著者
渋谷 知美
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.447-463, 2001-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
42
被引用文献数
2 2

本稿では, 現代日本の社会学 (ならびに近接領域) において行われている「男性研究者による男性学」「女性研究者による男性研究」の問題点をフェミニズムの視点から列挙し, これをふまえて, 「向フェミニズム的な男性研究」が取るべき視点と研究の構想を提示することを目的とする.「男性研究者による男性学」批判においては, 男性学の概念「男らしさの鎧」「男性の被抑圧性」「男らしさの複数性」「男女の対称性」を取りあげて, 男性学がその関心を心理/個人レベルの問題に先鋭化させ, 制度的/構造的な分析を等閑視していることを指摘した.また, 「女性研究者による男性研究」批判においては, 「男性」としての経験を有さない「女性」が, 男性研究をするさい, どのような「立場性positionality」を取りうるのかが不明確であることを指摘した.そののち, 「向フェミニズム的な男性研究」の視点として, 第1に「男らしさの複数性」を越えた利得に着目すること, 第2に男性の「被抑圧性」が男性の「特権性」からどれだけ自由かを見極めることの2点を挙げ, それにもとづいた研究構想を提示した.
著者
山村 高淑
出版者
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 = Graduate School of International Media, Communication, and Tourism Studies, Hokkaido University
雑誌
国際広報メディア・観光学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.7, pp.145-164, 2008-11-28

This paper is a survey of how the town of Washimiya became the "sacred place" for anime fans ever since fans from all around the country rushed to visit the town after it was used as a setting for the animation "Lucky Star", leading also to the town successfully holding two events for these fans. The following three points were discussed. 1)The process leading up to the town becoming a "sacred place". 2)The process leading up to the town welcoming tourists. 3)The roles of tourist related corporations outside the town. As a result, it was found that in each process the local commerce and industry association played a central role. It was also found that with the town's commerce and industry association at the core, a local shrine, local shops, fans, and corporations from outside the region (copyright owners and a tourist agency) were able to build a relationship of mutual benefit as a backdrop to the current success.
著者
横山 浩之 廣瀬 三恵子 奈良 千恵子 涌澤 圭介 久保田 由紀 萩野谷 和裕 土屋 滋 飯沼 一宇
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.431-435, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

「指示待ち」はすでに獲得された日常生活行動をスモールステップな指示があるまで待つ状態である. 中等度以上の知的障害を伴う自閉症があり, 「指示待ち」を呈した9症例を検討したところ, 全例で大うつ病エピソードを満たし, 気分障害の合併と診断し得た. 9症例のうち7症例でfluvoxamineが「指示待ち」を含めた抑うつ状態に有効であった. 無効例ではrisperidoneやvalproate sodiumが有効であり, これらの症例が双極II型障害である可能性がある. 「指示待ち」は気分を言語表現できない自閉症がある児 (者) にとって, 抑うつ状態の症状であり, 診断上有用と考えられた.
著者
下地 幸夫
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物保護 (ISSN:13418777)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-26, 2009 (Released:2018-01-27)
参考文献数
13

Neolucanus insulicola donan, is a stag beetle endemic to Yonaguni Island, a small island in the Ryukyu Archipelago of Japan. The species is known to be a valuable indicator of the unique biogeographical composition of the archipelago and is useful for taxonomic research. However, it is now feared that this stag beetle is facing extinction as a result of the activities of insect dealers and collectors. Specimens are traded for high prices and are a rare commodity on the Japanese insect market. The species' population size was originally estimated to be over 600 but has declined to less than 1% of this number. In order to catch the larvae, the worst collectors have destroyed the tree cavities that the beetle uses for nesting. Collecting damages the habitat and this is likely to cause extinction of the species. It is obvious that such overexploitation has harmed the forest ecosystem on this island. Protection of this beetle depends on a prohibition on collecting and on preservation of Yonaguni Island's natural forest.

