著者
福永 祥子 武田 大造 寺澤 真由 升井 洋至
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】高齢者における咀嚼は,QOLに大きく影響を及ぼす要因であることが明らかとなっている。現在,高齢者の食事に関する物性の基準は,厚生労働省のえん下困難者用食品許可基準や日本介護食品協議会のユニバーサルデザインフード(UDF)の自主規格などがある。本研究では,実際に特別養護老人ホームで提供されている食事の物性を測定,これらの基準と比較し,高齢者向けの調理について検討することを目的とした。 <br>【方法】食事試料は,神戸市内の高齢者施設Fより提供を受けた(2012から2014年度)。施設におけるソフトA食:(歯ぐきでつぶせる硬さ,義歯に不具合のある人を対象),ソフトB食:(ソフトA食にあんをかけ,嚥下機能が低下した人を対象)の2種類を試料とした。調理品の物性の測定は,料理品の食材ごとに,山電レオナ―クリープメータ(RE2-3305B)を用いて,UDF等の基準に示されている方法に準じて実施した。なお,測定温度は20&plusmn;2℃または40&plusmn;2℃に統一して行った。 <br>【結果】硬さにおいて,ソフトA・B食ともに測定温度が高温(40℃)で基準内となる割合が高く,ソフトB食のほうがA食より高かった。この一因として,ソフトB食はA食のあんかけによる軟化方法であることがあげられる。低温(20℃)では,多くの食材が硬くなる傾向であった。食材の使用頻度から比較した場合,特に魚で大きな差が見られ,B食の方が軟らかかった。一方,A食の魚は,基準内にある割合が低かった。また,豆腐,ニンジン,ダイコン等の食材で基準を満たす割合が高く,その使用頻度が高かった。これらの食材を高頻度で使用することで,高齢者向けの食事を工夫して提供していると考えられた。
著者
土屋 律子 坂本 恵 鐘ヶ江 あゆ美 菊地 和美 木下 教子 坂本 佳菜子 佐藤 恵 菅原 久美子 田中 ゆかり 庭 亜子 畑井 朝子 藤本 真奈美 宮崎 早花 村上 知子 村田 まり子 山口 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】日本調理科学会特別研究(平成24~25年度)「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の先行研究・資料とすることを目的に昭和30~40年頃までに北海道に定着してきた家庭・郷土料理に関する書誌情報を収集した。地域を道央、道南、道北、道東に分け、北海道のみの記載、地域の特定のないものは、「北海道」としてまとめた。今回は、これらの資料に記載されている料理の地域性、主材料、調理操作について検討したので報告する。【方法】書誌収集は、平成25年3月~12月に実施した。収集された資料は62冊、料理数は1066件であった。料理の主材料を日本食品標準成分表2010年に基づき分類、調理操作は調理方法の記載、および明らかに推定できる操作を加え分類し検討した。【結果】料理数は、道東が多く全体の30.2%(322件)、道南23.5%、道央13.3%、道北10.2%であった。「北海道」は242件で、地域の記載がない28件を含めた。主材料を見ると、魚介類が37.9%と魚種、調理法も多く、中では鮭、鰊、いかの利用が多い。鯨、ごっこ、サメの利用もみられた。次いで野菜類(14.6%)、穀類(13.4%)、いも類(12.6%)と北海道の特産物の利用が多い。地域別では道南、道央は魚介類、道北は野菜類、道東はいも、野菜類の利用が多い。穀類は道央(29.6%)が多く道南、道北と続き、道東は6.4%と少ない。調理操作では、「煮る」が31.4%と最も多く、次いで「漬ける」(18.0%)、「焼く」(10.9%)、「和える」(7.2%)の順であった。「煮る」では、鰊の三平汁、鮭の石狩鍋、「漬ける」では、鰊、ほっけの飯ずし、いかの粕漬け、松前漬けなど、「焼く」では、いか焼きやいももち、ジンギスカンなどがあげられていた。地元の食材を多種多様に調理・加工し、利用している様子を窺い知ることができた。
