著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究で考案されたヘリウムガス衝突噴流式冷却システム内蔵型発電装置を用いて、ボタン型燃料電池を800℃で発電中に、酸素同位体を導入後、300℃まで1秒以内に冷却し、2次電子イオン質量分析により、同位体酸素濃度分布マッピングを取得した。その結果、ScSZ粒子(酸素イオン伝導体)とLSM粒子(電子伝導体)の混合酸素極において、YSZ電解質との界面から数ミクロンの領域において、ScSZ粒子から電解質へ同位体酸素が拡散すること、さらにLSM粒子内部にも同位体酸素が多く拡散し、この狭い領域においてのみ電荷移動電流が高く、酸素極過電圧の要因となっていることが、初めて実電極により明らかとなった。
著者
石井 康子 梅原 薫 野毛 一郎 加藤 有希
出版者
静岡県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

吃逆の治療に使われる柿蔕(Kaki Calyx)のラット脳脊髄液中神経伝達物質に及ぼす影響を検討したところ、GABAの変動は観察されなかったが、アスパラギン酸やグリシン、更に、ドパミンの代謝物であるDOPACやHVA濃度に影響を及ぼすことが示唆された。今後、これらを指標として、日本産の柿の蔕から有効成分の探索を行う予定である。また、柿蔕液の治療効果を処方の異なる施設で後ろ向きに調査したところ、化学療法の施行により発症する吃逆の治療に、高濃度の柿蔕液の服用が適している可能性が示唆されたため、前向き調査によって確認する予定である。
著者
平田 勝弘
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では,有限要素法による数値解析を用いて提案したアウターロータ型三自由度球面アクチュエータの動作メカニズムを明らかにし,本アクチュエータの有用性を示した。更にイメージセンサセンサを用いた可動子の位置検知法と新しいフィードバック制御法を開発した。解析により磁気回路パラメータ及び制御ゲインを最適化し,優れた性能を実現した。更に,得られた解析結果をもとに試作機を製作した。今後、本機を用いた実験検証を行っていく予定。
著者
村元 隆行
出版者
岩手大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

牛パティの粗脂肪含量とインピーダンスとの関係を示す回帰式を用いてインピーダンスから牛パティの粗脂肪含量が推定可能であることが示された.この回帰式を用いてインピーダンスからパティだけではなくステーキの粗脂肪含量も推定可能であった.牛肉の最大荷重およびガム性荷重は屠畜後4および6日目が屠畜後2日目に比較して有意に低かった.筋線維に対して垂直方向のインピーダンスは,屠畜後6日目が屠畜後2日目に比較して有意に低かった.牛肉テクスチャーの違いはインピーダンスから非破壊的に推定できる可能性が示された.
著者
植田 利久 大村 亮
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

プール火炎を対象に,上部から二酸化炭素ハイドレート粉末を落下させ,その消火特性を実験的に検討した.比較対象として,氷,ドライアイスを用いた実験も行った.プール火炎の燃料としては,水よりも沸点の低いメタノール,エタノール,水とぼぼ同等の1-プロパノール,水より高い1-ヘキサノールを対象とした.消火に必要な最小の質量,消火限界質量は,水より沸点の低い燃料では,ドライアイスのほうが二酸化炭素ハイドレートより少なかったが,沸点が同等あるいは高い燃料では,二酸化炭素ハイドレートののほうが少なくなった.これは,沸点の高い燃料においては,水の蒸発が促進し,冷却効果が顕著になったためであると考えられる.
著者
樋口 満 河野 寛 宮下 政司 沼尾 成晴 坂本 静男
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、縄跳びのような重心の上下動を伴う運動は、一過性の運動による食欲の低下を効率的に引き起こすだけでなく、重心の上下動を伴わない運動と比較して、運動由来の食欲低下にグレリンやペプチドYY などの食欲関連ホルモンの貢献度がそれほど大きくないことを明らかにした。加えて、一過性の運動後の食欲は、男性と比較して女性で速やかに亢進(回復)することがわかった。これらの結果は、性別を考慮した肥満の予防・改善のための運動処方作成におけるエビデンスの一つになるだろう。
著者
佐伯 由香 城賀本 晶子 谷川 武
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、2交替勤務をしている看護師を対象に、ストレスや睡眠状態に及ぼす経耳道光照射の影響を検討すること、また、エッセンシャルオイルによって注意力が向上するか否か検討することである。20名の看護師を経耳道照射を朝行う群、夜実施する群、そして何もしない群に分け、照射をおおなう場合は4週間行った。注意力は精神動態覚醒水準課題(PVT)を使用し、主観的評価としてアテネ睡眠評価尺度、気分・感情を評価するPOMS2を使用した。その結果、いずれの評価指標においても有意な変化は認められなかった。ペパーミントの香りを吸入するとPVTの反応時間が有意に短縮した。このことは注意力が向上したことを示している。
著者
河野 哲也 寺田 俊朗 望月 太郎
出版者
立教大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、日本において哲学実践を確立することを目的とする。哲学実践とは、主に対話という方法を用いて、実社会のさまざまな問題について哲学的に議論し、相互理解や問題解決に至る活動である。成果としては、子どもの哲学では、全国で20箇所をこえる学校や図書館、児童館などで哲学対話を行い、数校で定期的な実践として教育に組み込むことに成功した。この3年間で子ども哲学はかなり全国的に普及した。哲学的カウンセリングは海外から研究者を招聘して導入した。企業内哲学対話はプログラムを開発し、パイロット講座を開くことができた。重要な著作の翻訳と導入書の出版ができた。哲学対話のNPOと哲学プラクティス連絡会を設立した。
著者
藤江 敬子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

