著者
氏家 悠太 西川 琴美 横幕 加奈 髙橋 康介
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PR-021, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

近年,健康寿命の延伸やQOL向上の為の効果的な活動としてスポーツが注目されている。日常生活において継続可能なスポーツ習慣を獲得するためには,個人の身体的,心理的特性を踏まえ最適化された動機付けの手法が必須となる。本研究はスポーツ習慣の動機付け手法確立の基礎研究として,幅広い年齢層を対象としたオンライン調査により,スポーツ習慣と心理特性との関連を検討した。調査協力者は20代から50代以上までの男女1600名とした。調査項目として,スポーツや他の活動の習慣化に関する調査項目,心理特性を測定する質問紙(TIPI-10,BIS/BAS,DTDD,LOC,公正世界信念,BREQ-2改変)を用いた。主な結果として,スポーツ習慣のない集団(N=800)においても,潜在的にスポーツ習慣化を希望する割合は全年代を通して50~60%と多く,そのうち大多数(80%以上)が内的動機付けによるものであると示された。また,心理特性との関連では,行動抑制傾向(BIS/BAS)やサイコパス傾向(DTDD)が強いほど,スポーツに限って習慣化を妨げる要因となることが示された。これらの結果は,継続すること自体に困難はなく,スポーツだけが続けられないという個人の心理特性を示唆している。
著者
兒玉 憲人 﨑山 佑介 小迫 拓矢 武井 藍 中村 友紀 橋口 昭大 道園 久美子 松浦 英治 中根 俊成 髙嶋 博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.95-102, 2018-01-10 (Released:2019-01-10)
参考文献数
10

42歳,男性.全身の発汗低下を主訴に受診した.起立性低血圧や頻尿を伴い,広汎な自律神経障害が示唆された.皮膚生検で汗腺及び血管周囲にリンパ球浸潤を認め,抗ganglionicアセチルコリン受容体抗体陽性が判明した.通常,同抗体は自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy:AAG)の原因となるが,汗腺への直接作用は明らかでない.本症例には汗腺と自律神経節障害の両者の特徴が混在し,ステロイド治療が有効であった.
著者
加藤 貴雄 八島 正明 髙橋 尚彦 渡邉 英一 池田 隆徳 笠巻 祐二 住友 直方 植田 典浩 森田 宏 平岡 昌和
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.5-13, 2021-02-26 (Released:2021-03-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

【背景】心電図自動診断はすでに半世紀を超える歴史があり,健診や臨床の場で広く用いられている.各心電計メーカーの汎用心電計には,それぞれ最新の自動解析プログラムが搭載されているが,その診断精度は決して十分とはいえず,実臨床の場ではいまだに専門医によるオーバーリードが不可欠である.【目的】近年,臨床的意義が高まっている心房細動を取り上げ,不適切自動診断の現状とその問題点ならびに不適切診断をもたらした要因について検討することを目的とした.【方法】有志の集まりである「心電図自動診断を考える会」会員から収集した,匿名化心房細動関連不適切診断心電図計145例について,世話人間で詳細解析を行った.【結果】①一般健康診断(会員A)における不適切自動診断は,健診心電図連続50,000例中1,108例(2.2%)に見られ,そのうち心房細動関連は54例(約0.11%,誤診43例,読み落とし11例)であった.一方,循環器専門外来(会員B)の調査では,さまざまな不適切診断連続272例中51例(18.8%)で心房細動の読み落としが見られた.②心房細動を読み落とした計62例では,f波を洞性P波と誤認したのが42例(67.7%),異所性P波としたのが5例(8.1%),心房粗動としたのが8例(12.9%),心房波を読み取れなかったのが7例(11.3%)であった.③心房細動と誤診した計83例では,洞性P波を見落としたのが38例(45.8%),異所性P波を認識できなかったのが37例(44.6%),粗動波をf波と誤認したのが8例(9.6%)であった.【結論】心房細動の不適切診断に関しては,誤診が不要な再検査や専門医受診を招く一方,読み落としによる治療の遅れが脳梗塞や心不全の発症など,重大な合併症を引き起こす危険性をもたらす.波形計測や診断アルゴリズムのさらなる改良に加え,適切な心電図所見のビッグデータを用いた人工知能(AI)の導入など,より精度の高い自動診断システムの構築が求められる.
著者
茂木 伸之 吉川 徹 佐々木 毅 山内 貴史 髙田 琢弘 高橋 正也
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2022-0018-CHO, (Released:2023-09-05)
参考文献数
28

