著者
南 庄一郎 髙 登樹恵
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.701-708, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
22

本研究では児童思春期精神科医療に従事する作業療法士にフォーカス・グループ・インタビューを行い,テーマ分析によって児童思春期精神科医療における作業療法士の役割を明らかにした.本研究の結果,子どもとの関わりに作業(遊び)を活かすことは作業療法士の専門性であり,子どもの自己肯定感と自己効力感を向上させ,生きる力を育むことが作業療法士の役割と考えられた.一方,現行の診療報酬に作業療法士が明記されておらず収益に繋がらないことなどが課題として挙げられた.こうした現状を打開するべく,作業療法士同士のネットワークを構築して研鑽を図ることや児童思春期精神科作業療法の効果研究などを積み重ねていく必要がある.
著者
片瀬 菜津子 鳥居 拓馬 日髙 昇平
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2J4GS105, 2023 (Released:2023-07-10)

物理法則発見の情報処理過程、特にその質的なモデルの変容過程を明らかにすることができれば、今後の科学の発展速度の向上が期待できる。先行研究として、認知科学研究として類推を構造的に捉える試みや、計算機科学研究として機械学習を用いた物理法則の発見の試みがある。しかし、前者は数値的データに基づかず、概念的な枠組みの記述に留まっており、後者は予測誤差に基づくモデリングを提案しているが、質的な仮説や理論の変容を説明していない。 古典的な天体運動の理論の成立過程では、天動説から地動説への質的な理論の変容が知られる。本研究ではこの歴史的な理論構築過程の説明を目的として、数理的モデルの構築を試みた。コペルニクスの地動説は、その当時の標準モデルであるプトレマイオスの天動説より予測誤差が大きいことが知られている。それにも関わらず地動説が提案されたという事実は、予測誤差以外に地動説の良さを評価する基準があることを示唆する。本研究では天体運動データを分析し、モデル選択の基準として、全体的な予測誤差以外に、逆行運動など顕著な例外的現象に対する予測誤差を考慮することで地動説への移行が説明できることを示す。
著者
大髙 泉
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.13-24, 2000-07-31 (Released:2022-06-30)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1

科学教育における近代科学の基本的自然観の再生産の問題はこれまで全くといってよいほど扱われてこなかった。しかし近代科学を生み出しえなかった非西欧に属するわが国の理科教育の特質を理解するうえでも,また理科の学習を進めるうえでも,近代科学の基本的自然観の再生産という問題は,看過できない重要な問題であることを指摘した。そしてこの問題を研究する基本的視点として,理科教育史的視点,理科教育の目的論的視点,及び比較理科教育学的視点をも含めた包括的な理科教育論的視点の3つを提案した。さらに, ドイツの著名な実践家であるヴァーゲンシャインによる「落下の法則」の範例的教授過程を事例として取り上げ,「自然の数学化可能性」観の伝達の意味と方法を分析し,近代科学の誕生を見た西欧の科学教育論における近代科学の基本的自然観の再生産の様相の一端を解明した。
著者
小野 裕美 髙橋 誠一 上田 華穂 徳井 沙帆 千賀 大輝 猿谷 倫史 安齋 勝人 園田 健一郎 安藤 陽児
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.505-512, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
8

目的:病院派遣型救急ワークステーションの病院実習における実習指導体制の構築を図るため教育プログラムを改訂した。方法:病院実習の教育プログラム改訂前後において,実習担当者別に救急隊員の病院実習教育項目の実施数の変化や内容,また医師同乗出動の動画を使用した振り返りの有用性を検討した。結果:教育プログラム改訂後,担当者別では救命ICU看護師,認定看護師やフライトナースなど専門性の高い看護師の教育項目実施数に加えて,総実施数も増加した。医師同乗出動における動画を使用した振り返りでは,医師は救急隊の患者状態の評価や情報把握などについて高く評価していた。結論:教育プログラムの改訂によって,教育項目の総実施数の増加だけでなく,救急隊員の希望した救命ICUでの実施数の増加,また,医師同乗出動における動画を使用した振り返りにより,救急隊員の客観的な活動の把握が可能となり有用性が示唆された。
著者
岩本 航平 萩原 崇 髙川 晃敏 堀江 淳 村田 伸
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.51-56, 2023 (Released:2023-11-10)
参考文献数
34

