriques曲面の分類の発展として,自己同型群が概アーベルなEnriques曲面を分類した.どの研究もEnriques曲面のルート不変量の厳密な定式化が成功の鍵である。高次数偏極K3曲面については,種数16のK3曲面のモジュライの単有理性を証明した.
著者
戸髙 義一 戸田 健一 堀井 基弘 梅本 実
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.530-535, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
11

The effect of lattice defects on the tribological behavior for low friction coefficient under lubricant was investigated in the nanostructured steels produced by heavy plastic deformation processes. In the surface-nanostructured SUJ2 bearing steel, the stable tribological behavior with low friction coefficient was observed in the ball-on-disk tests under PAO (Poly-α-Olefin 17) - oil or ester - oil, in comparison with the non-deformed steel. This phenomenon was enhanced by using the lubricant with polarity (ester - oil). In addition, the similar phenomenon was observed in the ULC (ultra-low carbon) steel with high-density of lattice defects (grain boundary, dislocation and so on). This reason seems that the molecules of lubricant interacted strongly with the nanostructured surface due to the deviation of electrons (polarization) at the region with high-density of lattice defects.
著者
髙田 琢弘 湯川 進太郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.86.14027, (Released:2015-09-15)
参考文献数
38
被引用文献数
2

In this experimental study, the effects of cognitive load on reckless gambling were investigated among Japanese undergraduates. Changes in the participants’ emotional states and perceived luck while gambling were also investigated. Participants (23 males and 21 females) performed the Game of Dice Task (GDT) consisting of 18 trials; their emotional states and perceived luck were assessed before the first trial and after subsequent trial. Participants in the experimental group were asked to memorize words while playing the GDT, whereas those in the control group were not required to do so. Results indicate that the experimental group gambled more recklessly than the control group while performing the GDT. Furthermore, participants in the experimental group experienced more positive emotions and better perceived luck than the control group. These results suggest that individuals with cognitive load while gambling are likely to interpret their emotional states and perceived luck more favorably and to overestimate the probability of winning. Therefore, these individuals are prone to gambling recklessly.
著者
髙木 浩明
出版者
清風高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

○研究目的古活字版の研究は、川瀬一馬の『古活字版之研究』(初版 : 安田文庫、1937年。増補版 : A・B・A・J、1967年)において総合的かつ網羅的な調査がなされている。同書は古活字版の研究にとって必読の文献であるが、川瀬氏の研究以後、新たに見出された伝本や所蔵先が変わった伝本、分類自体を見直さなければならないものも多く存在する。古活字版の悉皆調査を通して川瀬氏の調査研究結果を再検討すること、さらには、古活字版がいかなる人的な環境、ネットワークのもとに生み出されたものかをより多くの資料調査を通して明らかにして行くこと、将来の古活字版データーベース構築へ向けての礎とすることを目的とする。○研究方法本研究では、宮内庁書陵部に所蔵される古活字版(予め目録から抽出した130点)を対象に、体裁・表紙・装釘・題簽・内題・尾題・本文・匡郭・版心・丁数・刊記・印記・備考(識語や書き入れの有無など)の13項目について原本に当たり、一点一点丁寧に調査した。○研究成果調査を予定していた古活字版のうち、修補の必要があって原本での閲覧ができなかったもの等があったものの、121点の古活字版の調査を行い、これまでの調査分と合わせて971点のデータの蓄積ができた。今回の調査での一番の収穫は、川瀬一馬の『古活字版之研究』に著録されていない以下の古活字版を発掘できたことである。医経小学(558-24)、活幼全書(558-58)、黄帝内経素問(403-110)小学集説(国-159)、素問入式運気論奥(403-86)、年代紀略(谷-10)は全くこれまで所在すら知られていなかったもので、元亨釈書(556-106)、左大将家六百番歌合(155-195)、北渓先生性理字義(国-195)は新たに異なる版種を見出すことができたものである。
著者
髙井 啓介
出版者
リトン
雑誌
死生学年報
巻号頁・発行日
pp.89-104, 2015
著者
髙橋 由美子
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.15-23, 2014 (Released:2015-02-26)
参考文献数
3

