著者
山崎 友子 HALL James 西館 数芽 山崎 憲治 山崎 憲治
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

東日本大震災被災地の調査および中・高・保育園で実践的研究を行った。災害サイクル図を析出し、災害を予報,復旧復興も含めて全体系として把握することが,減災・災害弱者を生まない・災害に強い地域作りでも肝要であることを示した。また、学校が組織的避難に加え、地域の復興を意識した教育活動により、子ども達に復興の担い手としての意識を高めていることをフォーラムで明らかにした。防災教育とは「被災地から学ぶ」ことが示された。
著者
南後 守 大倉 一郎 住 斉 野澤 康則 垣谷 俊明 長村 利彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本計画の目標は、光合成での光エネルギー変換系でのタンパク質複合体の連動したシステムの構造とその機能について基礎的な研究を行うために広範囲の研究者と意見交換を行うことである。そして、社会的に要請の強いこの分野の研究に対して貴重な情報を提供することである。この分野の研究の進展が目覚ましく、したがって、基礎的な研究情報の交換を継続して行い、さらに、共同研究へと発展させることが必要である。本計画では、光合成での光エネルギー変換システムでの基礎的な研究に焦点を絞り、つぎの3点について研究情報の交換を行う。1)アンテナタンパク質複合体の動的構造と機能の関係、2)光エネルギー変換系での色素の構造と機能との関係 3)光エネルギー変換機能をもつデバイスの開発。講演会を年間5回開催して情報交換を行った。講演会では光合成、光エネルギー変換、タンパク質複合体および色素の構造と機能、核酸、分子モーターのキーワードで互いの最先端の仕事内容を発表していただいた。この研究会に参加していただた方はそれぞれの分野でのスペシアリストなので講演会で情報交換を行うことが本研究の企画を進めることになった。ここで、主な研究費として、会議費、国内旅費、それに伴う消耗費が必要となった。また、必要に応じて研究会のメンバー以外の方に講演、事務処理などの手伝いを依頼した。ここで、謝金が必要となった。さらに、外国人研究者(Prof, Scheer(独)およびProf, Cogdell(英))に来日していただいて臨時セミナーで講演してもらった。ここで、この分野の先導的な欧州の第一線の研究者と交流をもつために外国旅費が必要となった。
著者
岩倉 成志
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

潜在クラスモデルを用いてアプリオリに選択行動モデルをセグメンテーションするための方法論を研究した.この方法は期待するパラメータ範囲の初期値を外生的に与えて, EMアルゴリズムによって各セグメントの尤度を最大化するモデルである.観光地の選択行動や列車選択の際の内装色彩の評価,地方部の交通機関選択行動のデータを取得し,提案したモデルの可能性や今後の課題を明らかにした.
著者
矢島 道彦
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

インド各地を訪ねてジャイナ教のマンダラ図像を収集、画像データ化するとともに、ジナの生涯を戯曲的に再現するパンチャ・カリヤーナカの儀礼の調査を二度実施して、写真とビデオで記録した。これらのデータの整理・分析と、新たに入手した儀礼のテキストの解読を行ない、その成果の一部を学会等で報告・発表した。ヒンドゥー儀礼の影響が色濃いジャイナ教儀礼のなかで、パンチャ・カリヤーナカの儀礼はジャイナ教に固有のもので、とくにジナの開悟に伴う「聖なる集い」(サマヴァサラナ)の儀礼は、仏教のいわゆる尊像マンダラの対応物として注目される。
著者
立花 英裕
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

今回の研究目的は、フランス語圏を中心にアメリカ諸地域について調査した上で、その社会や歴史を明らかにし、文学や思想との相関をとらえるものだった。研究成果をまとめるにあたっては、ある程度地域を限定しなければならなかったので、全般的な視野を踏まえた上で特にフランス海外領土のマルチニック島、グアドゥループ島、およびハイチ共和国、カナダケベック州を対象とした。「クレオール」の概念は、時代によっても、また言語圏によっても意味が大きく異なっているが、その相違を調査した上で、本研究ではベネディクト・アンダーソンに見られるような広い視点からとらえた。すなわち、アメリカ地域に形成された国民は基本的にクレオールであるという視点である。そのように見ていくと、カナダケベック州とカリブ海域という南北にへだたった地域においても、一定の通約性が浮き上がってくる。ケベックの歴史家ジェラール・ブシャールはそれを「アメリカ性」と呼んでいるが、この概念は、カリブ海文化の特性としての「アンティル性」を発想したエドゥアール・グリッサンの見方に繋がっている。このような「アメリカ性」「アンティル性」、あるいは「クレオール性」が近代史の中でどのように形成され、どのような文化や文学を生み出したかについて、今回は、上述の地域に限定して解明につとめた。いうまでもなく、これはきわめて大きなテーマであり、今回の研究がまだ不十分であることは否めない。今後、更に調査と研究を継続していきたい。とはいえ、研究の過程で予期しない視野が広がってきたことも事実である。コロンブスの大航海に始まった近代の曙はグローバリゼーションの最初の一歩だったと考えられる。アメリカ地域の「クレオール的性格」は、グローバリゼーションの時代を予告し、準備するものだったのである。
著者
桑原 裕史 下野 晃
出版者
都城工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

