著者
山中,英明
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, 1998-08-20

4種類のイカ墨および2種類のタコ墨のエキス成分ならびに抗菌性の比較をおこない, 次の結果を得た。(1) 遊離アミノ酸総量はイイダコ, マダコ, スルメイカの墨において高かったが, 他のイカ墨では低かった。タウリンはいずれの墨にも高含量含まれていた。グルタミン酸, グリシン, アラニン, プロリン, チロシン, アルギニン, ロイシンがイイダコ, マダコ, スルメイカに高含量検出された。(2) 有機酸としてはコハク酸がトラフコウイカに, 乳酸がマダコとイイダコにかなり高含量検出された。(3) グリシンベタインがイイダコとスルメイカに1%以上含有されていた。(4) タコ墨の方がイカ墨より呈味に関与するエキス成分含量が高かった。(5) イカ墨, タコ墨をイカ, タコそれぞれの筋肉に添加すると揮発性塩基窒素(VBN)の上昇を抑えた。すなわち, イカ墨, タコ墨ともに抗菌性が認められ, 抗菌性の強さはほぼ同程度と考えられた。(6) イカ墨, タコ墨ともに酢酸の生成ならびにタコ筋肉のプトレシンの生成を抑えた。また, タコ墨はギ酸の生成も抑えた。
著者
前田 文子 瀬尾 弘子 福永 淑子
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.58, 2012 (Released:2012-09-24)

目的 加熱調理において、ガスとIHコンロという熱源の違いが(1)調理操作時の精神的及び肉体的負担(ストレスと表現)、(2)調理の仕上がり状態に及ぼす影響を明らかにする。方法 熱源としてガス及びIHコンロを使用し、20~60代の異なる年齢層に「炒める(野菜炒め)・焼く(焼き魚)・蒸す(茶碗蒸し)・揚げる(竜田揚げ)」の4種類の加熱調理をしてもらい、調理時のストレス及び調理の仕上がりを比較した。焼く、揚げるでは、ガス・IHそれぞれの両面焼きグリルの自動調理機能、揚げ物機能を利用した。調理時のストレスは、「操作のしやすさ・煙などによる不快感・調理中の不安感・調理の達成感」などについて5段階で評価させた。調理の仕上がりについても官能評価による外観、香り、味、総合評価など5段階で評価させ、結果を統計ソフトSPSSにより集計した。結果 調理操作においては、撹拌のしやすさ(炒め物)、油の予熱時間の短さ、火加減の調節しやすさ、調理の達成感などについてガスコンロによる調理が優位と評価された。とくに野菜炒めと竜田揚げについて、その差が大きかった。調理後の掃除のしやすさについてはIHが優位と評価された。ともにコンロの安全対策が充実しているためか、調理中の安全性については差が認められなかったが、一方でIHにおいて、火が見えないことへの不安を覚えるモニターもみられた。また、ガスのように、実際に火を見て自在に調節することが、調理の達成感につながるとの回答も多く見られた。料理の仕上がりについては茶碗蒸しには差がなかったが、焼き魚の焼き色と食感、竜田揚げの色においてガスコンロによる調理が優位と評価され、その差が顕著であった。
著者
川嶋 かほる 櫻井 朝美
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.61, 2002 (Released:2003-04-02)

食べ物は生物に由来し、他者の「いのち」によって、自らの生命維持をはかることが「食べる」ことである。しかし、食物生産の場から遠く離れ、飽食の時代といわれる現在、食べ物と「いのち」の関係はどのように意識されているかを、調査紙法によって調べた。食べ物に「いのち」があると考える人は76.4%であった。「いのち」を持っていると感じているのは、魚介類が最も高く80%以上を占め、畜肉類は約70%、鶏卵55%、野菜類は35%であった。「いのち」が失われると考える段階は、「切った時」「収穫した時」が多く、「料理した時」「食べた時」は少なかった。「いただきます、ごちそうさま」は79.8%の人がしているが、その対象は「食事を作ってくれた人」へが57.5%、「食べ物そのもの」は24.8%であった。
著者