著者
平林 佐央理 吉田 真美
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.61-61, 2010 (Released:2010-08-27)

【目的】本研究ではショウガを調理加熱した時、ショウガの香気成分と、主な辛味成分である6-gingerolと6-shogaolにどのような変化がおこるのか調べることを目的とした。【方法】香気成分の分析は、高知県産ヒネショウガ15gを試料として、5種の調理操作をそれぞれ行い、香気成分をエーテルで抽出し、脱水、濃縮した。採取したエーテル抽出濃縮物はカラムクロマトを行い、炭化水素画分と含酸素画分を得た。得られた試料をGC-MSで分析した。定量は、10種類の標準物質のGC-MS分析により作成した検量線をもとに行い、同定はGC-MS(NIST05マススペクトルライブラリ)にて確認した。辛味成分の分析も、同一の試料を用いて、調理加熱操作を行った後にメタノール抽出、ろ過、減圧濃縮し、これをHPLCにて分析した。なお同定は、6-gingerolと6-shogaolの標準物質のHPLCにおける保持時間の一致により、定量は両成分のピーク面積と標準物質による検量線をもとに行った。【結果】生ショウガの香気成分を分析したところ、香気物質の量は含酸素画分より炭化水素画分に多かった。しかし、この画分にはショウガの香りはほとんど感じられなかった。加熱調理により、この画分の成分は一様に減少し、香気パターンの変化は小さかった。含酸素画分はショウガの香りが強く感じられ、モノテルペン類が多く存在していた。この含酸素画分は調理操作法により香気パターンが変化した。辛味成分である6-gingerolと6-shogaolは、茹で加熱を行うと6-gingerolが若干の減少傾向を示すのに対し、その脱水産物である6-shogaolは増加傾向を示した。
著者
大村 省吾 木村 久江
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】和食文化の継承・展開が課題である。特に行事食の基点である正月料理について食専攻学生の摂取状況から調理指導・食育・食文化教育等の問題点・課題を考察する。【方法】大学4短大2専門学校3計9校850名(前年4校251名)を対象に①年末年始の行動と行事食,②お節料理の献立・嗜好,さらに③家族との調理参加・共食の状況,④調理技能などの修得方法などを設問した。【結果】①越年・迎春は3/4が帰省・自宅で,1/3は神社・寺院訪問など食風土・民俗習慣に接する②蕎麦は75%。雑煮も同様で丸餅は奈良・北九州が7割と特化し,角餅は仙台・長野・埼玉・東京が65%と東西食文化圏がみられ、自家搗き餅は長野・奈良・北九州各10%は特記される。③正月お節料理65%はなお優位にあり、和洋折衷9%洋風3%中華風2%など新お節風は計14%を占め,普段の食事18%(年末は60%)の今後増加が懸念される。④食専攻学生の調理参加率-本人主体3.4%,分担11.6%,部分的補助24%計39%、無回答61%は深刻な事態である。⑤誰からお節づくりを学ぶか・母から22%、祖父母12%,父3%、姉妹兄弟2%・・・39%が家族系に対し授業31%,独学11%が対比される。【課題】食文化の家庭内劣化は世代交代と共に進み,食専門教育の方向付け必要である。
著者
櫻井 美代子 大越 ひろ 増田 真祐美 大迫 早苗 河野 一世 津田 淑江 酒井 裕子 清 絢 小川 暁子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 食文化視点より次世代に伝え継ぎたい日本の家庭料理を掘り起こすことを目的とする。<br /><br />【方法】 神奈川県内の主だった14地域である横浜市中区・横浜市泉区・川崎市多摩区・鎌倉市・三浦市・大和市・相模原市(旧津久井)・伊勢原市・秦野市・小田原市・大磯町・山北町・真鶴町・清川村の地域を中心に調査を行った。それらの地域の年配者に昭和年35年前後から昭和45年前後の食生活について聞き取り調査を行った。