著者
津村 耕司
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

宇宙近赤外線背景放射(CIB)のロケット観測プロジェクトCosmic Infrared Background Experiment(CIBER)を進めている。CIBには銀河や星などの既知の天体からの寄与だけでは説明できない超過成分が存在し、第一世代天体の寄与が示唆されている。CIBERでは、液体窒素冷却された4本の専用望遠鏡をロケットに搭載し、大気圏外からCIBの絶対スペクトルや空間的ゆらぎを観測し、初期宇宙における星形成の様子を明らかにする。2009年2月25日にCIBERの第1回のロケット観測は無事に実施され、良好なデータを得ることが出来た。CIBER搭載光学系Low Resolution Spectrometer(LRS)で得られた空のスペクトルを解析した結果、黄道光のスペクトル中に今まで予期されていなかった吸収帯が900nm辺りに見つかった。この黄道光スペクトルを詳しく解析した結果、黄道光を担う近地球の惑星間塵は、小惑星帯に分布するS型小惑星起因であると結論した。惑星間塵の起源については、小惑星起源か彗星起源かという論争が長く続いているが、今回の結果は、この論争の解決に大きく貢献する非常に重要な発見であると思われる。CIBERは観測後に装置を回収して複数回の観測を行う計画となっており、第2回の打上げ観測は2010年6月の予定である。そこで回収された観測装置を第2回フライトに向けて改修・再調整も行った。特に第1回の観測結果から検出された迷光対策のため、LRSの既存のバッフルおよび迷光対策のために改造された新たなバッフルの性能比較評価実験およびその解析をすすめてきた。そのような仕事の結果、改造をほどこした第2回のフライトでは迷光成分は10分の1以下になることが期待できるとの結果が得られ、想定されている精度の観測が達成可能であるという結果が得られた。
著者
津村 幸治 原 辰次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

量子化データを用いたシステム同定:量子化された入出力データを用いたシステム同定に取り組み,最適量子化器の導出を通して,システム同定に必要な情報量を導出した.本研究では量子化データを用いたシステム同定において合理的な誤差規範について考察し,その妥当性について議論した.特に入力データの生成を確率的に,誤差評価はhard boundを用いた場合,最適量子化器は,確率的アプローチによる最適量子化器と,指数型量子化器とのハイブリッド型となることを示した.ネットワークド制御:信号の伝達に制約のあるネットワークド制御問題について幾つかの結果を得た.容量の異なる複数の通信線を用いたサブバンド符合化問題,対数型量子化器を用いた場合の制御性能問題について結果を導出した.また制御対象が未知の場合の適応制御について,離散時間系,連続時間系の場合について,量子化された信号を用いた安定化適応制御器を導出した.最後に,通信において伝送信号がロスするというパケット落ちがある場合について,様々な場合についての結果を得た.メモリ容量制限下におけるシステムの近似と安定化:動的システムの複雑度の指標として,その状態変数が量子化されたビットメモリシステムの,ビット長を用いることを提案した.その上で,ビット長に制約のある近似問題および安定化問題を考え,近似問題においては,与えられた近似誤差を達成するのに必要なビットメモリ長の下限と上限について,安定化問題においては,安定化を達成するのに必要な制御器のビットメモリ長の上限について,解析的に与えることができた.ネットワーク輻輳制御:TCP/IPを用いたコンピュータネットワークシステムにおける,伝送パケットの流れの輻輳を制御する問題を考えた.有限バッファを持つボトルネックで待ち行列となるモデルを導入し,列長を安定に制御する問題を考えた.従来,安定化の問題についての結果が知られているが,ここでは安定化制御器のパラメトリゼーションを与え,最適制御器を導出した.制御性能限界を示すことにより,TCP/IPを用いたネットワークシステムのより良い構造的特性について明らかにした.