森 恵見 佐藤 真実 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】福井県は、本州の中央部にあり、嶺北と嶺南地区に分けることができる。嶺北は、平野を中心に米づくりが盛んであり、嶺南は、海に面して滋賀、京都に隣接する。平成28年家計調査年報では、福井県での「菓子類」の年間支出金額は全国ランキングが30位とやや低い。今回は、福井県のおやつについて家計調査年報を参考にしながら、「水ようかん」、「かきもち」、「羽二重もち」について紹介する。<br />【方法】平成28年家計調査年報を用いて、菓子類の年間支出金額と消費傾向について明らかにする。また、「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」聞き書き調査において、聞き書きしたおやつについて紹介する。また、「水ようかん」、「かきもち」、「羽二重もち」について詳細に紹介する。<br />【結果】平成28年家計調査年報では、福井県の「菓子類」の年間支出金額は全国30位(82,954円)とやや低い。その中で「ようかん」が全国5位(1,270円)、「他の和生菓子」が6位(11,886円)と全国的に支出額が高い。一方、「まんじゅう」は47位(677円)で最下位である。福井県のようかんの特徴としては、夏ではなく、冬に食べるのが定番である。あん、砂糖が貴重だった昔、丁稚が冬の味覚として水を多めにいれて作ったようかんが今に伝わったという説もある。県内では、黒砂糖やコーヒーなどを入れた水ようかんが店に並ぶ。「羽二重もち」は明治38年、羽二重織物のような薄くてしなやかな手触りをイメージさせた菓子として登場した。「水ようかん」も「羽二重もち」ももっぱら購入するものであるが、県民が大好きなおやつである。聞き書き調査の中では「かきもち」が各地域で食べられているおやつとしてあがった。寒の頃にもちをつき、乾燥させて一年分のおやつにする。
著者
新澤 祥惠 中村 喜代美 川村 昭子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の石川県における調査として実施したもののうち、穴水町、金沢市、白峰村のものを報告する。<br>【方法】平成25~27年、穴水町は80歳女性、金沢市は85歳男性、70歳女性、白峰村では74歳、69歳、67歳女性より、特別研究ガイドラインに沿って聞き取り調査を行った。<br>【結果】1)穴水町は能登内浦海岸に位置し、新鮮な魚介類が入手できる地域であり、魚介類が多様に利用されていた。特にイワシは漁獲に時期には釜でゆで、酢醤油で一人8~9尾も食べ、冬は糠漬けにしたコンカイワシに大根を加えて鍋物にしている。この他特産のぼらやいさざの料理、トビウオから作られたアゴだしが使われた。さらに、もずくやかじめ、テングサからところてんを作るなど海草の利用も多かった。 2)金沢市は地物や遠所物など多様な食材が得られる所である。主食は白飯であるが、冷やごはんを利用した大根飯や夏主食の残ったソーメンとなすを合わせた煮物が夕食に供された。夏はドジョウのかば焼きや、色つけ、いかの鉄砲焼きを購入した。じぶ煮は鴨肉や鶏肉ばかりではなく魚も使った。刺身では昆布締めや鱈の子つけにした。漬け物では蕪ずしのほか大根ずしがよく作られていた。 3)白峰村は白山麓地域のひとつで、山間部としての食文化が育まれているところである。昭和30年代以降は米を作るようになったが、それ以前は雑穀、おからなどを入れたおかゆや麦飯が主食であった。米粉に雑穀を入れた団子やかまし粉を番茶で掻いたものも食べていた。藁縄で括っても崩れない堅豆腐があり、狩猟で得た肉を熊鍋、熊汁、うさぎ汁にしていた。 4)以上、海岸部、都市部、山間部の地域差が示唆された。
著者
川村 昭子 中村 喜代美 新澤 祥恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の基礎調査として、地域的差違等を把握するため、文献に掲載されている料理・食品について検討した。<b>【方法】</b>『聞き書石川の食事』における地域区分(金沢、白山麓、加賀、河北、能登)を参考に、『金沢・加賀・能登四季のふるさと料理』等により、地域、季節により分類した。<b>【結果】</b>1)春には、金沢で押しずし、ごり料理、白山麓ではいわな料理、加賀でからしな、河北ではたにし料理、能登ではいさざ、ぼら料理があり、県全域で出現するものとしてはえびす、いわしの団子汁、いわしのぬた、山菜料理などがあげられた。 