対象期間に調剤薬局12店舗で取り扱った処方箋のうち、75歳以上の8080名(39252剤)について患者毎の薬剤数を調査するとともに、高齢者の安全な薬物療法 ガイドライン2015の「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」に基づき潜在的不適切処方(PIMs)を抽出した。患者の43.1%が5剤以上の処方を受けているポリファーマシー状態にあり、26.7%は少なくとも1剤以上のPIMsが認められた。PIMsの中では睡眠薬が50.3%と最も多かった。ポリファーマシーと複数の診療科の受診は、PIMs処方の可能性を高めることがわかった。ROC解析においてPIMsのカットオフ値は総薬剤数では5剤と求められた。
著者
五神 真
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、インクジェット印刷技術を用いて作製した多層人工構造によってテラヘルツ電磁波領域における三次元メタマテリアルを実現し、新たな機能光学素子の開拓を行うことを目的とする。初年度においては、インクジェットプリンティング技術を用いて作製した金属メタマテリアルが、確かに三次元的な効果を有する人工光学素子として旋光性を有することを実験的に示した。本年度においては、等方的な光学応答を実現するための、面内異方性の除去についての検討を進めた。インクジェット印刷技術の場合、ユニットセル内のパターンの書き順と、パターン全体の書く順番の両方が異方性に寄与してしまうことを見出し、その影響を最小化するためのインクジェット描画のプロシージャを検討した。これにしたがって実際に試料を作製し、THz偏光回転測定を行うことによって、確かに異方性の除去に効果的であることを実験的に示した。しかしながら、多層化した場合の位置ずれから生じる異方性は除去できておらず、これは今後の検討課題である。また、本年度は、このような三次元メタマテリアルの特性を、回路制御技術を用いて能動的に制御する手法についての検討、及び設計を行った。実際に産業利用されているシリコンプロセスを用いて、単位構造毎にトランジスタを組み込んだ多層金属メタマテリアル構造を設計し、試作を進めている。この試作の結果をふまえ、本研究で検討した有機トランジスタを用いたインクジェットプリンティング技術との融合について検討を進め、三次元アクティブメタマテリアルの実現に関しても検討を進めている。
著者
藏本 龍介 清水 貴夫 東 賢太朗 岡部 真由美 門田 岳久 中尾 世治
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

・2015年度:メンバーのこれまでの研究内容を共有すると同時に、「宗教組織の経営」という問題をいかに共通の枠組みで分析しうるか議論した。・2016年度:前年度の議論を踏まえ、経済人類学者(住原則也氏)、宗教社会学者(白波瀬達也氏)を招き、シンポジウムを開催した。そしてその成果を『「宗教組織の経営」についての文化人類学的研究』(2017年、南山大学人類学研究所)として刊行した。・2017年度:前年度までの議論を踏まえ、「宗教と社会」学会(2017年6月)において、宗教社会学者(西村明氏)をコメンテーターとして招き、「宗教組織の「経営」についての民族誌的研究」と題するテーマセッションを開催した。
著者
佐藤 太裕 蟹江 俊仁 島 弘幸
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では自動車が走行した際に未舗装路に生じる「波状起伏現象」、および積雪・凍結路面特有のこぶ状の起伏、いわゆる「そろばん道路」について、その発生メカニズムを独自に考案した科学的アプローチにより解明することを目的とした挑戦的研究である。実験・理論・計測の三方向から現象の根源に迫り、成果報告書に後述するいくつかの興味深い知見を得ることができた。
著者
松尾 浩一郎 根本 雅也 小倉 康嗣 清水 もも子 後藤 一樹 土屋 大輔 福山 啓子 岩舘 豊 加藤 旭人 鈴木 雅人 長峯 ゆりか
出版者
帝京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、原爆投下日である8月6日の広島平和記念公園という象徴的な時間と空間に着目し、ビジュアル・エスノグラフィの手法を用いてその包括的な記録と分析を行った。本研究から明らかになったことは、8月6日の平和記念公園では、広島における原爆被災とその後の復興の過程が、きわめて多様なやり方で受け止められているということである。原爆という一つの出来事を受け止めるにも、お互いに鋭く対立しあうような複数の立場性がある。それらが一つの時空間のなかで「共存」しているありさまを、映像データを駆使して明らかにした。
著者
小野 道之 竹内 薫 森川 一也 保富 康宏
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Human Hepatitis E Virus (HEV)のカプシドタンパク質が自己会合したVirus-like particle (VLP)は、消化耐性と腸管免疫誘導活性を持つ、食べるワクチンとして注目されている。インフルエンザの共通抗原であるM2のエピトープを融合したHEVのカプシドを、果実特異的なE8プロモーターの制御下で発現する遺伝子組換えトマト(Solanumlycopersicum cv. Micro-Tom)の作出に成功した。
著者
北村 裕美 矢野 博己
出版者
流通科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は肥満の予防改善に対する運動の分子メカニズム的効果をオートファジーに着目して検討することであった。KO5マウスでは,20週間の自発運動により副睾丸周囲脂肪量や肝脂肪滴が顕著に減少した。脂肪組織中mRNA発現は,Atg5, Atg7が自発運動により増強し,LC3bが減弱した。脂肪組織中LC3-Ⅱ/LC3-Ⅰ比は自発運動によりWTマウスでは減弱し,KO5マウスでは増強した。KO5マウスでは,自発運動により腸内細菌多様性が低下し,Firmicutes門が減少した。オートファジー関連因子とFirmicutes門やBacteroidetes門との間に有意な関係は確認されなかった。
著者
川上 彰
出版者
国立研究開発法人情報通信研究機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