それらの料理内容をまとめ,文献による補足調査を行い,検討を行った。<br /><br />【結果・考察】<br />神奈川県は、立地により海・山の産物を利用した料理が多くみられた。水田を多く所有する地域ばかりでなく,水田や畑作からの裏作として,小麦・蕎麦・豆類が作られている地域も多く存在する。<br />その中で今回は,間食(おやつ)に注目し報告を行うこととする。神奈川県全域で小麦粉製品の所謂,粉物が多く登場する。行事(祭り等)での頻度が多い酒まんじゅうやまんじゅう類の他,小正月,どんど焼き等でのまゆ玉飾りがあげられる。月見の十五夜や十三夜に供えるだんごの他,日常では、春先のよもぎだんごや草の花だんご,へらへらだんごなどのだんご類のいろいろな種類がうかがえる。そのだんご類の材料としては,米粉,小麦粉,さつまいも粉などが使われている。行事等で供えられただんごは,きなこやあん,砂糖醤油などをつけて食されていた。また,日常のおやつとしては,蒸しパンや庭木として育てられた果物類なども間食としてあげられる。
著者
桑野 靖子 河原 ゆう子 佐宗 洋子 小林 由実 山中 なつみ 小川 宣子
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.2-2, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】加水量,加熱方法,加熱工程の異なる炊飯方法で調理された飯について,甘みと香りの官能評価に対する理化学的な測定値に相関性があるか否かを検討した。 【方法】圧力IH炊飯器,IH炊飯器,ガス炊飯器の3機種で調理された飯とガス炊飯器の飯と同じ硬さとなるよう加水量を調整した飯の4種類を対象に,甘みの評価値として,糊化度と唾液アミラーゼによる人工消化後の還元糖生成量を測定した。香りの評価値として,主要な臭気成分量を定量化し,閾希釈倍数を算出した。官能評価は40歳代女性36名を対象に,各理化学的評価に対応した指標による評価と好みを炊きたてと炊飯後常温で4時間放置した飯(以下冷や)に対して行った。 【結果】「甘み」評価において,糊化度では飯間に差はなかった。人工消化による還元糖生成量ではガス炊飯器の飯とIH炊飯器の飯が有意に多かったが,官能評価ではガス炊飯器の飯と加水量を調整した飯の甘みが強いと評価され,IH炊飯器の飯は最も甘くないと評価された。ごはんの甘み評価には,ごはんの表層部と内部の水分量の違いが関与していると考えられる。「香り」評価手法については,炊きたてと冷やの違いは確認できたが,機種間の違いまでは確認できなかった。
著者
遠藤 千鶴 西堀 尚良
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.51-51, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】ポリアミンによる動脈硬化抑制、抗老化、炎症抑制などの効果が報告されて以来、食事からのポリアミン摂取が注目され、食品中のポリアミン含有量が報告されるようになってきた。一方、制御栄養の側面から、実際の摂取量を明らかにすることが必要であり、調理・加工によるポリアミン量の変動を明らかにすることが重要であると考えられる。そのため、演者らは加熱によるポリアミン量の変動について研究を重ねており、前回の大豆に続き、今回は、きのこ類の加熱前後のポリアミン含有量の変動を検討した。 【方法】試料のきのこ類にはしいたけ、まいたけ、なめこ、しめじ、エリンギ、えのき、マッシュルームを使用した。試料は荒みじんにした後、一定量を秤量し、加熱は600W電子レンジを使用し、加熱時間は60秒間、「茹でる」はビーカーに水を加えて、同レンジで90秒間加熱した。その後、5%トリクロロ酢酸を加え、ホモジナイズ後、遠心分離し、得られた上澄みを液体クロマトグラフィーで分析した。分析はポストカラムOPA法により行った。【結果】きのこ類に含まれているポリアミンは種類や産地により検出成分、含有量に差があるものの、共通に含まれていた成分はスペルミジンで、量も多く含まれていた。その他の成分として、プトレスシンはまいたけ、ブナシメジ、エリンギに含まれ、アグマチンはまいたけのみから検出された。きのこの主要なポリアミンであるスペルミジンの茹で加熱による損失率は、しいたけで26~37%、まいたけ21~33%、しめじ8~28%、エリンギ16~40%、えのき31~45%であった。また、まいたけに含まれているプトレスシンは「茹で」加熱により、約85%の損失が認められ、ポリアミン成分により損失率に差があった。