日本では教員の長時間労働や精神疾患による病気休職者数が減少していない状況である.本研究は,過労死等の重点業職種である教職員に該当する義務教育教員の多くを占める公立小中学校教員の公務災害の過労死等防止対策に資する課題抽出を目的として,公務災害として認定された過労死等の負荷業務の特徴について検討した.対象は2010年1 月から2019年3月までに公務災害に認定された全392件(脳・心臓疾患事案146件,精神疾患等事案246件)の内,教員88件(脳・心臓疾患事案52件,精神疾患等事案36件)とした.その結果,脳・心臓疾患の100万人当たりの発症件数は男性が80%を占め,男女の疾患名では脳内出血が最も多かった.精神疾患等は,100万人当たりの発症件数は男性が多く,疾患名はうつ病エピソードが最も多かった.学校別の件数は,脳・心臓疾患は中学校で多く,精神疾患等は小中学校それぞれ半数であった.脳・心臓疾患事案では,負荷業務として「部活動顧問」が最も多く,長時間労働を認定要件とする事案に影響を及ぼした.精神疾患等では,業務による負荷の「住民等の公務上での関係」における保護者によるものが最も多かった.負荷業務である「部活動顧問」,「住民等の公務上での関係」の課題を解決することが,公立小中学校教員の過労死等防止対策のひとつになると考えられる.
著者
上床 喜和子 須佐美 隆史 井口 隆人 大久保 和美 岡安 麻里 内野 夏子 髙橋 直子 松林 幸枝 阿部 雅修 末永 英之 森 良之 髙戸 毅
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.26-36, 2016-04-15 (Released:2016-05-20)
参考文献数
32

Acromegaly is caused by growth hormone excess owing to a pituitary adenoma after completion of growth and tends to lead to mandibular prognathism. In this paper, two patients with mandibular prognathism caused by acromegaly and treated by surgical-orthodontic treatment are reported. The first case was a 36-year-old male who was referred to our hospital to correct mandibular prognathism and malocclusion after resection of the tumor in the pituitary gland. The second case was a 26-year-old male who was referred from an orthodontic clinic for orthognathic surgery. He had not been diagnosed as acromegaly but a typical double-floor of the Turkish saddle was found in the lateral cephalogram. Blood tests revealed acromegaly. Surgical-orthodontic treatments were performed after resection of the pituitary adenoma and confirmation of normal level of blood growth hormone (GH) and somatomedin C. In both cases, multi-bracket appliances were worn and bimaxillary osteotomy (Le Fort I osteotomy for maxillary advancement and bilateral sagittal splitting ramus osteotomies for mandibular setback) was carried out to secure the intraoral space for the enlarged tongue. After post-surgical orthodontic treatment, the treatment results were good and stable in both cases. These cases showed that surgical-orthodontic treatment for patients with acromegaly after pituitary adenoma resection is reliable. The importance of careful examination of the craniofacial shape in patients with mandibular prognathism to detect acromegaly is emphasized.
著者
大山 順也 平山 愛梨 芳田 嘉志 町田 正人 加藤 和男 西村 俊 髙橋 啓介
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.180-184, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)
参考文献数
14

CuゼオライトはCH4の部分酸化反応触媒として機能する。これまでに筆者らは様々なCuゼオライトのCH4部分酸化反応に対する触媒活性を評価し,Cu-CHAとCu-MORが比較的高い性能を示すことを明らかにしてきた。さらに,Cu-CHAとCu-MORの酸化還元挙動をin situ Cu K-edge X線吸収微細構造(XAFS)分光法を用いて評価してきた。本研究では,CO2選択性が高かったCu-MFIについて,in situ XAFS分光法を用いて解析し,その酸化還元速度を評価した。Cu-MFIのデータとこれまでのCu-CHAとCu-MORのデータを合わせて,Cu2+/+の酸化還元速度とCH4酸化活性および部分酸化物選択性の関係について調べた。その結果,Cu2+からCu+への還元速度はCH4酸化活性と強い相関があることが確認できた。これは,CH4のC–H活性化の際にCu2+が還元されるためである。一方,Cu2+/+の酸化還元速度と部分酸化物選択性との間には相関は認められなかった。
著者
髙間 由香里
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.550-556, 2019-03-20 (Released:2019-09-20)
参考文献数
4