中赤外光を直接整流して電力抽出を行う光レクテナの開発を目指し、マイクロストリップ線路および分布定数型Metal-Insulator-Metal (MIM)トンネルダイオードの研究を行った。電子線描画装置を用いた金属薄膜の微細加工プロセスを開発し、中赤外光領域におけるマイクロストリップ共振器を作製した。分光器を用いて共振器を評価することで、中赤外光領域におけるマイクロストリップ線路の位相定数の評価を行った。更にMIMダイオードの試作を行い、正負非対称の非線形特性を観察した。
著者
太田 邦史 岡田 泰和
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

同じゲノムの個体が種々の表現型を示す表現型の可塑性は、生物全体に見られる現象であるが、その機構はわかっていない。本研究では、表現型可塑性が武器形質に見られる昆虫オオツノコクヌストモドキを用いて、発生時の栄養と武器形質を結びつけるエピゲノム分子機構を明らかにした。RNA-seqにより未同定のエピゲノム因子を多数同定し、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)などの遺伝子をノックダウンしたところ、大顎形質が特異的にHDAC摂動の影響を受けることを見出した。また、HDAC摂動により翅では大顎と反対方向にサイズ変化が生じることも明らかになった。以上から表現型可塑性にはエピゲノム制御が重要なことがわかった。
著者
木本 克彦 星 憲幸 斉田 牧子 杉本 昌弘
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、咬合咀嚼刺激と唾液成分との関連を明らかとするため、メタボローム解析を用いて、咬合咀嚼刺激による唾液中の代謝産物の変化を網羅的に解析した。その結果、臼歯部欠損患者群と残存患者群の唾液代謝産物を比較したところ、全部で137 のピーク値が同定され、主成分分析より2群間に代謝プロファイルの違いが認められた。また、臼歯部残存患者における安静時唾液群と刺激唾液群の比較を行ったところ、全部で116 の唾液代謝産物のピーク値が同定され、主成分分析より2群間にに代謝プロファイルの違いが認められた。以上の結果から、咬合咀嚼刺激が代謝産物レベルで唾液成分へ質的な変化を与えていることが示唆された。
著者
村瀬 研也 近江 雅人 木村 敦臣
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年、磁性ナノ粒子(MNP)を内包した薬剤を外部磁場を用いて目的の場所に送達する磁気送達法や外部から交番磁場を印加して癌細胞を死滅させる磁気温熱療法が注目されている。これらの治療法の有効性を高めるためには、集積したMNPの空間分布を可視化し、集積量を正確に定量する必要がある。最近、我々はMNPを画像化する磁気粒子イメージング(MPI)法およびその装置を開発した。そこで、我々のMPI法を用いて磁気送達や磁気温熱療法の効果を最適化するシステムを開発し、その有用性をファントムや動物実験によって検討した。その結果、開発したシステムは磁気送達や磁気温熱療法の最適化に有用であることが示唆された。
著者
金田 剛史
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

動物細胞では主要な細胞骨格の一種である中間径フィラメント(Intermediate Filament: IF)は植物細胞では存在の有無が確定していない。本研究では、IFの構造を維持するために不可欠な長いαヘリックスとIFタンパク質モチーフを持つシロイヌナズナのタンパク質を植物細胞のIFを構成するタンパク質の候補として選別し、IF Motif Protein 1(IFMoP1)と名付けた。このIFMoP1をタバコの培養細胞で発現させて局在を調べると、間期にはIFMoP1は細胞骨格様の柔軟な線維構造を形成し、線維を形成しないときには微小管と共局在することが分かった。