著者
奥田 玲子 武田 香織理 岩崎 初音 白杉(片岡) 直子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>アーモンドは洋菓子に特有の好ましい風味や質感を付与する特性から,製菓に欠かせない材料として特に粉末状で汎用されている。一方で,近年,アーモンドに反応するナッツアレルギーの症例も増えている。そこで,ナッツアレルギー対応策として,洋菓子におけるアーモンド代替の可能性を検討することにした。アーモンド菓子の代表であるマカロンに着目し,アーモンドパウダー不使用のマカロン様菓子の試作を試みた。 <br> <b>【方法】</b>官能評価では,二元配置法により7段階評価尺度を用いて,食感や風味を問うた。卓上型物性測定器(山電,TPU-2DL)によりプランジャ-(接触面直径3mm),ロ-ドセル20N,クリアランス1.0mm,測定速度 2.5mm/secでマカロンの破断特性を測定した。<br> <b>【結果】</b>薄力粉や米粉,食用油,香料などを用いて,マカロン様菓子を調製した。配合条件を検討し,物性において,アーモンドを使用した標準マカロンの荷重-歪曲線に近づけることができた。ところで,香料には,アーモンド抽出物を含む製品と合成品のみを調合した香料とがある。標準マカロンと,前者の香料を添加したマカロン様菓子とを,ナッツアレルギーを持たない大学生らに供して官能検査を実施したところ,両試料に対するプロファィルは似たパターンを示した。どの項目においても得点の平均値は標準マカロンの方が高かったが,マカロン様菓子も一定水準でパネルに評価された。一方,ナッツアレルギーに対応させるために,後者の香料を用いたマカロン様菓子を調製したところ,官能検査で低く評価された。品質を標準マカロンにより近づけるために必要な要素をいくつか見出したが,特にアレルゲンを含む懸念のないアーモンド香料の開発が必要である。
著者
坂本 薫 森井 沙衣子 井崎 栞奈 小川 麻衣 白杉(片岡) 直子 鈴木 道隆 岸原 士郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本の市販グラニュ糖やザラメ糖のスクロース純度は,99.9%以上と大変高くスクロース結晶とみなすことができるため,製品間で品質に差はないと考えられてきた。しかし,グラニュ糖の融点にはメーカーによって異なるものがあり,融点の異なるグラニュ糖は加熱熔融状況が異なり,示差走査熱量分析(DSC 分析)において異なる波形を示すこと,さらに,スクロース結晶を粉砕することにより,その加熱特性が変化することをすでに明らかにした。焼き菓子の中には,マカロンや焼きメレンゲなど粉砂糖の使用が通常とされるものがある。そこで,グラニュ糖と粉砂糖を使用して焼きメレンゲを調製し,焼き菓子における砂糖の粒度の違いによる影響を検討した。<br><br>【方法】3社のグラニュ糖(W,X,Z)およびそれぞれを粉砕した粉砂糖(Wp,Xp,Zp)を用いた。砂糖のみについて,焼きメレンゲと同条件で加熱し,色差測定,HPLC分析を行った。また,焼きメレンゲを調製し,外観観察および重量減少率測定,密度測定,色差測定,破断強度測定を行った。<br><br>【結果】砂糖のみの加熱では,グラニュ糖のほうが色づきやすく,粉砂糖のほうが着色の度合いは小さかった。また,加熱により,W,Xでは顕著に還元糖が生成していた。砂糖のみと焼メレンゲでは,加熱後の色づき方の逆転現象が認められ,粉砂糖メレンゲのほうが色が濃い結果となった。外観では,粉砂糖メレンゲでは表面はなめらかであったが表面が硬い傾向が認められ,表面に亀裂や気泡が見られた。グラニュ糖メレンゲは,色が白くきめが粗かった。本研究により,砂糖の粒度の違いにより,焼き上がりの外観,色調やきめ,テクスチャーが大きく左右されることが明らかとなった。