新潟県中越地震により被害を受けた山内写真館の写真資料群が十日町市に寄託された.これらの写真資料を後世に伝え,活用できるようにするために,十日町市と市民ボランティアが協働して整理し,記録化する活動を始めた.具体的には,写真を公開しながら,個々の写真に関する市民の記憶や体験を収集し,撮影された内容を解読して記録化し,写真データベースを作成する作業である.これらの情報に客観的な検証を加えていくならば,歴史的・文化的価値が高まり,学術的な利用にも応えられるようになるだろう.私たちはこの取り組みを,十日町市における「地域映像アーカイブ構築の始点」と位置付けるとともに,市民の心の拠り所となるアーカイブとして育んでいくことを目指している.
著者
平田 令子 大塚 温子 伊藤 哲 髙木 正博
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.1-5, 2014
被引用文献数
5

スギ挿し木コンテナ苗の植栽後2年間の地上部と地下部の成長を裸苗と比較した。植栽時のコンテナ苗の苗高と根量は裸苗よりも小さかった。2生育期間の伸長成長量は苗種間で差はなく, 結果として, コンテナ苗の苗高は裸苗よりも低いままであった。また, 植栽後の根量の増加もコンテナ苗の方が少なく, コンテナ苗の優位性は確認できなかった。T/R比 (地上部/根乾重比) は両苗種とも植栽後に低下したことから, 両苗種ともにプランティング・ショックによる水ストレスを受けたと考えられた。ただし, コンテナ苗のT/R比は裸苗より早く増加したことから, コンテナ苗の方が水ストレスからの回復が早いと推察された。本調査からは, コンテナ苗が水ストレスから早く回復する利点を持つと推察されたが, それは, 裸苗の苗高を上回るほどの伸長成長量にはつながらなかったことが示された。現時点では, 下刈り回数の省略に対して過度の期待を持ってコンテナ苗を導入することは危険であると考えられた。
著者
菊池 慶之 髙岡 英生 谷 和也 林 述斌
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.117-130, 2012-09-28 (Released:2012-09-28)
参考文献数
28

上海市においては,住宅制度改革が本格化した1998年以降,民間ディベロッパーの供給する居住用商品房の割合が急速に増加してきた.しかし,居住用商品房の価格は,上海市の平均世帯年収の25倍にも達しており,平均的な中流階級が居住用商品房を購入することは簡単ではない.そこで本稿では,居住用商品房購入者がどのようなプロセスを経て住宅の購入に至ったのかを明らかにすることにより,居住用商品房のアフォーダビリティを検討する.調査手法として,最初に上海市における平均世帯年収と住宅販売価格の推移を検討した上で,上海市の老公房と居住用商品房の居住者に対するアンケート調査を実施し,居住用商品房の購入価格と平均世帯年収の関係,過去の居住履歴,資金調達状況など,実際の居住用商品房購入プロセスを考察した.検討の結果,中高収入世帯の居住用商品房購入意欲は非常に高いものの,相対的な価格の高さと住宅金融の不足により,一次取得住宅としての購入は困難であることが明らかになった.また,既購入世帯においては購入以前から何らかの不動産を所有している世帯の割合が高く,現有資産の有無が居住用商品房のアフォーダビリティに大きく影響していることが示唆された.
著者
髙坂 康雅
出版者
Japan Society of Developmental Psychology
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.284-294, 2013

本研究の目的は,"恋人を欲しいと思わない"青年(恋愛不要群)がもつ"恋人を欲しいと思わない"理由(恋愛不要理由)を分析し,その理由によって恋愛不要群を分類し,さらに,恋愛不要理由による分類によって自我発達の違いを検討することであった。大学生1532名を対象に,現在の恋愛状況を尋ねたところ,307名が恋人を欲しいと思っていなかった。次に,恋愛不要理由項目45項目について因子分析を行ったところ,「恋愛による負担の回避」,「恋愛に対する自信のなさ」,「充実した現実生活」,「恋愛の意義のわからなさ」,「過去の恋愛のひきずり」,「楽観的恋愛予期」の6因子が抽出された。さらに,恋愛不要理由6得点によるクラスター分析を行ったところ,恋愛不要群は恋愛拒否群,理由なし群,ひきずり群,自信なし群,楽観予期群に分類された。5つの群について自我発達を比較したところ,恋愛拒否群や自信なし群は自我発達の程度が低く,楽観予期群は自我発達の程度が高いことが明らかとなった。
著者
金髙 太輝
出版者
東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学研究系社会文化環境学専攻
巻号頁・発行日
2012-03-22

