著者
色川 卓男
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の課題は、全国政令指定都市及び人口20万人以上の主要市区における消費生活センター及び消費者行政及び消費者教育・啓発施策の実態と課題を示すことにあった。政令指定都市は2008年に、主要都市は2010年に、いずれもアンケート調査及びインタビュー調査、施設調査を行い、その結果に基づいて分析を行った。典型的な例をまとめると、正規職員は人口20万人に1名配置されており10万人増えるごとに1名職員が増加していた。住民1人あたりの消費者行政予算は政令指定都市では50円を超えているが、主要都市では40~50円にとどまっていた。次に施設では、相談スペースとして、いずれも相談室を設置しており、政令指定都市では、閲覧スペース、消費者団体利用スペースと研修室がある。最後に相談では、平日はいずれも7時間以上相談を受け付けており、実質相談員数は人口10万人あたり0.6~1人ほど配置されている。また、消費者教育・啓発施策では、いずれの場合も消費生活センターを中心とする消費者行政担当部局による消費者教育・啓発施策は啓発施策がその中心であり,とりわけ出前講座が大きな比重を占める。しかし都市ごとに,取り組み状況が異なり,かなり格差がみられる。また消費者教育施策においては,多くの都市がなかなか実施できていない。
著者
吉原 利忠
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

脂質膜,細胞内の酸素濃度を明らかにするためにレシオ法に基づいたプローブ分子を設計・合成した。合成したプローブ分子の発光は溶液,脂質膜中において酸素感受性の低いクマリン343の蛍光と酸素感受性の高いイリジウム錯体のりん光を示した。これらのプローブ分子のレシオ比(りん光強度/蛍光強度)は酸素濃度が減少するにつれて増加した。また,プローブ分子を培養細胞の培地に添加して蛍光顕微鏡で観察したところ,細胞から蛍光とりん光が観測され,細胞内酸素濃度計測のために有用な分子であることが明らかとなった。
著者
桑原 直巳
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

西欧における初等・中等学校の成立に際しては近代、カトリック修道会、特にイエズス会などを初めとする活動修道会(教育修道会)の役割は決定的であった。本研究では、従来我が国ではあまり顧みられなかった修道会の設立による初等・中等学校における教育活動およびその基盤としての修道霊性について、その倫理学的・倫理思想史的な意味を明らかにし、世俗的な「公教育」における道徳・倫理教育およびその理念との比較研究を行った。
著者
知念 宏司
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究においては、研究代表者が以前から関係している「剰余位数分布問題」において成果が得られた。これは、整数 a (2 以上で完全 h 乗数ではない)を固定し、素数 p に対して a の mod p での位数 D_a(p) の分布を調べる、より具体的には、D_a(p) を k で割ると l 余るような素数 p の自然密度を調べる問題である。この問題の拡張として、平方剰余の条件を付加した場合 (Chinen-Tamura, 2012)、および、mod p のかわりに mod pq とした場合 (Murata-Chinen, 2013) について成果が得られた。
著者
松井 伸也 柳沢 卓
出版者
北海道情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

