著者
村上 浩一
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
Journal of the Vacuum Society of Japan (ISSN:18822398)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.265-270, 2010 (Released:2010-05-18)
参考文献数
12

We review recent works on 1) an isotope effect of penetration of Hydrogen(H) and Deuterium(D) into Silicon through Si/SiO2 interface and 2) H effects for Si nanostructures, as well as summary of hydrogen states in crystal Si. In particular, a new filtering effect of H and D isotope atoms was found for penetration process into crystal silicon (Si) through the interface between a Si and SiO2 native oxide layer. More H atoms are introduced into Si than D for mixing gases. This phenomenon can be tentatively explained in terms of an isotope filtering model of H and D via an intermediate cluster state formed at the interface between the native SiO2 layer and crystal Si. Hydrogen passivation of interface defects is shown to be needed for knowing proper impurity doping effects, and electronic, optical, and magnetic properties in Si nanostructures.
著者
伊東 孝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.883-888, 1991-10-25 (Released:2020-05-01)
参考文献数
6

THE AUTHOR HAD MADE IT CLEAR THAT THE BRIDGE TYPE DISTRIBUTION IN TOKYO AFTER THE GREAT EARTHQUAKE OF 1923 WAS VERY SYSTEMATICALLY ARRANGED FROM TECHNOLOGICAL AND URBAN DESIGN POINTS OF VIEW. BY USING THE SAME METHOD,THE MAIN RESULTS ARE AS FOLLOWS: 1.THE SEINE AND THE ILE DE LA CITE IN PARIS WAS A MODEL. OF NAKANOSHIMA AREA. THE BRIDGE ARRANGEMENT IN OSAKA APPEARS TO HAVE THE DESIGN HIERARCHY CENTERING AT THE OSAKA CASTLE. 2.THE EMPHASIS AREA IN YOKOHAMA IS CLEAR BY THE DESIGN ANALYSIS OF A BRIDGE NEWEL. 3.THE THOUGHT OF DESIGN HIERARCHY SEEMS TO BE BETWEEN TOKYO AND YOKOHAMA BY THE ANALYSIS OF A BRIDGE TYPE.
著者
福原 和子 Kazuko Fukuhara
巻号頁・発行日
vol.27, pp.83-90, 1994-03-03

まず最初に、外国語を話したり聞いたりする力 (最近ではオーラルコミュニケーション能力とか音声言語運用力ともいわれる) へのニーズは昔からあったことを示す。そしてその養成の成果がいまだに上がっていないのは、音声言語運用の指導の難しさにあり、最近目ざましい進歩を遂げている脳の科学の知見は、効果的な指導法について示唆を与えてくれることを予測する。そしてその具体例として行った実験について報告する。実験では、日本人学生の短期記憶容量が英語の場合どのように変化し、また英語のネイティブスピーカーとどのように異なるかを調べた。その結果、被験者の学生たちは音声英語運用に於いて効率の悪い短期記憶の使い方をしていることが分かったので指導法の改善を提案する。最後に、今後への展望として、効果的なオーラルコミュニケーション能力育成のために役に立つ研究分野について言及する。
著者
寺尾 尚大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.37-51, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
参考文献数
42
被引用文献数
2

本研究の目的は,複数英語文章の読解能力を題材として,テスト項目の困難度パラメタに影響を及ぼす要因を検討することであった。大学生151名に対し,同一のテーマについて述べられた二つの文章を一組の文章セットとして提示し,複数英語文章の読解項目への解答を求めた。本研究では,文章セットに含まれる文章の内容の一部を記述した各文が,どの文章で記述されていたかを問うテスト項目を作成し,制約つき2パラメタ・ロジスティックモデル(2PLCM)を適用して,項目困難度パラメタに影響を及ぼす要因について検討を行った。その結果,二つの文章を読んではじめてわかることがらを記述した文や,いずれの文章にも記述されていないことがらを記述した文の分類に関する項目で困難度が高くなっていた。一方,二つの文章が互いに補い合う関係にある相補的文章セットと,二つの文章の間で主張が対立する関係にある矛盾・対立的文章セットの間では,項目困難度は異ならなかった。本研究から得られた知見は,複数英語文章の読解能力を測るテスト項目の作成に対する指針を提供しうるものであることが示唆された。
著者
大瀧 ミドリ 中塚 綾子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.509-516, 1994-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