駅前ショッピングセンター内に「鈴鹿高専みんなの理科教室」を開設し、近隣の小中学生対象の科学寺子屋を運用した。元企業技術者の応援を得て、教員と学生により、各種教材を開発するとともに、それを用いた子供たちへの理科教育を実施できた。鈴鹿高専のホームページから、この理科教室のページのリンクを作り、これを活用して、活動内容や予定を掲示するとともに、理科教室の活動内容に関係する質問・解答もできるようにした。この結果、多数の小学生や保護者に付き添われた幼児が理科教室を訪れ、開発した教材を活用して「理科」をより身近に感じるようにできた。
著者
時本 真吾
出版者
目白大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,発話理解の実時間モデルの構築を目標に,統語的情報,韻律,作動記憶制約の実時間相互作用を実験的に検討するものである。本研究の新知見は,(1)文内の依存関係決定処理において,韻律特性の一つとしての統語的休止(syntactic pause)は確かに効果を持っているが,統語的情報を覆すほど強くはないこと,また,(2)統語的休止の効果は処理負荷の低い文よりも高い文において顕著に現れること,(3)さらに作動記憶制約の影響は高負荷の文よりも低負荷の文について顕著に現れることである。本研究の知見は,統語的・音韻的制約の運用機序が,作動記憶容量を含む心的資源の大小によって変化することを示唆している。また,本研究は,作動記憶容量の大きな話者の方が小さな話者よりも言語処理効率が高いという通説に反し,大容量話者は低容量話者よりも文理解が正確だが,低容量話者よりも処理時間が長い傾向を見いだした。この知見は言語処理の効率性の議論に再考を促すものであり,作動記憶容量の大きな話者がより効率的な認知処理を実現するなら,なぜ作動記憶にこれほどの強い容量制限があるのかという理論的問題に進化心理学的解決の糸口を与えるものである。
著者
森 一彦 伊藤 三千代
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

(目的)本研究はその公的環境の中で駅ターミナル施設に着目し、情報(視覚・聴覚)障害者の探索行動の特徴を明らかにすることを目的とした。(方法)具体的には、視覚障害者・聴覚障害者および比較のための健常者の探索行動実験を行い、情報(視覚・聴覚)障害者の探索行動の特徴を分析した。特に探索行動時の探索方法の内容および情報入手の状況を整理し、そのデータを基に被験者相互の迷い行動を比較分析した。(結論)結果として、以下の点が整理された。(1)情報障害者は、入手情報が制限されるものの、適切に情報が提供されれば、迷うことなく目的のプラットホームに到達する事ができる。(2)むしろ、健常者の方が複数の情報が入手可能なため、色々な行動が誘発されやすく、結果的に「迷い」が大きくなるケースが多くあった。(3)聴覚障害者は健常者に類似した傾向があるものの、補足データとしての聴覚的な情報が乏しく、迷いやすく、状況判断しにくく慎重な行動になる傾向がある。(4)視覚障害者は点字などのサインよりも、その場所に置かれたもの・機器を手がかりとし、場所・方向を認知して行動する傾向がある分かった。(5)視覚・聴覚共に情報障害者は、探索途中で適切な情報入手ができずに迷いが生じた場合に大きな問題が生じ、どのように迷いからブレイクスルーするかが重要な要件となる。
著者
丸山 千賀子
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究期間内に以下のような成果をまとめた。(1)日本の消費者運動の変遷とその時代に起きた消費者問題を時系列でまとめるとともに、現在の消費者運動の特徴と課題について整理した。(2)海外の消費者団体とそれを取り巻く消費者政策の動向について欧米諸国を中心にまとめた。(1)、(2)については、それぞれ書籍として出版した。最終年度においては、今後の研究に繋げられるよう、アジア諸国にも範囲を広げて、主要な国や特徴的な国を中心に調査を始めた。
著者
出水 力 渡邉 輝幸 遠原 智文 石坂 秀幸 義永 忠一 平塚 彰 向 渝 海上 泰生 出水 純子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