粘性流体を記述する基礎方程式Navier--Stokes方程式の特異摂動を研究するため,Navier--Stokes方程式の構造の解析およびその特異摂動方程式としてのPrandtl方程式の構造の解析を計画した.共同研究者の柳沢先生(奈良女子大学)とは,Prandtl方程式の特異解・(非圧縮性)Navier--Stokes方程式の解の微分可能性・圧縮性Navier--Stokes方程式のゼロ粘性極限について,様々な議論を行った.具体的な論文にはならなかったが,Prandtl方程式についてのお互いの認識,特に非定常Prndtl方程式の解の存在定理の予想しうる形について等,を新たにしたものがあった.また儀我先生(北海道大学),石村先生(一橋大学)とも共同研究を行い次の結果を得た.儀我先生とは,有界な初期値から始まるNavier--Stokes方程式の解について,今まで知られていなかった解の時間的局所存在・一意性・2次元の時間的大域解の存在を示した.さらに半線形放物型方程式のBlow up rateを複雑なBoot strap methodを使い計算した(準備中).直接流体とは関係のない方程式であるが,この研究が放物型方程式の解にたいする特異性解析の解析手段を得ることに役に立つ事は疑いようの無いことである.石村先生とはPrandtl方程式の自己相似解(Blasius解)が爆発する場合を取り扱い,詳しいBlow up rateを計算した(投稿中).なお投稿中の論文は(with N.Ishimura) On blowing--up solutions of the Blasius equation である.準備中の論文は(with Y.Giga and T.Sasayama) Blow up rate for a semilinear heat equation with subcritical nonlinearityである.
著者
関口 博之 八村 広三郎 崔 雄 古川 耕平
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

布の表現モデルとして今日広く用いられている、「バネ=質点モデル」の妥当性を検証するとともに、新しい布表現モデルの検討を行った。サテン、縮緬(ちりめん)、日本舞踊衣装(今回は振袖生地を使用)の3種類の生地について、モータとソレノイドを用いて外力を加えたときの布を動きを、光学モーションキャプチャシステムを用いて取得した。それぞれの生地の実際の動きと、バネ=質点モデルを用いて生成した布の動きを、生地に付けた反射マーカーの座標値をもとに比較した。その結果、縮緬のような薄く、柔らかな生地に対しては質点質量やバネ係数の変更によりバネ=質点モデルでほぼ近似することが可能であることがわかった。一方、我々がターゲットとする、振袖のような厚みのある固い生地に対しては、この種の生地で生じる、部分的な折れ曲がり現象を再現できず、従来のバネ=質点モデルによるシミュレーションには限界があることがわかった。そこで、このような生地に対する新しいモデルの開発に着手した。基本的なアイデアとして、従来モデルのように布全体を質点の集合として表すのではなく、不定型な剛体の集合体として表すことを考えた。これを検証するために、まず、互いにリンクさせた剛体の動作検証プログラムをマリオネットを題材として作成した。次のステップでは、このプログラム上で、布を剛体のリンク構造として表したモデルの動作シミュレーションを行い、その挙動を見ながらモデルの改良をを進めていく。
著者
稲垣 照美
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,赤外線センシングの利点を地雷探査に応用して,探査・除去作業に関わる危険を低減する技術の可能性について,数値シミュレーションとモデル実験の観点から探査に付随するメカニズム,探査限界,および探査に付随する影響・因子などについて総合的に検討を加えたものである.その結果,以下のことが明らかになった.なお,数値シミュレーションは,実際に取得した自然環境条件に基づいている.・提案した物理モデルは,従来の金属探知機などで探査しにくいプラスチック製地雷を想定しているが,実際の地雷探査を実施する上で有効であることを一連の数値シミュレーションから明らかにした.・太陽放射や自然環境条件を援用した赤外線センシングによる地雷探査では,地表面放射率や日照時間帯などにより探査に最適な条件が存在する.すなわち,太陽光エネルギーを最も受け易い時間帯及び日没後に熱エネルギーの方向が変化する時間帯が最も赤外線探査に適している.・赤外線センシングによる地雷探査では,地雷が地中深くに埋設されているほど難しくなる.すなわち,太陽放射や自然環境条件に基づいた探査を実施する場合,砂漠における赤外線探査の限界埋設深度は,地雷構成物質・物性などに依存するものの,100mm以下である.・地中に地雷が埋設されていない箇所でも,地中に大小の木片・石片などの混在物が存在したり,地中に水分含有率の差異が存在したり,地表面の放射率が周辺より特異であったりした場合,赤外線探査が困難になる場合がある.本手法のデメリットは,放射率が種々に変化している地表面や周辺土壌中に様々な混入物が存在する場合に探査が難しくなることである.また,ジャングル地帯の地雷探査などでは,地表付近に生育した草木などが障害物となる.これに対して放射率を特定し易い砂漠地帯では,赤外線地雷探査が比較的容易であろう.
著者
河合 秀樹
出版者
室蘭工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