子どもの愛着対象に関する父親と母親の認知における実態と父親と母親の認知に影響する要因を明らかにするために本研究を行った.対象は, 保育園児をもつ665組の父親と母親である.彼等を対象に14の異なる生活場面において, 子どもが誰を愛着対象としているかについて調査し, 以下の結果を得た.1) 父親も母親も, 子どもは母親を最も多く愛着対象にしていると認知している.2) 父親も母親も子どもとの情愛的関係において, パートナーが考えるよりも自分は子どもから重要な存在であると思われていると考える傾向がある.3) 父親の認知には, 子どもの性や年齢と妻の就業形態が大きな影響を与えていることが明らかになる.4) 母親の認知には, 子どもの年齢と母親の就業形態が大きな影響を与え, また, 子どもの性と母親と子どもの接触量もかなりの影響を与える原因であることが明らかになる.
著者
山川 賀世子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.476-486, 2006-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
5 5

本研究では, George & Solomon (1990/1996/2000) によって提案された, 子どもの愛着の新しい測定具であるAttachment Doll Playが, 日本の子どもに実施可能であるか, 妥当であるかを検討した。Doll Playの教示を日本の子どもにわかるように変更した後, 5~6歳の幼稚園児56名にDoll Playを実施し, 更に, 母子分離の後の母親との再会場面での子どもの愛着行動を観察した。その結果,(1) 日本の女児も男児も, Doll Playに対して, アメリカの子どもと類似した反応を示したこと,(2) 愛着をA, B, C, Dの4タイプに分類する原手引の基準は, 日本の子どもに対しても適応可能であったこと,(3) Doll Playと母子再会場面での子どもの愛着行動との間には有意な一致がみられ (k=.62; p<.001), 妥当性が確認されたこと, が示された。最後に, 文化がDoll Playに与える影響と, Doll Playを用いた今後の研究について述べた。
著者
有馬 和代 横山 美江
出版者
大阪市立大学大学院看護学研究科
雑誌
大阪市立大学看護学雑誌 (ISSN:1349953X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-9, 2018-03

本研究は、これまでの結核におけるDOTS対策に関する文献学的考察を行い、今後のDOTS対策推進に寄与することを目的とした。引用文献の検索には、医学中央雑誌web版を用いて原著論文の検索を行った。検索された54件の文献を、日本版DOTS戦略に基づき4つの視点で整理し、法的改正等の動向も交えた。結果、院内DOTSは、患者教育、服薬支援、保健所との連携が重要であり、医療連携は、結核専門機関から一般医療機関へ、医療と服薬支援が的確に繋がるしくみの必要性が指摘されていた。地域DOTSは、患者をアセスメントし、中断リスクや患者のニーズから患者に合うDOTS実施が重要であり、かつ、これらの活動には、患者と信頼関係を築きながら服薬支援する重要性が報告されていた。DOTS推進のためのツールやしくみは構築されつつあるが、一方で支援者に必要とされてきた姿勢を蔑ろにする状況も報告されていた。今後DOTS実施者が、患者中心の服薬支援を行う重要性を的確に継承するための研究が求められる。
著者
山田 忠史 吉澤 源太郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.683-689, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
21

港湾間の国際競争が激しい国際コンテナ物流においては, 港湾の整備・運営に要する費用を抑制し, 荷役システムを効率化する必要がある. 本研究では, コンテナ埠頭の荷役容量に注目し, 発生費用の抑制に留意して, 適正な荷役能力を決定する方法を提案した. この手法を用いて, コンテナ埠頭の荷役効率向上に寄与する荷役システムについても考察した. 待ち行列理論を応用したモデルを構築し, その計算精度をシミュレーションモデルと比較することにより, その妥当性・実用性を確認した. モデルを実際の港湾に適用した結果, 荷役システムの効率化には, バース数の削減, 高性能なガントリークレーンの活用, 港湾EDIの導入が有効であることを示した.
著者
松岡 美樹子 吉内 一浩 原島 沙季 米田 良 柴山 修 大谷 真 堀江 武 山家 典子 榧野 真美 瀧本 禎之
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.52-57, 2016

近年, 摂食障害と発達障害との関連が指摘されている. 今回, 発達障害の合併が疑われ, 知能検査の施行が治療方針変更の良いきっかけとなった1例を経験したので報告する. 症例は32歳女性. X−21年に過食を開始し, 過食, 自己誘発性嘔吐や食事制限, 下剤の乱用により, 体重は大きく変動した. X−6年に神経性過食症と診断され, 入退院を繰り返した. X年に2型糖尿病に伴う血糖コントロールの悪化をきっかけに食事量が著明に低下し, 1日数十回の嘔吐を認め, 当科第11回入院となった. 生育歴やこれまでの経過から, 何らかの発達障害の合併が疑われたため, ウェクスラー成人知能検査を施行した. その結果, 動作性IQが言語性IQに比して有意に低値であり, 注意欠陥多動性障害を疑う所見も認められた. 退院後atomoxetineを開始したところ, 過食・嘔吐の頻度が週に1, 2回程度に減少し, その後も安定した状態を維持している.
著者
菅原 喜行 斉藤 禎二 矢作 孔一 横山 淳一 青木 庸好 甘利 徳邦
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.35, pp.80, 2002