2)夏には、金沢でどじょうのかば焼き、いかの鉄砲焼き、きゅうりのあんかけが、白山麓であゆ料理、河北であずき貝、能登でとびうお(あご)料理、海ぞうめん、あじべっとの馴ずし、からもんがあり、県全域ではこぞくら、たくあんのふるさと煮、てんばな、巻きぶり、いなだがあげられた。 3)秋には、金沢でれんこん料理、さつまいも料理が、白山麓でこけ料理、堅豆腐料理ねんぐわじ、加賀では柿の葉ずし、鴨料理、しいな、きしずが、能登ではいしり料理、ふぶきだおれ、すいぜんが、県全域では大根菜めし、いとこ汁、甘えびの具足煮があげられた。 4)冬では、金沢であまさぎの昆布巻き、かわぎすが、金沢・河北で寒ぶな料理、加賀ではたはたの味噌和え、にしんなすび、干しあゆの昆布巻き、能登であいまぜ、がんず和え、さざえべし、べか鍋が、県全域ではかぶら・大根ずし、こんかいわし、ぶり・たら・かに料理があげられた。 5)車麩の卵とじ、さわらのじぶ煮などは季節を問わず食されていた。
著者
園田 純子 原田 章子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】2020年に開催される東京オリンピックを控え、地方でも外国人観光客を迎え入れる準備のため、観光政策としてインバウンド推進を行っている。そこで県立大学である本学の地域貢献のひとつとして、山口の歴史、特に食文化の面からアプローチする体験型のインバウンドツアーの内容を検討した。<br />【方法】インバウンドツアーの地域は、山口の歴史に足跡を残した大内氏及び毛利氏に関連する観光のできる大学近隣の山口市大殿地区とした。食文化の内容は茶道と和食の体験を柱とし、散策する史跡や見学地もそれに関連付けて決定した。参加者10名を山口県観光スポーツ文化部国際課、山口県国際交流協会等を通じて募集した。H29年3月5日にモニターツアーとして実施し、参加者から終了後のアンケート回答を得た。<br />【結果】大殿地区は大内文化の中心地であり、また幕末に藩庁が萩より移り毛利氏関連の史跡が多くみられるため、歴史と食文化のエピソードを抽出するには適する地域であった。茶の湯体験は、茶道の説明とデモンストレーションをしたのち、自分自身で茶を点て味わう体験を入れたことで、参加者の満足度を得ることができた。茶に関連して、山口の萩焼、菓子等の紹介を行うと共に、帰国後に茶を点てることができるよう簡単な道具の紹介をし関心を高める工夫をした。和食体験としては、地域の工芸品である大内塗の工房を見学し、和食の説明と箸の使い方の話をしたのち、毛利敬親公が参勤交代時に食した弁当を再現したものを元に今回試作した「毛利公の参勤交代弁当」を昼食として提供した。弁当の評価については、食材を野菜、魚としたものの、ベジタリアン等への配慮が必要であることが示唆された。
著者
古谷 彰子 大西 峰子 三星 沙織 米山 陽子 平尾 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】ワラビの根から抽出されるワラビ澱粉は、高価で保存性も悪い。わらび餅の調製に用いるわらび粉の市販品には安価な甘藷澱粉やクズ澱粉が混合されているもタピオカ澱粉を利用したものが多い。しかし、これらの澱粉は安価であるという利点はあるものの、ワラビ澱粉で調製した本わらび餅とは食味・食感がかなり異なっていた。本報告では、加工タピオカ澱粉を用いて、本わらび餅に近い食感のわらび餅の調製法を検討した。<br />【方法】澱粉は、未加工タピオカ澱粉(NT)、リン酸架橋タピオカ澱粉(P)、Pの酵素処理澱粉(PE)、アセチルリン酸タピオカ澱粉(AP)、APの酵素処理澱粉(APE)の5種(グリコ栄養食品(株))とし、上白糖(三井製糖)と蒸留水を用いてわらび餅を調製した。加水量は各澱粉の水分量を求めて調整した。またシェッフェの単純格子計画法を用い、NTと2種の加工タピオカ澱粉(PE、APE)を3成分として配合割合の異なる9つの格子点を設定した。物性測定はクリープメータ((株)山電)、官能評価は本わらび餅を対照として、つり合い不完備型ブロック計画法を用いて行った。<br />【結果】官能評価の嗜好では、PEとAPEを用いたものが総合評価の項目で有意に好まれたが、どちらも本わらび餅の食感とは異なっていた。そこで、シェッフェの単純格子計画法を用いて3種澱粉(NT、PEおよびAPE)の配合割合の影響を検討したところ、格子点⑦のNT:PE:APE=1:1:1の配合割合のわらび餅が本わらび餅に最も近い物性値を示した。官能評価の特性評価においても、弾力と口どけの項目で有意にあると評価された。嗜好においても、本わらび餅と同様に「好き」「非常に好き」と評価され、有意に好まれた。