固液混相流や固気混相流における最適な攪拌・混合法を見つけることは, 化学装置やバイオリアクタ, あるいは鉄鋼炉の設計等において重要な指針を与える. 本研究では攪拌混合が比較的緩やかなTaylor vortex flow(TVF)に注目し, 微生物などの増殖率の増加効果や濾過装置への応用を視野に入れた流れの解析に主眼をおいた. TVFは単純な装置であり, 乱流へも段階的に遷移する(スペクトル遷移)ため, カオス混合など, せん断力に弱い微生物や細胞の効果的な混合法の開発に大きく発展すると思われるが, 未解明な点も多い.本研究では, アスペクト比が小さく(Γ=3), 上下境界端効果を有するTVFを用いて, その固液混合特性を可視化法, 並びに超音波流速分布計測法を用いて解析した. この結果, 渦モードによってカオス混合への遷移状況が大きく異なり, 渦自身が自励振動する場合や, 渦と渦の界面が振動する場合など, そのメカニズムが大きく異なることが明らかになった.また, このTVF装置を利用した光合成微生物増殖用バイオリアクタを試作し, 培養実験を行った. 光合成微生物が強いせん断流れによって破壊された場合の定量的な検出法を開発し, これを用いてTVFの効果を調べたところ, Re=30,000までの速い流れでも微生物は破壊されることなく順調に増殖した. ただし, Re>60,000では細胞破壊が検出される場合が観察され, 不安定な挙動を示した.
著者
滝沢 広忠 河崎 佳子 鳥越 隆士
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.聾学校、身体障害者更生相談所、精神病院で聴覚障害児・者に対してどのような心理検査が使用されているか、また施行法はどうか実態調査を行った。その結果、ウェックスラー式知能検査(特に動作性検査)が比較的よく使用されていること、実施にあたって、コミュニケーション方法で苦慮していること(口話、手話、指文字、身振り、筆談などさまざまな方法がとられている。)が明らかにされた。このことから、聴覚障害児・者に実施可能な視覚や動作を主とした心理検査の開発の必要性が示唆された。2.ろう学校で具体的に知能検査(WPPSI)がどのように実施されているか聞き取り調査を行なった。指文字と手話を主たるコミュニケーション手段としたトータルコミュニケーション教育を行っている奈良県立ろう学校教員の協力によるものである。この調査から、聴覚障害児を対象とした知能検査作成の具体的な課題が明確にされた。3.WISC-IIIの動作性検査にみられるろう学校生徒の特徴を明らかにした。ここでは絵画配列および符号問題を取り上げた。この結果、(1)絵画配列は聴児と比較して有意差は認められなかった。(2)符号問題は学年が上がるにつれ得点が低くなる傾向がある。(3)絵画配列より符号問題の得点が高い群は、手話をコミュニケーション手段とする人が多いことが分かった。このことから手話の意義が示唆された。4.WISC-IIIの動作性検査の手話翻訳版を作成した。これは手話を用いた知能検査のモデルとなるものである。
著者
江角 朋之
出版者
徳島文理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

6α, 7α および 7α, 20-ジヒドロキシアノネンは神経栄養因子増強作用を有することから,抗アルツハイマー病薬や学習改善薬開発のためのリード化合物として多くの研究者から期待されている.我々はキラルオキサゾリジノンを不斉補助基に持つα,β-不飽和カルボン酸へのジビニル銅試薬の1,4-付加反応が高いジアステレオ選択性で進行し,テトラアルキルキラル四級炭素を構築できることを見いだした.続けてSHMDSで処理したのち,ヨードメタンと反応させ,α-メチル化を行うと高ジアステレオ選択的に隣接位に不斉中心を導入できることも見いだした.
著者
大泉 俊英
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

