著者
加藤 隆弘
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

精神疾患への脳内免疫細胞ミクログリアの関与が最近の研究により示唆されているが、詳細は解明されていない。本研究ではミクログリアがヒトの社会的意思決定プロセスにおいて重要な役割を果たしているのではないか?という仮説の元で、健常成人男性を対象としてミクログリア活性化抑制作用を有する抗生物質ミノサイクリン内服による社会的意思決定プロセスの変化を計るための社会的意思決定実験(信頼ゲーム)を行った。ミノサイクリンを4日間内服してもらい、自記式質問紙による心理社会的項目を測定するとともに、信頼ゲームを実施した。ミノサイクリン内服により、性格や欲動依存の行動パターンが変容することを見出すことが出来た。
著者
伊藤 昌司
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.1063-1085, 1997-03
著者
大賀 哲 佐古田 彰 大井 由紀 中藤 哲也 上田 純子 松井 仁 清野 聡子 内田 交謹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-07-19

研究期間の2年目にあたる今年度は、所定の役割分担に基づいて研究代表者・分担者・連携研究者間で相互調整および個別の研究を進めた。全体を制度分析・人権規範・経営規範・環境規範・データ分析の5グループに分け、大賀が制度分析、松井・大井・吾郷が人権規範、内田・上田が経営規範、佐古田・清野・渡邉が環境規範、中藤がデータ分析を担当した。研究メンバー間での勉強会を5回(6月・9月・12月・2月・3月)、外部の研究者を招聘しての公開研究会を2回(10月・2月)行った。勉強会では大賀・内田・佐古田・渡邉・松井・上田・中藤がそれぞれ研究報告を行った。公開研究会では石井梨紗子准教授(神奈川大学)、畠田公明教授(福岡大学)を招聘し、また連携研究者の吾郷も研究報告を行った。勉強会、公開研究会では、研究分担者・連携研究者とともに報告内容を討議した。「企業の社会的責任」・国連グローバル・コンパクトの研究動向への理解を深める上で非常に有意義な機会となった。来年度以降は個別の研究を進めるとともに、研究成果の発信と各グループの研究成果の比較を行っていく予定である。
著者
白銀 勇太
出版者
九州大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

ウイルスが宿主の細胞に寄生し自身を再生産する際、宿主細胞の様々な因子(宿主因子)を利用することが知られている。複数のウイルスに共通する宿主因子を発見すれば、その宿主因子をターゲットとすることで、様々なウイルスに効果のある広域の抗ウイルス薬の開発につながると考えられる。本研究ではウイルス同士が共通の宿主因子を奪い合うことで「干渉」しあうメカニズムの解明を通して、複数種のウイルスに共通する宿主因子を発見し、広域抗ウイルス薬の開発につなげていくことを目的としている。
著者
田浦 太志
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

オオケビラゴケ(Radula perrottetii)は大麻のカンナビノイドに類似した構造のビベンジルカンナビノイドであるperrottetineneを生産することが報告されている。本研究では網羅的遺伝子発現解析(EST)に基づき、perrottetinene生合成に関与するポリケタイド合成酵素、プレニル転移酵素及び酸化閉環酵素を同定することを目的とした。先ず、ポリケタイド合成酵素に関しては昨年度ESTデータより推定した6種の配列(PKS1~PKS6)をRT-PCRにより増幅し、大腸菌発現ベクターpQE80Lに組み込み、組み換え酵素を調製した。得られた各PKSについて、phenylpropionyl-CoAを開始基質とするアッセイを検討した結果、perrottetinene前駆体として予想されるdihydropinosylvinの合成は確認されなかった一方、PKS5を除く各酵素の反応液に、分子量258の生成物が確認されたことから、dihydropinosylvinのカルボン酸化体が合成されたものと推察した。オオケビラゴケの近縁種であるRadula marginataはperrottetineneのカルボン酸化体であるperrottetinenic acidを含有することが知られており、オオケビラゴケにおいても同様の代謝経路が存在する可能性が考えられる。次いで、プレニル転移酵素および酸化閉環酵素に関しては昨年度EST解析によりピックアップした候補配列のうち、特にカンナビノイド生合成経路の酵素と高いホモロジーを示す各三種の配列をRT-PCRにより増幅し、メチロトロフ酵母の発現ベクターpPICZaに組み込み、X33株に形質転換して発現株を作製した。以上のように本研究ではオオケビラゴケに特徴的な二次代謝産物生合成に関与すると考えられる各遺伝子を保存し、発現系を確立するに至った。
著者
園井 ゆり
出版者
九州大学
雑誌
人間科学共生社会学 (ISSN:13462717)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.46-61, 2001-02-16