本研究の目的は,要介護認定高齢者における6 分間歩行距離の縦断的変化と身体機能との関連について検討することとした。対象者は,通所リハビリテーションを利用する要介護認定高齢者93名(年齢:81. 8±6. 5歳,男性:33名,女性:60名)とした。6 分間歩行距離がベースラインから6 か月間で17. 8m 以上改善した者を改善群(52名),それ未満の者を非改善群(41名)とした。群(改善群と非改善群)と時期(ベースラインと6 か月後)を2 要因とした反復測定二元配置分散分析を行った。その結果,大腿四頭筋筋力,歩行速度,TUG に交互作用を認め,すべての項目で改善群のみ6 か月後に有意な改善を認めた。また,多くの項目で中程度の効果量を示した。これらの結果から,要介護認定高齢者における6 分間歩行距離の改善には,大腿四頭筋筋力や歩行速度,動的バランス能力といった複合的な身体機能の向上が関連することが示された。
著者
岡田 裕樹 日詰 正文 内山 聡至 髙橋 理恵
出版者
独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
雑誌
国立のぞみの園紀要 (ISSN:24350494)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-21, 2022 (Released:2022-09-09)
参考文献数
5

本研究は,国立のぞみの園が令和2(2020)年度の研究において開発した強度行動障害PDCA支援パッケージを実際の支援現場で試行し,効果や課題を収集することを目的として,強度行動障害者支援に取り組んでいる事業所を対象とした調査等を行った.調査対象は,一次調査として14カ所,二次調査として国立のぞみの園が実施した「実践検討・意見交換会」に参加した29カ所とした.結果として,「強度行動障害の状態にある者の全体的な理解と情報の整理」,「効率的な記録と分析」,「支援計画の作成と見直し」等に効果があることがわかった.強度行動障害PDCA支援パッケージを活用することで,行動の背景要因を見つけることや支援の記録と分析を迅速に行うこと等の強度行動障害者支援の課題を改善することが期待できると考えられた.
著者
髙泉 佳苗
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.210-218, 2023-10-01 (Released:2023-11-23)
参考文献数
27

【目的】食生活リテラシーと食環境の認知(食品へのアクセス,情報へのアクセス)および食行動との因果関係を明らかにすることを目的とした。【方法】社会調査会社に登録している30~59歳のモニターから9,030人を層化抽出し,web調査による縦断研究を実施した。ベースライン調査は2018年10月に実施し,追跡調査は2019年10月に実施した。ベースライン調査と追跡調査を回答した解析対象者は2,331人(男性1,200人,女性1,131人)であった。食生活リテラシー得点,食品へのアクセス得点,情報へのアクセス得点,食行動得点の変化量(2019年-2018年)を算出し,因果モデルを作成してパス解析を行った。【結果】男性の食生活リテラシー得点は2018年から2019年で有意に減少していた(p=0.027)。食生活リテラシー得点の変化量は,食品へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.01)と情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.14,p<0.001),食行動得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.05)に影響していた。女性の食生活リテラシー得点は有意な経時変化を認めず(p=0.47),食生活リテラシー得点の変化量は,情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.10,p<0.01)と食行動得点の変化量(パス係数=0.13,p<0.001)に影響していた。【結論】食生活リテラシー得点の向上が食環境の認知得点と食行動得点の向上に及ぼす影響度は強くないが,食生活リテラシーは食環境の認知および食行動の促進要因の一つであることが示された。
著者
岩下 具美 前田 保瑛 髙橋 詩乃 岡田 まゆみ 三山 浩 島田 遼太郎 栁谷 信之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.24-30, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
16

背景:救急救命士が行う医行為の質を担保する体制として病院実習(実習)がある。 救急隊の生涯教育にかかわる長野赤十字病院救命救急センター(以下,センターと略す)の取り組みを報告する。改変前:対象はセンターを管内とする消防本部(本部)のみであった。実習は1日当たり1名を受け入れ,主な項目は静脈路確保であった。救急隊を対象とする勉強会(勉強会)は夕方に年2〜3回不定期に開催していた。改変後:対象は,実習が地域メディカルコントロール協議会に属する全3本部,勉強会はセンターが担当する医療圏にある全5本部とした。実習は1日当たり2〜3名/本部を受け入れ,救急車現場出動時の医師搭乗,他隊搬送事案の見学,救急科入院患者検討会の参加などを新規項目に加えた。病院救命士を調整役とした。勉強会は日勤帯に毎月定時開催とした。結語:実習・勉強会の刷新は救急隊活動の質向上と消防本部間格差の均等化に寄与した。
著者
髙橋 淑郎
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第88集 公共性と効率性のマネジメント─これからの経営学─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.6-15, 2018 (Released:2019-06-17)
被引用文献数
1