耐糖能と感染性呼吸器疾患発症の関連について検討した。舟形町全住民対象の糖尿病検診の5つのコホートを対象に感染性呼吸器疾患発症と耐糖能との関係を、アンケート調査により発症を分析し、耐糖能3群について検討した。有効回答総数は2575名(男性1104,女性1471)、回答時年齢・男性67.2歳±12.4SD,女性69.2歳±13.2SD。年間の急性上気道炎発症回数はNGT群(平均0.70±0.024SE)に対しDM群(平均0.72±0.08SE)で有意差なく (p=0.764 Fisher's PLSD)。その他疾患(肺炎、尿路感染症、胆道系感染症)の発症についても、有意差は認められなかった。
著者
柏木 宣久
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

東京湾に於ける水質の長期変動の推定、ダイオキシン類の発生源寄与率の推定、熱帯降雨観測衛星搭載の降雨レーダにより得られるレーダ反射量に基づく降雨量の推定等を題材に、ベイズ的方法を用いたデータ解析法を開発すると共に、その応用について研究した。東京湾に関しては、ベイズ型時空間季節変動調整法を開発すると共に、水温、塩分濃度、COD、DO、窒素、隣等の測定データを解析し、湾内全体の水質の長期変動および季節変動を明らかにした。特に、水温については冬季に上昇し夏季に下降する傾向を見出し、併せてその原因が湾内への外洋水の流入量の増加にあるのを指摘し、窒素および隣については近年に於ける低減傾向が鈍化し、併せてCODの改善も鈍化しているのを指摘し、DOについては底層における低酸素水塊の月毎の消長を明らかにすると共に、その長期拡大傾向を指摘した。これらの成果を国際会議および関係雑誌に発表し、特に「The 5th International Conference on the Environmental Management of Enclosed Coastal Seas」では「The Best Effort Award」を受賞した。ダイオキシン類については、発生源寄与率を推定するための関数関係解析に基づくChemical Mass Balance法を開発すると共に、研究協力者が収集したデータを解析し、様々な媒体に存在するダイオキシン類の発生源の同定と寄与率の推定を行った。熱帯降雨観測衛星については、レーダ反射量から降雨量を推定する際の基盤となる雨滴粒径分布の同定について考察すると共に、NASAで運用している降雨量推定プログラムの改善に尽力した。その他、比較遺伝子地図を用いた未マッピング遺伝子の染色体予測法の開発や、疫学データの解析も実施した。
著者
西別府 元日
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