著者
富田 晋介
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

この研究は、東南アジア大陸山地部を事例に、今後いかに自然資源の利用を行っていけばよいのかという問題に対して、過去数十年間に地域で行われてきた自然資源管理・利用を長期のフィールドワークとリモートセンシングを用いて経年的・定量的に復元し、慣習的な管理・利用の仕組みの形成過程に着目して、取り組んだ。この報告では、1.家族における水田の保有と分与がどのように行われてきたのか、2.水田の分与システムが社会階層の形成にどのように関係してきたか、3.水田の分与システムが耕地面積の拡大にどのように影響してきたかの3点について報告する。調査村では、開拓可能な水田面積の減少による世帯間の経済格差の固定化が、耕地拡大の背景のひとつになった可能性があった。一方で、市場経済が浸透し、商品作物と裏作などの新しい技術が導入され、それまで用いられていなかった乾季の水田や森林が土地として価値をもつようになった。このような土地の資源化は、水田面積による世帯階層の固定化を、土地利用の集約化と耕地の拡大によって緩和したと考えられる。
著者
一色 大悟
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成二十年度当初においては『阿毘達磨倶舎論』第二章「根品」の因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト再校訂を継続することと、有部系諸文献における縁起説の輪廻論的側面についての検討を行なうことを計画した。『倶舎論』第二章「根品」の因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト校訂作業にあたって、まず『倶舎論』関係の和漢撰述・チベット撰述文献の資料収集を継続した。その結果として、存在は確認しつつも入手しえていなかった資料を数点複写の形で得ることができた。また『倶舎論』第四章「業品」、第五章「随眠品」、第九章「破我品」.において議論が関連する箇所、および『倶舎論』に対する反駁書として重要な『阿毘達磨順正理論』の三世実有説(説一切有部の存在論の基礎となる説、一切のものは一切時に存在すると説く)を論ずる箇所の訳注を行い、因果論に関するそれらの内容との比較検討を行なった。結果として「根品」因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト校訂は、上記の情報収集に時間を費やす必要があったため、完遂し得なかったものの、精度の高い校訂のための基礎固めを十分に行なうことができた。第二に、縁起説の輪廻論的側面について検討し、『倶舎論』「破我品」における無我説を踏まえつつ、『阿毘達磨識身足論』『阿毘達磨大毘婆沙論』『阿毘達磨順正理論』などの有部系諸文献との比較検討を行なった。また、上記文献において対論者として現れる犢子部の議論については、さらに正量部の『三彌底部論』、及び後代に書かれた諸論書における議論を調査した。
著者
藤田 昌宏
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、従来からハードウェアの設計支援や設計検証に用いられてきた手法によって、近年注日を集めているシステムバイオロジーにおけるシミュレーションや解析を効率的に行い、実験室で行う実験では観測が困難な現象の観測や生化学反応における内部状態の推定を実現することを目的としている。今年度は、まず、昨年度の一般的な調査の続きとして、ハードウェア実装による生化学システムのシミュレーションの高速実行に着目し、特に詳細な調査を行った。その結果として、既存研究lこよりNext Reaction Method(NRM)までの手法は高速なハードウェア実装が既に提案されており、それらにおいては浮動小数点演算処理の最適化が重要であることが分かった。次に、上記の調査結果を踏まえて、NRMよりも高速なシミュレーション手法であるTau Leaping(TL)に着目し、その高速なハードウェア実装について検討した。反応を一つずつ逐次処理しているNRMに対して、TLでは複数の反応が一つの時間区間で起こり得ることを前提としてそれらをまとめて処理している点に特徴がある。したがって、複数の反応を並列に処理することが可能であり、よりハードウェア実装に適していると考えられる。さらに、一つの反応あたりの除算処理数もNRMより少ない点も、ハードウェア実装に有利である。ただし、TLにはNRMには無い微分処理が含まれているが、差分式に近似して処理を行うことにより高速に実行可能である。比較実験として、実際のソフトウェアの生化学シミュレータであるStockSimによるシミュレーションと、FPGAであるVertex5によるハードウェア実行との比較を考えており、現在までにその環境構築が完了している。今後は、実際にシミュレーション速度を比較することにより、提案するハードウェア実装による高速化できていることを確認する予定である。