The image studied here is very rare in terms of iconography, as everyone, including Amitābha, is represented by the figure of a Bodhisattva. Amitābha is represented by the figure of the chief of the Pure Land.Also, while the contour line of the central Buddha was lost its vitality, those of the left and right Bodhisattva have freedom. The latter are reminiscent of the Amida-25-bosatsu-raigō-zu (阿弥陀二十五菩薩来迎図) (National Treasure), owned by the Chion-in (知恩院) . In other words, the time of production of this picture is can be place in the second quarter of the 14th century.Meanwhile, while the central Buddha has the characteristics of the Southern Song Dynasty of China, the left and right Bodhisattvas are full of Japanese elements.That is, the model of this painting was a Southern Song painting with only Amitābha painted in order for a dying person to image the moment of going to Pure Land as soon as possible to meet Amitābha. With this South Song painting as their model, the Tendai-Sanmon (天台山門) artists daringly added 2 Bodhisattva to promote their understanding that Raigō (来迎) precedes Ōjō (往生), and produced this picture.
著者
髙山 英里 能丸 天志 安中 勇貴 山岸 丈留 渡邊 恵太
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.52-61, 2023-08-23

「あアラウド法」は,実験参加者が「あ」のみを発声することで,実験参加者のリアルタイムな感情を観測する手法である.この手法は,明確な評価基準を定義しにくいエンタテイメントコンテンツの評価に役立つ可能性がある.一方で,発声方法や感情分析の妥当性については,十分な検討がなされていない.そこで本研究では,「あアラウド法」を感情観測手法として確立するため,発声方法が結果に与える影響と,感情分析の実行可能性についての実験を行い,適した実験設計と有用性について考察した.
著者
河瀬 彰宏 髙木 優貴
出版者
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会
雑誌
デジタル・ヒューマニティーズ (ISSN:21897867)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
25

日本の伝統音楽の基盤であるわらべうたは,子どもが遊びの中で創作した自然発生的な音楽である.わらべうたと類似した音楽に童謡がある.両者の音楽は子どもに親しまれているが,童謡は大人が子どもに親しんでもらう明確な意図のもとで作曲された音楽という点でわらべうたと異なる.本研究では,子どもたちが自然な感覚で創作したわらべうたの旋律的特徴のことを「子どもらしさ」と定義し,童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」の表現方法を計量的に明らかにした.わらべうた,童謡,同時代の日本の流行歌の旋律から音程と音価を抽出し,それらを特徴量とする計量比較を実施した.3者の共通点と相違点を明確に説明する特徴量を考察することで,童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」が限定された範囲内での音程推移と跳躍のあるリズムの組み合わせによって作られていることが明らかになった.
著者
髙橋 秀太朗 服部 峻 高原 まどか
出版者
一般社団法人 日本デジタルゲーム学会
雑誌
日本デジタルゲーム学会 夏季研究発表大会 予稿集 2022 夏季研究発表大会 (ISSN:27584801)
巻号頁・発行日
pp.45-48, 2022 (Released:2023-02-24)
参考文献数
2

人間のデバッガーの代わりにバグを判別可能なデバッグAI を構築するためには、プレイ動画からのバグ発見や、効率的なバグ発見のためのプレイ操作系列の自動生成など課題は多いが、ルールベースや機械学習が応用できるのではないかと考えた。そこで本稿では、テトリスゲームを題材に、人間プレイヤー操作によるバグ発生を含むプレイ動画を画像認識して、ルールベースでバグ発見するデバッグAI を試作し、その性能を検証する。
著者
髙田 彩
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.81-95, 2019-06-08 (Released:2021-06-05)
参考文献数
13

