著者
佐藤 久美子 梶川 祥世 庭野 賀津子 皆川 泰代
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

第1に、英語の絵本の読解力に優れた子どもは、英単語の音のみならず、読み手の声の調子、絵、背景的知識、推測力など様々な学習方略を使い、内容を統合的に理解する過程が明らかになった。一方、読解力が弱い子どもは、絵にのみ集中する傾向があり、他の読解方略を有効に使うことができない、という特徴を明らかにした。第2に、母親と子どもの対話を分析し、発話力の高い子どもの母親は応答タイミングが早く、発話時間が短く、話しかける時はゆっくりと話すという特徴を見出した。こうした読み方が、子どもの理解力を促進することが解明された。
著者
森田 直子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1970年代に入るまでは低級文化と見なされていたコミックスの文化的認知について、芸術、教育、文化的機構などとの関係から考察するものである。まずコミック作家が経験した文化的闘争の最古の一例として、19世紀スイスの作家ロドルフ・テプフェールの経歴をとりあげた。かれの理論的テクスト等の分析から当時におけるコミックスの文化的認知の困難さとその背景を明らかにした。また、現代の日本とフランスについて、コミックスと諸芸術の関係、子ども観、教育制度などの違いをふまえ、文化的認知度をはかるための有効な方法論を吟味するとともに、今後の国際的なコミックス研究のありかたについて提言も行った。
著者
宮島 郁夫 尾崎 行生 小林 伸雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

南米原産の花木であるジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)の北部九州における形態的花芽分化の開始期は4月初旬であることがわかった.ジャカランダの花芽形成には低温(15℃)に1ヶ月以上遭遇することが必要であり,正常な開花には2ヶ月以上の低温期間が必要であると思われた.ジャカランダ花弁の主要アントシアニンはマルビジンに複数のグルコースと脂肪族有機酸が結合したアシル化アントシアニンであると推定された.
著者
栗田 明良 天明 佳臣 中野 いく子 奥山 正司 鈴木 春子 宮田 和明
出版者
(財)労働科学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本調査研究は、ホームヘルパーや訪問看護婦等の労働・生活時間構造の分析を通じて在宅での24時間介護の展開条件にアプローチし、以てホームヘルパー等の「適正な活動条件」の整備と「適切な人材」の確保に資することを目的として取り組み始めたものである。しかし、介護保険法の2000年4月実施に向けた「事業費補助方式」への移行に伴って「24時間対応(巡回型)ホームヘルプ」という概念それ自体が法制上から消え、本調査研究の遂行にあたっても大幅な手直しを迫れらることになった。「24時間対応型」在宅介護サービスに対するニーズとサービス提供の現状を俯瞰するために在宅介護支援センターの活動実態を把握し、その上でホームヘルパーや訪問看護婦(士)の生活時間調査を実施するという迂回的な方法を採用せざるを得なくなったのであるが、結果的には、介護保険制度の導入直前における在宅看・介護労働従事者の生活時間構造を通して、24時間対応の展開条件を探ろうとした本調査研究の狙いは曲がりなりにも達成し得たものと考えている。ちなみに、「24時間対応型」在宅介護サービスの展開条件をめぐる主な論点を列挙しておくと下記のとおりである。(1)夜間巡回介護サービスのニーズをめぐって、料金設定を含む利用諸条件の見直しを試みること。(2)就業形態の多様化をめぐって、いわゆる「多重勤務」や「直行直帰」と「空き時間」問題等の実態を把握し、的確な雇用管理体制を確立すること。(3)昼間業務と夜間(巡回)業務の連続勤務を回避すべく要員の確保と適正な配置等を図ること。(4)持続可能なサービス提供のあり方について全面的に再検討を加えてみること。
著者
秋田 純一 小松 孝徳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

画像システムを構成する画素構造に着目し、その中で受光素子や発光領域など実質的に画像を構成する「有効領域」の画素内の位置が異なる4種類の画素を、順序を乱数で決定して配置することで得られる「擬似的不規則画素配置」が、カメラやディスプレイにおける見た目のきれいさの向上や、あるいは同じきれいさを少ない画素数で得られることが示された。これにより、同じ画素数であればよりきれいな、あるいは少ない画素数で同じきれいさをもつカメラやディスプレイを実現することができる。
著者
石川 達夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