本稿は,わが国で非営利組織としての病院経営を,私的病院の経営を中心にして,これまでの先達の研究成果を踏まえ,わが国の医療制度の特徴を確認し,さらに先進諸国の医療における患者や医療サービス提供者の変化を明らかにした。その上で,医療における医療価値研究から病院価値研究への動きを把握し,現在および将来に向けて医療経営で,バランスト・スコアカード(BSC)およびその発展形であるSustainable BSC(SBSC)の有用性を論理的に示した。すなわち,SBSCは,持続可能性コンセプトの3つの次元すべてを,その戦略的重要度に応じて統合するBSCであることを示したことで,BSCからSBSCへの病院経営の方向を示した。これらの議論より,本稿で議論した病院価値を理解し把握した病院経営者が医師であれ,非医師であれ,払底している現状を確認し,戦略経営実践の枠組みが作れる,リーダーシップを持った人材の育成が急務であることを示した。
著者
黒﨑 久訓 髙田 康平 岡島 正樹
出版者
一般社団法人 日本救急救命学会
雑誌
救急救命士ジャーナル (ISSN:2436228X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.87-94, 2023-06-20 (Released:2023-07-26)
参考文献数
25

【目的】ECPR適応となり得る傷病者に対する,救急救命士による病院前アドレナリン投与が傷病者の転帰に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。【方法】2017年1月1日~2019年12月31日までの全国ウツタインデータを用い,傾向スコアマッチングでの解析を行った。評価項目は,神経学的機能良好予後および1カ月生存とした。【結果】傾向スコアマッチングの結果,アドレナリン投与,非投与各群で,2,047例がマッチした。多変量ロジスティック回帰分析を用いて,アドレナリン投与が転帰に与える影響を検討したところ,アドレナリン投与は,1カ月生存,神経学的機能予後とも予後不良と関連していた[1カ月生存,調整オッズ比(95%信頼区間),0.75(0.64-0.88);神経学的機能予後,0.48(0.40-0.58)]。【結論】ECPR適応となり得る傷病者に対する,救急救命士による病院前アドレナリン投与は,傷病者の神経学的機能予後,1カ月生存とも予後不良と関連していた。
著者
井上 建 小坂 浩隆 岡崎 玲子 飯田 直子 磯部 昌憲 稲田 修士 岡田 あゆみ 岡本 百合 香山 雪彦 河合 啓介 河野 次郎 菊地 裕絵 木村 大 越野 由紀 小林 聡幸 清水 真理子 庄司 保子 髙倉 修 高宮 静男 竹林 淳和 林田 麻衣子 樋口 文宏 細木 瑞穂 水田 桂子 米良 貴嗣 山内 常生 山崎 允宏 和田 良久 北島 翼 大谷 良子 永田 利彦 作田 亮一
出版者
日本摂食障害学会
雑誌
日本摂食障害学会雑誌 (ISSN:24360139)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-12, 2023-10-05 (Released:2023-10-05)
参考文献数
19

COVID-19パンデミック下,摂⾷障害患者における社会からの孤立,受診控え,症状の悪化,さらに新規患者の増加などが報告された。そこで我々は,2019,2020,2021年の神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)および回避/制限性食物摂取障害(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder: ARFID)の新規患者数,入院患者数,性別,年齢層,COVID-19の影響の有無について,国内で摂食障害を専門的に診療している医療機関に対して調査を依頼した。すべての項目に回答のあった28施設の結果について集計・解析した。ANの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は400人,266人,2020年は480人,300人,2021年は610人,309人であった。一方,ARFIDの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は70人,15人,2020年は97人,22人,2021年は112人,17人であった。AN,ARFIDともに2019年と比較して2020年,2021年は新規患者数,入院患者数ともに増加し,これは10代でより顕著であった。さらにANにおいては20代の患者も増加していた。COVID-19 パンデミック下にARFID 患者数の増加が示されたことは重要な知見であると考えた。
著者
髙木智子 松本修治 横田健一 阿部雅弘
雑誌
コンクリート工学年次大会2023(九州)
巻号頁・発行日
2023-06-16

