著者
森 信介 鶴岡 慶雅
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

与えられた盤面およびそこから先読みを行った結果得られる盤面に対して解説を生成方法を提案し自動解説を実現した。この過程で得られる用語と局面の自動対応(シンボルグラウンディング)モジュールを用いて言語のキーワードによる局面検索が実現できることを示し、情報検索のトップ会議(ACM SIGIR 2017)に採択された。また、本研究テーマを通して作成した将棋の固有表現コーパスを LREC 2016 にて発表し、これを用いて、局面を参照する固有表現認識器を提案し、言語処理のトップ会議である ACL 2016 にて発表を行った。
著者
塔村 真一郎 亀田 恒徳 宮本 康太 松原 恵理
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

スズメバチは木くずを唾液で固めて巣を作ることから、スズメバチの唾液が木くずの接着剤として機能することに着目し、唾液中に含まれる有効成分を単離・同定することで、天然系の構造用木材接着剤を開発することを目的とする。入手できたキイロスズメバチ等複数種の巣を解体して内部構造を調べたところ、巣は多層構造となっており、各巣盤をつなぐ支柱は長さがどれもほぼ一定であること、また直下の巣盤の面積や重さに応じた支柱の径や本数で構成されていることがわかった。またキイロスズメバチおよびコガタスズメバチの成虫の唾液腺および巣から抽出した成分の単離・同定を試み、それらの接着性能について検討した。
著者
齋藤 秀之 瀬々 潤 小倉 淳
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ブナ目を代表してブナのゲノム構築法について検討を行い、ドラフトゲノムを構築した。ゲノム配列をアセンブリするソフトウェアはPlatanusが最良であった。ブナゲノムは対立する遺伝子座のヘテロ配列が大きく頻度が高い特徴をもつことが示唆された。RNA-seqのDe novoアセンブリは遺伝子の配列決定において配列数が収束せず、遺伝子推定にはゲノム配列情報が必須と考えられた。遺伝子ファミリー内での遺伝子の機能予測には、塩基配列情報に加えて遺伝子発現パターンが補助情報として有用であることが示唆された。最終的に523Mbp(カバー率96.9%)が完成した。
著者
川村 清志 葉山 茂 青木 隆浩 渡部 鮎美 兼城 糸絵 柴崎 茂光
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,被災地域における文化的支援が地域の生活文化の復旧に貢献しうるのかについての可能性を検討し,文化的支援の新たな可能性を、フィールドワークを通して検証することができた。東北地方太平洋沖地震後,有形・無形の文化財を救援してきた文化財レスキューは,改めて活動の意味・意義・活用が問われ,被災地の生活を再創造するための手法の確立が求められている。この要請から本研究は,レスキューした被災物についての知識の共有、活用を通じて,文化的支援のモデルを確立する。具体的には民俗学・文化人類学が被災地で果たす文化的支援モデルを構築し,地域文化へのアプローチの手段を深化させるものとする。
著者
田代 豊 亀田 豊
出版者
名桜大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

紫外線吸収剤・有機スズ化合物・有機塩素化合物の、沖縄島および周辺離島沿岸海域のサンゴへの影響を評価するために、サンゴ食害生物や海水などを化学分析した。海水浴場内の海水からは高い濃度の紫外線吸収剤が検出され、サンゴ礁域においても低濃度ではあるが検出された。シロレイシダマシ類については、紫外線吸収剤や有機塩素化合物が検出された。オニヒトデについては、紫外線吸収剤濃度が採集海域のビーチからの距離と関連していた。
著者
中谷内 一也
出版者
同志社大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

災害のリスク管理の研究領域では、近年、人々のリスク認知と実際の準備行動とが結びついていないこと -リスク認知パラドクス- が問題となっている。もし、リスク認知パラドクスが本当ならば、人びとにリスクの高さが伝えられ、理解されても対処行動にはつながらないことになる。このため、リスク認知パラドクスは問題となる。本研究では調査データをリスク認知から準備行動への正のパスと逆方向への負のパスとを組み込んだ構造方程式で分析した。その結果、両者が相殺し合って表面的にパラドクスであるかのようにみえることが示された。また、小さな災害準備の提供が第一歩となって人びとの準備行動を促進させる可能性が示唆された。
著者
伊達 宏子
出版者
東京外国語大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

OJAD(Online Japanese Accent Dictionary)は、申請者らが2009年から開発し、2012年から現行の形で運用する、任意のテキストのアクセント・イントネーションを視覚的・聴覚的に呈示する国内外で唯一の日本語音声学習ができるEラーニング・リソースである。本研究では、従来個人使用の多かったOJAD活用法から、一般的な教育カリキュラムで体系的に音声教育の導入を行うためのOJAD活用法の確立を目指した。OJADを活用した音声教材の開発、教育実践を行いながら、その教材作成方法、教育実践方法を公開・提案した。
著者
伊藤 まどか 金 吉晴 加茂 登志子 臼井 真利子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2017-02-07