著者
福岡 万里子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は、(1)幕末維新期における日独関係の基礎を築いたプロイセン東アジア遠征をテーマとする博士論文の執筆を進め、また(2)ドイツ・オランダにおいて短期の研究調査旅行を実施した。以下、(1)・(2)の具体的内容を略記し、(3)でその意義を述べる。(1)博士論文執筆:プロイセン東アジア遠征は、東アジアとドイツ諸国との間の通商関係樹立のため、プロイセン政府が1860〜62年にかけ日本・中国・シャムへ派遣した外交使節団である。博士論文は、(1)同遠征実施の誘因となった19世紀中期における東アジア・世界情勢の変容過程を明らかにした上で、(2)遠征が幕末動乱期の日本に英・米諸列強に遅れて到来するに当たって生じた諸問題を、マルチ・アーカイヴァルな手法に基づき、実証的に解明することをねらいとしている。この博士論文を構成する章として、本年度は一連の論考を執筆した。学会誌『洋学』17(2008年度)号(査読有・未公刊)への掲載が決定している論文「19世紀中期の東アジアとドイツ諸国」、及び後記「研究成果欄」に記載した、学会発表「日蘭追加条約をめぐる「誤解」に関する考察」は、その成果の一部である。(2)研究調査旅行:年度末にはベルリン・ライデンを計3週間の日程で訪問し、プロイセン枢密文書館、ベルリン国立図書館、ライデン大学図書館等で資料調査・収集を行った。その結果、19世紀中期の日本・東アジア情勢に関する欧米側理解、プロイセン東アジア遠征、及び幕末のオランダ対日政策に関する、一連の貴重な外交一次史料・文献を入手した。オランダでは加えて、幕末日蘭関係史の専門家であるヘルマン・ムースハルト博士を訪問し、研究上の指導を受けた。(3)意義:幕末の日本開国史については、国内的な政治・外交過程分析、及び日米・日英関係史などの観点から、多くの研究が蓄積されてきた。しかしそこでは、遅れた近代化過程の渦中にあったドイツが、プロイセン東アジア遠征によって日本・東アジアの開国過程に遅れて参と与した際、その「遅れ」の故に、どのような特徴的な諸問題に遭遇し、日本開国過程にいかなる影響を及ぼしたのか、といった問題は、全く考慮されてこなかった。本研究の意義は、プロイセン東アジア遠征の実施過程をこのような観点から分析することによって、日本近代化の出発点となった幕末史を、19世紀中期の世界史的潮流の中に置き直そうとする点にある。
著者
木宮 正史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米韓両国政府外交文書などに依拠して、カーター政権の在韓米地上軍撤退が決定されることで米韓同盟関係が動揺し、朴正熙政権が核開発を試みるなど、自主国防政策に踏み切る過程を明らかにした。また、1975年ベトナム共産化統一、翌76年「ポプラの木」事件など、南北の緊張激化が、米国の対朝鮮半島政策を結局は転換させ、在韓米軍の撤退が撤回されることになる緊張緩和の逆流過程も合わせて明らかにした。最後に、韓国朴正熙政権は、1973年6・23平和統一外交に関する大統領特別声明にしたがって、対共産圏外交を積極的に進め、後の「北方外交」の原型とも言える外交が既に行われていたことを明らかにした。
著者
井上 博愛
出版者
東京大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1985