本稿の目的は、武州御嶽山の女性が関与する社会組織の機能と役割を明らかにすることである。その際、女性が関与する社会組織が、(1)御嶽山の中でどのような役割を果たしているのか、(2)当事者である御師家の妻にとってどのような意義を持つのかという二点に注目して考察を行う。具体的には、構成原理の異なる三つの社会組織、各家の「なかばあさん」と呼ばれる30~50代の働き盛りの女性が所属する(A)「婦人部」と、各家同士の互助組織でありながら地縁的性格が強い(B)「組合」、血縁的性格が強い(C)「付き合い」を事例に、その機能と役割を検討する。これらの比較を通して、女性が山内の社会組織に組み込まれていく過程と、どのような場で生活慣習などの教育を受けながら、御嶽山の一員になっていくのかという問題を明らかにする。本稿は、先行研究で十分な議論がなされてこなかった御嶽山の社会組織と、そこでの御師家の妻の役割を照射するという点でも意義がある。
著者
山本 峻平 佐藤 弘隆 髙橋 彰 河角 直美 井上 学 矢野 桂司
雑誌
じんもんこん2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.199-206, 2017-12-02

本研究では,1978(昭和53)年に全面廃止となった京都市電の写真資料に撮影位置の情報を付加させたデータベースを構築し,それを活用した過去の記憶のアーカイブの可能性について検討する.過去の京都市電の写真の撮影位置を特定するには,過去の大縮尺の地図などを用いることが有効である.しかし,都市景観の急速な変化から,撮影場所を特定することが難しい場合も多い.そこで,本研究では,クラウドソーシングを用いた撮影場所の特定方法を提案した.また,一般市民を対象とした京都市電の写真の展示会を実施し,過去の写真と大縮尺の地図を用いて,人々の過去の記憶のアーカイブの作成を行った.その結果,写真や史資料に残らない,当時の生活や体験などに関する記憶を蓄積することが可能となった.
著者
髙橋 麻衣子 片岡 史絵 田中 章浩
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.124, 2016 (Released:2016-10-17)

音楽を聴きながら,電車に乗りながら等,我々は背景に無関連な音が提示されている中で読書をする場合がある。本研究は,このような背景音の種類によって小説の読解成績がどのように異なるのかを検討することを目的としたものである。24名の参加者に,歌詞あり音楽,歌詞なし音楽,歌詞朗読,無音の4条件の背景音提示下で小説から抜粋した300字程度の文章を読ませ,主観的な理解度の評定と内容の要約,登場人物についての記述の作成を求めた。その結果,歌詞朗読条件の主観的理解度や文章要約の質が,他の3条件のものより低いことが明らかとなった。登場人物の記述の成績は条件間で差がなかった。さらに,読解活動中の参加者の視線を計測して分析したところ,歌詞朗読条件の読解中の注視時間と注視回数が他の3条件よりも多いことが示された。以上の結果から,小説の読解時には音楽にのせていない意味のある音声の提示が読解を妨害することが考えられた。
著者
髙城 光
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1_1-1_10, 2023-07-31 (Released:2023-08-03)
参考文献数
39

本稿は,列国金文書体の一つである蔡侯盤書体の字形と書き手の書きぶり(身体の動き)の関係の考察である。 字形と書きぶりの相関は書芸術と書体デザインの両方において重要である。書芸術においては書き手の唯一性が書きぶりを通して文字に表れるとされ,字形のばらつきも尊重される。一方,書体デザインにおいては用筆や書きぶりは書き手個人と区別され,字形のばらつきを抑えながら書体の様式を解釈・表現するための手がかりである。書体デザイナーたちは一般的な用筆と書きぶりをイメージしながら書体を共同制作する。 蔡侯盤書体は用筆法の成立以前の書体であるため,書き手たちは用筆法から様式を解釈することができない。用筆に代わる手がかりを考察するため,拓本資料のトレースによって字形の書きぶりを観察した。結果,蔡侯盤書体においては手の自然な握り込みにともなう規則的な動きが,様式を解釈し書きぶりを統一するガイドとしてはたらいている可能性があることを確認した。
著者
牛頭 哲宏 髙松 邦彦 酒井 智行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.336-340, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)