埼玉スタジアム2002は、アジア最大級のサッカー専用スタジアムである。それにふさわしいピッチ照明として(1)建築意匠との調和(2)FIFAの基準を満足する照度&middot;均斉度(3)ハイビジョン画像として優れた色再現を得る光源の採用(4)緊急時における試合続行可能な照度の確保を照明計画の要点とした。光源の選定にはユニフォーム着用の被写体をスチール&middot;TVカメラでの撮影による客観的評価とアンケートによる主観的評価を行ない最も評価の高い組み合わせを採用した。実際の設備では大屋根最前列と客席上部の2列に配置した2kW高演色ショートアークメタルハライドランプ152灯と同ロングアークランプ204灯により、水平面維持照度2000lxを確保している。相関色温度は5550ケルビン&middot;Ra89となっている。また、ショートアーク器具は全数瞬時再点灯形とし、選手&middot;観客に対して安全性を考慮している。
著者
福田 和展
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
no.18, pp.97-114, 2001

《伍倫全備諺解》は明の郎溶が著した南戯《伍倫全備》が朝鮮に伝わり,中国語通訳官養成のための教科書として使用されていたものに,ハングルで中国語音の注音や解釈そして朝鮮語訳を施したものである。本書の序文には「雅浬並陳……最長於訳学」(正俗が並び述べられていて,最も訳学(通訳官養成のための外国語教育)に長じている。)と記されている。本稿では本書と同時期に朝鮮で中国語教科書として使用されていた《老乞大》《朴通事》との比較を通して,本書の文体,語彙,語法の分析を行い,「最長於訳学」とされる本書の言語的特長を明らかにした。
著者
川名 正敏
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.40-51, 2021-02-25 (Released:2021-03-16)
参考文献数
4

Tokyo Women's Medical University Hospital (main hospital) has been working on COVID-19 since the end of January 2020. Initially, triage was initiated at the entrance of the general outpatient center, where many patients with immunosuppressive conditions, such as post-transplant patients and those with blood disorders and collagen disease, also enter the hospital. However, at the end of February 2020, the hospital authorities detected an increasing trend in the number of patients and decided to address it as a pressing concern for the entire hospital. Thus, "Team Corona" was established as a multidisciplinary working unit composed of members from many clinical divisions and departments, under the initiative of the Department of General Medicine and the Department of Infection Prevention and Control, and various issues related to COVID-19 were discussed and further steps were taken.With the rapid increase in the number of patients since March, full-scale COVID-19 patient care commenced in our hospital, and the Diabetes Center building was renovated to create a COVID-19 ward. On April 20, the COVID-19 Task Force (COVID team) was formed. Thereafter, the outpatient center for COVID-19 was established at the former Rheumatoid Arthritis Center. From April 20 to November 14, the COVID team provided inpatient treatment to 150 COVID-19 patients.Since November, the number of COVID-19 patients has been increasing rapidly (called the third wave) in Japan, and the numbers of both COVID-19 positive cases and suspected cases have been increasing in our hospital. For this reason, the COVID team was expanded to a new medical care team, a general internal medicine (GIM) team, was formed. Currently, in cooperation with the team at the Critical Care Center, this GIM team is in charge of COVID-19 medical care in the hospital.This paper outlines the hospital's efforts against COVID-19 from the end of January to November in chronological order.
著者
伊藤 実樹子 山本 泰雄 菅 靖司 当麻 靖子 鈴木 由紀子 川越 寿織 山田 摩美 重田 光一 黒川 宏伸 酒巻 幸絵 澤口 悠紀 山村 俊昭 中野 和彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.466, 2003