本稿では「1.家庭での無償の再生産労働は,とりわけなぜ女性に配当されるのか 2.労働市場で女性はなぜ不利な立場におかれる傾向があるのか」という問いを提起し,問いの解明を「段階とジェンダー」の視点を交えながら模索する。 問題を解明するための方法として,本稿の問いに特に関わりがあると思われる「マルクス主義フェミニズム理論」(社会主義婦人解放論,前期ならびに後期マルクス主義フェミニズム理論)と,マルクス主義フェミニズム理論に少なからず影響を及ぼした「ラディカルフェミニズム理論」とを取り上げる。これらの理論を吟味した上で,特に,後期マルクス主義フェミニズムの理論がこの問いの解明に最も有効な理論であるということを指摘する。さらに,外国人労働者の受け入れ等,今後変化しつつある労働市場において,女性の立場を説明する理論としてのマルクス主義フェミニズムの可能性についても触れたい。
著者
関 善弘
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

近年、急速に発達したイメージング研究により、ミクログリアが統合失調症の病態に深く関わることがわかってきた。ミクログリアは炎症性サイトカインの産生を介して白質に異常をきたし、病態を形成することが明らかになりつつある。また、統合失調症モデル動物においてオリゴデンドロサイト障害が指摘されており、活性化ミクログリアがオリゴデンドロサイトに影響を及ぼすことが想定されているが、いまだ詳細な報告はない。そこで本研究では活性化ミクログリア/オリゴデンドロサイトの共培養系を用いて、活性化ミクログリアと共培養後のオリゴデンドロサイトの病理学的変化について検討を行い、以下の(1)-(3)の結果を得た。(1)活性化ミクログリアはオリゴデンドロサイトにアポトーシスを誘導した。(2)非定型抗精神病薬であるアリピプラゾール(ARI)と抗生物質であるミノサイクリン(MINO)はオリゴデンドロサイトのアポトーシスを抑制した。(3)MINOは活性化ミクログリアの細胞内においてSignal Transduction and Activator of Transcription(STAT)-1のリン酸化を抑制し、炎症性サイトカインの産生を減少させていた。本実験の結果を受け、統合失調症モデル動物でin vitro実験の結果を検証すべく、免疫組織学的検索、分子生物学的検索や、代謝イメージング法などを用いた動物実験を推進している
著者
小湊 卓夫 嶌田 敏行 淺野 茂 大野 賢一 佐藤 仁 関 隆宏
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大学における教育では目標設定型の教育が求められている。そこにおいて重要なのは設定された目標に基づいて、どのように評価を行うのかである。そして教学マネジメントにおいては、それを全学的にどのように進めていくのかが課題であるが、米国でのInstitutional Effectivenessを参考に、定期的なプログラムレヴューとそれに基づいた改善計画を提出させる仕組みの構築が重要であることが分かった。
著者
大戸 茂弘
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