まず、プラハの成立の事情を探ってゆくと、プラハはヨーロッパでもかなり特殊な地位にある町であることが明らかになった。「プラハ」の名の語源に関しては様々な説があるが、極めて信憑性の高い説によれば、「プラハ」は「プラヒ」(浅瀬)という言葉に由来する。ヨーロッパの中央に位置する町プラハは、エルベ川支流のヴルタヴァ川の浅瀬(プラヒ)でヨーロッパの東西南北を結ぶ道が交差する地点にできた町であり、古来ヨーロッパの十字路だったのである。しかし、人口に膾炙した伝説によれば、「プラハ」は「敷居」に由来するという。これは、プラハを創設したチェコ最初の王妃リブシェにまつわる伝説であり、この有名な伝説は時代と共に変容しながら、チェコのみならずドイツの様々な芸術作品を生んでいった。このように、プラハの様々な固有名詞に関する一連の研究によって、プラハの極めて興味深い文化史を掘り起こすことができた。プラハは、町の成立当初から、単にチェコ人だけの町ではなく、ユダヤ人とドイツ人の町でもあった。プラハの文化史を辿ることによって、その特徴を成す複数文化的な性格を明らかにすることができた。特に、ヨーロッパの様々な民族の人々がプラハにやって来て、チェコ人以外の芸術家たちが壮麗な宮殿や見事な彫刻を造ったバロックの時代、やはりヨーロッパの様々な民族の人々がプラハにやって来て、国際色豊かな文化を形成した両大戦間の時代など、プラハはヨーロッパの文化の十字路と呼ぶにふさわしい性格を有してきたことが分かった。一九三〇年代にプラハに移住した、チェコ語の姓を持つオーストリアの画家・劇作家オスカル・ココシュカが言ったように、プラハは「ヨーロッパが最後に辿り着いた、コスモポリタン的な中心地」になっていたのである。
著者
土屋 好古
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、ロシア第一次革命を、伝統的な帝国的統治と「長期の19世紀」という時代の大きな要素であった国民形成との相克という観点から考察した。第一に、日露戦争の失敗の中で、専制体制を批判する左派自由主義の人びとは、明治維新後立憲体制を構築し国民国家となった日本を一つのモデルとしたこと、第二に彼らの構想は、「性と民族の別なき四尾選挙」に基づく市民的国民形成を志向するものであったこと、などを明らかにした。
著者
鳥羽 研二
出版者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、認知症患者の筋・運動系機能の低下の特性を明らかにし、脳画像解析等を用いて認知症の疾患別に転倒リスクの解析を行った。杏林大学もの忘れセンター受診患者のうち、転倒の記録がとれ、研究の同意が得られた約400名を対象とした。評価項目は認知機能、意欲、うつ、ADL等の総合的機能評価、Up & Goテスト(TUG)、バランステストその他の身体機能検査、転倒スコア、脊椎後弯角測定、足関節可動域、脳血流シンチグラム、血液生化学検査等であり、以下の成果を得た。(1)認知症の病型別解析で、レヴィ小体病と脳血管性認知症の転倒が有意に高頻度であった。(2)認知症高齢者の意欲が低下する機序として、前頭側頭葉のほか視床、大脳辺縁系や白質の血流障害が関連する可能性が示唆された。(3)足関節可動域の減少ならびに、脊椎後弯角の増大が転倒率の増大と関連していた。(4)認知症外来患者98名のうち1年間で33名(34%)が転倒した。転倒者と非転倒者で転倒歴、転倒スコア、老年症候群保有数、開眼片足立ち時間、TUG、Functional reach(FR)、重心動揺距離、血清P, Alb濃度に違いが認められた。(5) Ca拮抗薬服薬患者はレニン・アンジオテンシン阻害薬服薬患者に比べて大脳白質病変の程度が強く、大脳白質病変の程度は大動脈のスティッフネスが亢進していた。(6)自覚的不安感を検出するハンカチテストは転倒予測に有用である可能性が示され、陽性患者は、ハンカチの把持により両側後頭葉の血流増加が見られることが示された。(7)血中ビタミンD濃度は握力、TUG、FRと有意な相関を示した。(8)マウスの両側頸動脈外周を微小コイルを被覆することにより脳梁部の虚血障害を起こすことができ、モデルマウスの作製に成功した。
著者
