著者
戎崎 俊一 西原 秀典 黒川 顕 森 宙史 鎌形 洋一 玉木 秀幸 中井 亮佑 大島 拓 原 正彦 鈴木 鉄兵 丸山 茂徳
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.6, pp.779-804, 2020-12-25 (Released:2021-01-18)
参考文献数
94
被引用文献数
2

Previously proposed hypotheses on the origin of life are reviewed and it is demonstrated that none of them can provide the energy flux of ionizing radiation (UV/X/γ photons, and high-energy charged particles and neutrons) required to synthesize organic materials as demonstrated by the experiments by Miller and Urey in 1953. In order to overcome this difficulty, Ebisuzaki and Maruyama, in 2017, proposed a new hypothesis called the “Nuclear Geyser Model” of the origin of life, in which high-energy flux from a natural nuclear reactor drives chemical reactions to produce major biological molecules, such as amino acids, nucleotides, sugars, and fatty acids from raw molecules (H2O, N2, and CO2). Natural nuclear reactors were common on the surface of Hadean Earth, because the 235U/238U ratio was as high as 20%, which is much higher than the present value (0.7%), due to the shorter half-life of 235U than 238U. Ebisuzaki and Maruyama further posited that aqueous electrons and glyceraldehyde play key roles in the networks of chemical reactions in a nuclear geyser and suggested that primordial life depended on glyceraldehyde phosphate (GAP) from the nuclear geyser system as energy, carbon, and phosphate sources, pointing to a possible parallelism with the anaerobic glycolysis pathway; in particular, the lower stem path starting from GAP through Acetyl Coenzyme A to produce ATP and reduction power. It is shown that microbes (members of candidate division OD1) inhabiting high alkali hot springs, a modern analogue of the Hadean Earth environment, do not possess genes associated with conventional metabolisms, such as those of the TCA cycle, but only have genes in the lower stem path of the glycolysis. This is named the “Hadean Primordial Pathway”, because it is believed that this striking result points to a plausible origin of metabolic pathways of extant organisms. Also proposed is a step-by-step scenario of the evolution of the metabolism: 1) Chemical degradation of GAP supplied from the nuclear geyser to lactate; 2) Catalytic reactions to produce reductive power and acetyl coenzyme A (or its primitive form) and self-reproductive reactions by ribozymes on the surface of minerals (pyrite and struvite), which precipitate in a nuclear geyser (RNA world); 3) Enzymatic reactions by proteins with pyrites and the struvite in their reaction centers (RNP world); and, 4) Metabolism of extant organisms with the full assembly of enzymes produced by translating molecular machines with information stored in DNA sequences (DNA world). It is further inferred that relics of primordial metabolic evolution in the Hadean nuclear geyser can be seen at the reaction centers of enzymes of both pyrite and struvite types, nucleotide-like molecules as a cofactor of the enzymes, Calvin Cycle of photosynthesis, and chemical abundance of cytoplasm.
著者
安達 真由美 茅野 紫
出版者
山梨大学教育人間科学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
no.6, pp.25-35, 2000

小学校最後の音楽づくりに取り組む第6学年児童を対象に「音楽づくりの材料紹介」という90分の特別授業を行った。授業では,鍵盤演奏が苦手な子どもでもオルガンを使って旋律を能率的に再生する方法,図形楽譜の使い方,変奏の方法などを指導し,即興生演奏を鑑賞させた。授業中の子どもたちの反応や授業後の音楽づくりの変化から,今後の初等音楽科教育の方向性について示唆する。
著者
杉田 健
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究 (ISSN:2189969X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.68-90, 2021-07-15 (Released:2021-07-15)
参考文献数
37

本稿はナイジェリアにおける年金制度の現状と課題を論じるものである。1981年から2014年の間に世界31か国が公的年金の全部または一部の民営化(DC化)を実施したが、18か国は民営化を全面的または一部やめ、また民営化を続けている国でもチリのように公営部分を拡充させた国がある。現在民営化を続けている国の中でもっとも人口の多い、アフリカのナイジェリアは、2004年に民営化が行われ、2014年の改正を経て現在に至っている。本稿は先行研究および公表資料を基に歴史的経緯・制度内容および課題を解説する。公務員年金の歴史は植民地時代にさかのぼるが、民間被用者の年金も含めて、2004年の改正前は給付と負担のバランス、年金記録が不十分で、積立金の横領、給付の遅延が発生していた。2004年の改正によりチリに倣った確定拠出型年金に移行し、2014年以降は若干の修正が行われている。ナイジェリアの年金の課題は、適用率の低さ、インフレに資産運用利回りが追いついていないこと、利息を嫌うイスラム教徒の加入者対応、不正防止があげられる。さらに、COVID-19による失業率の上昇により拠出中断が増え、将来の年金額への影響が懸念されている。
著者
山下 真史
出版者
中央大学国文学会
雑誌
中央大学国文 (ISSN:03898598)
巻号頁・発行日
no.61, pp.9-19, 2018-03