著者
松本 美鈴
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的】平成26年度の高齢者率は26.0%に達した。高齢者は,低栄養状態(PEM)に陥りやすく,その一因としてえん下困難があげられる。PEMの予防には,食事に加えて間食の内容を考慮することも重要と考える。そこで,本研究では,PEM予防の間食として,高カロリーで高たんぱく質であるレアチーズケーキに着目し,えん下困難者が安全に食べることができるレアチーズケーキを調整することを目的とした。<br>【方法】<各種レアチーズケーキの調製>材料や配合割合が異なる8種類のチーズケーキを調製し,物性を比較した。<br><基本レアチーズケーキの調製>クリームチーズ100g,砂糖32g,ヨーグルト80g,クリーム80g,卵白17.5g,粉ゼラチン2g,水12gを基本配合としてチーズケーキを調製し,クリームチーズの種類およびヨーグルトとクリームの配合割合が物性に及ぼす影響を検討した。<br><物性測定>クリープメーター(山電)を用いて消費者庁の定める,えん下困難者用食品の試験方法に則り10℃および20℃における試料の物性測定を行い,硬さ,付着性および凝集性を求めた。<br>【結果】材料や配合割合の異なる8種類のレアチーズケーキの物性を測定した結果,ケーキの種類や測定温度によりケーキの硬さや付着性が異なった。えん下困難者用食品の許可基準Ⅲを満たしたケーキのレシピを基本レシピとして,クリームチーズの種類やヨーグルトとクリームの比率を変えて,レアチーズケーキを調製した結果,クリームチーズとしてマスカルポーネを用い,クリームの割合を減少し,ヨーグルトの割合を増加することで,ケーキの付着性が低減され,えん下困難者用食品の許可基準Ⅱを満たすレアチーズケーキを調整することができた。
著者
正岡 亜紀 上野 茂昭 島田 玲子
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.24, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】パウンドケーキは本来、砂糖、小麦粉、バター、卵を同量用いて作られる。バターは乳製品であり、乳製品アレルギーを持つ人はパウンドケーキを食べることができない。また、アレルギーではない人にとっても、バター中に多量に含まれる飽和脂肪酸は過剰摂取による生活習慣病や動脈硬化の促進が懸念されている。その上、バターはサラダ油と比べると高価である。そこで、安価で乳製品アレルギーを持つ人にも食べられるパウンドケーキの調製を目的とし、バターをサラダ油に置換した場合の物性や食味に及ぼす影響を調べた。 【方法】バターを用いた一般的なパウンドケーキをバター試料、バターを同重量のサラダ油に置換したものをサラダ油試料、バター試料と水分量、油分量、塩分量が同じになるようサラダ油、水、食塩で置換したものをサラダ油+水試料として、バターを溶かして最後に添加する共立て法によって生地の調製を行った。生地の粘度や比容積、焙焼中の生地の温度履歴、焙焼後の試料の比容積、物性、色の測定を行った。また、それぞれの試料の経時変化による影響を3日間、6日間保存することで検討した。 【結果】生地の測定では、比容積は、他の試料に比べてサラダ油+水試料が大きかった。粘度は、他の試料に比べてサラダ油試料が大きかった。サラダ油試料の中心部の温度が焙焼開始から20分後頃まで最も高温で、途中、温度上昇が緩慢になる現象が見られた。焙焼後の試料の比容積はバター試料が他の試料に比べて小さかった。かたさはバター試料、サラダ油試料、サラダ油+水試料の順にかたかった。凝集性は、かたさの値が大きなもの程小さくなった。保存によってすべての試料がかたくなり、凝集性は小さくなった。
著者
土岐 信子 山根 沙季 長野 宏子 川田 結花 木村 孝子 辻 美智子 長屋 郁子 西脇 泰子 横山 真智子 山澤 和子 堀 光代