野生型WTマウスまたはDrug A受容体KOマウスを行動解析装置に7日間飼育した後、明期を8時間前進させ明暗周期サイクルの変化に対する行動シフトに及ぼすDrug A受容体欠損の影響を検討した。Drug A受容体欠損マウスでは、明暗周期変動に対する行動リズム変化が野生型と比較し遅延していた。両マウスを行動解析装置に7日間飼育した後、明期を8時間前進させ、その後、恒暗条件下で飼育した際の行動の変化に及ぼすDrug A受容体欠損の影響を検討した。Drug A受容体欠損マウスでは、恒暗条件下の行動リズム周期が野生型と比較し長いことからSCNに存在する時計遺伝子の発現リズムに何らかの機能的変化が生じていると考えられる。両マウスSCNの時計遺伝子をIn situ hybridization法を用い測定した結果、時計遺伝子のCry1の発現リズムが変容していた。両マウスを行動解析装置に7日間飼育した後に、常に照明をOFFにした恒暗条件下で飼育した自律的行動リズムの位相と周期に及ぼすDrug A点眼時刻の影響を検討した。両マウスにDrug AをCT14に点眼し、自律的行動リズムに及ぼす影響を確認した結果、WTマウス行動リズムはDrug AのCT14点眼により位相が後退したが、Drug A受容体KOマウスにおいてはその効果は認められなかった。恒暗条件下の行動リズムに及ぼすDrug A点眼により行動リズムの周期が変容したことから、時計中枢SCNの時計遺伝子Per1、Per2発現量に及ぼすDrug Aの影響を検討した。野生型ではDrug A点眼後にSCNのPer1、Per2の発現量が変容したが、Drug A受容体KOマウスでは影響しなかった。恒暗条件下飼育マウスに光を照射する条件またはDrug A点眼後に光照射を併用する条件下、SCNの時計遺伝子発現量に及ぼすDrug A受容体ノックアウトの影響を検討した。野生型マウスでは発現量が変化していたが、Drug A受容体KOマウスでは顕著でなかった。
著者
春日 由美
出版者
九州大学
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.157-171, 2000-03-10

本論文では,これまでの発達心理学・臨床心理学における研究や指摘などを振り返り,日本における父娘関係を考察するものである。主な内容は次のとおりである。(1)父娘関係は娘にとって2つの側面から重要であると考えられる。その1つは娘の人格形成の種々の側面への影響である。そしてもう1つは父親から娘への愛情面であり,それは娘にとって重要な心理的支えになると考えられる。(2)日本では父親も娘も,父親は娘にとって「やさしい」存在であると捉えている。またそのような日本における父親の「やさしさ」を,子ども達は「母親的やさしさ」であると感じている。けれども父親から娘への愛情は,母親から娘への愛情よりも距離を保った,「見守る眼」のようなものである。(3)娘の持つ父親イメージは,彼女達の両親の夫婦関係に影響を受ける部分がある。また家庭における父親が「大黒柱」としてイメージされることが,娘にとっての父親の魅力を高めていた。
著者
中野 武彦
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13482319)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.9-13, 2003-03

Although we know the necessity of exercises , few of us go into action and continue . The main aim of this study is to show the factors and effects of continuance of early running on data for 42 consecutive months. The factors are firstly to have much lat
著者
金 龍燮
出版者
九州大学
雑誌
大学院教育学研究紀要 (ISSN:13451677)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.203-215, 1999

In Japanese ex-colonial Korea there were three kinds of "special education"; a) Christianity influenced special education, b)colonial authoritised special education, and c)nonformal type special education of divination for the blinds. In this study, it was tried to discover the factors related to the above 3 types of special education. It includes the selection of important and meaningful factors which were seen before and after the second world war in Korea. Special politics in Japanese ex-colony, special education movement in social conditions, and efforts of the persons directly related to the special education were studied. So, it clearly recognised and evidenced the special education policies for the disabled in Japanese ex-colony authority. In spite of lack of understanding of Korean people or passively negative attitude of the colonial authority persons related to the special education as well as disability as a whole rendered the efforts as much as they could. School for the blind, deaf and dumb in Pyongyang, Korea was initially established in far east as education for the blind, deaf and dumb in conference on August 11~15, 1914 for information exchange related to the special education with an appeal for the importance of special education were the main ideas of the conference. However, association for the blind, deaf and dumb in Korea colonial rules as special conditions could not be overcome but aimed at blind, deaf and dumb of Japanese and Korea; development and extention of cognition, and social improvement for Japanese in Korea and the Korean blind, deaf and dumb. Doo-Sung PARK developed the to-date braille letters used in Korea who was the teacher of the "Moa-bu" (department for the blind, deaf and dumb) in "Saisei-in" (institution for the orphans, blind, deaf and dumb) under the Government-General of Korea during the Japanese ex-colony.
著者
苅田 知則
出版者
九州大学
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.105-122, 2000-03-10