芥川龍之介の「羅生門」は三好行雄が深刻な小説として読んで以来、そのように読まれてきた。しかし、作家自身の言うとおりこの小説は〈愉快な小説〉として読む方が妥当であることを論じた。
著者
石黒 聡士 鈴木 康弘 杉村 俊郎 佐野 滋樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.76, 2007

<BR>1.はじめに<br> スマトラ沖地震に代表されるような大規模災害の直後には、迅速な状況把握が必要である。しかし、特に災害前の状況と災害直後の状況を把握できるデータは、通常限定される。その中で、高解像度衛星による画像は、広範囲にわたって均質で定量的な解析が可能である。特に、高解像度衛星によって撮影されるステレオペアの3次元計測によって、高精度に標高を計測できることが報告されている。このため、高解像度衛星画像は、地震性地殻変動量の計測など、変動地形解析において有効であることが期待される。<br> そこで本研究では、2004年スマトラ沖地震の直後に撮影されたIKONOSとQuickBirdによる単画像を複合して用い、地震性隆起量を計測する。また、異種の高解像度衛星画像を複合させる手法の有効性について論じる。<br><BR>2.IKONOSとQuickBirdを複合させた地震性地殻変動計測 <br> 2004年スマトラ沖地震の直後に撮影されたIKONOS(解像度1m)とQuickBird(同0.6m)による単画像を組み合わせて、地震時のAndaman諸島北西部における地震性地殻変動計測を行った。この地域では地震時に隆起が起きたことが報告されている。しかし、地震後の短期間に再び沈降する余効変動が観測されているため、地震直後における最大隆起量を計測することは、これまで困難であった。<br> 我々はまず、地震後15日目に撮影されたIKONOS画像と、9日目に撮影されたQuickBirdの画像を用いてステレオ計測し、隆起によって干上がった裾礁のDSMを作成した。このDSMの精度は、標準偏差で0.7m程度であった。<br> 次に、このDSMに、地震前に撮影されたQuickBird画像に写っている汀線をGIS上で重ねあわせ、旧汀線の地震直後の高度を計測した。この結果、Andaman諸島北西岸では、スマトラ地震後の10日前後では2.15m(±0.7m)隆起していたことを明らかにすることができた。<br><BR>3.異種の高解像度衛星画像を複合させる手法の有効性<br> 災害の発生直後において入手可能な衛星画像は、1.災害前に撮影された単画像、2.災害発生後に複数の衛星が集中的に繰り返し撮影した画像である。災害発生直後には需要が高まるため、各社の衛星による撮影頻度が急激に増加する。右図に、Andaman諸島において、スマトラ沖地震前後で新規に撮影されたQuickBird画像のアーカイブ総数の増加を示した。ただし、2の画像でも、ステレオ撮影は特別なリクエストがない限り撮影されない。実際に、図に示した例でも、この期間中にQuickBirdによるステレオ撮影は一度もなされなかった。<br> このような背景の中、災害直後の緊急調査においては、入手可能なデータを最大限に活用し、有意な情報を引き出すことが求められる。2の画像を使用するメリットは、各社の異なる種類の衛星が様々な角度から撮影しているため、これらを複合することでステレオペアを作成でき、従って地形モデルを作成できることである。さらに、短期間に繰り返し撮影されているために、比較的高頻度で時間的変化を把握できる。一方、1の画像は頻繁に撮影されていないため、ステレオペアの作成は多くの場合で不可能である。しかし、地殻変動前の汀線の位置など、地殻変動量の計測の際に基準となる地理的事象を把握することができる。<br> 上述の2の画像を用いて合成したステレオペアから作成した地震後の地形モデルに、1の画像から読み取った汀線などの地理的事象を重ねあわせて比較することで、地震性隆起量の計測が可能である。さらに、2の画像が頻繁に撮影されることを利用すれば、2の画像からも地理的事象を読み取ることで、地震後の余効変動による沈降量を、複数の時点で計測できる。<br> 以上のように、異種の衛星画像を複合させることが、地震性地殻変動の計測に有効であることを示した。しかし、本手法では1の画像を用いて地震前の地形モデルを作成できないため、沈降域において地震性沈降量を計測することができない。また、局所的に高い精度でDSMの作成が可能である一方で、絶対的な位置の精度は衛星の定位モデルに依存する。このため、たとえば他のソースから作成されたDSMの差し引きは、単純には行うことができないことなどが、本手法の限界として挙げられる。<br>
著者
若澤 友行 田村 典久 永谷 貴子 牧野 恵里 面本 麻里 寺井 アレックス大道 大月 友
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.91-103, 2011-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本研究の目的は、2名の自閉症スペクトラム障害をもつ児童・生徒を対象に、社会的スキル訓練を行い、その効果に対する社会的妥当性を検討することであった。当該児童・生徒の行動アセスメントは、訓練機関において彼らの学校における問題行動の文脈と関連した場面を設けて行った。行動アセスメントの結果に基づいて標的行動を選定した後、訓練機関にて社会的スキル訓練を実施した。社会的妥当性の評価は母親と教師が行った。社会的スキル訓練の結果、訓練機関および学校における当該児童・生徒の行動の改善が示唆された。社会的妥当性の評価では、標的行動の選定と訓練手続きに関して母親と教師は肯定的な評価を示したが、訓練効果に対しては両者で異なる結果が示された。訓練機関における訓練効果の社会的妥当性を高めるためには、評価者が当該児童・生徒の主訴に関して、どのような場面でどのような行動を問題にしているのかを詳細にアセスメントすることの重要性が示唆された。
著者
相須 咲希 平野 美千代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.503-509, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
20