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本各地には、各地域の自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は、地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着してきた岐阜県東濃地域の郷土料理と、その暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。<br>【方法】日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」調査に参画し、岐阜県東濃地域の瑞浪市、恵那市、中津川市を調査した。対象者はその地で30年以上居住した70歳代~90歳代女性8名で、家庭の食事作りに携わってきた人である。<br>【結果】自家栽培した作物を中心に、日常食はご飯、味噌汁、漬物が基本であった。また小麦をうどん屋に持ち込み、うどんに加工して煮込みうどんや素うどんなどで食した。山間部のため、野山の食材を中心にした料理が多く、おかずには季節の野菜や芋類を使った煮物、大豆の煮豆や炒り豆、蕗の佃煮、蜂の子の佃煮、醤油味噌などを食していた。味噌やたまり、蒟蒻などの加工品も作っていた。また乳牛や山羊、鶏、鯉、蜂の子を飼う家もあり、牛乳や卵も手に入った。魚は保存性の高い塩漬けした秋刀魚、鰯などを利用したが、昭和30年代にはスーパーマーケットができ、生の魚や肉なども手に入るようになり利便になっていった。この地で伝え継ぎたい家庭料理として、五平餅、朴葉寿司、蜂の子ご飯、さんま飯、栗おこわ、栗きんとん、栗蒸し羊羹、からすみ、朴葉餅、年取りのおかず、煮なます、柚べし、鯉こくなどがある。
著者
豊原 容子 桐村 ます美 河野 篤子 坂本 裕子 福田 小百合 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本調理科学会平成24~25年度特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の一環として、京都府下の昭和30年~40年代の家庭の食についての聞き取り調査を行った。この調査結果から、京都府全体に共通する家庭料理の特徴について明らかにすることを目的とした。 【方法】日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき、北部海岸沿いの丹後地区と舞鶴地区、中部の丹波地区、京都市内、南部平野部の京田辺地区、南部山間部の宇治田原地区の6地区の64歳から84歳の計22名を対象として、平成25年12月~平成26年2月に聞き取り調査を行った。この調査内容から、京都の家庭料理の特徴について検討した。 【結果】京都の家庭料理において、「倹約(しまつ)」を旨として材料を活かし使い切る工夫がさまざまになされていた。日常は、自家製の味噌を使った味噌汁、野菜や豆の炊いたん、切り漬けやどぼ漬けなどの漬物といった、季節の野菜、採集した野生の動植物、また自家製の乾物や加工品などを主材料とした料理を組み合わせて食べていた。これらの料理には、高価な昆布や鰹節のだしは使わず、煮干しが使われた。さらに野菜の炊いたんには、じゃこや油揚げなどを取り合わせおいしく食べる工夫がなされていた。油揚げは肉の代用として使われることも多かった。一方、魚や肉などを主材料とする料理は、野菜や乾物を主材料とするものに比べ非常に少ない。この中で、全域であげられた鯖寿司や自家で絞めた鶏のすき焼きは、行事やもてなしの折に作られる特別なごちそうであった。バラ寿司も行事に欠かせない特別な料理であるが、具については地域や家庭によって違い、常備した素材を用いる質素なものもあった。
著者
作田 はるみ 片寄 眞木子 坂本 薫 田中 紀子 富永 しのぶ 中谷 梢 原 知子 本多 佐知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