【はじめに】日本スポーツマスターズの第一回大会が2001年9月に行なわれた。本大会は中高年の競技レベルの全国大会である。その予選大会である北海道四十雀サッカー大会そして五十雀および六十雀サッカー大会に、我々は救護班として参加する機会を得ている。今回、中高年サッカー競技における傷害の特徴を知ることを目的に、北海道大会における傷害状況をまとめ、若干の考察を加えたので報告する。【対象と方法】対象は2001年7月及び2002年7月に開催された北海道四十雀(40歳以上)・五十雀(50歳以上)・六十雀(60歳以上)サッカー大会全65試合の参加登録者、延べ1458名である。各試合会場のピッチサイドに医師と理学療法士が控え、試合中に発生した傷害の診断と初期治療を行い、その内容を記録した。記録内容の中から、疾患名・受傷部位・重症度・受傷状況・処置について検討した。【結果】全65試合において、傷害は35件発生した。内訳は四十雀39試合中28件(0.6件/試合)、五十雀18試合中6件(0.3件/試合)、六十雀8試合中1件(0.1件/試合)であった。傷害別では筋腱損傷16件、創傷7件、靭帯損傷5件、打撲4件、骨折1件、脳震盪1件、腰痛1件と筋腱損傷が最も多かった。部位別にみると頭部6件、上肢2件、体幹2件、下肢25件と下肢が最も多く、その内訳は大腿6件、膝3件、下腿13件、足部・足関節3件であった。試合続行不可能な重症例が35件中32件と91%をしめ、4件は救急車で病院搬送を行った。主な疾患を挙げると、肉離れ9件、アキレス腱断裂、腓骨開放骨折、脳震盪、左環指PIP関節脱臼がそれぞれ1件であった。受傷状況は接触が11件、非接触が24件と非接触が7割を占めた。処置ではアイシング、テーピング、ストレッチなど、約半数で理学療法士が関与した。【考察】中高年の競技レベルの大会においては、傷害発生総数は多くはないものの、重症疾患の発生が多いのが特徴的であった。高校サッカー大会の傷害調査(鈴木ら、2001)に比べて、発生総数は1/3であったが、試合続行不可能な重症疾患に限ると約6倍の発生頻度であった。今後もデータを蓄積するとともに、重症疾患の発生予防対策が急務と思われた。一方、本大会では競技時間が四十雀大会で計50分、五十雀、六十雀では計40分と短く、しかも20名の登録選手全員が主審の許可を得て交代することができ、一度ベンチに退いた後も再び試合に出場できるルールがあり、選手の負担が軽減される工夫がもりこまれている。よって、選手がベンチに退いている間に理学療法士がストレッチやテーピングをすることで、傷害発生を予防し、競技の継続を支援することが可能となる。今後、選手達へよりよいサポートを提供できるように経験を積み重ね,検討を加えていきたい。
著者
大田 穂 木塚 朝博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.256_2, 2016

<p> ソフトボールは、野球よりも塁間が約9m短い(ソフトボールの塁間は18.29m)ために、走者が塁に達するまでの時間も野球以上に短い。内野手は、走者が塁に達するまでの時間的制約下でゴロ処理、つまりゴロの捕球から送球までを完了しなければならないため、ゴロの捕球および送球の正確さのみでなく素早さも求められる。したがって、ソフトボールにおいて内野ゴロを正確かつ素早く処理できる技能を向上させることは重要な課題である。このような背景から、本研究ではソフトボールのゴロ捕球技能に着目し、実戦的な速いゴロを捕球できる選手の特徴を明らかにすることを目的とした。技能レベルが低程度から中程度の女子ソフトボール選手を対象として、2種類の速度(約40km/h・約70km/h)で転がされるゴロを捕球する課題を実施し、それらの課題の成功率および捕球時の動作を評価した。その結果、約40km/hの速度のゴロではほとんどの選手で高い捕球成功率であったが、約70km/hの速度のゴロでは捕球成功率に差がみられた。この差には、目線の高さが影響していることが示唆された。</p>
著者
朴木 佳緒留
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.309-316, 1997-09-30 (Released:2007-12-27)

小論の目的はジェンダー・エクィティの視点から教育における価値多様化を考えることにある。ジェンダーは1960年代半ばから始まった第2波フェミニズムより生まれた概念であるが、今日では一般には、社会的、文化的につくられた性別と理解されている。日本は世界の中でも特にジェンダー・バイアスが激しい国である。例えば、男性は収入労働時間が長く、家事労働時間は短い。女性はパートタイムの仕事に就く人が多く、家事労働時間は長い。また、女子一般労働者の平均賃金は男子一般労働者の約60%であり、その格差は先進国中で最大である。ところが、多くの女性は低賃金と不安定雇用にもかかわらず、フルタイムよりもパートタイムの仕事を好む。その理由は「企業中心社会」(日本的経営)と性別役割分業をもとにした日本的な男女の愛情関係にあると思われる。また、ジェンダー・バイアスは家庭教育、学校教育を通して再生産される。したがって、ジェンダー・エクィティをめざす教育では、以下の3点が重要となる。1.女性の労働権をリアルに学ぶ 2.日本的な男女の愛情関係を見直す 3.親、教師、その他の大人たちがジェンダー・センシティブになる 確かに、今日の社会では女性の生活は多様化しているが、それは根強い性別役割分業体制のもとでの分化であり、必ずしも多様化とはいいがたいと考える。
出版者
内閣記録局
巻号頁・発行日
vol.歴年官等表並俸給表 明治19年, 1894