日本企業の海外生産に伴う技術移転問題を、現場・現物・現実の視点に沿い多面的に調査した。アセアンと中国の8カ国で、約100社の個別企業の技術移転の達成度、それを支えた日本のマザー工場の役割を中心に調べた。海外生産は円高と人件費の高騰により、1990年代以降に急拡大した。その多くは大企業の海外展開に隋伴する中堅企業や中小企業であった。海外生産と国内生産を相互に補完することで、個別企業として利益の還流で所得収支を伸ばし、黒字という企業が多い。海外生産の利益が日本経済を支えており、今や生産のみならず開発の一部も海外に進みつつあるのが、現実である。
著者
小畑 文也
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

知的障害児のヘルスリテラシーを、主に症状の表出と周囲の理解の点から検討した。症状としては、「頭痛」「腹痛」「疲労」「めまい」「出血」「吐き気」が選ばれ、健常幼児(3-5歳)と比較しながら面接調査と質問紙調査を実施した。その結果、対象となった知的障害児の症状表出は、健常幼児3歳とほぼ同様であり、痛みを除き、自発的な表出が見られないこと、特に言語的な表出が困難なこと、母親の理解(気づき)にはばらつきが大きいことが明らかとなった。また。母親の子どもの体調への注意は、健常児の場合、加齢とともに減少しているが、知的障害児の場合、加齢とともに増加していることも明らかとなった。
著者
池田 一彦
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

明治二十年前後の、今日文学史的に忘れ去られたり埋没したりしてしまっている作家や作品の内、見直すべき価値のあると思われるものを、当時流行したボール表紙本を中心として発掘し、実証的に再検討して行くのが本研究の課題である。具体的には、南柯堂夢笑道人=萩倉耕造の『決闘状』、菊亭静=高瀬真卿の『滑稽新話明治流行嘘八百』(後にボール表紙本として『人間萬事嘘の世の中』と改題の上出版された)などの発掘と再検討を試みた。
著者
伊藤 有壱 小町谷 圭
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の為に作成した2体(クレイ、金属関節人形)を含めた3種類のアニメーションパペットと、そのガイドとなる実写人物、そして着ぐるみの5要素のキャラクターが、異なる3パターンの背景(アウトドア実景、ミニチュアセット、グレーグリッドセット)で同じアクションを繰り返す、立体視アニメーション撮影のベーシックとなりうる画期的な素材の作成に成功した。新たに撮影された背景等新要素によりその組み合わせパターンは無限となることから、次世代に向けての拡張性も含んでいる。さらに本研究の情報開示は、撮影対象物であるクレイやパペットの貴重な立体アニメーション制作技術の普及にも貢献するものである。
著者
武田 賢 角谷 倫之 佐藤 清和 土橋 卓 伊藤 謙吾 千葉 瑞己
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヒト頭頸部模型をCT撮像したデータをソフトウェア上で加工し、3次元(3D)プリンターに転送して頭頸部固定具を作製した。比較対照として、放射線治療用固定具として実用化されている熱可塑性素材を用いて従来法(手作業)により頭頸部固定具を作成した。3Dプリンターで作製した頭頸部ファントムの固定具は、固定精度と線量特性の点で、従来法で作成した固定具と同等の性能を示し、臨床上、実用化できる可能性が示唆された。然しながら、CT撮像からデータを加工する迄に約2時間、3Dプリンターで出力するまでに約100時間程度の時間を要しており、今後の課題として、固定具の作成過程を効率的に短縮する必要があることが分かった。
著者
秋庭 裕 川端 亮 稲場 圭信
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