<br><br><br><br>【目的】兵庫県は南北を海に接して大小の島を擁し,中央部には東西に山地が横たわっている。河川の下流には肥沃な平野が開け,多彩な産物に恵まれるとともに,都市としても発展してきた。日本の縮図ともいわれる気候風土の違いが,地域ごとに伝統的な食文化を形成してきた。本研究では,各地域で昭和30・40年代に食べられていた家庭料理の中で主食となる「ごはんもの」と「もち・もち米」について,各地域の内容や背景を比較し,その特徴を明らかにすることを目的とした。<br><br>【方法】神戸,東播磨(瀬戸内海沿岸),東播磨(平野),北播磨,中播磨(平野),西播磨(山地),但馬(日本海沿岸),丹波,淡路の9地域を選定して平成25,26年に調査し,平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』聞き書き調査報告書(日本調理科学会)を資料とした。本研究では,家庭料理のうち,「ごはんもの」と「もち・もち米」について各地域の日常食と行事食について検討した。<br><br>【結果】日常の主食は,西播,丹波,但馬では麦飯,他地域では白米飯,神戸の朝食はパンであった。山地では山菜や野菜,沿岸部では魚介や海草といった季節の食材を使用した炊き込み飯や混ぜご飯,寿司も食べられていた。特に行事食では,秋祭りに鯖寿司が作られている地域が多かった。巻き寿司やいなり寿司は,運動会などの行事でよく作られ,具材の取り合わせに地域の特徴がみられた。もちについては,正月の雑煮として各地域で食べられていた。雑煮は,丸もちとみそ仕立ての地域が多かった。西播磨では,すまし仕立てで蛤が入り,淡路では,三が日はもちを食べず4日目に食べられていた。また,もちはあられやかきもちに加工され,ひなまつりやふだんのおやつとして食べられていた。
著者
寺本 あい 大和 裕子 古海 圭菜
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.113, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】スチームコンベクションオーブン(以下スチコン)は焼き、スチーム、その複合機能など多機能を持ち合わせている。この機能を適切に活用すれば大量調理において提供できる料理の幅が広がる。そこで、準備から廃油の処理に至るまで作業負担や環境負荷が大きい揚げ物について、スチコンを用いた調理の最適条件を検討することにした。【方法】本研究では、鶏のから揚げを題材とした。衣については粉の種類・配合、粉のまぶし方、油の付加方法、加熱条件については加熱モード、加熱時間について比較を行い、揚げ調理に近い仕上がりになる調理方法を検討した。完成品の評価は、こども園にて給食として実際に提供し、子供達の喫食状況の観察と、職員を対象とした嗜好調査を行った。【結果】数種の粉を配合し、揚げ過程での吸油を下処理段階で油にくぐらせ均一にむらなく付加し、スチコンの複数のモードを組み合わせることで、肉のジューシーさを保ちながら揚げ物のカリッとした食感に近付け、粉っぽい部分が残ることがなく均一な仕上がりとなった。具体的な最適調理条件は、以下のとおりである。粉は薄力粉とコーンスターチ、粉全量の5%の重曹用いた。粉のまぶし方は、鶏肉に薄力粉をまぶした後、重曹を混ぜたコーンスターチを加えまぶした。油の付加は、バットに油を入れ粉の付いた鶏肉をくぐらせて、焼き網の上に並べ余分な油を落とした。加熱条件は、浅型パンの上に鶏肉を並べた焼き網をのせ、熱風モード220℃で8分加熱後コンビモード(スチーム80%)220℃で2分加熱した。また、こども園における完成品の嗜好調査や喫食状況の観察より、鶏の唐揚げとして提供できる品質であると考えられる。
著者
木村 久江 浜谷 小百合 園田 純子 山本 比佐子 二木 栄子 池田 博子
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.109, 2012 (Released:2012-09-24)

一人暮らしの調理に関する基礎的研究○木村久江1)浜谷小百合2)園田純子3)山本比佐子4)二木栄子5)池田博子6)  1)西南女学院大短大2)北九州市立赤崎小3)山口県立大4)福岡県立青豊高  5)元西南女学院大6)元西南女学院大短大【目的】現在は社会状況の変化により年齢層を問わず一人暮らしの者が増えており、今後さらにこの傾向が強くなると考えられる。本研究は、一人暮らしの生活をするうえで作れるとよい料理を知り、調理教育の参考に資するために行うものである。【方法】対象者は高校生41名、大学生(短大、専門学校含む)219名、小学生の保護者68名である。調理法別の料理(93種類)について、「知らない料理」、「作れる料理」、「買って食べる料理」、「作って食べる料理」、「一人暮らしで作れるとよい料理」についてアンケート調査を行った。大学生は調理実習履修以前に実施した。【結果】知らない料理で、若者・保護者ともに多かったのは、紅白なますで若者では40%、保護者10%であった。