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著者
寺西緑子 著
出版者
集文館
巻号頁・発行日
1913
著者
大熊 恒靖
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.119-126, 1998-02-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

梵鐘の音の減衰時間に時代的変遷があることを前報で示した. 本報は, 奈良時代から昭和期までに制作された梵鐘206口について, 部分音の構成に関する時代的変遷について論じる. 時代区分ごとに求めた本測定の基音周波数の近似式は, 平均で2.8%以内の精度で基音周波数を推定することができた. 梵鐘の音の基音周波数に対する部分音の周波数比は, 音の減衰時間と同じく, 梵鐘の口径と駒の爪の厚さとの割合に密接な関係があり, それらが梵鐘の音の時代的変遷の一つの要因であると推定した. また, 部分音の音圧レベル分布の時間的な変化及びスペクトル数にも時代的変遷があることを確認した.
著者
大熊 恒靖
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.208-214, 1997-03-01 (Released:2017-06-02)

梵鐘の音の特徴は, 部分音の構成, 減衰時間及びうなりにある。梵鐘は奈良時代から制作され, その様式は現代に継承されている。筆者は, 梵鐘の音の減衰時間に着目して, 奈良時代から現代までに制作された153口の丸鐘について解析した。その結果, 梵鐘の口径が大きくなると音の減衰時間が長くなる関係に時代的変遷があることを見出した。奈良期の梵鐘の音の平均減衰時間54秒に対して, 鎌倉期で24秒に短くなり, 江戸期で44秒まで長くなり, 更に昭和期では90秒と非常に長くなる傾向を示した。これらの時代的変遷は, 梵鐘の構造, 特に厚さに関係していることを推論した。焚鐘は, 現在でも年間約200口が制作されているが, それらの焚鐘の多くはうなりが長い特徴を持ち, また制作者によって音の減衰時間が異なることも確認できた。
著者
小山 真人
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.346-369, 1999-08-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
88
被引用文献数
4 14

There remain many challenges in using historical documents to reconstruct a reliable history of earthquakes in Japan. Previous catalogs of historical earthquakes in Japan are not conclusive and contain uncertainties about date, hypocenter, magnitude, and tectonic interpretation of each earthquake. There is no database of digital texts of historical documents, which describe each earthquake. Since the density of historical records in Japan is temporally and spatially heterogeneous, seismologists should carefully remove apparent changes of earthquake frequency, which are caused by the heterogeneity of record density. There is, however, no detailed database of the density variation of historical records. The number of researchers, who are interested in historical earthquakes, is small.The situation stated above is caused mainly by the multi-disciplinary character of historical seismology. Japanese seismologists, who usually have little knowledge of history and classical literature, are not qualified to read a historical document and evaluate its reliability.The environment for research on historical seismology is, however, getting better. Japanese historians have published and are still publishing many historical documents, sometimes with translations into modern language. Evaluations of the reliability of each document can easily be done by referring to historical dictionaries or other databases. All these publications and information are available in many libraries. It is now easy and stimulating for many seismologists to read, evaluate, and interpret historical documents.
著者
吉井 敏尅
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.479-491, 1994-03-14 (Released:2010-03-11)
参考文献数
124
被引用文献数
5 5

The Research Group for Explosion Seismology of Japan, founded in 1950, have continuously conducted many explosion seismic observations in various regions of the Japanese Islands. Active investigations of the Group have provided important data about the crustal structure beneath the Japanese Islands which is quite useful as the most basic information for various researches of geosciences. After ages of the cradle in 1950's, the Group experienced large scale investigations under the International Upper Mantle Project and the International Geodynamics Project in 1960's and 1970's, and general features of crustal structure beneath the Japanese Islands became clear through the investigations in this period. Since 1979, the Group has conducted the investigations under the Japanese Earthquake Prediction Project in order to accumulate basic data for earthquake prediction researches. The series of these investigations have been conducted through highly dense observations, and the obtained data have revealed quite complex structure of the crust beneath the Japanese Islands. Application of some of data processing techniques in reflection survey to those data also revealed clear images of the subducted Philippine Sea plate beneath the Japanese Islands.
著者
堀田 昌寛 遊佐 剛
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.613-622, 2014-09-05 (Released:2019-08-22)