松澤 和宏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1996年にソシュール自身の手による草稿が発見され、それ以前に発見されていた草稿と共に『一般言語学草稿』(ガリマール、2002年)が刊行された。しかしながらこの版は数多くの判読上の誤りを含み、50頁にのぼる草稿を無視している。本研究の目的は注釈を付した文献学的な校訂版を作成し、ソシュールの沈黙に関わる問題を検討することであった。すなわち、なぜソシュールは理論的体系の試みを放棄したのか、という問題である。本計画は、草稿の解読に伴う困難のために完全には実現できなかったが、草稿が我々に示すのは一般理論の構築の不可能性を表現しているもう一人のソシュールであることが明らかになった。
著者
田中 志信 村田 和香 山越 憲一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 生体情報の宅宅収集壮置の試作: 既に開発済みの心拍出量と血圧の無拘束同時計測システムに被測定者の姿勢状態を記録する簡易行動シナリオ計測を組み合わせたシステム(生体情報の在宅収集装置)を試作した。姿勢計測の角度分解能は約3゜、測定間隔は0.1,0.2,0.5秒で静止画表示・アニメーション表示・ヒストグラム解析などのが可能である。循環生理情報に関しては血圧・心拍出量と共に末梢循環抵抗、心拍数、一回拍出量が演算処理され24時間分のデータがトレンド表示される。健常成人を対象としたフィールド試用の結果、無拘束下で得られた循環動態の24時間計測値と被験者の各種行動・姿勢変化との詳細な対応付が可能であることが確認された。2. スペクトル析による循環生理機能の日内変動の解析: 健常成人を対象に1日目は通常の日常生活、2日目は終日ベッド安静という条件下で連続48時間の無拘束循環生理機能計測実験を行い、日常生活における行動様式が各パラメータに及ぼす影響を検討した。その結果、各パラメータともに概ね12時間及び24時間を主な周期とする日内変動が存在し、行動様式の違いは12時間周期に対してはあまり影響を及ぼさないものの概日周期に対しては大きく影響することが確認された。3. 高齢者を対象とした日常生活下における姿勢解析: 生活環境の異なる高齢者を対象とし日中約10時間の無拘束姿勢計測を行った。対象者は年齢71〜83歳の女性8名で、日常生活下における行動や活動性というものが客観的に評価可能であることが確認されるとともに、生活環境の違い、すなわち在宅か施設や病院で生活しているか、さらには同じ在宅でも単身か家族と同居かといった違いで、日常取る姿勢の種類や頻度、活動性に大きな差が見られることが客観的に示された。これらの結果から、何らかの障害を持つ高齢者の治療に際して「寝たきり」状態を惹起させないためには、障害の快復状況に応じて患者の生活環境をも考慮すべきであることが確認され、機能面の評価に加え、生活スタイル、生活信条をも把握したリハビリテーションプログラムの必要性が示された。
著者
崔 雄 八村 広三郎 伊坂 忠夫 遠藤 保子 関口 博之 吉村 ミツ 丸茂 美恵子 阪田 真己子
出版者
群馬工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目標は、時間の流れとともに消失してしまいがちな舞踊の情報を、モーションキャプチャによる身体動作と各種の生体情報の同時計測によって計測・保存し、モーションキャプチャだけでは解析できない舞踊での演技者の足を使う方法(足づかい)、などを定量的に分析することである。さらに、モーションデータから類似する身体動作を検索するシステムとデジタルアーカイブされた能のモーションデータをインターネット環境に公開して、VR環境で観覧できるシステムの構築も行った。その結果、舞踊動作データの数値的解析だけでなく、VR環境におけるデジタルアーカイブを行うことによって、舞踊家や舞踊研究者は対象の舞踊についての新たな情報をフィードバックとして得ることができると期待される。
著者
夏目 淳 根来 民子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