コンクリートの高所への場内運搬において,圧送行った場合と,バケットを用いた場合のコンクリートの品質変化を比較する目的で,施工中の斜張橋主塔を対象に運搬前後のスランプ,空気量,圧縮強度試験を実施した。また,品質変化が耐凍害性に与える影響として,気泡径分布とスケーリング量を測定した。その結果,コンクリートポンプにより圧送した場合,スランプが低下したことに加え,空気量は増加し圧縮強度が低下した。一方,バケットにより運搬した場合,品質変化は確認されなかった。スケーリング試験の結果,打込み方法によらず場内運搬後のコンクリートが良好な耐凍害性を有していることが確認された。
著者
上水 研一朗 位髙 駿夫 廣川 彰信 有賀 誠司 町田 修一
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.29-38, 2016-08-18 (Released:2018-03-12)
参考文献数
32

Previous studies have reported that the alpha-actinin-3 (ACTN3) and angiotensin-converting enzyme (ACE) gene polymorphisms are associated with sports performance, muscle strength, muscle power, and endurance. Competitive judo requires high levels of muscle power, muscle strength, and endurance. However, thus far, associations between these gene polymorphisms and muscle power in judo athletes have not been reported. The purpose of this study was to investigate the relationship between ACTN3 and/or ACE gene polymorphisms and middle power in judo athletes. This study recruited 79 male judo athletes from a top-level university in Japan. Genomic DNA was extracted from the saliva sample taken from each athlete. Genotyping using either polymerase chain reaction (PCR)-restriction fragment length polymorphism or PCR was performed to detect ACTN3 (rs1815739) and ACE (rs1799752) gene polymorphisms. Each athlete also performed a 30-s Wingate anaerobic test with a resistance equal to 4.5% of the athlete’s body weight.One-way analysis of variance revealed a significant difference in middle power relative to weight among the ACTN3 genotype groups (p<0.05). In other words, RX individuals showed significantly higher middle power than XX individuals (p<0.05). Moreover, middle power relative to weight was higher in individuals with the RR+RX genotype than in those with the XX genotype (p<0.05). However, there were no significant differences in the ACE genotype.The results of the present study suggest that ACTN3 but not ACE gene polymorphisms may be associated with middle power in judo athletes.
著者
北野 菜奈 福本 真一郎 徳山 桂理 池田 恵子 髙橋 俊彦
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会・九州沖縄産業動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-6, 2018-06-30 (Released:2019-05-09)
参考文献数
30

プアオン式イベルメクチン製剤は公共牧場において長期間継続的に使用されており,消化管内線虫駆虫に有効である.本研究では,駆虫を行っていない牧場を用いて駆虫計画を立案し,対象農場に適した駆虫のタイミングを模索するために,イベルメクチン製剤による駆虫を実施した. 駆虫は試験区にのみ5 月,7 月,10 月に行った.消化管内線虫卵数において試験区が対照区と比較し6 月と8 月で有意に低値を示し,試験区において7 月と比較し8 月,10 月が有意に低値であったこと,体重において試験区で7 月と比較し駆虫後の8 月が有意に増体したこと,繁殖成績でも試験区が良好な傾向を示したことは,イベルメクチン製剤による駆虫から得られた効果であると考えられた. イベルメクチン製剤は世界的に牛で薬剤耐性が報告されている.今回のような投与回数を必要最小限に抑えた駆虫プログラムであれば薬剤耐性は容易に起こらないと思われた.
著者
川島 史義 髙木 博 古屋 貴之 加藤 慎 佐藤 敦 前川 勝彦 浅井 聡司 中田 規之
出版者
日本関節病学会
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.15-19, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
10