本研究は,イナイ・イナイ・バーやカクレンボ,秘密基地づくり等,子どもの「隠れる行為」に着目し,これまで日本の様々な学問領域においてどのような研究が行われてきたかを概観した。本稿では,最初に「イナイ・イナイ・バー」「カクレンボ」「秘密基地づくり」「その他」という行為の形態に応じて,先行研究の動向を紹介した。次に,子どもの「隠れる行為」の動機を理解する視点として,「解釈論」「空間論」「変遷論」を挙げた。まず,「解釈論」では,「隠れる」動機を子どもの「内的要因」「外的要因」のどちらに求めるか,またその解釈が「日常観察」「病理治療」的背景のどちらで行われたのか,という軸にしたがって分類を行った。第2に,「空間論」では,子どもと物理的空間との相互作用に着目した「ミクロ空間論」と,空間認知の立場から生活環境における他の空間との関係性に焦点を当てた「マクロ空間論」に先行研究の知見を整理した。最後に,年齢によって子どもが興じる「隠れる行為」の形態が異なることから,「変遷論」を展開した。
著者
宮原 道明 藤原 淳
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13482319)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.91-94, 2003-09

A 49-year-old woman was complaining of severe pain and quite abnormal sensation in the oral cavity after eating uncooked squid Todarodes pacificus Steenstrup .4 foreign bodies were found in the tongue and orypharynx, and parts of them were struck into muc
著者
岩本 誠一
出版者
九州大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:0022975X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1-29, 2002-03

本論文では,プロ野球日本シリーズの経済波及効果と優勝確率をマルコフ連鎖を用いて評価する。ダイエーホークスと読売巨人の勝敗数を二項モデルによって表し,期待経済効果および各チームが優勝する確率(絶対確率と条件付き確率)を再帰的に求める。
著者
荒谷 邦雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、様々な食性を示すコガネムシ上科を対象に、形態やDNAを用いて各群の間の系統関係を明らかにし、得られた系統情報に様々な餌食物の資源的特性を加味することで、本上科の食性進化の史的概観を探ることを試みた。コガネムシ上科の各分類群の系統解析に関しては、まず、クワガタムシ科について、幼虫形態および16SリボソームRNA遺伝子を用いて世界の全亜科、アジア産のほぼ全属間の系統関係を明らかにした。また、分類学的に混乱が多いDorcus属に関してはRAPD法やCOI遺伝子による解析も行い、属内の詳細な系統関係も明らかにすることができた。16SリボソームRNA遺伝子を用いてクロツヤムシ科に関しては世界の全亜科間、コガネムシ科に関しては全世界のカブトムシ亜科の主な属間の系統解析を行った。さらにコガネムシ上科全体に関しては、16SリボソームRNA遺伝子を用いてクワガタムシ科、クロツヤムシ科、コガネムシ科、センチコガネ科、コブスジコガネ科、アカマダラセンチコガネ科、アツバコガネ科の科間の系統関係を明らかにし、後翅脈等の構造に基づいて構築されていた従来のコガネムシ上科の系統関係との比較を行った。得られた系統関係に基づき、クワガタムシ科をはじめとする食材性の群における褐色、白色、軟の各腐朽型への選好性の進化が主に幼虫の木材構成高分子に対する消化能力の獲得と深く関わっていることを明らかにした。さらに腐植物食性のテナガコガネ等や好白蟻性の群に関しては、高窒素含有量を求めて食材性のものから二次的に移行した可能性が高いことを示唆した。これは腐植物食性が原始的な食性であるとする従来の見解を大きく改めさせるものである。さらに食性とも深く関わる亜社会性の起源に関しても議論すると共に、亜社会性のクロツヤムシ科では食性の違いが前肢や体の厚み等の形態変化をもたらしていることをも明らかにした。