本研究においては、空気、又は酸素のみを酸化剤として、熱・触媒電気あるいは光を利用して、排水中の汚染有機物質の効率よい酸化除去プロセスの確立をめざすもので、5つの分担課題により研究が行われた。1.触媒湿式酸化反応による難分解汚染物質の除去:難分解性物質の酸化コバルト触媒による酸化速度を解析し、総括の速度式を導いた。その速度と種々の物質の水素引き抜きの難易とが、よい対応を示すことを明らかにした。さらに、触媒充填における工学的課題についても検討を加え、装置内で効率よく反応を行わせるための触媒担持方式を明らかにした。2.湿式酸化反応による有機汚染物質の改質除去:湿式酸化処理による廃液の好気性生物処理実験を行い、湿式酸化によって、廃液の生物分解性が向上することを明らかにしたが、さらに生物処理の効率を高めるため、新たに開発した多孔質樹脂を利用した生物膜を用いた実験を行い、条件によっては可成りの効率の向上が認められた。3.電解酸化分解による廃液処理の高度化、過酸化水素生成条件および、分解に伴う廃液の酸化処理過程との効率よい結合をめざし、処理装置の設計と、その最適条件の検討が行われた。1段プロセスおよび2段プロセスの、両者の経済評価が行われた。4.高活性触媒を用いた廃液の常温処理:疎水性ポリマー担持白金触媒の調製法を改善し、高分散化をめざすことによって、アルコールの直接酸化活性を著しく向上することが出来た。さらに、二元金属化および分解促進機能を有する担体の利用が試みられた。5.光触媒を用いた廃液の常温処理、酸化チタンの光触媒作用、微量金属銅添加効果を明らかにし、トリハロメタン類の有機汚染物質の脱塩素分解反応を行わせ、その脱塩素速度、および分解速度の解析が行われ、光触媒が極めて優れた効果を与えることを見出した。
著者
西野 正巳
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

イスラーム主義の再定義を行うべく、その代表的イデオローグであるサイイド・クトゥブの思想と、その後継世代の思想を比較検討した。具体的には、1966年のサイイド・クトゥブ処刑後、その思想の継承と普及に努めたとされる実弟ムハンマド・クトゥブの思想を主な研究対象とした。さらにムハンマド・クトゥブの弟子筋とされるオサーマ・ビン・ラーディンらアルカーイダの思想、今日イラクで活動する武装勢力の思想など、9・11事件以降顕在化した新勢力の思想動向も研究対象に加えた。なおクトゥブ兄弟の思想は従来型一次資料である書籍や雑誌の形態で入手可能だが、一方、オサーマ・ビン・ラーディンやイラク武装勢力の思想はビデオテープ、音声テープ、ウェブサイト上のビデオファイルや音声ファイル、電子掲示板への書き込みといった形態で入手することになる。そのため資料収集に際しては、中東諸国の方式に対応したビデオデッキやDVDプレーヤー、アラビア語表示機能を備えたパソコンなどを駆使した。思想分析の結果、現時点までに得られた暫定的結論ないし仮説を述べると、1960年代にサイイド・クトゥブが確立したイスラーム主義思想の基本的枠組みは、おそらく2005年現在に至るまで後継世代にそのまま引き継がれている。即ち、イスラーム法が適用されるイスラーム社会の建設を目指すことが、彼らの思想の根幹をなしている。但しムハンマド・クトゥブのように既にイスラーム法の適用が相当程度進んでいるとされる社会に居住する者と、イラク武装勢力のようにイスラーム法が適用されているとは言い難い社会に居住する者では、自分達の暮らす社会に対する態度が大幅に相違することとなる。即ち、前者は穏健かつ漸進的な社会変革を唱えることが可能な立場にあるが、後者は急進的変革を主張せざるを得ない。その結果、イスラーム世界外部の者の目には、前者と後者が大きく異なる思想に見えることもある。
著者
植松 光夫 河村 公隆 三浦 和彦 長田 和雄 鵜野 伊津志 向井 人史
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

大気・海洋表層の物質循環過程の定量的解析のため、海洋大気中の気体や粒子の分析法開発・観測・モデル計算を行った。陸起源大気粒子の沈着が含有鉄分により十分に植物プランクトンの大増殖を引き起こす可能性を観測から見出した。西部北太平洋の海洋大気粒子中の窒素や炭素の大部分は有機態であり、いずれも海洋起源であることを解明した。また、モデル、衛星データ等により黄砂が地球を一周半以上も輸送されることを発見した。
著者
金子 成彦
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