本研究の目的は、複雑性PTSDに対するSTAIR/NSTの日本における実施可能性、安全性、有効性を単群での前後比較試験にて検討することである。2019年度までに8例の登録を行った。予備試験の症例の治療経過については、学会や学術雑誌にて症例報告を行った。また本課題では、STAIR/NSTの治療マニュアルやマテリアル、複雑性PTSD診断評価ツールの整備も進めてきた。その中でICD-11に基づくPTSD/複雑性PTSDの診断面接(国際トラウマ面接;ITI)の翻訳を行った。また自記式評価尺度(国際トラウマ質問票;ITQ)を翻訳と逆翻訳を経て日本語版を作成し、学術雑誌にて全文公開した。
著者
大村 直人 本多 佐知子 白杉 直子 原 真衣子 池田 和哉 GHOBADI Narges
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、主に調理における人間の撹拌動作の中の暗黙知に着目した。5人の熟練者と2人の非熟練者の撹拌動作を観察した。生クリームの状態は、生クリームの気泡巻き込み量を示すオーバーランとレオロジー特性を用いて評価した。動作解析においては、被験者の肘、手首、泡だて器の柄の3点にマーカーを設置して、その動きを記録した。生クリームの混合過程を、食紅をトレーサーとして可視化した。5人の熟練者はいずれも、非熟練者よりも約半分の時間でオーバーランのピーク値に到達し、その値も100を超えた。動作解析より、熟練者は非熟練者の動きに比べ、肘、手首、泡だて器の運動は同期しておらず、複雑でカオス的であることがわかった。
著者
河本 正次
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、米由来のα-グルカンが生体防御能の調節を介して日本人の健康増進に一役買っているのではないかとの仮説を検証することを目的とした。米由来のデンプン含有食をアレルギー性鼻炎モデルマウスに自由摂食させたところ、著明な鼻炎症状の進展抑制が認められた。一方、米デンプンの摂食は本モデルの獲得免疫応答には影響を及ぼしていないことが明らかとなった。この抗炎症作用はもち米由来デンプンよりもうるち米由来デンプンにおいてより顕著であり、同機能性を担う主要なα-グルカン構造単位がアミロースであることが示唆された。更に米デンプンの摂取量調節により当該機能性を必要に応じて発揮させうる可能性を見いだした。
著者
勝間 進
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

変異ウイルスライブラリーを用いた行動スクリーニングから、新たな行動関連遺伝子arif-1を同定した。この遺伝子に変異をもつBmNPVは、ほとんど徘徊行動を起こさない。arif-1欠損ウイルスは培養細胞では顕著な表現型を示さないが、感染カイコにおいては全身感染が起こりにくく中枢への感染が遅れることで、徘徊行動が低下することが明らかになった。一方、ウイルス感染脳を用いたRNA-seqにより、徘徊行動時に発現が変動する宿主遺伝子を数10個同定することに成功している。現在、それらの機能解析をするために、遺伝子組換えウイルスの作成を行っているところである。
著者
菅沼 信彦 渡邊 浩子 山口 琴美 能町 しのぶ
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

妊娠初期における葉酸補充効果を検証するため、葉酸が添加されているガムを噛むことで、つわりの症状が改善するか否かを調査した。妊娠初期妊婦を対象に、葉酸添加あるいは非添加ガムを用い、ガム摂取前ならびに摂取後1週間と2週間につわり症状の改善度を自己評価した。その結果、つわり症状は葉酸添加ガム摂取により明らかに改善した。
著者
早川 和一 鈴木 信雄 大嶋 雄治
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

重油汚染による魚の奇形発生の機構を調べるために、様々なバイオアッセイ系を用いて解析した。その結果、毒物の本体は、水酸化した多環芳香族炭化水素類であり、メダカの胚発生において致死作用があり、ウロコの骨芽細胞及び破骨細胞の活性に影響を与えた。さらに解毒タンパク質の候補になり得る物質を見出すことができた。
著者
二見 史生 相馬 正宜
出版者
玉川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

暗号学の基本的な限界であるシャノン限界を超越可能な物理暗号は,暗号鍵の利用効率を高められるので,情報通信量が飛躍的に増大している今日,その実現が期待されている。本研究では,その実現を目指し周波数分解して位相変調する方式の物理暗号の原理検証実験を実施した。波長1.5μm帯,データ10Gb/sの信号光の暗号・復号実験に成功し,更に,暗号信号光の光ファイバ120km伝送にも成功した。本成果により,暗号学のシャノン限界を超越する物理暗号の実現に向け大きく前進した。
著者
細見 修 佐々木 啓
出版者
順天堂大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヒト骨髄性慢性白血病細胞の増殖を強く抑制する二糖(MelNH2, Galα1-6GlcNH2)の開発や、その臨床応用に向けた研究を進めてきた。MelNH2が通常の抗がん剤のような副作用のない安全なものとなれば、広く社会に貢献できる。がん細胞がMelNH2を取り込む機序の解明は残っているが、がん細胞のクロマチン凝集や小胞体からのカルシウムイオンの放出を招き、アポトーシスを誘導すると思われる。又メタロチオネインの異常発現から、がん細胞はMelNH2を排除するためメタロチオネインを総動員させると推測された。リボ核タンパク質がMelNH2と反応し、そのスプライシング機能を阻害することも推測された。
著者
藤田 幸一 今村 真央
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