3力年の調査研究によって知り得たところと、今後の研究継続のための作業仮設は以下のとおりである。日本型新宗教の教団として、グローバリゼーションの先進地、アメリカ合衆国でもっとも広く受容されたSGI(創価学会インターナショナル)は、当初、「戦争花嫁」たちの国際結婚によって海を渡った。同時に、結婚によって、その教えは国籍・民族の壁を越えて広まる契機をつかんだ。次の段階は、ロサンゼルスを中心とする西海岸で、カウンター・カルチャーとの出会いをとおし、アイデンティティを模索する若者層に広まった。1970年代のSGIは、日系人とヒッピーの若者を主要な担い手として、「アメリカ化」をとげていった。「アメリカ化」は、経典類の英語への翻訳とそのいっそうの洗練、教団組織の役職への現地の人びとの積極的な登用、組織運営などへのアメリカ的な習慣の採用などからなるが、アメリカ化のプロセスは、直線的に進んだのではない。それは、試行錯誤的で、ときには混乱をともないながら、80〜90年代を通じて徐々に達成された。その結果、人びとが極度の緊張状況を強いるグローバリゼーション化の著しいアメリカ合衆国において、民族や階層を越えて、SGIに入会する人びとに増加につながった。救済論的には、キリスト教的世界観、罪の意識とは正反対の、現世肯定的な救済を強調する、日蓮仏法に立脚するSGIの思想と世界観が、アメリカ合衆国という上昇志向の強い競争社会において、適合性が高いことが重要であろう。
著者
小林 千枝子
出版者
作新学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

1960年代の高等学校多様化政策は、一般には、多様な学科の成立を促したことと理解されてきているが、定時制・通信制課程に目を向けると、産業界の要請のもと、修学形態の多様化がもたらされた点が注目される。昼間二交代定時制は産業界の要請のもとに繊維産業の二交代勤務に合わせた定時制である。通信制と定時制を併用する隔週定時制もある。また、戦後各町村に設置された新制中学校のなかには、生徒数は少ないため「貧弱」であるという理由から廃校に追い込まれたケースがある。その背後に市町村合併があった。高度成長期を境に農林漁業から工業へと産業構造が転換したが、そのことは青少年を都市部へ突き動かす役割を果たした。
著者
寺内 直子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、明治時代以来、現代に至る、これまでの雅楽の「復元」研究と「復元」演奏の目的・方法論・実際を整理し、再評価するとともに、現代日本の音楽文化における雅楽の「復元」の可能性と、その歴史的、社会的意義を明らかにするものである。具体的には、1)明治末から第二次大戦までの20世紀前半、2)1945~1970年代前半、3)1970年代後半~1980年代、4)1990年代以降の四つの時期に分けて、それぞれの時代の「復元」研究と演奏の特徴を、資料批判、音楽的解読、鳴り響く音への実現の手法の観点から考察、整理している。
著者
稲葉 みどり
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、第一言語と第二言語の物語文の発達過程を比較することにより、創造的発話(物語文)の発達過程、産出に関わる心理的要因等を探ることを目的としている。第一言語の資料は3~11歳までの日本人の子どもと成人から、第二言語の資料は、英語を母語とする初級から上級までの5つのレベルの日本語学習者から収集した。両グループのデータをMacWinney(2000)によるCHILDES、及び、宮田・森川・村木(2004)の日本語フォーマットを用いてCHATフォーマットでデータベース化して、解析した。研究からは、幾つかの両者の類似点と相違点が明らかになった。研究ではその要因を考察した。
著者
嶋田 茂
出版者
産業技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

スマートフォンやタブレットPC等モバイルディバイスの普及とWi-Fi 等の高速無線通信網の発達により,移動カメラで撮影された映像を共有するサービスが提供されるようになってきた.本研究ではこれらのサービスを,より高品位の親密なコンテキストとして提供するための技術を開発することを目的とした.UGC(User Generated Contents)形態で集積される映像データを高速にデータベース化し,時空間条件からコンテキストとして提供するまでのシステムを実現するために,次のような課題の検討を行った.(1)時空間条件検索に適合したデータベース構造,(2)ストリームデータ処理系の導入による映像データベースの高速構築方式,(3)プライバシー保護コンテキストサービスのための画像処理方式,(4)通信環境に依存したスケーラブルな映像配信方式.そして,これらの技術を統合した新たなコンテキストサービスシステムを開発し,その有効性を確認した.
著者
後藤 美映
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、ダンテの『神曲』を受容するという形でロマン派第二世代の詩人たちによって表明された政治的美学的改革とコスモポリタニズムの精神性とを明らかにした。具体的には、『神曲』は、ロマン派詩人の叙事詩創作に大きな影響をもたらし、当時の叙事詩に要請された伝統的な様式を超える、革新的、近代的なスタイルの範となったことを呈示した。また、ダンテ受容と軌を一にして、ロマン派の詩人たちが唱えた新しい「ヨーロッパ」文学とは、『神曲』に内在する普遍性と個との有機的調和によって生み出される、コスモポリタン的知の循環と革新性であったことを明らかにした。