熱性けいれん重積後早期に行ったMRI拡散強調画像(DWI)で24人中7人、約1/4の小児に片側海馬の異常高信号が認められた。異常は発作の持続が長い患者でみられやすかった。急性期にDWIで異常高信号を呈した海馬は1カ月後には萎縮を呈していた。重積発作後2年の時点でFDG-PETを行ったところDWI異常と同側の側頭葉ではブドウ糖代謝の低下がみられた。ただし典型的な内側側頭葉てんかんにおけるブドウ糖代謝の低下よりもその程度は軽かった。また熱性けいれん重積症の患者ではMRIでHIMAL (hippocampal malrotation)と呼ばれる先天性の海馬の形成異常を示唆する所見もみられた。易けいれん性を引き起こす先天性の素因と重積発作による海馬の損傷の2段階の機序によって後に側頭葉てんかんが発症するという2ヒット仮説が考えられた。
著者
足立 浩平
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

入力×出力×個体の三相データ配列を分析して,入力と出力に介在するコンポーネントを摘出する複数の主成分分析法に関する研究を行った.この研究によって,複数の主成分分析法の中から最適な分析法を選択する手法を完成して,選択されたモデルの解を有意味な単純解に変換する方法を開発した.
著者
岸井 隆幸 木下 瑞夫 大沢 昌玄 木下 瑞夫 大沢 昌玄 日野 祐滋
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

わが国が誇る都市開発手法である「土地区画整理」の技術がタイ国へ技術移転された過程を実証的に評価分析し、今後とも必要とされている他の国々に対する土地区画整理技術移転のあり方を理論的に考察した。また、タイ国への技術移転事例分析を通じて、今後より一層の普及を図るために「土地区画整理事業に関する技術の国際移転」に必要な技術開発の具体的課題を明らかにした。
著者
北郷 悟 木戸 修 橋本 明夫
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究目的芸術分野における立体表現の研究として、アナログ的な造形表現とデジタル造形表現の違いについて。またその両面における可能性について探り、教育研究としての新しい芸術表現の獲得を目的とした基礎研究を行う。研究方法15年度研究 仮想空間による立体造形表現と教育研究のためのデータ収集と考察。(1)レンジファインダー型立体スキャナーによるデータ収集として、人間の頭部及び人体のデータ収集。・JAXA宇宙航空研究開発機構との大学共同研究に研究参加した際の航空機無重力実験において本研究を実施。人間頭部の立体フォルムデータ取得、また地上データとしての頭部フォルム・人体フォルムデータを比較検討することにより形状変化について研究をした。・人の歩く姿を立体データとして取得。人体のバランスとフォルムの美についての彫刻における研究題材とした。(2)コンピュータ造形システムを使用した立体造形の研究・東京大学情報工学部の協力により出力造型機を使用し、(1)における収集データを立体に置き換え20cmサイズのワックスの彫刻としての可能性を研究した。16年度研究 コンピュータ造形システムを使用した立体造形の研究(1)立体スキャナーの実写データとコンピュータ造形によるフォルムを組み合わせた研究。造形制作の比較による新しい制作方法と表現関係を見出し、彫刻におけるデジタル表現の可能性を研究。また古美術品のデジタルデータ化における応用研究も行った。(2)セラミック鋳造研究としてデジタルデータからブロンズ彫刻として新しい鋳造法の研究を行った。研究成果としての仮想空間環境のデジタル制作と実素材によるアナログ的制作の比較による新しい制作方法と表現関係は、彫刻表現におけるデータとしての記録の有効性と生産性、表現性に多岐に可能性が拡散し今後の研究重要性を認識した。
著者
宗宮 弘明 山本 直之 後藤 麻木 吉野 哲夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究によって、新たに23種の発音魚が記載された。マツカサウオ(キンメダイ目マツカサウオ科1種)、カマキリ(カサゴ目カジカ科1種)キントキダイ科魚類(7種)、キンチャクダイ科魚類(11種)、コトヒキ(スズキ目シマイサキ科1種)、イシダイとイシガキダイ(スズキ目イシダイ科2種)などが発音器を持つことが正確に記載された。マツカサウオ、カマキリ、コトヒキ、イシダイとイシガキダイは後頭神経を使って鳴き、キントキダイ科魚類とキンチャクダイ科魚類は脊髄神経を使って鳴くことがわかった。とくに、キンチャクダイ科魚類では、7属26種のうちサザナミヤッコ属(6種)とアブラヤッコ属(5種)だけが発音することもわかった。いずれの発音魚類も後頭神経か脊髄神経のどちらか一方だけを使って鳴き、両方の神経を使って鳴く魚種は観察されなかった。
著者
鈴木 光太郎
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