大きく2つの成果が上がった。第1に、京都大学東南アジア地域研究研究所に「ゾミア研究会」を立ち上げ、2年の研究期間内に内外の研究者を招へいして計24回の研究会を開催し、研究ネットワークの構築を行った。「ゾミア研究会」は東南アジア学会の学会員などに広く知れ渡り、また海外にもよく知られる存在となり、今もなお他財源を利用して継続している。第2にまだ予備的段階にとどまっているが、中国、ミャンマー、インドの3つの異なる国家領域に分かれて住むカチン族の社会経済的現況、その形成に至った歴史的背景、今後の発展の展望等を、現地実態調査に基づき明らかにした。
著者
山川 修 黒田 祐二 伊藤 雅之
出版者
福井県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

学習者の内部状態が,フレドリクソンのポジティビティとネガティビティの比率(P/N比)で測定をすることで,安定的に測定できることがわかった.そして,P/N比が高い(1を越える)学生と低い(1を越えない)学生の間で学習行動に違いが見られることがわかった.さらに,ポジティブ心理学が教えるポジティビティをあげる取組を学生に実行してもらったところ,ポジティビティがほとんど全員で向上していることがわかった.ただ,この結果は,この授業内の学習コミュニティがうまく機能していた結果とも考えられるので,取組とポジティビティ向上の因果関係は,今後のさらなる研究が必要である.
著者
松田 美和子 鈴木 恵美子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヒトが生まれつき体内でビタミンCを合成できない体内状態を模倣するため、ビタミンC生合成能を失ったGNL/SMP30ノックアウトマウスを用いた。ビタミンC欠乏が不安症・うつ病の誘発リスクとなる可能性を検証した。心の病に影響する成育環境に着目し、仲間が常に同じ安定群または仲間がたえず入れ替わる不安定群を比較した。ビタミンC欠乏では、ビタミンCを十分与えた期間に比べて、不安様行動とうつ様行動が悪化した。社会的安定群は新規ストレッサーに脆弱であり雄で顕著だった。社会的不安定群は血中グルタチオン濃度が有為に低かった。本研究の結果から、ビタミンCは精神疾患の予防に重要であることが示唆された。
著者
藤後 悦子 大橋 恵 井梅 由美子 川田 裕次郎
出版者
東京未来大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、スポーツに関わるいやがらせを「スポーツハラスメント」ととらえ、親要因を含めたスポーツハラスメントモデルを構築し検証した。1年目は、スポーツペアレンティングや親同士の人間関係に関するレビューを行い、続いて質的調査として親インタビューとコーチインタビューを実施した。2年目は、量的調査として親および親を対象としたオンライン調査を実施した。3年目の最終年度は、アメリカ人の地域スポーツのコーチを交え、アメリカの現状と日本の現状の比較を行った。最後に1年目、2年目の調査結果とアメリカでの現状を踏まえスポーツハラスメント防止のためのオンライン教材を開発し社会的還元を行った。
著者
小林 茂夫 細川 浩 前川 真吾
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ほ乳類や鳥類は,環境温が低下すると,ふるえによる産熱反応を起こして体温を保つ。一方,爬虫類,両生類,魚類は,環境温が低下しても産熱反射を生まず体温が下がる変温動物である。しかし,ふるえが系統発生上いつ生じたのかわかっていないここでは,低温でふるえ様の反応がサカナで生まれるとの仮説を立て,それを検証する実験をおこなった.受精後3日齢のゼブラフィッシュの稚魚を,28.5℃から12℃の水に移すと,尾ひれを律動的に振る相(ON相,約10Hz)と静止する相(OFF相)が,約3秒の周期で断続的に生じた(ON-OFF相)。しかし,サカナに前進運動は見られなかったので,その運動は産熱のための考えられる.ここでは,発砲スチロールで熱流を遮蔽した試験管に少量の12℃の水を入れ,その中に稚魚をいれ,ふるえで生じる水温の上昇を産熱の指標として測定した。一匹の稚魚を入れたときの温度上昇は,対照群の温度上昇と差はなかった。5匹の稚魚を入れると,水温は,対照群の上昇速度より高い速度で上昇した。10匹の稚魚を入れると,水温は,5匹の上昇速度のほぼ2倍の速度で上昇した。魚類の麻酔薬MS222で処理した5匹の稚魚を入れたとき,温度上昇は対照群と差はなかった。これらの結果は,尾びれのふるえ様の動きで熱が生まれたことを示す。間欠的な動きを生む発振器の場所を探るため,脳神経系のレベルで切断しふるえの変化を見た。後脳と脊髄の間を切断すると,間欠的な動きが連続的なものに変わった.これは,脳の発振器が,連続的なふるえを周期的に遮断していることを示す。