入眠予兆信号とは、人間が眠りに入る少し手前で観察される前兆信号のことで、本研究では、これまで行なってきた入眠予兆現象の研究内容を掘り下げて学理に繋げるための研究を行った。本研究は、センサーの精度に関係する、設計条件、使用条件、外乱要因の把握による設計方法の提案を目的とする部分と、カオス解析、ウェーブレット解析、ケプストラム解析の3つの手法による入眠予兆信号の抽出方法と発生時期の相互比較、および、入眠予兆現象の原理と測定原理を表すことが可能な数学モデルの提案の3つのパートによって構成される。平成20年度は、エアパックセンサーの精度に関する検討、平成21年度は、解析手法間の相関に関する検討、平成22年度は、測定原理を表すことが可能な数学モデルの検討と入眠予兆現象捕捉のための新たな手法の提案を行った。平成22年度の研究成果は、以下の通りである。本研究では、脈波の揺らぎから入眠予兆信号を取得している。ドライバーの邪魔にならない場所で非侵襲で脈波の情報を取得するために、運転席シートの背部に取り付けた空気圧の変化を利用したセンサーを使用している。本年度は、測定原理を明らかにする目的で、脈波伝達経路を表現することのできる伝達関数を求めことに成功した。心臓の拍動が背部大動脈血管伝わる仕組みについて解析可能な動脈網モデルによる脈波伝播シミュレーションを行い、血管内の圧力が筋肉、皮膚、衣服を経由してセンサーに到達するまでの経路について解明することができた。また、昨年度の研究で見つけた新たな処理方法である、「ヒトの眠気をスリープスコアという点数で表現する」方法を被験者数を増やして実施し、成果を論文発表した。
著者
吉田 右子
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.495-503, 1996-12-20

During 1920s-1930s, it was the era of expansion in adult education in the United States. Public libraries have also developed various educational services. In 1938, A. S. Johnson wrote The Public Library : A People's University, a study of adult education in libraries. This paper examines Johnson's book with the aim of studying library adult education in 1930s. In his book, Johnson discussed how public libraries were functioning in the adult education movement, how librarians felt about developing work of this kind, and what the future position of the library might be. Johnson made the point that public library had the active educational function in the community and recommended that public library should develop into the permanent center for adult education in the community. As the result of this study, it was found that Johnson's work contained some philosophies that support library adult service provided by public libraries in our time.
著者
中沢 正治 小佐古 敏荘 高橋 浩之 持木 幸一 井口 哲夫 長谷川 賢一
出版者
東京大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1988