著者
真部 真里子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.148-154, 2005
参考文献数
30

効率のよいカルシウム摂取のためには, 日々の食事を有効に活用することが重要である。そのために, 食材中のカルシウム(Ca)含量だけでなく, 調理によるカルシウム吸収効率の変化を明らかにする必要である。本報では, 未調理ならびに調理済みの牛乳の人工消化処理液をCaco-2細胞単一層に添加し, 調理によるCa吸収への影響を検討した。未調理の牛乳中のCaは, 他のCa源よりも吸収量が多かった。しかし, きなこや抹茶粉末を添加すると, 無添加の牛乳と比較して有意にCa吸収量が低下した。また, 65℃の加熱したホットミルクやベシャメルソースに調理しても, Ca吸収は低下した。また, これらのCa吸収量の変化は, 抹茶粉末添加の場合は細胞間経路の阻害により, 他の試料の場合は, Caの溶解度変化など細胞間経路に対する間接的な影響によることが示唆された。このように, 食事からの効率的なCa吸収のためには, 調理によるCa吸収の変化について考慮する必要がある。
著者
金城 みなみ 佐藤 瑶子 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.74, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】煮物調理のおいしさを決定する上で味付けの状態は重要な要因であり、品質一定の調理品を得るには調味料成分の拡散過程の予測が必要である。本研究では調味の中でも甘味と塩味に着目し、両者の変化を同時にシミュレーションすることで実際の加熱調理における両者の関係を把握することとし、予測に必要なショ糖の拡散係数の測定も行った。 【方法】20、50、70℃の0.15 M(5.13%)ショ糖溶液に浸漬した2cm角ダイコンのショ糖濃度の経時変化をフェノール硫酸法により測定した値を用い、三次元拡散方程式に基づくプログラム計算より各温度における拡散係数を求めた。試料を1mm3の体積要素の集合体とみなし、試料中の各体積要素のショ糖濃度を得られた拡散係数を用いて予測し、全ての体積要素の平均値を試料全体平均ショ糖濃度の予測値とした。2cm角ダイコンを0.15Mショ糖水溶液で室温から99.5℃で1時間加熱後のショ糖濃度の予測値と実測値を比較した。ショ糖及び食塩1)の拡散係数を用い、20種以上の料理書等のレシピを参考にし、実際の調理におけるダイコン中のショ糖及び食塩の拡散過程を予測した。 【結果】ダイコン中のショ糖の拡散係数は、20℃:0.38×10-5 cm2/s、50℃:0.73×10-5 cm2/s、70℃:1.48×10-5 cm2/sであり、それらの温度依存性をアレニウスの式で表した。温度変化を伴う調理におけるショ糖濃度の経時変化の予測値と実測値は概ね一致した。料理書等の煮物調理における調理過程をシミュレーションした結果、調味液中のショ糖濃度が4~6%、食塩濃度が1~5%の時、ダイコン中の食塩濃度は0.6±0.1%とほぼ適度であり、この時のショ糖濃度は2~4%であった。 1)遠藤ら,日調科誌,46,8-14(2013)
著者
島村 知歩 太田 暁子 喜多野 宣子 志垣 瞳 冨岡 典子 三浦 さつき