奈良時代の交通システムの要である駅家制が衰退した平安時代中後期にも、国司による任国内の交通機能が維持されていた。公的な旅行者が朝廷から派遣されると、国司は、任国内の地方豪族や、国司の政務執行機関である国衙に出仕する役人(在庁官人)に、命令を下し、旅行者に食事と宿泊施設の提供(これらを供給という)を命じた。こうしたシステムを駅家雑事という。この駅家雑事を担う人びとは、食事を提供し宿泊をする施設を提供することによって一定の権益を獲得したものと考えられる。その実態については、史料的制約もあって、明確にしがたいが、こうした施設が恒常化することによって「宿」の原初的施設が誕生したと考えられる。
著者
馮 忠剛 中村 孝夫 梅津 光生
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、従来の細胞組織工学的な手法による構築したコラーゲンゲル足場での心筋再生組織を基づいて、新しい技法・改進を開発・実現し、生体心筋組織拍動特性を有する心筋再生組織を作った。3年間の研究活動によって、以下の成果を得た。1.体外培養ラット胎児心筋細胞の遺伝子発現の比較実験によって、培養心筋細胞における心筋細胞の分化・成熟に係る重要な伝写因子であるSRFとmyocardinおよび心筋組織介在板の構成を司るN-cadherinとconnexin43の発現低下を示した。この知見に基づき、遺伝子転移技法によって、N-cadherinの強化発現を促す、心筋細胞間の相互作用を強化することを試みた。2.3次元コラーゲンゲル足場の添加物による高浸透性化、並びに培養液供給と老廃物代謝の改善を実現した。4種類の添加物に対して、それぞれの混入実験を行い、その内heparinとalbuminが足場のglucose透過係数を約2倍に上がることから高浸透性に最も有効であることを判明した。3.心筋再生組織構築の各々の過程により詳細な検討・最適化を行った。その内二つ重要な処理は:i)心筋採取および組織構築におけるコラーゲンナーゼの残留効果を無くすために培養液にcysteineの添加が有効である;ii)ゲル形成の過程に、ゲルに埋め込む心筋細胞の沈殿による不均等性を防ぐためにゲル形成直後のゲル反転が必要である。4.新型電気一応カバイオリアクタを開発した。従来のバイオリアクタと違って、新型における応力の印加は外部から能動的な方式ではなく電気刺激による再生組織の収縮に伴う収縮応力と収縮ひずみの自然登生である。これによって、より実際の心筋組織収縮に模擬することができ、電気刺激と応力印加の協調も自然に解決された。5.再生心筋組織の拍動特性を解明するために、独自の拍動変位一拍動力解析法を開発した。6.以上の方法によって、構築した3次元心筋再生組織はその拍動力が約16倍に向上させ、最大収縮ひずみ速度と最大収縮力が対応する生体内の心筋組織拍動特性と似た特性を有している。
著者
中村 久美
出版者
京都ノートルダム女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戸建住宅および公団分譲集合住宅を対象に住み方調査を行った.その結果,選択的に保有,出納される生活用品の保有率の高さや,収納や出納状況に対して不都合を抱える世帯の多さ,中でも死蔵品の問題を明らかにする一方,戸建住宅における納戸保有率の高さと,それらが4畳未満の小室中心でほとんどが寝室近くや屋根裏などの寝室圏に設置されていることを明らかにした.以上より,持ち物の見直しなど,生活管理行為と集中収納空間の使いこなしによる収納様式の構築の必要性を指摘した.さらに集合住宅では,集住のメリットを活かしたモノの管理に関わる共用,循環のシステムも含めた収納様式の構築を提唱した。
著者
友田 卓爾
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

第一章から第五章で、ロンドン民衆の動向に視座を据えて革命の政治過程を跡付けたが、レベラ-ズ運動の中核的な担い手となったセクト(分離派)を中心に総括すると以下のとおりである。革命初期のロンドンの大衆行動は、反主教請願『根と枝』と反ストラフォードのデモを軸にして展開した。運動の担い手はthe middle and poorer sort of the peopleであった。中産市民層のデモは「マ-チャント」を主体とする「穏やかなふるまい」であり、もっとも目立ったリーダーはベン(John Venn)であった。一方、下層民衆のデモはサザァクの「トレイズマン」、従弟、「若者たち」のほかに運搬夫、荷馬車の御者など種々雑多の職種の人々を含み、かれらは武器を帯びていた。しかし、それは無秩序な性格のものではなっかた。群集を指導したリーダーたちの中には、のちのレベラ-指導者リルバーンがおり、また主教廃止キャンペーンの最前線にはセクトの人々がいた。かれらは、かれら自身の独立会衆をもつ自由、信仰に対する寛容(良心の自由)を国家から確保せねばならなかったからである。分離して「職人説教師(mechanic preacher)に従うという行動は、自覚されたにせよ、されなかったにせよ、教会・国家・社会のかれらの上位者からの独立を主張するものであり、階級的な挑戦であった。国家と教会の一体化をもって基本的な国家体制と考える人々の目には、国教会の廃棄は国家の解体の危険を胎むもの、社会秩序を破壊するもの、と映った。そうした危惧は、レベラ-ズの登場を予見するものであった。革命の高揚期に彗星のごとく現われて消え去ったレベラ-ズは、多様な成分からなる矛盾を内包した運動体であった。レベラ-ズ運動の最大の矛盾は、世俗政党の設立をめざしながら、セクトに依存しセクトを組織的基盤とした点にあった。セクトは「良心の自由」の保証をもとめて軍隊に参加し、軍隊急進運動の担い手となったが、かれらは結局宗教上の見地からしか自由を捉えることができなかったからである。
著者
谷崎 久志
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