Introduction: Several methods have been proposed to determine proper femoral component rotation alignment in total knee arthroplasty (TKA). Usually the epicondylar axis, the posterior condylar axis and Whiteside’s line are used for landmarks. However, sometimes recognition of these landmarks is difficult intraoperatively. We decide on the rotation angle of the femoral component using the epicondylar view via a preoperative radiograph. The angle consists of the clinical epicondylar axis (CEA) and the posterior condyle line minus two degrees. We think the influence of the residual cartilage of the posterior lateral femoral condyle is about two degrees in varus osteoarthritis (OA).Objective: The objective of this study was to evaluate the rotation alignment of the femoral component after TKA, and the usefulness of our method for the decision of femoral component rotation alignment.Methods: There were 43 patients (7 males, 36 females) with varus OA who underwent primary TKA. The average age was 78.1 years (range, 64-87 years). The rotation angle of the femoral component was decided by the above-mentioned method. We evaluated the angle between the posterior border of the femoral component and the CEA, and the surgical epicondular axis (SEA) using postoperative computed tomography. These angles were expressed as∠CEA and∠SEA. External rotation was expressed as plus.Results: The mean∠CEA was−1.1 (−5-1)°. The mean∠SEA was 0.48 (−3-3)°. The mean angle of∠SEA−∠CEA was 1.5 (0-3)°. The femoral component was placed in internal rotation to CEA and parallel to SEA.Conclusion: Internal placement of the femoral component was considered to be caused abnormal patella tracking and dislocation and low value of Knee Society Knee scoring. We think that it can be difficult to recognize some landmarks intraoperatively. We decide on the rotation angle of the femoral component using the epicondylar view of preoperative radiographs. From the results of this study, the femoral component was placed in internal rotation to CEA and parallel to SEA. We conclude that our method for the decision of the femoral component rotation alignment is useful for TKA of varus OA of the knee.
著者
金沢 弘美 窪田 和 谷口 貴哉 澤 允洋 髙橋 英里 民井 智 江洲 欣彦 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.10, pp.1134-1141, 2023-10-20 (Released:2023-11-01)
参考文献数
21

一側性難聴は, 難聴側からの聴取困難だけでなく, 雑音下での聴取困難, 音源定位の困難がある. 両側性難聴者だけでなく, 一側性難聴者もマスク装用下での聞き取り困難を感じている. この困難感は, 雑音の多い学校生活で1日を過ごすことが多い学童児が特に感じていることが危惧された. 今回は, 一側性難聴児の学校生活の中での聞き取り困難感を, マスク装用生活前後で比較した調査を行った. また希望者に対しては補聴器試聴を行った. 対象は, COVID-19 流行時に当院に外来通院していた一側性難聴児31人である. コントロール群として健聴児15人をおいた. 方法はアンケート形式で, 雑音下聴取・音源定位・学業理解に関して4つの問いを設定し, VAS スケールで困難感として当てはまる程度を患児本人が記入した. 補聴器を希望した一側性難聴児は, 装用1~3カ月後に雑音下語音検査を行った. この結果, 難聴のレベルにかかわらず, 多くの一側性難聴児が, マスク装用生活後に聞き取り困難を感じていた. 11人が補聴器試聴を希望し, 9人が雑音下語音検査でその効果を認め購入に至った. 一側性難聴児は, 両側性難聴児と同様に, 学力の低下, 社会性の問題など, 年齢が上がるに連れて顕著になるケースがある. マスク装用生活が続いたことにより, 一側性難聴児が困難感を自覚するようになっている. 補聴器装用のほか, 聴取の環境調整, 心理・社会面など個別にサポートする必要がある.
著者
髙瀨 堅吉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.507-513, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)

本稿は,シチズン・サイエンスの成果をどうアウトプットするのかについて,二つの点で考えを述べる。一つは,「職業研究者が行っているようなアウトプットがシチズン・サイエンスでも可能か」という点である。そして,もう一つは,職業研究者によるアウトプットとは異なる「シチズン・サイエンスならではのアウトプットが存在するのか」という点である。著者は,これまでシチズン・サイエンスを行った経験から,「市民の繋がりを活用する」必要があるテーマはシチズン・サイエンスに馴染み,その成果を自治体や企業が報告書としてアウトプットする限りでは,シチズン・サイエンスはよいかたちで推進されると考えた。
著者
伊藤 香織 德永 景子 前橋 宏美 結城 和佳奈 髙栁 誠也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1570-1577, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
9

本研究では,「唐桑町屋号電話帳」から作成した旧唐桑町全体の屋号語彙地理空間データに含まれる4600余語の屋号語の分布を地理的観点,社会的観点から定量的に分析し,屋号が人の認識を通して地域のどのような性質を表しているのかを探る.分析で得られた主な知見は,以下の通りである.(1)職業や家,分家,位置関係などを表す屋号語は出現頻度が高く,満遍なく分布しており,旧唐桑町全体に共通する共同体や位置関係の認識を表していると考えられる,(2)山,海,川,田,船,店,道など立地の地理的条件や人の活動を反映していると考えられる屋号語彙が多い,(3)特定の地区に集中する屋号語や特定の屋号語に偏った屋号語彙構成をもつ地区などが共同体の社会的条件を反映していると考えられる.