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】近年、伝統的な行事食が親から子へ伝承されない傾向にあるといわれる中、奈良県における年中行事の認知と経験、それに関連する行事食の状況について、学生世代、親世代、祖父母世代の三世代間で比較を行い、世代間での伝承状況についての現状を把握することを目的とした。 <br>【方法】平成21~23年度日本調理科学会特別研究で実施した「調理文化の地域性と調理科学:行事食と儀礼食」の全国統一様式の調査票により、大学生およびその家族にアンケート調査を実施した。そのうち、奈良県内で10年以上居住経験のある子世代(10・20歳代)150名と親世代(40・50歳代)114名、祖父母世代(60歳以上)32名について、調査項目17行事の年中行事の認知度、経験、行事食の経験、調理状況について検討を行った。<br> 【結果】17行事中、11行事はいずれの世代も認知度85%以上と高かったが、春分・秋分の日、春・秋祭り、重陽の節句の認知度は低く、世代間で違いがあった。80%以上が経験している行事は、祖父母10行事、親9行事、子は正月、クリスマス、大晦日、節分、上巳の5行事と少なかった。祖父母と親の行事の経験率は似ているが、重陽の節句と春祭りの経験は祖父母(21.9%・37.5%)親(9.6%・14.9%)子(5.3%・15.3%)と親は子に近かった。行事食では3世代共に90%以上が経験している料理は正月の雑煮・黒豆・かまぼこ、クリスマスケーキと年越しそばであった。行事食も祖父母と親の喫食経験は似ているが節分の炒り豆、月見だんご、冬至の南瓜は世代間に差がみられた。春祭り・秋祭りの行事食は祖父母でも約30%と経験は低く、親・子は約10%とさらに低かった。
著者
関原 成妙 福留 奈美 早川 文代 品川 明
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.102, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】硬水では良いだしが取れないことは日本の料理界で常識とされる。うま味を含めた5つの基本味の感じ方は水の違いによってどのように変化するのか、本研究では5つの基本味の感じ方の違いを水の硬度の違いと関連づけてとらえることを目的とした。また五味識別テストを行う際の水溶液濃度を味質別に設定する必要性についても検討した。【方法】五味識別テストを市販の飲用水を用いて行うことを想定し、ボトルドウォーター3種(硬度が異なるミネラルウォーター2種と純水)を選んだ。ISO8586のパネリスト選抜基準および訓練テストの濃度を参考に予備実験を行い、甘味(ショ糖)、塩味(NaCl)、酸味(クエン酸)、苦味(無水カフェイン)、うま味(グルタミン酸ナトリウム)の水溶液の濃度を4段階に設定した。18-22歳の都内女子大学の学生24-29名を対象に2016年3-7月に3点識別試験法で官能評価を行った。水別、濃度別に有意差検定を行い、結果をもとに五味識別テストにおける水溶液濃度の設定についての検討を行った。【結果】識別できた人の割合は、うま味については硬度が高い水の方が高く、酸味については硬度が低い水の方が高い傾向が見られた。低濃度の水溶液では、うま味は純水で、酸味は硬度の高い水で有意差が出る傾向にあり、うま味と酸味の味質の感じやすさと水の硬度の違いに逆の傾向が見られた。甘味、塩味、苦味については水の硬度段階の違いによる一定の傾向は見られなかった。以上より、うま味と酸味の感じ方は特に低濃度で水の硬度の違いによる影響を受けるため、五味識別テストを行う際には、テストの目的に応じて呈味物質の濃度や水について十分に検討する必要があることが示唆された。
著者
粟津原 元子 田中 佐知 早瀬 明子 花坂 照彦 畑江 敬子 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.91-91, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 鶏肉の旨み成分であるイノシン酸およびグルタミン酸量は鶏肉の加熱中に変化する事が知られている。一般にグルタミン酸などのアミノ酸はプロテアーゼの作用により加熱中に生成された後分解され、イノシン酸はフォスファターゼの作用により加熱中に分解して減少すると考えられている。本研究では、鶏肉の加熱調理方法として急速加熱,緩慢加熱および急速加熱と緩慢加熱の組合せ加熱を考え、加熱中の温度履歴と鶏肉の旨み成分との関係を検討した。