煮物や和え物、酢の物等日本の伝統的な料理が多かった。作れる料理は、飯・パン・麺類、卵料理が高い割合であった。和風酢の物や煮物、洋風汁物、蒸し物、揚げ物は概して低い傾向がみられた。保護者は若者に比べ全般に割合が高かった。買って食べる料理で多かったのは、若者、保護者ともに、焼売、いなり寿司で、若者は洋風の料理、保護者は和風の料理が多かった。その特徴は、食頻度の高い料理で料理法は煩雑なものであった。作って食べる料理では、若者ではご飯物および卵料理が多く、保護者は主食、副菜ともに作って食べる料理の種類が多く割合も高かった。作れるとよい料理は若者では肉じゃがが76.5%で多く、スパゲッティ類、白飯・麦ごはん、味噌汁と続く。保護者は1位が白飯・麦ごはん、味噌汁とも86.8%で、カレーライス、目玉焼き・ハムエッグと続き、若者は自分の好きなもの、保護者は日常手軽に作れるものに多い傾向がみられた。
著者
渡邊 智子 梶谷 節子 中路 和子 柳沢 幸江 今井 悦子 石井 克枝 大竹 由美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

<b>【</b>目的<b>】</b>『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じて聴き取り調査を行い,昭和35~45年頃までに残されて次世代に伝え継ぎたいと対象者が考えている家庭料理を収集した。ここでは,各地域のおやつについてその特徴を報告する。<br /><b>【方法】</b>千葉県の9地域(利根川流域,北総台地,東京湾奥,九十九里海岸,内房・館山地域,北総台地,房総湾奥部海岸地域,船橋地域)について聴き取り調査研究を行った。各地域のおやつついて,日常のおやつとハレのおやつに区分して検討した。<br /><b>【</b>結果<b>】</b> 日常のおやつは,食材の宝庫である千葉県の特徴を生かした生鮮果実(すいか,いちご,びわ,柿:房州海岸,柿,びわ,すいか:内房・館山地域,柿,りんご,みかん:北総台地),乾果実(柿:房州海岸・館山地域・北総台地)がみられた。幕張はさつまいも栽培が始まった地域であるが,さつまいももふかす,干しイモ,いも餅,芋羊羹として5地域で食べていた。米を用いたおやつには,おにぎり,ぼたもち,あられ,かきもち,すいとん,せんべい,もち草だんご,ポン菓子,性学(せいがく)もち(つきぬき餅:うるち米が原料)として全地域で食べられていた。てんもん糖(しょうが,ふき)は,北総台地や九十九里で食べていた。その他,パン,そばがき,うに,あけび,かき氷など多様なおやつを食べていた。<br /> はれのおやつは,ぼたもちが主で,重箱にごはん,あんこを順番に入れる作り方(北総台地・船橋地域)もあった。たまご寒天(九十九里海岸)は,寒天の中に黄色の卵が入り華やかなお菓子であった。他には,おしるこ,甘酒,赤飯,五目飯,餅菓子も食べた。<br />千葉県のおやつは,千葉県で採れる豊かな食材を家庭で料理したものがほとんどであった。
著者
横田 和子 會田 久仁子 阿部 優子 加藤 雅子 石村 由美子 中村 恵子 津田 和加子 福永 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぎたい日本の家庭料理」の主旨に賛同し,福島県内における伝統料理,及び郷土の家庭料理について文献を元に把握するとともに,調理担当者からの聞き書き調査を通して,地域の気候や風土から発生し,現在まで伝え継がれている料理,これからも伝承したい料理について知ることを目的とした。<br />【方法】前報と同様に、聞き取り調査の結果を基に、本報は福島県内の「おやつ」について考察した結果について報告する。<br />【結果】会津地方では、たぐり飴、まんじゅうの天ぷら、凍み餅、かぼちゃとじゃがいもの煮しめ、はっとうが食されていた。中通り地方の県北では凍み餅、漬物、干し芋、あんぽ柿、県中ではかりんとう、みそかんぷら、花豆の煮物、県南では、凍み餅、みそおにぎり、いなごの佃煮、かしわ餅、干し柿が食されていた。浜通り地方の相双では凍み餅、豆餅、柿餅、よもぎ大福、かしわ餅、くるみ餅、いわきでは、干し柿、蒸したさつまいも、ドーナツ、蒸しパン、いり大豆、ようかん、ところてんなどが食されていた。県北と県南と南会津で見られた「凍み餅」は、寒冷地ならではの保存食として県全域の特に山間地で食されている食材で、主食としてだけでなく、おやつとして食されていることが分かった。また、みそかんぷらも県全域で食されているが、じゃがいもの小芋を有効利用した手作りのおやつとして利用されていた。その他にも、地域で収穫される野菜や果物が加工されておやつとして食されている。さらに、「あんぽ柿」「たぐり飴」「まんじゅうの天ぷら」「はっとう」などは、郷土料理として現在でも伝承されていることが分かった。