近年のパーソナル・コンピュータの発展に伴って,計算量が膨大な(computer-intensive)推定・検定を行うことが出来るようになってきている。その一つには,乱数を用いた手法(いわゆる,モンテ・カルロ法)があり,もう一つはノンパラメトリックによる手法が考えられる。このモンテ・カルロ法やノンパラメトリック法等のcomputer-intensiveな手法を用いて,計量経済学で利用される推定・検定問題に考察し,それらを実証分析に応用した。
著者
遠藤 克子 田中 治和 塩村 公子 宮崎 法子 渡部 剛士
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、社会福祉士に必要とされるソーシャルワークの援助技術を効果的に教育する方法を開発することにある。我々が学部学生を教育してきた経験によれば、社会福祉援助技術現場実習は、学生の中で現場で体験するものと大学で学ぶものとがうまくつながることができれば、より効果をあげるものである。この「つながり」を促進するためには、学生・現場指導者・大学教員が、学生の現場での体験を表現し伝えあう為の、共通して使用できる道具が必要となる。したがって、本研究の最終的な狙いは、この「つながり」と「コミュニケーション」の為の道具を作り上げることになる。研究対象としては、特別養護老人ホームにおける実習を選択した。学生の実習記録に基づき、彼らが実習中に何をするかのカテゴリー化をまず行い、次に各カテゴリーにどのくらいの時間が使われたかを調べた。この研究の結果、学生の実習体験を述べるには少なくとも3次元の表現が必要であることがわかった。故に我々はモジュールという単位に着目し、これをもって学生の体験を整理することに決定した。実習現場の指導者の意見もこのモジュールの内容に反映するべく聴取された。モジュールの内容は以下のとおりである。(1)実習行動(介護、他機関との連絡・調整、行事・活動、オリエンテーション、相談援助、その他)x(2)学習対象(個人、家族、施設及びそのサービス、地域、制度、自己覚知、一般化、その他)x(3)学習の焦点(コミュニケーション、問題理解、援助計画、援助の実施、評価、記録)5事例を選びこの枠組みの妥当性を検証した。今後の研究の方向性としては、(1)モジュールの1単位ずつの内容をさらに検討すること、(2)モジュールという枠組みを実際に使用し、学生・現場指導者・大学教員からフィードバックを得てその適用性と効果を検証することである。
著者
小林 皇 伊藤 直樹 舛森 直哉 高橋 聡 小林 皇
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

Androgenの減少は骨に対しては代謝の亢進につながることが明らかとなったが、短期間では骨粗鬆症の発症のレベルまでは骨密度の減少はなかった。握力などの筋力には経過中に変化を認めなかった。メタボリック症候群で注目される物質のひとつであるアディポネクチンも経過中は両群に変化を認めなかった。脳に対する影響として、認知障害の有無をミニメンタルステート検査を行ったが経過中に両群とも変化は確認できず、認知能に対する影響は確認できなかった。このように、アンドロゲンの低下が早期より影響を及ばす臓器としては生殖器以外では骨が注目される結果であった。
著者
北中 英明
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、企業が展開する宣伝広告活動に関して、既存マス媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビの四大媒体)による広告効果が、インターネット広告やブログやSNSといった新しいコミュニケーション手段を含むクロスメディア状況下でどのような影響を受けているかについて焦点を当て、そのメカニズムを構成的手法(エージェント・ベース・アプローチ)によって解明することを目的としている。