本研究は、CR-39固体飛跡検出器にポリエチレンなどの適当なラジエ-タを組み合わせ、ラジエ-タ物質と中性子の核反応で生じた荷重粒子CR-39への入射量を調整することで、全体として中性子感度曲線が、中性子線量当量換算係数のエネルギ-依存性をできるだけ再現するような最適ラジエ-タの組み合わせと飛跡計数方式を見出すことを目的としている。咋年度までに、標準的なラジエ-タ付きCR-39線量計および飛跡読み取りシステムの試作と予備的な中性子感度曲線の校正(検証)実験を行なった。本年度は、まず中性子検出効率の理論的検討を行ない、実験的に確証するため、東大原子力工学研究施設内の重照射設備およびブランケットにおいて中性子照射実験を行った。試料として、CR-39プラスチックに厚さがそれぞれ0.86,1.90,4.02mg/cm^2のポリエチレン、および厚さ5mmの^6Li_2CO_3を密着させたものを使用し、人体のアルベド効果を模擬するため、後方にポリエチレンブロックを置いて行なった。その結果、各ラジエ-タ厚で、中性子エネルギ-に依存する検出効率の実験値は、誤差の範囲内で比較的良く計算値と一致した。つぎに、これら4種の感度特性と、ラジエ-タ無しの特性からレムレスポンスを近似的に求めるため、重み係数を最小2乗法により求めた。これによると再現性は良好である。特に、中性子線量当量換算係数が大きく変化する100KeVから1MeVの中性子エネルギ-領域の再現性に優れていることが明らかとなった。しかし、10MeVを超えると、検出器感度が低下するため、レムレスポンスの再現性が悪くなる。この対策として、薄いアルミ板をCR-39プラスチックの前面に置くことのより、感度を高められることが確認されている。以上より、小型・計量で取り扱いが容易な中性子個人被爆線量計の実用化の見通しがついた。
著者
小佐古 敏荘 西村 和雄 沢田 一良 平野 尚 志田 孝二
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は陽子ビ-ムによる簿層放射化法を用いたトライボロジ-計測法を、基礎実験、応用計測の両面から確立しようとするものである。研究においては以下の諸項目にわたって検討を加えた。(1)タンデムバンデグラ-フ加速器を用いた簿層放射化法の検討7MeVの陽子ビ-ムを鉄材料に照射し、^<56>Fe(p,n)^<56>Co,^<57>Fe(p,n)^<57>Co,^<58>Fe(p,n)^<58>Coの反応を起こさせ、数ケ月の短半減期放射化コバルトを鉄表面数十μmに作った。照射は大型散乱槽内で行い、照射ジグを作り照射野を特定できる形にし、照射電流もモニタできる測定系を整えた。(2)鉄試料中の放射化生成物分布の測定(1)で放射化されたテストピ-スに純Ge放射線検出器を用いて、生成核種を測定した。また(1)研磨装置を用いて〜1μm位づつ研磨して、減衰γ線をGe検出器で測定し、摩耗量対放射線減衰の校正曲線を作成した。(ii)標準デ-タとして、鉄の箔(約10μm)を購入しこれを積層させて放射化し、鉄内放射化分布を調べた。(3)上記の(2)の鉄研磨デ-タと箔の実験結果を比較の上、^<56>Co/^<57>Co,^<56>Co/^<58>Coの比の形で摩耗量が表せるよう実験デ-タを整理し、解折計算を行い,汎用な校正関数を作成した。(4)本方法を実際の機械摩耗部分に適用してみるために、自動車エンジン部品摩耗試験のためのテストベンチを作成した。(5)(4)のテストベンチのカムノ-ズ摩耗部に対して、陽子ビ-ムによる簿層放射化法を用いたトライボロジ-試験を実施した。試験に当っては、最適コリメ-タの検討、検出器の最適配置、自動計測システムの構築、オンラインデ-タ処理プログラムの開発などをおこなった。(6)本方法の総合的検討をおこない、実用に供せられる形でのまとめを行なった。
著者
嶋 昭紘 酒井 一夫 鈴木 捷三 小佐古 敏荘 井尻 憲一
出版者
東京大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1988

1.今年度は昨年度にひきつづきトリチウムシミュレーターのハードウェア部分の最終調整、実用に供せる形でのソフトウェア設備、実地利用、操作方法のマニュアル化等を行った。2.自家開発したメダカ特定座位法により、生殖細胞突然変位の線量率効果を調べた。1000Rを急照射(1000R/10min:100R/min)または緩照射(1000R/24hours:0.694R/min)した野生型雄メダカと、3標識を持ったテスター雌メダカ(b/b gu/gu 1f/1f)を交配し、胚発生過程における死亡と変異形質を検索した。