【方法】 鶏モモ肉ミンチ260gを直径120mm×高さ20mmの円柱状に成型したものを試料に用いた。加熱条件は、緩慢加熱(オーブン210℃、35分加熱),急速加熱(レンジ500W、7分加熱),4種類の組合せ加熱(レンジ3分+オーブン30分、レンジ4分+オーブン25分、レンジ5分+オーブン20分、レンジ6分+オーブン15分)とし、それぞれ試料中心温度が80℃になるまで加熱を行った。それぞれの試料からPCAにより可溶性成分を抽出し、核酸関連物質をHPLCで、アミノ酸をアミノ酸分析計でそれぞれ測定した。【結果】 グルタミン酸は緩慢加熱では加熱の初期の段階でやや増加したものの、焼き上がりの時点では生肉に比べてやや少なくなった。急速加熱では緩慢加熱に比べて、グルタミン酸の減少率が大きく、生肉の88%になった。イノシン酸は緩慢加熱では生肉の屋16%にまで減少したが,急速加熱では生肉の65%にとどまった。組み合わせ加熱では、グルタミン酸量は組み合わせのパターンに関わらずやや減少したが、イノシン酸は始めの急速加熱が長く、その後の緩慢加熱が短いほど減少が抑制され、旨み成分の保持に効果があった。
著者
山本 直子 大内 和美 哥 亜紀
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.68, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】 塩麹は、米麹に食塩と水を加え醗酵熟成させたもので、独特の風味とうまみのある調味料である。この塩麹に漬けた肉や魚はうまみが増し、軟らかくなると言われている。これは米麹が産生する酵素が関係していると考えられる。そこで、本研究では塩麹の熟成する過程でのα‐アミラーゼ、グルコシダーゼ、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼについて、その酵素活性の変動を調べることとした。【実験方法】 塩麹は、米麹に10%の食塩(市販品に準ずる)を加え、しっとりなじむまでよく混ぜ、水を加え懸濁させて調製した。調製後は20℃で7日間熟成させ、その後4℃で冷蔵保存した。調整0日から経時的に酵素活性を測定した。α‐アミラーゼ、グルコシダーゼ及びカルボキシペプチダーゼの活性測定はキッコーマン(株)醸造分析キットを用いた。プロテアーゼ活性は基準みそ分析法に準じて測定を行った。また、pH測定および塩分を測定した。市販塩麹については開封後直ちに、各酵素活性、pH、塩分測定を行った。【結果】 調製した塩麹は0日から熟成完了の7日までの間で、酵素活性に大きな変動は見られなかった。調整後60日においてもほぼ同程度の酵素活性を有していた。市販塩麹は酵素活性があるものとないものに分けられた。活性のあった製品は今回調べた4つの酵素とも活性が見られ、活性のなかった製品は4酵素とも活性が見られなかった。すなわち市販塩麹では酵素が失活している製品も見受けられた。pHは調製および市販塩麹とも5.2~6.1と微酸性で、塩分は8.0~12%であった。
著者
中澤 弥子 佐藤 晶子 小木曽 加奈 吉岡 由美 鈴木 和江 高崎 禎子
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.113-113, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】長野県では、一年を通じて家の最大の節目を年取りの行事とする傾向が強く、年神棚にご馳走をお供えし、一年の無事の感謝と新しい年の豊作を祈り、家族揃ってご馳走で祝う習慣1)がある。本研究では長野県の大晦日と正月の行事食の継承の実態と現在の特徴について、平成21~22年度調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学 行事食・儀礼食」で行った調査結果を基に明らかにすることを目的とした。 【方法】アンケート回答者のうち、長野県内に10年以上住み、現在も住んでいる人および現在長野県内に住み、他県に10年以上住んだ経験はあるが、行事食に長野県の影響を受けている人の正月と大晦日のデータ(計686人)を集計し分析を行った。 