目的 都市部町内会における平常時の防災活動と,リーダーシップをはじめとした町内会役員の特性との関連を明らかにすることを目的とする。方法 A市B区の単位町内会308か所において役職に就く者1,270人を対象とした。郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施し,調査項目は,属性,防災活動に対する役割認識(以下,役割認識),町内会組織の特性,平常時の防災活動,リーダーシップ,チーム志向性で構成した。リーダーシップは,相川らのリーダーシップ尺度より遂行指導を使用した。チーム志向性は,先行研究を基に研究者が作成した項目で構成した。分析は,防災活動を従属変数,対象者の特性(属性,役割認識,リーダーシップ,チーム志向性)を独立変数,組織の特性を調整変数として,各活動についてロジスティック回帰分析を行った。結果 調査票の回収数616人,有効回答数605人(有効回答率47.6%)であった。回答者の属性は,男性534人(88.3%),平均年齢69.0±9.1歳であった。防災活動は,「防災資器材の整備・点検」を実施していると回答したのは464人(76.7%),「地域住民の把握」423人(69.9%),「防災知識の普及」405人(66.9%),「地域の安全点検」334人(55.2%),「防災訓練」316人(52.2%)であった。防災活動と対象者の特性の関連について,「防災資器材の整備・点検」は,活動年数,役割認識,遂行指導と有意な正の関連を,課題解決への意欲と有意な負の関連を示した。「地域住民の把握」は,年齢,遂行指導と有意な正の関連を示した。「防災知識の普及」は,年齢,役割認識,遂行指導と有意な正の関連を示した。「地域の安全点検」は,年齢,役割認識,遂行指導と有意な正の関連を示した。「防災訓練」は,年齢と有意な正の関連を示した。結論 防災訓練を除く平常時の防災活動は,遂行指導と関連していた。目標と戦略を示す遂行指導のようなリーダーシップは,町内会という組織を動かし,防災活動の充実へと寄与する可能性がある。また,平常時から地域の自助を高める活動は,町内会役員が防災は町内会の役割であるという認識を持つことと関連していた。
著者
足立 重和
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.6-19, 2017-12-20 (Released:2020-11-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1

現代において「環境」という視点はあまりにも自明なことであり,言説レベルでは多くが語られている。だがその一方で,自然利用のアンダーユースによる獣害問題,高度な科学技術による人工化した食の問題など,現在の人と自然の距離は,かつてに比べて疎遠になっていたり,いびつであったりするのではないだろうか。そこで問われるべきは,「人と自然のインタラクション」である。そこで本稿は,このテーマに即してこれまでの環境社会学を概観した後,近年の文化人類学における人と動物のインタラクション研究や郡上八幡でのフィールドデータをたぐり寄せながら,今後の環境社会学が探求すべき人と自然のインタラクションとはどのようなものか,その一端を示してみた。より直接的かつ対面的なインタラクションに注目していえるのは,(1) 自然は,積極的に“人に働きかける”というインタラクションの一方の重要な項=行為者である,(2)人と自然のあいだになんらかの競合やトラブルが生じたとき,人間は,インタラクションの性格上,相手の出方を見越して手を打たなければならない,という点である。そのうえで,これらの延長線上には,人工的環境に馴らされたわれわれが漠然といだく自然観を鍛え上げるだけでなく,自然環境の豊かさを取り戻す際には,「自然の視点」を人間の内側に取り込んだうえで,あくまでも人間の暮らしを考える,という人間と自然が入れ子になった政策論がみえてきた。
著者
田中 聡 三浦 励一 冨永 達
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-16, 2008 (Released:2009-03-31)
参考文献数
46
被引用文献数
2 2

都市内の公園などの公共用芝地に出現する草種と土壌要因との関連の基礎的知見を得ることを目的として,京都市内の公共用芝地80地点において植生調査および土壌調査をおこなった。土壌要因として,土壌水分含量,土壌硬度,土壌pH,全窒素,可給態リン酸,各種水溶性イオン(硝酸イオン,リン酸イオン,硫酸イオン,カルシウムイオン,カリウムイオンおよびナトリウムイオン)および活性アルミニウムを分析した。植生データの解析は5月に調査した13地点分(春期)および8,9月に調査した22地点分(夏期)についておこなった。春期には38草種が出現し,スズメノカタビラおよびシロツメクサの出現頻度が高かった。正準対応分析(CCA)の結果,草種の分布は土壌硬度,土壌含水率,水溶性イオン(硫酸,リン酸およびカリウム)との対応関係が強かった。夏期には52草種が出現し,アキメヒシバおよびメヒシバの出現頻度が高かった。CCAの結果,草種の分布は土壌要因との対応関係が明瞭ではなかった。除歪対応分析(DCA)の結果,芝地の衰退に複数の要因の存在が示唆された。