神戸常盤大学は2015年度からクラウド型教育支援システム「manaba」を活用した教育実践を行ってきた。その結果,多くの教職員がmanabaを使いこなすノウハウを身に着けた。この実践が功を奏し,2020年度のコロナ禍でも,神戸常盤大学は迅速にオンデマンド式の遠隔授業を実施し,学生の学びの質が損なわれないように工夫している。本稿では,manabaの活用によって,どのように遠隔授業が実施され,どのような教育効果があったのかについて報告する。また,manabaに蓄積された学生の学習データにもとづいた大学改革の成果についても紹介する。
著者
髙橋 忠志 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.204-209, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
35

脳卒中歩行障害に対するリハビリテーション(以下,リハ)は脳卒中発症直後から開始し,急性期,回復期,生活期と途切れることなく行うことが必要であり,そのスタートとなる急性期でのリハは歩行再建の源になる.重度運動麻痺を呈する脳卒中患者の積極的な立位,歩行練習には長下肢装具が不可欠である.長下肢装具の仕様としては油圧制動式足継手を使用し,運動麻痺の改善に応じて装具の設定を変更できることが望ましく,また実際の使用には装具に関する知識と技術が求められる.脳卒中急性期からの長下肢装具使用はエビデンスが蓄積されつつあり,脳卒中歩行障害への歩行再建・装具療法はパラダイムシフトを迎えている.
著者
髙山 真希 菊地 弘敏 広畑 俊成
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.341-347, 2009-12-30 (Released:2016-03-31)
参考文献数
12

Polyarteritis nodosa is a necrotizing angitis that predominantly affects small and medium-sized arteries. We present a case of polyarteritis nodosa with intra-abdominal and intra-muscular hemorrhage due to rupture of multiple aneurysms. A 47-year-old man was admitted to our hospital because of sudden onset lower abdominal pain. Angiography revealed the presence of multiple aneurysms of superior mesenteric artery, bilateral renal arteries, and splenic artery. Transcatheter arterial embolization was performed along with the administration of prednisolone. However, emergency surgery was performed because of small intestinal perforation. Histopathological examination on the resected small intestine showed the disruption of the internal lamina elastica with fibrinoid necrosis in the small arteries, confirming the diagnosis of polyarteritis nodosa. Although he gradually recovered after the operation, he suddenly presented pain in right axillary and femoral regions while the dose of prednisolone was decreased. CT scan revealed intramuscular hematoma. Accordingly, multiple aneurysms were found in the bilateral axillary arteries, right femoral artery and right popliteal artery on angiography. After the combination therapy with increased dose of prednisolone and methotrexate, he recovered from the manifestations. Physicians should be aware of intra-muscular hemorrhage as possible complication of PN, since it sometimes results in serious complications, such as compartment syndrome.
著者
渡辺 洋子 井手 誠 坂根 靖子 岩橋 叔恵 岩橋 徳英 中嶋 久美子 髙栁 宏樹 園田 紀之 小川 佳宏
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.528-533, 2020-08-30 (Released:2020-08-30)
参考文献数
10

思春期は精神心理的問題を抱えやすく,慢性疾患である1型糖尿病を発症し受け入れることは容易ではない.今回我々は,心理社会的課題を抱えた1型糖尿病の女児がインスリンポンプ導入を通じ,自身の課題に向き合い解決へと進むことができた1例を経験したので報告する.患児は13歳時に1型糖尿病を発症.いじめが原因で小学校時から不登校であり,親からのマネジメントを十分に受けていないなど心理社会的問題を抱えていた.幼い兄弟が多く,針による怪我を心配してインスリンポンプを自ら希望した.ポンプ導入の際に,エンパワーメントアプローチや認知行動療法などの心理社会的・行動医学的介入を行った.その結果,患児は糖尿病治療中に遭遇した様々な困難を解決する過程で自己効力感を高め,自立性を得ることができた.治療を通じて自身の心理社会的問題にも取り組み,他者との良好な関係を築けるようになり,学校生活復帰を果たすことができた.