その結果、(1)優性致死率は、精子では緩照射でより高いという逆の線量率効果が認められ、(2)特定座位突然変異頻度の急照射/緩照射の比は、生ずる突然変異に関してはどのステージにおいても1.0より大きく、線量率効果が認められるが、(3)総突然変異については、急照射/緩照射の比が2.13、2.10、0.88(各々精子、精細胞、精原細胞)となり、有意差は精子と精細胞においてのみ認められた(p<0.05)。3.トリチウムシミュレーターを用い、哺乳類培養細胞の細胞死および突然変異が対数的減衰線量率照射と一定線量照射により違いがあるかどうかを調べた。その結果、コロニー形成法でみた細胞死の割合、6TG耐性を指標にした突然変異頻度ともに、対数的減衰線量率で照射した場合の方が効果的であることがわかった。
著者
小佐古 敏荘 四方 隆史 志田 孝二
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究は100MeV以上の電子、陽子、重イオンの高エネルギ-加速器からの放射線遮蔽をリ-ス項、遮蔽特性の観点から、数値計算及び実験の双方から系統的に研究を進めようとするものである。研究は以下の3項目に関して進められ検討された。(1)高エネルギ-放射線種々の物質の遮蔽特性の数値計算による検討遮蔽に用いられる各種物質の基本的な遮蔽減衰特性を求めるために、1次元S_N輸送計算コ-ドANISNを用いて解析計算をおこなった。使用した中性子断面積はDLCー87/HILOで、中性子エネルギ-は400MeVからThermalまでである。散乱ルジャンドル展開項はP_3まで、S_Nの角度分点はS_<16>である。入射中性子は単エネルギ-のものを考え、3m厚の無限平板体系に垂直入射の条件で入射させた。鉛、鉄、重コンクリ-ト、コンクリ-ト、大理石、パラフィン、水などについての計算を行い、線量当量の空間分布図の形で結果を得た。(2)大型加速器施設(理化学研究所リングサイクロトロン)における実験重イオンビ-ムによる放射線の発生測定のためには、ガンマ線用に電離箱を、中性子用に放射化箔(C、Al、Au、Ag、Ni、In等)および減速材型中性子検出器を用い、生成量及び角度分布測定を試みた。タ-ゲット条件としては、Nイオンビ-ムを核子当り135HeVに加速したものを鉄の厚いタ-ゲットに入射したものを設定した。遮蔽デ-タとしては、主として減速材型検出器を用いて、コンクリ-ト壁の透過デ-タ、迷路部のストリ-ミングデ-タを中心に測定した。(3)高エネルギ-放射線の発生項の評価上記条件下での高エネルギ-粒子発生についてはモンテカルロ計算コ-ドNMTCにより評価し、総合的な形で、実験値との差異、計算上の問題点を検討した。
著者
山本 成生
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究は、北フランスのカンブレー大聖堂の聖歌隊を素材として取り上げ、音楽史上「ルネサンス」期と称される15、16世紀の西欧世界における、音楽家の社会的身分のあり方とその組織構造の解明を目的とするものである。昨年度、私は特別研究員奨励費を使用して、上記の教会関連の史料が保存されているフランスのノール県立文書館ならびにカンブレー市立図書館で約一ヶ月間、調査を行った。本年度は、その際デジタル・カメラにて複製した史料の分析を行いつつ、そこで得られた成果を学術論文として発表することに専念した。その結果、計三本の研究成果を得た(以下の記述は裏面の「11.研究発表」に基づく)。最初の論文は、「少年聖歌隊教師」というカンブレー大聖堂の音楽生活において重要な役割を担っていた職務について論じたものであり、在職した人物の活動や就任過程を検討することで、同教会の雇用戦略は15世紀末にひとつの転換を迎えることを明らかにした。二つ目は、研究史上カンブレー大聖堂との密接な関係が指摘されるローマ教皇庁の聖歌隊との人的交流を扱ったものである。そこでは、先行研究によってやや誇張されていた両者の関係に修正を加えつつ、この二つの機関を往来していた音楽家に関して類型化が行われ、前述の研究課題に対する寄与がなされている。そして最後の論文は、こうした研究を行う上での基本的な史料であるものの、それ自体としては看過されてきた聖歌隊の会計記録を財政史的側面より再検討し、聖歌隊の財務構造の変容を追ったものである。前年度ならびに以上の成果から、私はカンブレー大聖堂の聖歌隊の組織構造と当時の音楽家一般の社会的身分に関して、従来の研究ににない新しい見解を提示しつつある。むろん、他の音楽機関の比較検討など、なお課題は多い。今回の特別研究員としての研究期間は本年度をもって終了するが、今後もこの課題に取り組んでゆくつもりである。