報告番号: ; 学位授与年月日: 2012-03-22 ; 学位の種別: 修士 ; 学位の種類: 修士(環境学) ; 学位記番号: 修創域第4448号 ; 研究科・専攻: 新領域創成科学研究科環境学研究系社会文化環境学専攻
著者
髙橋 利昌 浅野 彰洋 大内 泰志 川崎 真治 武村 雅之 神田 克久 宇佐美 龍夫
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.193-217, 2008-02-15 (Released:2013-08-20)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

The major earthquakes of M=7 class, so-called Geiyo earthquake, have occurred in the subducted slab of the Philippine Sea plate under Aki-nada and Iyo-nada sea. The upper surface of the Philippine Sea plate is located in the depth from 40-45km in this region. Five Geiyo earthquakes can be found in 1649, 1686, 1857, 1905, and 2001 since 17th century. Magnitudes M of the older 4 events were larger than 7, while that of the last one is 6.7 in JMA (Japan Meteorological Agency) scale. Magnitudes and locations of focal regions of them were redetermined from seismic intensity data by the method of an attenuation curve fitting and of the seismic intensity inversion. Optimal magnitudes of old events were obtained between 6.7 to 6.9. This results show the old 4 events have almost the same magnitude as the 2001 event. One of the possible reasons why the former values were overestimated is that the empirical relation between magnitude and isoseismal area from inland shallow earthquakes was applied to determine the magnitude of the historical intraslab events such as Geiyo earthquakes.
著者
髙橋 秀実
出版者
新潮社
雑誌
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.66-69, 2014-04
著者
髙木 亨 田村 健太郎 大塚 隆弘 佐藤 竜也 佐藤 亮太 清水 康志 高橋 琢 吉池 隆 鳥海 真弘 浜田 大介
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100235, 2012 (Released:2013-03-08)

東日本大震災を起因とする福島第一原子力発電所の事故は、福島県を中心に甚大なる放射性物質による汚染被害をあたえ、今なお多くの住民に避難を強いている。 今回の原子力災害では、県内をはじめ各地域で、避難「する」「しない」といった住民の「分断」が見られる。これは、住民間に対立を生み、地域コミュニティの崩壊を招く恐れがある。本研究では、このような分断を発生させる要因について、一つの集落での住民の避難行動を分析することによって明らかにし、「分断」の予防について検討することを大きな目的としている。今回の報告では、以前から交流のある福島県いわき市川前町高部地区を事例に、住民の原発事故発生直後の「避難する・しない」の判断をさせた要因について明らかにする。 高部地区は福島第一原子力発電所から半径30km圏のすぐ外側、31~32kmに位置しており、事故発生直後からその影響が心配された地区であった。事故発生当時はどの程度の放射能汚染があるかははっきりと把握できなかった。このため事故発生直後、高部地区外へ避難した住民と避難しなかった住民とに二分される結果となった。表1は事故発生直後に避難した住民への聞き取り調査結果である。避難先は、福島第一原子力発電所から遠いところであり、遠方にいる親戚や子息を頼って避難している。避難理由は様々であり、親族の病気や娘の避難の呼びかけに応じて、というものである。しかし、避難先での暮らしが窮屈なこともあり、早々に避難先から高部地区へ戻って来ている。 一方、避難しなかった住民は、住民同士が声を掛け合い、15日あたりから集会所に集まって過ごしていた。17日には屋内待避指示の関係で福岡県警の警察官が集会所に常駐、放射線の観測機器等を持っていたことから、住民に安心感を与える事となる。避難しなかった理由は、仕事の関係、家畜の飼育などの理由であった。 「避難した・しなかった」は、住民間にとっても微妙な問題である。個々の住民が抱える状況によってその行動に差異が生じている。このため住民間のコンフリクトを引き起こし、地域コミュニティの崩壊につながる可能性があった。一方で、一時避難から戻って来た住民を「受容」するなど、コミュニティ維持への「知恵」ともいうべきものがみられた。
著者
髙橋 陽子
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.26-31, 2007-03