【結果】回答者の年齢層は、10~20代50%、30~40代33%、50代13%、60~80代4%であった。大晦日の認知度は99%、行事食の経験が98%と高く、年取りの祝い料理については、喫食経験ありが67%で、毎年食べるが53%を占めた。年越しそばは喫食経験ありが90%と高く、毎年食べるが57%、毎年ではないが食べるが19%と高率であった。鮭料理の喫食経験ありは62%で毎年食べるが35%、鰤料理の喫食経験ありは54%、毎年食べるが23%であり、現在も鮭や鰤などの年取り魚が年取りの祝い料理として食されていた。その他、海なし県である長野県において肉料理の回答は少なく、刺身、数の子、握り寿司などの海産物がご馳走として好まれ食されている様子がうかがわれた。1)「聞き書 長野の食事」、p348、農山漁村文化協会 (1986)
著者
中村 喜代美 新澤 祥恵
出版者
日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.49-49, 2002 (Released:2003-04-02)

今日の食生活の変化のなかでの郷土食の位置づけを考えるため、アンケート調査により石川県の郷土料理の調理実態を検討した。調理状況では調理しているが多いのは、なすのオランダ煮、なすのそうめんかけで、少ないものは鯛の唐蒸し、鮒の甘露煮であった。また、以前は調理していたが、今は作らないというものが多いのは押しずし、えびすが、調理したことはないが、食べたことがあるでは蕪ずしがあげられた。調理法の情報源では、どの料理も母親が上位を占めているが、一部、家庭外からの情報によるものが過半数を超えるものもあった。調理しない理由として、家族が好まないからが多い料理には太きゅうりのあんかけやつる豆の煮つけがあげられ、市販調理品の利用が多い料理には蕪ずしなどがあげられた。
著者
平島 円 Hirashima Madoka
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.47-51, 2007-04-01

平成18年度日本調理科学会奨励賞受賞記念論文
著者
竹下 温子 勝又 真里奈 高林 由佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】昨今、食育は日本の教育の中で重要視され、地産地消によって食文化を守ることも重要な役割とされている。その中で食育の一環として、鹿児島の管理栄養士らが地産地消と地場の活性をテーマに「川内きびなご鮨」を考案した。その製造工程にきびなごの昆布締めがあり、保存期間の違いによってうまみが増し、爽やかな酸味が生まれるという。 我々はこの味の変化について保存期間の違いによる微生物の動態変化、および微生物の関与が人の味覚に影響を及ぼすか、遊離アミノ酸量を押さえながら比較・検討することを目的とした。【方法】保存法の異なった4種のサンプルを用い、菌数測定に、標準寒天培地(T)およびGYP白亜寒天培地(G)を用いた。全サンプル200の菌について高分子DNAを抽出(Benzyl chloride法)、グループ分け(RAPD法)、16S rDNAのPCR増幅、塩基配列決定後DDBJの相同検索にて同定した。遊離アミノ酸測定はOPAプレラベル法を用いた。【結果】菌数はT・G培地ともに冷蔵保存期間が長いものほど多かった。次に22グループに分かれた代表菌株はすべて<i>Stapylococcus</i>属と100%の相同性を示した。遊離アミノ酸の総量は保存期間の長い順で増加していた。この結果は菌数増加量と一致しなかった。官能試験の総合評価は遊離アミノ酸の増加量に比例せず、最も遊離アミノ酸量が多かったサンプルについては、熟成からさらに腐敗に進んでいる可能性があると考えられた。その他、微生物が関わるとされている酸味・香気は嗜好調査との相関は見られなかったが、菌数と総合評価の傾向が近く、やはり何らかの形で美味しさに影響を与えていると考えられた。