現在広範なテーマを巻き込みながら,量子情報と量子物理が深いレベルから融合する量子情報物理学という分野が生まれ成長しつつある.なぜ様々な量子物理学に量子情報理論が現れてくるのだろうか.それには量子状態が本質的に認識論的情報概念であるということが深く関わっていると思われる.ボーアを源流とする認識論的な現代的コペンハーゲン解釈は量子情報分野を中心に定着してきた.この量子論解釈に基づいた量子情報物理学の視点からは存在や無という概念も認識論的であり,測定や観測者に対する強い依存性がある.本稿ではこの「存在と無」の問題にも新しい視点を与える量子エネルギーテレポーテーション(Quantum Energy Teleportation;QET)を解説しつつ,それが描き出す量子情報物理学的世界観を紹介していく.QETとは,多体系の基底状態の量子縺れを資源としながら,操作論的な意味のエネルギー転送を局所的操作と古典通信(Local Operations and Classical Communication;LOCC)だけで達成する量子プロトコルである.量子的に縺れた多体系の基底状態においてある部分系の零点振動を測定すると,一般に測定後状態の系は必ず励起エネルギーを持つ.これは基底状態の受動性(passivity)という性質からの帰結である.このため情報を測定で得るアリスには,必ず測定エネルギーの消費という代償を伴う.またアリスの量子系は量子縺れを通じてボブの量子系の情報も持っている.従ってアリスは,ボブの系のエネルギー密度の量子揺らぎの情報も同時に得る.これによって起こるボブの量子系の部分的な波動関数の収縮により,測定値に応じてアリスにとってはボブの量子系に抽出可能なエネルギーがまるで瞬間移動(テレポート,teleport)したように出現する.一方,この時点ではまだボブはアリスの測定結果を知らない.またアリスの測定で系に注入された励起エネルギーもまだアリス周辺に留まっており,ボブの量子系には及んでいない.従って対照的にボブにとってはボブの量子系は取り出せるエネルギーが存在しない「無」の状態のままである.このように,現代的コペンハーゲン解釈で許される観測者依存性のおかげで,エネルギーがテレポートしたように見えても因果律は保たれている.非相対論的モデルを前提にして,系のエネルギー伝搬速度より速い光速度でアリスが測定結果をボブに伝えたとしよう.アリスが測定で系に注入したエネルギーはボブにまだ届いていないにも関わらず,情報を得たボブにも波動関数の収縮が起こり,自分の量子系から取り出せるエネルギーの存在に気付く.そしてボブは測定値毎に異なる量子揺らぎのパターンに応じて適当な局所的操作を選び,エネルギー密度の量子揺らぎを抑えることが可能となる.その結果ボブは平均的に正のエネルギーを外部に取り出すことが可能となる.これがQETである.このQETは量子ホール系を用いて実験的に検証できる可能性が高い.一方,相対論的なQETモデルはブラックホールエントロピー問題にも重要な切り口を与える.
著者
埴淵 知哉 川口 慎介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.137-155, 2020 (Released:2020-04-04)
参考文献数
14
被引用文献数
5 3

近年,学術研究団体(学会)における会員数の減少が懸念されている.本稿では,日本学術会議が指定する協力学術研究団体を対象として,日本の学会組織の現状および変化を定量的に俯瞰することを試みた.集計の結果,学会のおよそ3分の2は会員数1,000人未満であり,人文社会系を中心に小規模な学会が多数を占める現状が示された.過去10年余りの間に個人会員数が減少した学会は3分の2にのぼるものの,それは理工系,中小規模,歴史の長い学会で顕著であり,医学系や大規模学会ではむしろ会員数を増加させていた.また,学会の新設に対して,解散は少数にとどまっていた.結果として,既存学会の維持および会員数の選択的な増減,そして新設学会の増加が交錯している状況が示された.そして,地理学関連学会は学術界全体の平均以上に会員減少が進んでおり,連合体や地方学会を含めてそのあり方を検討する必要性が指摘された.
著者
石丸 進 石村 真一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1-10, 2004-09-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
25

本研究は,わが国の室内・家具と中国家具文化とのかかわりを,坐臥具を中心に比較・検証した。その結果,次のことが明らかとなった。(1)中国坐臥具の床(牀ともかく)は寝台であり,日本の「床の間」「床几」「床子」などの語源や形態に影響した。(2)「榻」は,日本の縁台や店棚形式の坐具と類似する。(3)中国北方の寝床「?」での起居様式は日本と同じ床坐であった。?で使用する「?卓」は、日本の「座卓」の原型であった。(4)?の起源は,古代中国の俎を原型とし,小?子は,日本の踏台や風呂腰掛けと同一構造・形態であった。(5)条?は,日本の床几と構造・形態で一致し,使用法も類似していた。