月の錯視とは、地平線方向の月が真上方向の月よりも大きく見える現象である。実験1では、ほぼ完全暗黒にしたホール内で月の錯視をシミュレートした状況を作り、月が下方向に見える場合について検討した。その結果、下方向の月も水平方向の月に比べ過小視されるという結果が得られた。実験2では、野外で鏡に月を映し出して、単眼視観察と両眼視観察の比較検討を行なった。その結果、両眼で観察することが月の錯視の生起には決定的に重要であることが示唆された。
著者
津野 柳一
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ローマ法源のなかでも最も重要な史料であるローマ法大全、なかんずく学説彙纂(Digesta)の文言を手がかりにして、今日の法学者にとってますます理解が困難なラテン法文の解釈のためのコンピュータを使用した支援システムを構築するための基礎的知見をえることが目的であった。そのために、リンツの機械可読形式のデータをさまざまに処理して、分析のためのToolを作成した。本年度は、研究代表者のもうひとつの課題である17、18世紀法学大学文献(いわゆる学位論文)研究と連繋させて、内容分析という方法を見い出した。それも、コンピュータ利用の統計を応用したデータ解析としてである。意味論的質的分析にはあえてふみこまず、形式的計量的分析に力点をおいた。この方法は判例分析や司法試験への応用が期待される。
著者
上谷 芳昭 外山 義 三浦 研 外山 義
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、新設および既存のユニット改修の事例を取り上げ、以下を明らかにした。入居者、職員、敷地が同一のまま、六床室を主体とする従来型の特別養護老人ホームから、全室個室のユニットケアへ建替えられた特別養護老人ホームJ苑の建替え事例を取り上げ、全室個室ユニットケアを導入した場合、入居者のQOLがどのように変化するのか、また職員の介護負荷が増加するのか、時系列的な非参与行動観察調査を行い、1)全室個室としても入居者のリビング滞在率が向上することで、個室化が直接引きこもりに結びつかないこと、2)トイレが分散配置された結果、排泄の自立度が向上するケースが見られるなど、ADLの改善に寄与すること、3)職員の介護時における身体活動量を時系列的に調べた結果、ユニット化により一時的に介護職員の身体活動量は大幅に増加するが、建て替え後5ヶ月で建て替え前に近い水準に近づくこと、4)重度の高齢者を想定したユニットの空間構成を検討する際には、いたずらに多様なセミプライベートおよびセミパブリックな空間を設けず、むしろコンパクトな移動動線計画を念頭に置くことの重要性、また、5)既存の特別養護老人ホームにユニットケアを取り入れた施設を対象とした調査からは、ユニットケアに伴う事務およびミーティング方式の見直しが介護職員のユニット滞在時間を増やし、その結果、入居者と関わる時間が増加することが示された。
著者
佐々木 けいし 柴田 尚 伊藤 隆介 羽子田 龍也 閔 鎭京
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

廃校等を芸術文化的施設として活用している事例を、全国46、海外2箇所訪問調査すると同時に、HPやFaceBookを活用して情報収集した。最終報告で全国94施設をリスト化し、うち北海道内19施設、北海道外5施設、海外2施設を具体的に紹介した。この数を基に、廃校の芸術文化的活用の割合は、全国で1.2%、北海道では3.5%であるという結論を導き出した。加えて「廃校・旧校舎アートフォーラム」を2回開催し、廃校の新たな文化施設としての側面の検証及び、近未来の日本型のアートスペースの在り方や運営法、可能性について検討した。