著者
酒井 寿郎 田中 十志也 浅場 浩
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

ペルオキシソーム増殖薬活性化受容体δ(PPARδ)はリガンド依存的に転写を制御する核内受容体の一つである.我々はPPARδが骨格筋の脂肪酸代謝を調節する因子の一つであることを報告した(PNAS,100,229-234,2003).選択的PPARδアゴニストGW501516(GW)の投与により,ミトコンドリアの増生,脂肪酸β酸化および代謝速度の亢進,骨格筋における顕著な脂肪滴蓄積の減少が認められ,高脂肪食(HFD)負荷によって惹起される肥満およびインスリン抵抗性を改善することを明らかにした.GWは骨格筋および肝臓において脂肪酸輸送,脂肪酸β酸化および呼吸鎖に関与する遺伝子群を誘導した.一方,普通食負荷したマウスのWATの遺伝子発現には影響を及ぼさないが,GWはHFDによって惹起されるTNFαおよびPAI-1の遺伝子発現増加を抑制した.さらに,HFD負荷したマウスの肝,骨格筋およびWATではインスリンによるPI-3キナーゼの活性化が顕著に低下していたが,GW投与群では有意な改善が認められた.以上のことより,GWは長期投与において持続的な抗肥満および抗糖尿病活性を有することが示唆された. PPARδアゴニストのインスリン感受性改善効果の一部は,肝や骨格筋での脂質蓄積抑制や脂肪細胞の肥大化を抑制し,PI-3キナーゼ介在性の糖取り込みやアディポサイトカイン産生を改善することによって発揮されていると考えられた.Oikeらとの共同研究で血管新生液性因子angiopoietin-related growth factorが抗肥満効果としてPPARδを介することを示した。また、私たちは転写因子Kruppel-like factor KLF15が絶食時に誘導されATPを合成するアセチル-CoA合成酵素プロモーター活性を調節することを明らかにした。KLF15は脂肪細胞の分化に関与する転写因子としても知られている。
著者
藤原 毅夫 星 健夫 山元 進
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

遷移金属酸化物などいわゆる強相関電子系では、密度汎関数を超えた電子間相互作用の取り扱いが必要である。本研究では(1)LDA+U法による取り扱い、(2)GW近似による取り扱い、を行った。また(3)動的平均場近似による予備的な計算、を試みた。さらに、大きな系において密度汎関数理論の枠内で第一原理分子動力学を実行するために、オーダーN法のアルゴリズムを開発した。(1)LDA+U法で取り扱った系は(1-a)Nd{1-x}Sr{x}MnO{3}(x〜1/2)の磁気秩序と軌道整列、(1-b)La{7/8}Sr{1/8}MnO{3}(強磁性絶縁体)の軌道秩序とホールストライプ構造、(1-c)NdNiO{3}、YNiO{3}の磁気秩序と電荷秩序、(1-d)La{2-x}Sr{x}NiO{4}の磁気秩序と電荷秩序、である。(2)GW近似についてはプログラムを整備し、新たにいくつかの計算上の技術を開発しまた並列計算を可能にした。これにより、Si, CaO, MgO, Fe, Ni, Cu, TiO, VO, MnO, Nioなどのバンドギャップその他を検討した。反強磁性絶縁体となるMnO, NiOを除くと、いずれもバンドギャップ、バンド幅など多くの改善が得られ、実験と良い一致を示す。一方,Ni, Feなどのバンドの交換分裂はLDAの結果からほとんど変化しない。これは、交換分裂には梯子ダイアグラムの寄与が必要だが、他は電子正孔の対生成消滅ダイアグラムからの寄与で大きな改善が得られるためである。一方、MnO, NiOについては無摂動状態の波動関数をよりよいものにする必要が示された。現在検討中である。(3)オーダーN法については、絶縁体のワニエ関数を反復的に構成し、これをもとにMauri, Galli等と同じアルゴリズムで分子動力学を実行した。ワニエ関数から、変分および摂動により波動関数を構成するため計算負荷が少なく、現在100万原子の系で計算が可能になっている。Si(100)面の亀裂伝播を実行し、亀裂により発生した面に非対称ダイマーが構成されるプロセスを見出した。