著者
井上 瑞穂 高橋 亜由美 久保 加織
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.107, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】近年、生活スタイルの変化に伴って調理の簡便化が求められ、冷凍食品や総菜などが数多く販売されている。お弁当用の冷凍食品も多く、なかには自然解凍を提案する商品もあるが、解凍法による成分の違いは明らかになっていない。一方、野菜はビタミンや無機質、食物繊維の供給源として重要な食品であるが、栄養素のなかでもビタミンCは、調理中の損失が大きいことが報告されている。本研究では代表的な野菜の一つであるホウレンソウに含まれるビタミンC量の加熱と冷凍、および解凍による変化を調べた。【方法】試料には、生鮮野菜として2013年11月に岐阜県産、2013年12月と2014年4月に滋賀県産のホウレンソウを、市販冷凍食品として「ほうれん草3種のおかず」(N社製)をそれぞれ大津市内のスーパーマーケットから購入して用いた。ホウレンソウはゆでた後、醤油を添加して冷凍庫内で2週間冷凍した。解凍は電子レンジ解凍、あるいは20℃で5時間の自然解凍とした。ビタミンCはHPLCによって定量した。【結果】ホウレンソウ中の総ビタミンC量は、試料間でのばらつきが大きく、収穫時期、個体や部位による含有量の違いが大きくみられた。ホウレンソウをゆでると加熱による酸化、分解、水への溶出により総ビタミンC量は大きく減少し、醤油を添加するとさらに減少したが、冷凍による変化はあまりみられなかった。生鮮野菜から調製した冷凍品も、購入した冷凍食品もともに自然解凍よりも電子レンジ解凍の方がビタミンCの残存率が高い傾向が認められた。これは、電子レンジ解凍では内部温度の上昇により酸化酵素が失活するためと考えられ、解凍には電子レンジを用いる方が望ましいと判断した。
著者
工藤 美奈子 小泉 昌子 峯木 眞知子
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.156, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】皮蛋は家鴨卵の加工品で、アルカリによるタンパク質の凝固性を利用した中国独特の食品である。日本では家鴨卵の入手ができないので、鶏卵を使用して加工した鶏卵皮蛋を考えた。それが普及すれば、安全性が高く安心して食することができる上、食用の機会が広まると考える。そこで、本研究では、国内で製造された鶏卵を用いた無鉛皮蛋の経時的変化を主に物性面や調理特性より台湾産皮蛋と比較した。【方法】白色レグホーン種鶏が産んだ鶏卵(福岡県産)を加工した鶏卵皮蛋を㈱丸紅エッグより入手した。25℃下で入手後58日間保管した。外観の観察、卵殻・卵白・卵黄の重量とその構成比、pH、色度、塩分、水分含有率、破断測定およびにおい識別装置によるにおいの測定を行った。【結果】鶏卵皮蛋100g あたりのエネルギーは151kcal、たんぱく質12.6g、脂質11.1gで、台湾産皮蛋の成分値と大差はなかった。熟成の様子を観察すると、入手28日目で卵黄が軟らかい溏心タイプの様になった。鶏卵皮蛋の重量割合を、台湾産皮蛋と比較すると、卵白の構成比が高く卵黄の構成比が低かった。卵白の破断エネルギー(×103J/m3)は、1日目46.70、28日目83.23、58日目65.04で、経過日数とともにかたくなる傾向が見られた。鶏卵皮蛋の卵白は台湾の市販皮蛋と比較すると、軟らかく弾力が劣ると考える。鶏卵皮蛋の卵黄のテクスチャーは台湾の市販皮蛋よりかたさ応力と付着性が低かった。鶏卵皮蛋の卵白および卵黄のにおいの強さを、臭気指数相当値でみると台湾市販品と有意差はなく、においの質の類似度では、卵黄の炭化水素系に違いがあった。鶏卵皮蛋の熟成期間は入手後28日と考える。